砂の王国(下) の商品レビュー
終盤の木島(=山崎)の追われる恐怖はすごくリアルだったなあ。 宗教にハマった人間はみなあんなふうに狂信的になってしまうのだ。 ということを、実は木島本人が一番わかっていなかったんだろう。 木島という人物は、賢いようでいて実は全然なんにもわかっちゃいないのだ。それはたぶん自分から類...
終盤の木島(=山崎)の追われる恐怖はすごくリアルだったなあ。 宗教にハマった人間はみなあんなふうに狂信的になってしまうのだ。 ということを、実は木島本人が一番わかっていなかったんだろう。 木島という人物は、賢いようでいて実は全然なんにもわかっちゃいないのだ。それはたぶん自分から類推しているからなんだろうけど、およそ人の気持を忖度するということができない。全部をシステムや組織論で片付けようとしているのだ。 そのくせ、やけに合法であることにこだわったり、「ホントのことを言えばみんなわかってくれる」なんて思っていたり、どうにも詰めが甘いのである。なにかあるとすぐ酒に逃げるし。こういうやつっていっぱいいるよな。読んでいてじれったくなってしまった。自力ではどうすることもできないのに、いつまでたってもそれに気づかないのだ。 大城(=仲村)のカミングアウトは予想どおりだった。教祖に仕立て始めたあたりからそうじゃないかと思っていたのだ。 妙に物語的な決着をつけないところがまた、後を引く感じである。フィクションなんだけど、でも現実もけっこうこんな感じなんじゃない?とでもいうような。 騙しのいろんなテクニックを知ることができたのはよかったと思う。なるほどこんな流れになっているのかと。いまさらのように感心したのであった。
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「権力構造と好き嫌い」組織内における人間関係ってのは所詮それだけの事。世界中の人間がその事で悩み、苦しむ。ホームレスだって徒党を組めば組織だし、学校だろうが、会社だろうが、宗教団体だろうが、反宗教団体だろうが同じこと。それが嫌なら、あらゆる組織には属さずに、一人で生きていくしかな...
「権力構造と好き嫌い」組織内における人間関係ってのは所詮それだけの事。世界中の人間がその事で悩み、苦しむ。ホームレスだって徒党を組めば組織だし、学校だろうが、会社だろうが、宗教団体だろうが、反宗教団体だろうが同じこと。それが嫌なら、あらゆる組織には属さずに、一人で生きていくしかない。ホームレスだろうが、なんだろうが。その孤独に耐えられるならばだが。ラストに拍子抜けしている人もいるようだが、山形に行っても同じ事の繰り返しだろう。この終わり方は主人公がその事に気がついてるという事を暗示しているのでは?
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これから木島さんはどうなるのかなあ…山形に行くのか奥さんに会うのか 、それとも会員達に見つかって…(゜゜;) 幽霊より生きてる人間が怖いって。本トそうだなあって思う本
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5月-8。4.0点。 肥大化していく新興宗教。信者達と幹部とのやり取り。教祖の正体。 読み応え十分。面白かった。サクサク読めた。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
丁寧に描かれてきた人物描写と大地の会の世界感が、最後なし崩しにされて、消え去ってしまった(砂の塔のように…)消化不良感が残る。でも、ラストの楽観的でいい加減な前向きさは荻原作品の主人公らしく好きでもある。
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この本の上巻を読んだのは、昨年末のことだ。ほとんど同時期に図書館予約をクリックしたはずなのに、下巻はこんなに待たされた。そのわずかな間に、何かで紹介でもされたのだろうか。 内容は、ホームレスになった元証券マンが新興宗教を起こす話。いかにも篠田節子あたりが書きそうな話だが、ホー...
この本の上巻を読んだのは、昨年末のことだ。ほとんど同時期に図書館予約をクリックしたはずなのに、下巻はこんなに待たされた。そのわずかな間に、何かで紹介でもされたのだろうか。 内容は、ホームレスになった元証券マンが新興宗教を起こす話。いかにも篠田節子あたりが書きそうな話だが、ホームレスの生活もその心情もかなりリアルで興味深かった。 作者は「明日への記憶」を5~6年前に書いた人だが、どちらの話も緻密な取材の上に成り立っていると思う。子供騙しに終わらせない何かが、この長い小説を一気に読ませる源となっているのだろう。
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+++ 奇跡のような成功の中、私は思う。 誰かに救ってほしいと。 作りだされた虚像の上に見る間に膨れ上がってゆく「大地の会」。 会員たちの熱狂は創設者の思惑をも越え、 やがて手に負えないものになった。 ホームレス生活からの劇的な生還。 だが多くを手に入れ、ふと振り返ると そこ...
+++ 奇跡のような成功の中、私は思う。 誰かに救ってほしいと。 作りだされた虚像の上に見る間に膨れ上がってゆく「大地の会」。 会員たちの熱狂は創設者の思惑をも越え、 やがて手に負えないものになった。 ホームレス生活からの劇的な生還。 だが多くを手に入れ、ふと振り返ると そこにあるのは空虚な祝祭と、不協和音だった。 人の心を惹きつけ、操り、そして--壮大な賭けが迎える結末は。 人間の底知れぬ強さとかぎりない脆さ。 傑作長編小説、衝撃のラスト! +++ 途中までは上巻を読みながら想像していた通りの成り行きだった。勢いづいた大地の会は、創始者である山崎遼一の思惑をはるかに超えて入会者を増やし、ひとり歩きをはじめたのである。ここまでは容易に想像できる話である。だが、ラストに向かって風向きがいささか怪しくなってくる。教祖に祭りあげられた仲村の行動も、最後の最後で意外だった。山崎の人生、いったいどこからが間違いだったのだろう、と彼と一緒に考え込みたくなる一冊だった。
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2011-44 追い立てられるように仕事をして仕事をしてそれでも追い立てられるような気がして眠れない、そして結局は空虚な仕事をしており裏切られる。身につまされすぎの主人公。自分で自分の作った講習、メディテーションに縋るところはあまりに哀れであった。
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