優しいおとな の商品レビュー
15歳でホームレスのイオン。おとなを信じず、誰とも群れず、ただその日を生きる彼。優しくしてくれるおとなであるモガミを避け、自ら地上を捨ててアンダーグラウンドにもぐり、夜光集団の一員になろうとする。 そして、そのイオンが最後に求めたものは、本当に単純なものだった。究極の平等と...
15歳でホームレスのイオン。おとなを信じず、誰とも群れず、ただその日を生きる彼。優しくしてくれるおとなであるモガミを避け、自ら地上を捨ててアンダーグラウンドにもぐり、夜光集団の一員になろうとする。 そして、そのイオンが最後に求めたものは、本当に単純なものだった。究極の平等とは、親の愛からの離脱・光の回避と言っているおとながいたけれど、そうなのだろうかと思った。 イオンが最後に求めたもの、それは、おとうさんとおかあさん。 人間は、何かにすがっていないとだめなんだと思う。そして、その姿は決して弱いものの姿ではないと思う。記憶をなくした鉄が、イオンを頼って、そしてイオンもそんな鉄を全力で守ろうとする。そこがよかった。
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スカイエマさんの画に惹かれて図書館で借りた。 桐野さんの本は「残虐記」と「東京島」を読んだことがあり、 大人の生々しい本能を書く人だなぁという印象だったが、 こちらの作品はちがう。 近未来の荒廃した東京を舞台に、ストリートで暮らす子どもたちを描くファンタジーだ。 ぶっちゃけ...
スカイエマさんの画に惹かれて図書館で借りた。 桐野さんの本は「残虐記」と「東京島」を読んだことがあり、 大人の生々しい本能を書く人だなぁという印象だったが、 こちらの作品はちがう。 近未来の荒廃した東京を舞台に、ストリートで暮らす子どもたちを描くファンタジーだ。 ぶっちゃけ、印象はあまり強烈ではなかった。 主人公のイオンをはじめ、出てくる人物に悪人がいないということが最大の原因かな。 「優しいおとな」というタイトルであるからして、優しくないおとなも出てくるものだと思っていたが、ついぞ出会わなかった。 イオンの過去についても、期待していたほどのインパクトはなかった。 好みの世界観だっただけに残念。 大友克洋さんの「AKIRA」といろいろ比べてしまって、申し訳なかったなぁと思う。 あぁでも、ラストはよかったな。ハッピーエンドだと私は思う。
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設定はとてもいいと思う。でも話の運びが冗長で、なのに最後の回収部分が唐突すぎたかな。 私はインド旅行中だったので、ストリートで暮らしている人たちを横目に、いろいろと考えを巡らせながら読みました。不安定な若者を描いた話では、メタボラの方が好きです。
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ものすごい久しぶりな桐野さん。 ストリートチルドレンのイオンがいろいろな人と触れ合い、彷徨い、自分の居場所を見つけていく物語。 桐野夏生といえばドロドロしていてどこか陰鬱な話が多いというイメージだけど、こちらはそういったことはなく。びっくりするほど桐野夏生らしくない。でもこれはこ...
ものすごい久しぶりな桐野さん。 ストリートチルドレンのイオンがいろいろな人と触れ合い、彷徨い、自分の居場所を見つけていく物語。 桐野夏生といえばドロドロしていてどこか陰鬱な話が多いというイメージだけど、こちらはそういったことはなく。びっくりするほど桐野夏生らしくない。でもこれはこれで良かった。「大人には3種類いる」という話が印象的。それでもどっちつかずな大人が悪いとは言い切れないのも事実だと思う。深いね。ラストもハッピーエンドではないけど納得できるもの。全体的に良かった。 桐野夏生らしさを求める人には物足りないけど、とても読みやすく考えさせられる物語でした。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「おとなは三種類だ。優しいか、優しくないか、どっちつかずか。優しいおとなは滅多にいない。優しくないおとなからは、すぐ逃げろ。でも、一番僕たちを苦しめるのは、どっちつかずのやつらだ。しかも、そいつらは数が多い。絶対に信用するな。ともかく、おとなを見極めろ。それしか僕たちの生きる道はない」 「ありがとう、ごめんなさい。このふたつだけで、かなり暮らせるはずだ」 台詞が記憶に残る。
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イラスト入りの本であることが珍しい。小説とイラストが完全にマッチしていることも珍しい。読売新聞土曜日版に連載されていたらしい。そのときのイラストをふんだんに使ってくれたのかな。いずれにせよ、とてもいい。 時は近未来。経済も文化もどこかで破綻してしまっているらしい日本。荒廃し...
イラスト入りの本であることが珍しい。小説とイラストが完全にマッチしていることも珍しい。読売新聞土曜日版に連載されていたらしい。そのときのイラストをふんだんに使ってくれたのかな。いずれにせよ、とてもいい。 時は近未来。経済も文化もどこかで破綻してしまっているらしい日本。荒廃した渋谷エリアを舞台に、浮浪児の自分探しの旅を描いた、少し緊張感のある小説である。ちょうどオーストラリアあたりでは、マッドマックスが暴走族集団を血祭りに上げている頃なのかもしれないし、アメリカでは人工臓器を回収するレポメンたちが支払未納者の腸を抉り出している時代なのかもしれない。マンハッタン島は全体が刑務所として封鎖されている時代なのかもしれないし、北陸ではハルビンカフェを中心に海市全体にアジア中のマフィアが死闘を繰り広げている時代なのかもしれない。(以上は、近未来の映画や小説をお遊びで列挙しただけなので気にしないでください)いずれにせよこの物語の舞台はあまり説明はなされていないものの、救いの見えないある種の世紀末である。 しかもそのような救いのない暗い状況が、子供たちに与えている過酷な試練に視点を集約した小説でもある。孤児たちは当座の食糧を得るために日々を、獣のように過ごし、精神を殺し、夢を忘れ、愛を諦め、無味乾燥にサバイバルのみを目指そうとする。まともにものを考えぬことにより、自分の精神の崩壊を必死で守り、ただ今日も一日を生き延びることのみを、ひたすら祈り続けているかのように見える。 自衛策を取る公園のホームレス、その中でもマムスと呼ばれる母子ホームレスの一団、巨大な地下で生きることを決めた地下生活軍団、川の流れに沿って生活の舞台を移す河川放浪の民。さまざまな餓えた都市生活者たちのサバイバルの状況を目撃しながら、時に巻き込まれ、時に助けられながら、少年イオンの旅は続く。 著者としては『冒険島』に続く近未来東京シリーズの第二段という括りになるのかもしれない。本当にはないが近い未来にならあっても不思議じゃない世界設定と、そこで研ぎ澄まされる人間のいくつもの類型パターンを浮き彫りにし、愛を求める子供たちの本能のかたちを改めて見据えようとしているように思える。 どこに辿り着くのかわかりにくい物語だが、その行方は破天荒に過ぎるように見えながらも、最後にはきっちりとすべてが集約し、明日以降に何ものかを見出すべき地点へと着地してゆく。 驚くのは巻末の参考文献の多さであり、そこで目立つのは、家族、虐待、愛着、児童、といった、何も近未来でなくても現在、存分に直面している現代日本の問題を的確に捉えた作品の方向性を示す文献リストとなっている。 近未来というかたちで、誇張され、研ぎ澄まされてはいるものの、そこに抉り取られ提示されたテーマは、現代のぼくたちに突き出された未解決の問題ばかりであるような気がし、改めて本書の重みを感じさせられる。
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暫くしてから、まったく架空の街であることがわかった(遅)。 どこか異空間の、でももしかしたらほんとはこんな人達もいたりして… な物語。 桐野作品ではマイルドかもしれないが結構好きな世界観。
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出会いは大切だと感じた 薦められて読んでみた 自分からは手に取らなかったと思うのでこの本と巡りあえてよかった いい話だった
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スカイエマさんのイラストが好きで購入。 実は桐野夏生作品は初めて。 施設で育ったストリートチルドレンの少年が、自分の出自や施設で一緒に育ったきょうだいを追い求めるうちに、地下で暮らす夜光部隊に出合い、その仲間に入る。 新聞連載だったこともあってか、わりとさらっとした描写で書か...
スカイエマさんのイラストが好きで購入。 実は桐野夏生作品は初めて。 施設で育ったストリートチルドレンの少年が、自分の出自や施設で一緒に育ったきょうだいを追い求めるうちに、地下で暮らす夜光部隊に出合い、その仲間に入る。 新聞連載だったこともあってか、わりとさらっとした描写で書かれているけれど内容は結構ずっしり重い。 主人公のイオン、ドライな少年なのかと思っていたけれど純粋で正直な情の厚い子だということがわかってきて、後半はどうなるのかとヒヤヒヤしながら読んだ。 ラストはもう少しじっくり掘り下げてほしかったような…。 幸せになってほしいと思っていたので後半涙が止まらなかった。 親から愛された記憶のないイオンにとってはきょうだいの存在が本当に大きかったのだろうな。 近未来の設定ではあるけれど、貧困、平等、愛情、親子のあり方、テーマ自体は今の私たちにとっても身近な物語であると感じた。 イラストが内容の雰囲気にとてもよく合っている。
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桐野作品は、「アンドスムンドス」と「I'msorry,mama」しか、まだ読めてないが、 その二作品に比べて、わりと「人情的」なお話であったと思う。 私に桐野作品を紹介してくれた友人は 桐野作品は読了後、陰鬱な気分になると 言っていたが、そういう毒々しさというか、 ...
桐野作品は、「アンドスムンドス」と「I'msorry,mama」しか、まだ読めてないが、 その二作品に比べて、わりと「人情的」なお話であったと思う。 私に桐野作品を紹介してくれた友人は 桐野作品は読了後、陰鬱な気分になると 言っていたが、そういう毒々しさというか、 そういう、エグさがあんまりなかったように思う。わりと、万人に読みやすい作品といった 印象を受けた。 とは言え、問いかける命題は 「平等とはなにか」 「愛とはなにか」 というような、考えさせられるものだった。 キャラの作り方は秀逸で、みんな たっていたので、どの登場人物も 楽しくみることができた。 期待していたタイプの話ではなかったけれど 最後まで読んでみて興味深い点も 多々あったので、読んでよかったと思う。
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