「怖い絵」で人間を読む の商品レビュー
上野の「怖い絵」展の予習のために図書館で借りたのだが、閉架書庫に入っていた。7年前に出版された本なのに…。 この本の元となったNHKの番組もyoutubeで観賞。 良書、良番組はいつまでも残って欲しいものだ。
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アントワーヌ・ヴィールツがとても気になるんだけど、個人画集は刊行されていないのか見つけられなくて残念の極み。
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有名なボッティチェリからエル・グレコ、ベラスケス、ゴヤ、あとおれは知らなかったけどドラクロワ、レービン、エゴン・シーレといった画家25人の33作品が、それぞれ「運命」、「呪縛」、「憎悪」、「救済」といた8つの章に分けて解説されている。カラーで見ることができるが、細かい部分はちょっ...
有名なボッティチェリからエル・グレコ、ベラスケス、ゴヤ、あとおれは知らなかったけどドラクロワ、レービン、エゴン・シーレといった画家25人の33作品が、それぞれ「運命」、「呪縛」、「憎悪」、「救済」といた8つの章に分けて解説されている。カラーで見ることができるが、細かい部分はちょっと見にくい。それぞれ作中の人物(神話上の架空のものも含めて)、風景がなぜそのように描かれているのか、画家は何を思って書いたのか、主に歴史的な背景について説明されており、もともとはNHKの教養番組のテキストだったものを再編集したもの。 読む前から怖い絵として出てくるだろうと思ってたのはゴヤの「黒い絵」シリーズ、『我が子を喰らうサトゥルヌス』で、あらためて見てもやっぱり怖い。ただ怖い絵としてしか認識していなかったが、実は「人間をやめてしまったにもかかわらず、まだ人間的弱さの残滓だけはあるという、引き裂かれた自己の苦悶」(p.115)をあの目は物語っているということだった。「つまりこの絵の本当の怖さは、我が子を喰っているところにあるわけではない。」(同)らしい。同じようにイリヤ・レービンという人の『イワン雷帝とその息子』という作品もとても印象的で、このイワン雷帝の目も「狂気から醒め、自分のしたことを突きつけられ」(p.171)た時の恐怖を描いているらしい。神話についてもおれは全く知らないけれど、そのサトゥルヌスが父親ウラノスを殺して、海に投げ込んで血まみれになった海水から泡が出てきて、ヴィーナスが誕生、というのも、すごい話だと思った。「ヴィーナスのギリシャ名はアプロディテで、アプロ(泡)が語源」(p.127)だそうだ。あと意外だったのは、風景画についての話で、「当時の教会は、自然を、やがては消滅する物質と見做し、永遠不滅の神に対置させます。そのため人々は、風景を愛でることと肉の快楽に耽ることを似た行為のように思い、罪悪感すら持たされていました。」(p.138)というのが納得。確かにヨーロッパの美術館に行っても古い作品はだいたい宗教画か歴史的な人物の絵のような気がして、風景画はあんまり見たことないなあと思った。エル・グレコは独特の色遣いが面白いと思っていたけど、この『トレド眺望』という作品の不気味さにも見入ってしまう。 という感じで、怖いといってもお化けとか幽霊とかそういう怖さというよりは、作中の人物を待ち受ける悲惨な宿命とか、人間のどうしようもない性とか、そういう種類の怖さを描いている。ハプスブルク家といった西洋史、神話の話が難しくて、おれにとっては誰が何したのかだんだん分からなくなってきたが、絵のだいたいの雰囲気や背景を知るだけでも印象深いものが多い。(16/09/04)
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ただ感性だけで絵をみるだけじゃ味わえない絵の魅力が満載。また絵の解説とともに、特に中世ヨーロッパの歴史も詳しく面白く語ってくれていて、勉強になる。 個人的にはファン・カレーニョ・デ・ミランダの『カルロス二世』がもっとも怖い。
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捉え方を変えるとただ「怖い」と思って見てきた絵にも物語がついて、ちゃんとその「怖い」と感じる所以を理解できた。美術を理解するのにもこうした歴史を知らないといけないと改めて思った。
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ベラスケスの『王子』に散見される“死”の予兆とは? ヴィンターハルターの美しすぎる『皇后』の、その顔をよくよく見ると? グリューネヴァルトの『祭壇画』の、痛々しい描写がもたらす“救い”とは? 肖像画に風景画に宗教画。絵画には色々な種類があります。画のタッチや使用した画材...
ベラスケスの『王子』に散見される“死”の予兆とは? ヴィンターハルターの美しすぎる『皇后』の、その顔をよくよく見ると? グリューネヴァルトの『祭壇画』の、痛々しい描写がもたらす“救い”とは? 肖像画に風景画に宗教画。絵画には色々な種類があります。画のタッチや使用した画材など、“美術の眼”で観るのも一つの見方ですが、“時代の眼”で絵画を観ると、見えてくるのは生々しくも悍ましい“現実”……? 運命、狂気、救済など8つのテーマごとに、『怖い絵』シリーズでは取り上げられなかった作品も含めて33点の絵画を解説した絵画ガイドブック。 予備知識無しで絵画鑑賞をして、見当違いの感動を抱くか。予備知識有りで絵画鑑賞をして、正しく恐怖と感動を得るか。あなたはどちらを選びますか?
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絵画と併せて歴史や画家の背景にも触れた解説で、とても分かりやすく読みやすかった。 世界史に興味出ますね。
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人間の持つ様々な感情や、歴史に翻弄される人生、宮廷生活をテーマに、絵画の紹介をする。 スペイン・ハプスブルク家の凋落の歴史を語るベラスケスの『フェリペ・プロスペロ王子』。 オーストリア・ハプスブルク家の皇妃エリザベート。 マリア・テレジアとマリー・アントワネット。 『我が子を喰らうサトゥルヌス』をはじめとする『聾者の家』の連作『黒い絵』のゴヤ。 ロシアを代表するレーピン、ドラクロア。 キリストの磔刑を描いたルーベンスと『イーゼンハイムの祭壇画』。 背景を知った上で眺めると、絵に込められた深いメッセージを読み取ることができる。
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これまでの同じ著者の作品と内容が重複している部分が見られたけれど、講義を根底にしているだけあって、わりとわかりやすい内容だった。
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ハプスブルグの血統第一主義、青い静脈を残す。近親結婚による劣性遺伝。怖いという本当の意味を知らせてくれる良書。中野さんは決して興味本位ではない。
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