抱擁、あるいはライスには塩を の商品レビュー
江国さんの世界にたっぷり浸らせてもらいました♪ この世界観を作り上げられるのがすごい。 いろんな世代、家族の内側、外側、男性、女性、男の子、女の子、、、様々な視点、感情、生き方。 特に、桐伯父の変わっていく様に、なんだか胸が痛む。 今後も読み返していく作品だと思います。
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なんだか 江国さんです。 その家族の空気があって、その空気の中の個人が自分というものをしっかり持っている。 流しのしたの骨と違うところは、家族を観察する(異質だと思う) 外の価値観が、はっきり書かれていることでしょうか。 それが、物語をきりっとさせている感じがします。
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生きるというのはいろんな出来事の積み重ね 誰にもわからない自分だけの物語 それぞれ環境や出会った人も違えば心の有り様も様々…人それぞれ 物語が造られてゆく これでいい。私は私で。と思わされた本でした。家族それぞれの生き方が心に沁みました。
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※このレビューにはネタバレを含みます
東京・神谷町にある大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。 1代目の貿易商の祖父、ロシア革命の亡命貴族である祖母。 2代目の姉と婿養子夫婦、次男、次女。 3代目の、うち2人は父か母が違う長女、長男、次女、次男で、 世間ばなれした毎日を過ごしていた。 柳島家では「子供は大学入学まで自宅学習」という方針。 男子は大学入学後には経営する会社に勤めるまでに外国に遊学することになっている。 女子は逆に自由はなく、大学を出た後は結婚するようになっている。 が、時代の変化や祖父が亡くなって以降は、それぞれの生き方を自分で選択し始める。 柳島家三世代の家族それぞれの物語がばらばらな時系列で並んでいる。 時代も語り手も変わるので、家系図を自分で描きながら読んだ。 長編ではあるけれど、時も人もいったりきたりする構成が逆に次々と読ませてくれる。 2代目3代目共に子供達が成長するにつれて、世間と自分の家庭の差を感じ、 考え方にも変化があり、育った環境との折り合いをつけていく。 それぞれの時代や関わる人によって違いがあり、興味深い。 1代目の肉食系の健啖家の祖父。 2代目長女は父への反撥から8年間家出し、好きな人との子供ができて帰るが、 結婚するのは父の親友の息子であり、許婚でもある人。 一生独身だった遊学中の若かりし頃の2代目の次男の奔放さ。 2代目次女が結婚した先での苦労や理解してもらえないまま離縁する様子。 2代目父の愛人(次男の母)の提案で、長男、次女、次男が小学校に入学させられるが、 学校に馴染めず、3ヵ月もたたずに退学。 家庭での教育に戻った後、培われる長男の律儀さ、次女の閉じこもり生活、次男のこだわり。 3代目の長女以外の3人は小さい頃に経験した他の子供たちとの接触により、 早くから自分の家庭の不思議さに気付かされ、 それがその後の成長に大きな影響を与えた。 3代目長女の大学に入ってからの家族にこだわらない生き方。 家族にしか通じない言葉の掛け合いは、独特の雰囲気。 ロシア文学からの引用や自由の喜びを意味する「ライスには塩を」。 最後にはロシア人である祖母の回想によって、オチがつけられて、ああ・・・と。 先日読んだ、角田光代さんの「ツリーハウス」も家族3代の物語だったが、 時代はほぼ同じで、異国の香りのする点では同じだけど、まったく趣きはちがう。 どちらもぐいぐいと読ませてくれる。
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罪の「めぐり」について。 出逢ってしまうということについて。 忘れられないことと、忘れようとしないことの大きな差について。 大切にしたい人と愛する人は同じでありえないのかということについて。 本の外に最後まで出ようとしなかった陸子だけが、そんなごたごたに関わることもなく。そんな...
罪の「めぐり」について。 出逢ってしまうということについて。 忘れられないことと、忘れようとしないことの大きな差について。 大切にしたい人と愛する人は同じでありえないのかということについて。 本の外に最後まで出ようとしなかった陸子だけが、そんなごたごたに関わることもなく。そんな世界を客観的に眺めていた。そして皮肉にも、それらを書く小説家になった。本の外にしか、書かれるべきことはないのだと気付いた。
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私が読んだ江國香織著書の中で最も惹かれたのが、この作品である。 家族のあり方って、家庭によって本当に異なるから、この様な家族があっても不思議ではないなぁと思う。 彼らの家族の中の合言葉、「かわいそうなアレクセイエフ」 「みじめな二ジンスキー」にはすごく親しみを感じた。 ど...
私が読んだ江國香織著書の中で最も惹かれたのが、この作品である。 家族のあり方って、家庭によって本当に異なるから、この様な家族があっても不思議ではないなぁと思う。 彼らの家族の中の合言葉、「かわいそうなアレクセイエフ」 「みじめな二ジンスキー」にはすごく親しみを感じた。 どこの家庭でも合言葉はあるある♪と思いながら読んでいた。なんか温かくていいなぁ! 世間体を気にしない奔放さ、みたいなものが魅力的だと思う。どう考えても後ろめたさを感じてしまいそうな、菊乃の妊娠、豊彦の浮気、そして何より驚いたのが絹の過去。そんなものを抱えながら、皆堂々と生きて、それでいて家族の調和があるという所に感銘を受けた。問題は色々とあるけれど、家族皆が皆を1人1人を尊重し、全てを受け入れている感じが、とてもいいなぁと私は思った。 特に桐叔父のキャラクターが好きだった。彼の章になると俄然ページをめくる手が早くなった私。過去の哀愁をたたえながらも、いい味を出す彼が亡くなったのはすごく残念だった。でも、なんか後から考えると彼の死は必然であった気がする。 「本の外というのは本のなかにそっくりなのだ。世の中が本のなかと似ているとわかってから、私はとても自由になった。」 という陸子の言葉には心なしか救われたわたしがいた。
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[コメント] NHK BS「週間ブックレビュー」2011/2/13 10:00- 松田哲夫氏紹介
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+++ 三世代、百年にわたる「風変りな家族」の秘密 東京・神谷町にある、大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。1981年、次女の陸子は貿易商の祖父、ロシア革命の亡命貴族である祖母、変わり者の両親と叔父叔母、姉兄弟(うち2人は父か母が違う)の10人で、世間ばなれしつつも充実した毎...
+++ 三世代、百年にわたる「風変りな家族」の秘密 東京・神谷町にある、大正期に建築された洋館に暮らす柳島家。1981年、次女の陸子は貿易商の祖父、ロシア革命の亡命貴族である祖母、変わり者の両親と叔父叔母、姉兄弟(うち2人は父か母が違う)の10人で、世間ばなれしつつも充実した毎日を過ごしていた。柳島家では「子供は大学入学まで自宅学習」という方針だったが、父の愛人(弟の母親)の提案で、陸子は兄、弟と一緒に小学校に入学。学校に馴染めず、三ヶ月もたたずに退学する。陸子は解放されたことに安堵しつつ、小さな敗北感をおぼえる。そもそも独特の価値観と美意識を持つ柳島家の面々は世間に飛び出しては、気高く敗北する歴史を繰り返してきた。母、菊乃には23歳で家出し8年後に帰ってきた過去が、叔母の百合にも嫁ぎ先から実家に連れ戻された過去がある。時代、場所、語り手をかえて重層的に綴られる、一見、「幸福な家族」の物語。しかし、隠れていた過去が、語り手の視点を通して多様な形で垣間見え――。 +++ とても型破りでありながらとても懐かしく、ものすごく遠い世界のようでいて驚くほど近しくも思われる不思議な物語である。家――というか家系――というもののこと、血というもののこと、そして個人というもののことなどを全身に血がめぐるように考えさせられもする。たいそう窮屈であり、それでいて何ものよりも自由、だがしかしやはり何かに囚われている感じ。それこそが家族と言えるのかもしれないとも思う。柳島家全体にただよう匂いと、この時代にそこに集ったこの家の人々の輪郭がくっきりと浮かび上がって秀逸である。風変わりで懐かしい一冊だった。
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ひとつの家をめぐる、ちょっと一般的ではない家族の物語。長編であり、短編でもある。最初、あまりにセレブな家のお話なので今回は感情移入できないのではないかと思ったけれど、そうではなかった。それぞれが、それぞれの立場で恋を語り、人生を語り、その全てが美しく切ない。「これが普通」という価...
ひとつの家をめぐる、ちょっと一般的ではない家族の物語。長編であり、短編でもある。最初、あまりにセレブな家のお話なので今回は感情移入できないのではないかと思ったけれど、そうではなかった。それぞれが、それぞれの立場で恋を語り、人生を語り、その全てが美しく切ない。「これが普通」という価値観に縛られている人たちにこそぜひ読んでいただきたい。
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混沌とした一族の物語。小説の中に入り込むのにかなり時間がかかってしまった。読み進むうちに、それぞれのキャラクターに興味をひかれるようになるが、強い引力はない。光一と涼子ちゃんの関係は可愛らしく、好ましく感じる。面白かった、とは言い難いのが正直な感想。
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