時の地図(下) の商品レビュー
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☆4.4 1896年ロンドンにて、アンドリューは切り裂きジャックに殺された恋人を忘れられず命を絶とうとしていた。 その時、2000年へのタイムトラベルを提供する旅行会社の存在を知る。 過去へ行けば恋人を救えるとかすかな希望を持つが、旅行社を訪ね時間を遡りたいと掛け合っても得られ...
☆4.4 1896年ロンドンにて、アンドリューは切り裂きジャックに殺された恋人を忘れられず命を絶とうとしていた。 その時、2000年へのタイムトラベルを提供する旅行会社の存在を知る。 過去へ行けば恋人を救えるとかすかな希望を持つが、旅行社を訪ね時間を遡りたいと掛け合っても得られた答えは否。 このツアーのタイムトラベルの方法では指定の過去へは行けないらしいのだ。 そこで、世に話題となった小説「タイム・マシン」を発表した作家H・G・ウエルズならその方法を持っているかもしれないと、協力を求めることにしたのだが… というのがまずは第一部のあらすじ。 この第一部だけでも、ロンドンの夜の肌にまとわりつくような不穏な空気や、アンドリューのある意味人間味が溢れすぎる若き恋、タイムトラベルにまつわるあれこれと、読みどころがたくさん。 第二部ではテイストの違う恋愛のかたちが読めるのもとても良い。 上流階級の令嬢クレアがタイムトラベルツアー先で出会ってしまった未来の男との刹那の恋は、とても即物的で不純なのに実は観念的で純粋で。 思わぬほどに心震わせてくれる。 第三部になると殺人事件が起こる急展開。 話をつなぐ存在だったウエルズが、自らの過去と持っていた秘密に向き合うこととなる。 全編通して面白いなと感じたのは、ひとりひとりに"見えているもの"が違うこと。 登場人物同士はもちろん、読者である自分も、狂言回しな創作者も。 そのすれ違いが生み出すものがドラマになっている。 思惑が絡んで転がるその先がどうなるか、気持ちよく振り回されて読んだ。
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過去も未来も自由自在に超えられるタイムマシンがここに。 2000年の世界に残ることはできなかったクレアだが、向こうの世界で出会ったシャクルトン将軍が、置き忘れてきた日傘を返すためにタイムトラベルしてきたことから、クレアの運命の恋が進みだす——。 限られたタイムトラベル、たった一度の愛、交わす手紙、未来と過去でつながる言葉。シャクルトン将軍を演じたトムの視点によって読者にはマリー時間旅行社のカラクリが明らかにされるが、クレアはそんなことは知らない。そしてクレアを利用するつもりだけだったトムが、真剣にクレアに演技を続けようとして、頼ったのがまたウェルズである。トムの代わりに手紙を代筆するウェルズと、クレアの愛情が向いているのはクレアではないかと疑い出すトム、そして愛に正直なクレアの奇妙な三角関係は、予め示されていた終わりを迎える。トムが恐れていた通り、ギリアムの手が彼に伸びてきたが、仲間たちがこれを助け、トムとクレアの物語は誰も知らない未来へ続いていく。 コリン・ギャレットが担当する死体は、まさにタイムトラベル・ツアーで見てきた未来の武器で殺されていた。捜査への協力を申し出たウェルズは、自作の小説を持って訪ねてきたギリアムを冷たくあしらったことから始まった時間旅行社のことを思う。タイムマシンに座ったウェルズは、2000年の世界でギリアムと対峙し、3つの殺人事件の共通点と謎の手紙に導かれ、タイムトラベラーに会う。〈真実の図書館〉の司書マーカス・リースはタイムトラベラーがウェルズたち作家を狙っていると言うのだが——。 第一部、第二部とタイムトラベルを信じる者の幸せな結末を描いてきた。第三部でとうとう本当にタイムトラベルは可能なのではないかと思ってしまう。そのアイデアを世に広めたのに、タイムトラベルをずっと否定してきたウェルズの前に差し出された、時間を超えた大きな陰謀と、未来にいるH.G.ウェルズからの手紙によって。しかし、やはり物語は物語なのだ。まったく新しい物語を想像したつもりで、もしかしたらどこかのパラレルワールドについて語っているのかもしれない。タイムトラベルができる世界もあるのかもしれない。タイムトラベラーは近くにいるかもしれない。そういうことを考えるのは楽しい。パラレルワールドの自分がまた違う形の幸せを手にしていることに思いを馳せられるから、想像力は人の命を救うのだ。 大変幸せなSF。すべてがつながっていくところが気持ち良い。そして何より物語を紡ぐ嬉しさと楽しさと力に満ちている。
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下巻も半分過ぎてようやく面白くなってきた。 タイムトラベラーが犯人としか思えない事件が起きる。 今までとは一変して今度は二重三重のタイムタラベル、パラレル・ワールド物に変わり、色々な伏線がかみ合って来る。ここらは面白いのだけど、やはり文章が無駄な描写が多いのは変わらず。 作者の視点からの介入も全く無駄で興を削ぐだけ。 終わってみれば、ただ長い。 後半の急展開を楽しむ為の前半を含めても厚目の本1冊程度で充分。苦労して読んだ。
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上巻に引き続き面白かった! SF好きには少し物足りないかもしれない……けど、ある意味、満を持して!待ってました!って展開。 上巻から散りばめられてたタイムトラベルやタイムパラドックス、パラレルワールドなどの要素が一気に集結する。 私はSF詳しくないから、最後の最後でよくわからなく...
上巻に引き続き面白かった! SF好きには少し物足りないかもしれない……けど、ある意味、満を持して!待ってました!って展開。 上巻から散りばめられてたタイムトラベルやタイムパラドックス、パラレルワールドなどの要素が一気に集結する。 私はSF詳しくないから、最後の最後でよくわからなくなってしまったけど……。 上下巻に渡り、H.G.ウエルズが大活躍。 著者がストーリーの語りに出張ってくるのは、私はあんまり気にならなかった。まさに語り手って感じで面白い。
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圧巻。 物語の力に圧倒された。 卓越したアイディアと、精緻にして怒涛の筆力。 その組み合わせが物語にもたらすものを、久しぶりに思い知った気がする。 虚実入り混じった歴史改変ものである性質を存分に活かし、縦横無尽に展開して行く物語に翻弄されっぱなし。 極めて精巧に組み上げられた...
圧巻。 物語の力に圧倒された。 卓越したアイディアと、精緻にして怒涛の筆力。 その組み合わせが物語にもたらすものを、久しぶりに思い知った気がする。 虚実入り混じった歴史改変ものである性質を存分に活かし、縦横無尽に展開して行く物語に翻弄されっぱなし。 極めて精巧に組み上げられた、複雑な入れ子構造。 しかし、決して難解な筋立てではない。 物語は自然に頭へと流れ込み、その情景に身を置くようにして活字を追っていける。 アイディア勝負に陥りがちな内容なのに、要所要所をきちんと締め、かつ、張り巡らせた伏線をも丁寧に回収している手腕には舌を巻くほかない。 「SF」を読んだなあ、という実感が凄い。 とんでもなく面白い作品だった。
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下巻の幕開けは将軍ことトムの物語で大団円だと思ったら、本書中盤から始まる第3部で、怒涛の展開となった。扉に書かれている著者の挑戦的な言葉が、自分にとって現実となり、本日午前2時に読了するまで眠れなかった。「時」を移動する方法があんな方法とは……最終的には偶然とも必然ともとれる結末...
下巻の幕開けは将軍ことトムの物語で大団円だと思ったら、本書中盤から始まる第3部で、怒涛の展開となった。扉に書かれている著者の挑戦的な言葉が、自分にとって現実となり、本日午前2時に読了するまで眠れなかった。「時」を移動する方法があんな方法とは……最終的には偶然とも必然ともとれる結末を迎える。
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めっちゃ面白かった! わくわくした! 読後感もいい! 展開が予想できない、どんでん返しの連続。期待せずに買った割に、これは良かった。 時間旅行の可能性、パラレルワールド、タイムマシン、ミステリーぽいSFわくわくした。
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H.G.ウェルズ。タイム・マシン、子供の頃に読んだかな?読みたくなりさっそく光文社古典新訳を入手。 とにかくラスト1/4の疾走感が気持ちいい。
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タイムトラベルの話。偽のタイムトラベル体験を設定したり、本当のトラベラーが出現したり、ごちゃごちゃしている感じはあるが、コニー・ウィリスとはちがったおもしろさがあり楽しめた。
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