ロング・グッドバイ の商品レビュー
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準古典ミステリ文学の巨匠、レイモンドチャンドラーの最高傑作と言われている。 古い本なので、展開的にはそこまであっと驚かせるようなものはないが、古きアメリカの退廃した社会や、登場人物たちの清濁併せ持つありのままの姿を、主人公フィリップマーロウの視点から切り取る。 村上春樹のあとがきもすごい難しいこと言ってるけど、「自我というものを、 ブラックボックスとして、各人の行動に反映されたものとして捉えている」というコメントには同意できる。 村上春樹が似た作品として挙げている、フィッツジェラルドのグレートギャツビーも読みたくなる。 個人的にはマーロウやレノックス、その他の人々達も「どこかやりきれない」まま終わるのが味わい深くはあった。また、誰にでも言葉で噛み付くマーロウの知的さと獰猛さのバランスもハラハラさせてくれた。 狆、薹が立つ、アモンティラード、指物師など、難しい言葉も多数。小説からも学ぶことが多いなと思い、小説をさらに読むきっかけになりそう。
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美しい話だった。そして題名の意味が最後の最後にわかるそのまとめ上げ方が最高だった。話の途中に、男同士の友情として描かれる一節がまさにハードボイルドで…そしてその場面があるからこその最後の最後に題名が効いてくる…染み渡る話でした。
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探偵フィリップ・マーロウは、酔って駄目になっているテリー・レノックスに出会い、「なにか」に惹かれる。おそらくその「なにか」は彼にとって欠落というべきものだろうと思われる。その「なにか」がなんなのかについて彼自身がどのくらい理解しているのかは、小説を読む限りでは分からない。ただ、彼はその「なにか」のために、テリー・レノックスの死に執着する。その過程で、彼以外の、周囲の人の心にあるわだかまりは少し明らかになったりするし、事件の真相も明らかになる(予想以上にミステリ小説してたので驚いた)が、結局彼の欠落した「なにか」には1mmも近づかない。 最終的に、”ミステリ的な仕掛け”としてテリー・レノックスが生きていたことが明かされる。これで良かった、マーロウのレノックスに対する想いは報われるだろう、と感動する準備をしながら読んでいくとそうはならない。真相にかかった霧が晴れると同時にレノックスに付帯してマーロウとの繋がりを引き止めていた「なにか」も霧散してしまう(それはミステリ的な仕掛けのさらにその先に仕掛けられた非ミステリ的な真相だ)。そうして、真相が明らかになるのと逆行して、彼の欠落した「なにか」はより深くなっていく。 読み終わってもなお、フィリップ・マーロウが誰だったのか分からないままだった。
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チャンドラーの本は集中力が続かないことが多くて、最後まで読めないのが普通なのだが、このストーリーは気になって読破した。推理小説としてはとても上出来だと思う。
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初のチャンドラー。良かった。なかなかのボリュームだけど村上春樹訳というのもあって、思いの外スラスラ読めた。元々ハードボイルドとか古典的なミステリーに惹かれるところがあり、私的には非常に満足度が高かったけど、好みは分かれるだろうなぁ。小洒落た言い回し、キザな台詞、無駄に細かい描写...
初のチャンドラー。良かった。なかなかのボリュームだけど村上春樹訳というのもあって、思いの外スラスラ読めた。元々ハードボイルドとか古典的なミステリーに惹かれるところがあり、私的には非常に満足度が高かったけど、好みは分かれるだろうなぁ。小洒落た言い回し、キザな台詞、無駄に細かい描写そのものを愉しめないと苦行かと思う。謎解きを求める方もハマらないに違いない。場面場面を愉しむ、夜中にJAZZの名盤を聴きながら、酒と煙草をお供に読みたい1冊でした。巻末の村上春樹氏の気合の入ったあとがきも読み応えあり。
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10代に挫折して本棚の肥やしになっていたものを引っ張り出して再読。 何を感想として残せばいいか分からないくらい、読んだ後に寂寥感に苛まれる。 人生を象徴するような出会い、別れ、非情さ、優しさが詰まっていた。マーロウに共感しながらも、同時に、役者あとがきにもあるようにその実何光年も離れたところにいる人間だろうという言葉に強く頷く。 優しさや誠実さは、時に深く人を刺し殺す。 もう彼とのギムレットは飲んでしまった。 この先この本が本棚から消えることはないだろうし、何度でも読み直す大切な一冊になった。 読むたびに味が変わるんだろうな
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私立探偵、フィリップ・マーロウのどこまでも冷静で、どんな事態におちいっても、ユーモアを忘れない、いわば超人的なナイス・ガイさにやられた。 事件も、網をくぐって、くぐったすえに、複雑な様相を呈している全体像に驚き、終わりも予想外だった。 会話も面白く、人物、一人一人に魅力がある...
私立探偵、フィリップ・マーロウのどこまでも冷静で、どんな事態におちいっても、ユーモアを忘れない、いわば超人的なナイス・ガイさにやられた。 事件も、網をくぐって、くぐったすえに、複雑な様相を呈している全体像に驚き、終わりも予想外だった。 会話も面白く、人物、一人一人に魅力があるので、読む者を飽きさせない。 傑作。
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村上春樹版の『長いお別れ』 こちらも大好きな本です。 とりあえず解説を堪能して、清水俊二訳と比較するといった楽しみもありますよね。 装丁のデザインは、なぜこんなにも簡素なのでしょう。
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長旅だった。 ただいざ読み終えると寂しいものがある。 初のチャンドラー作品、楽しんで読めた。 寄り道エピソードが好き。
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だいぶ前に清水訳を読んで以来の再読。内容については名著すぎて言うべきことはほとんどないが、村上春樹訳は、あっさりめだがくっきりはっきりと書かれていて細部がよく分かる印象で、作品そのものの文学性を味わうにはこっちの方がいいかも。
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