マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust-排気(完全版) の商品レビュー
人の生と死に対して,どこに救いを求めるのかは,個々の思想に帰着する.僕とは当然ながらそこが違うので,予定調和的収束と感じるが,確かに世界は進むのだということを全面に主張しており,その後の作品世界に通じるものがある.
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ブラックジャックのシーンは本当に描写が細かい。 一戦一戦が生きている。 身体的ポテンシャルは圧倒的にバロットの方が上回っており、それに支えられた精神的優位性も兼ね備えているにもかかわらず それをアシュレイが恐ろしいほどの知識と経験で逼迫させている。緊張感がすごい。 ボイルド戦が正直、カジノシーンで霞んでしまった。 ボイルドは重力操作能力を備えているので、頭のなかでそのシーンを想像するのが難しい。 その中でバロットの成長と再誕の一端がしっかりと感じられた。
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シェルの犯罪を裏付けるデータがカジノに保管された4つの100万ドルチップ内にあることを知ったバロット。チップを合法的に手に入れる為、カジノでの勝負に挑む。物語の完結編。 なんだろう、このモヤモヤ感。最終的にバロットが獲得した自身の価値がウフコックの存在に依存しているからか。人は...
シェルの犯罪を裏付けるデータがカジノに保管された4つの100万ドルチップ内にあることを知ったバロット。チップを合法的に手に入れる為、カジノでの勝負に挑む。物語の完結編。 なんだろう、このモヤモヤ感。最終的にバロットが獲得した自身の価値がウフコックの存在に依存しているからか。人は結局、誰かと共に生きることで希望を見出すしかないという語られ尽くした結末に至るのかと。孤独や苦痛は自分ひとりで抱えるほかないのに、希望や愛情は他人の存在に依存するしかないのだろうか。それが種の存続の為の人の本能か。ならば愛されない存在に価値などないのか。彼女自身で完結する彼女の価値を見出してくれることを期待していたので少し残念。 ブラックジャックの勝負シーンの緊迫感は良かった。逃げずに挑む意志を持ち続けようとするバロットの成長が上手く描かれていたし、あれだけの長い勝負を飽かせず読ませる筆力もすごい。 後半のシェルの記憶を紐解く場面はただ悲しかった。シェルは自身と同じ絶望を抱える少女を見つけては殺し綺麗なものに変えることで、過去から自分を救っていた。記憶を封印することで歪みが生じていくシェルと、立ち向かい殻から出たバロットの対比が上手い。 ラストのボイルドとの戦いは、彼自身が定義づけしたボイルドの価値の悲しさを描き、ウフコックへの執着を描くことで、一層寂しさを際立たせていた。彼は彼の存在価値を戦闘に見出していただけなのに、それは否定されるべきことだったんだろうか。彼も救ってあげて欲しかったけれど、彼は共に生きる相手がいないから救えないのかな。 全体を通じてウフコックの存在が偉大すぎる。無償の愛を与えてくれる模範的な親のようであり、寄り添って生きてくれる恋人のようであり。存在の価値を問う物語なのに、彼ありきで価値を見出す結末はどうなんだろう。もちろん彼を濫用することへの危うさや、殻を出て意志を持ち選択することの尊さも描かれてはいたのだけれど。 多くの人はウフコックのような稀有な存在と共にいられないんだろうな。それを手放したのは大きな間違いだったのかな。 *以下引用* *ルーン・バロットーそれが、あの子の名前さ。誰がつけたんだか知らないけどね。殻の中で死んだ鳥の名前をつけるなんてさ。哀しい名前、切実な名前だよ (p66) *それでもあのとき自分の心は、殻の中に閉じこもること以外に生きるすべを見つけられなかった。 (p125) *我々が生きていること自体が偶然なんだ。そんなこと、ちっとも不思議じゃないじゃないか?偶然とは、神が人間に与えた中で、最も本質的なものだ。そして我々は、その偶然の中から、自分の根拠を見つける変な生き物だ。必然というやつを (p135) *「父親の元には戻りたくないの」女の子が言った。ひどく切迫した声で。深い共感の念がどこからともなく湧き上がった。「お願い、父親の所には戻さないで」いいとも。俺が守ってやる。お前を安全な場所に連れていこう。 (p190) *女の子の声がする。深い共感の念が湧いた。「あたしを父さんに会わせないで。何でもするから父さんにだけは会わせないで」大丈夫だ。俺が守ってやる。俺は知っている。そのストレスを。 (p194) *ブルーダイヤ。天使の涙。身につけた人の代わりに泣いてくれる宝石。あなたが指につけてるそれを見せてくれたときに思ったの。これさえあれば涙はいらない。最悪の日もきっと笑って過ごせる。 (p196) *愛されたいと思った人は沢山いた。でも愛したいと思った人はあなただけ。 (p259) *敵対する者だけが自分たちの価値を認めるのだし、今が互いに親しく会話をすべき唯一の瞬間なのだと告げるように。相手の命を奪う、この決定的な瞬間だけが。 (p273) *そばにいることーそれができる相手と共にいることが、この都市に残された最後の希望だった。 (p298)
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ひとつのシーンが、長すぎて途中で飽きてしまう。 特にカジノのシーンは、長かった。 作品に対する思い入れを排除して、絞り出した文章を捨て去る勇気が欲しかった。
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バロットのような境遇の少女の心理描写がよく描けている…と思える。そういう経験ないのであくまで想像だが。 ブラックジャックでは、クライマックスの《イーブンマネー》で「は?何それ?」と置いてけぼりを食ったのが残念だった。 総じて、面白かった!
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この本はマルドゥック・スクランブルシリーズ3部作の最後である。 勝負や戦いが満載だった。特にブラックジャックのシーンは凄かった。派手な戦闘ではなく、静かで動きが少ない戦闘だったが、その激しさが伝わり、手に汗握った。
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エンターテイメントとしては間違いなく面白いです。 でも8年を経て読み直すと少し物足りないところもあります。 例えば格差の街『マルドゥック・シティ』の細部の描写、生活の臭い、猥雑さ。 過酷な環境を生き抜いてきたというバロットのキャラ設定を越えた生々しい感情。 哲学的な問答は実感が伴...
エンターテイメントとしては間違いなく面白いです。 でも8年を経て読み直すと少し物足りないところもあります。 例えば格差の街『マルドゥック・シティ』の細部の描写、生活の臭い、猥雑さ。 過酷な環境を生き抜いてきたというバロットのキャラ設定を越えた生々しい感情。 哲学的な問答は実感が伴わないので少々薄っぺらく感じます。 だけどそういったディテールの描き込みは読み辛さも生むので、読者の幅を狭めてしまうかもしれません。 スタイリッシュな文体を楽しむSFとして読むのがやはり正しいのかなと思います。
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恐るべきスピードで心身の成長をし続けるバロットと、道具として自分の有用性を見出すウフコック。相棒(バディ)として築かれていく2人の関係がいい。 カジノしたくなった。
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同作者の『天地明察』が非常に面白かったので。無残にも殺されかけた未成年娼婦バロットと、彼女に肉体改造を施し一命を取り留めさせた奇妙な博士とパートナーのネズミの話。名シーンと言われたブラックジャック勝負の場面は高揚感があったが、全体的に予想以上に「ラノベっぽかった」。わざわざ文章で...
同作者の『天地明察』が非常に面白かったので。無残にも殺されかけた未成年娼婦バロットと、彼女に肉体改造を施し一命を取り留めさせた奇妙な博士とパートナーのネズミの話。名シーンと言われたブラックジャック勝負の場面は高揚感があったが、全体的に予想以上に「ラノベっぽかった」。わざわざ文章で読むよりも漫画として読んだ方が冗長なアクションシーンを読む時間も短縮できそう。
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バロットのシェルとの物語の完結編。 カジノでの大勝負から、ボイルドとの決着へ。 カジノやギャンブルに詳しくないけれど、アシュレイのようなカードを操れる(?)ディーラーって存在するのだろうか? ボイルドとはまた違う意味での、敵としての圧倒的な存在感!! この3部作すべてで言えるこ...
バロットのシェルとの物語の完結編。 カジノでの大勝負から、ボイルドとの決着へ。 カジノやギャンブルに詳しくないけれど、アシュレイのようなカードを操れる(?)ディーラーって存在するのだろうか? ボイルドとはまた違う意味での、敵としての圧倒的な存在感!! この3部作すべてで言えることだか、キャラクターがそれぞれしっかりと描かれていて、単なる咬ませ犬ではなく倒すべき存在になっているからこそ、バロットの死から生への帰還、生きていていいんだ、ウフコックと共に生きていたいという物語になっているのだろう。 この後のバロットとウフコックが幸せであることを願うとともに、イースター博士を含めた3人の続きが気になる。
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