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音もなく少女は の商品レビュー

3.9

82件のお客様レビュー

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2024/03/25

原題はWOMAN 邦題がいまひとつなのはよくあることだけど、これはなぁ。 でもでも肝心の小説は素晴らしかったです。

Posted byブクログ

2023/11/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 C.O.S.Aの”Girl Queen”という曲のインスパイア元であることを知り、以前から気になっていた作品でついに読んだ。NYのハードな時代と環境を描いた素晴らしいクライムノベルでオモシロかった。  タイトルのとおり聾唖の女の子が主人公で名前はイヴ。生まれつき耳の聞こえない彼女の人生の周辺で次々と事件が起こっていき、それらをストラグルして乗り越えていく話となっている。父親がとにかく最悪でこんなに胸糞悪くさせてくる登場人物もそういない。しかし憎まれっ子世にはばかるとはよく言ったもので理不尽な暴力で母親、イヴを含めた周囲を抑圧していく前半は読んでいて辛い部分が多かった。耳が聞こえないハンデを背負いながらも運命的な出会いをした養母のような存在のフランから写真を覚えて少しずつ希望の光が差し始める。何か夢中になれるものがあることの尊さ、というと陳腐に聞こえるが劣悪な環境においてはとても大事で必要なものだと感じさせられた。また写真に加えてイヴに活力を与える恋愛の描写も非常に瑞々しい。しかしそれゆえに喜びに満ちた時間が過ぎ去っていく切なさもハンパなく…当時のNYにおけるストリートの理不尽さがひしひしと伝わってきた。  男は基本クズであり女性が人生の主導権を取っていく点が本著の読みどころだと思う。こういったクライムノベルにおいて女性かつ聾唖という当時の社会情勢におけるダブルマイノリティを主人公に据える著者の心意気にリスペクト。またフランはナチによって子宮を摘出されてしまっている過去を持ち物理的に母親になれない。そんな彼女が母性を長い時間をかけて獲得していくストーリーもかなりグッときた。特に終盤そんな形で母性を昇華させるの?!というハードコアな場面が印象的。イヴもフランも「普通」の外側にいるかもしれないが、それは他人が決めた枠であり、そんなものを気にせず自分の道を切り拓いていく姿勢がかっこいい。女性だからといって受身になる必要はなく欲しいものや環境を自分で手に入れようとする姿はヒップホップそのものだと感じた。とにかく読ませる展開の連続でページターナーっぷりが圧倒的なのだが、その中でもハッとするエモーショナルなラインがいくつもあり一部引用。 *より大きな真実がおのずとあふれるときには、人は誰もそれを味わえる。一度にすべてを受け容れるには横溢的すぎても、心の準備ができるときまで、心にぴたりと収まるときまで、ずっとその人のそばにとどまってくれる真実というものがある。* *達成感を得るための黒魔術。わたしの父はそれをそう呼んでいた。心をむなしさに食い尽くされてしまった人たちは、敵を抹殺することに飢えて、個人的な敵を見つけるのよ。必要に駆られてそういう敵をつくりだすのよ。そうすることで自らのむなしさを埋めようとするのよ。でも、このことで何よりも恐ろしいところは、むなしさを埋めれば埋めるほど飢えが強まることね。* *誰かを亡くすことが楽な仕事になることは決してない。記憶の中に沈むたびにあなたは新しい傷を見つけることになる。それは説明することはできなくても、見ることはできなくても、はっきりと感知できる傷よ。人間の苦悩とともにある傷よ。* *わたしはあなたの年頃にはよく本を読んだ。あなたの宗教が自分たちの親切なバイブルをでっち上げるために、どれほど多くの福音を捨てたか、本を捨てたか、大砲を捨てたか、読んでわかった。わたしは自分の子宮があったがらんどうを見つめるかわりに読書をしたのよ。*  他にも作品があって特にデビュー作の『神は銃弾』はプロットからしてオモシロそうなので次に読んでみたい。

Posted byブクログ

2022/04/27

三冊目のボストン・テラン。 既読の「その犬の歩むところ」「ひとり旅立つ少年よ」とは異なったテイストの作品。静かに熱い女たちの戦い。文章が詩的でたまらない。『暴力の詩人』とは言い得て妙。「神は銃弾」も読まねば。

Posted byブクログ

2021/12/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ろくでもない男たちや男社会の中で、女性たちが力を合わせてたくましく強く生きていく話。ナチスによって強制的に中絶されたフランは命を与えることはできなくなったけれど、イヴに代わって自首することでイヴやミミに命を与えた。だからこそ墓石には「女 友達 姉妹」に加えて「母親」と刻まれる。女性や聾者、貧困者、有色人種といった、この1900年代後半のニューヨークにおける社会的弱者を取り巻く過酷な環境と、それに負けない女性たちの強さがよく描かれている。 訳が(特にスラング)引っかかるところもあるけれど、深い言葉で語られている気がした。

Posted byブクログ

2021/08/09

原題WOMAN。女、姉妹、友達、母。永遠という字の手話。読み進めるのに難儀した。途中で挫折しそうにも。

Posted byブクログ

2021/03/20

父はチンピラギャング ロメイン、世間知らずでロメインの暴力に耐えてきた母クラリッサ、聾唖の娘イブの成長譚。母娘の姉にして聖母的存在のフランはナチスにより子宮摘出を受けた傷を腹に刻まれている。聾唖でなくても女たちには「音(声)」はなく、守ってくれるはずの男達も父(ロメイン、そしてミ...

父はチンピラギャング ロメイン、世間知らずでロメインの暴力に耐えてきた母クラリッサ、聾唖の娘イブの成長譚。母娘の姉にして聖母的存在のフランはナチスにより子宮摘出を受けた傷を腹に刻まれている。聾唖でなくても女たちには「音(声)」はなく、守ってくれるはずの男達も父(ロメイン、そしてミミの父ロペス)はむしろ攻撃者として立ちはだかり、ベトナムから生きて帰還したチャーリーはブロンクスでロペスの手下に銃殺される。 誰も守ってくれなければ、最後は自ら逆襲するしかなかった女たちの物語でもある。 弱者に寄り添いながらも予定調和ではなく現実感のあるハードな人生を、ボストン・テランは情緒を排したクールな文体で切り取ってくれる。「いい小説だ。胸に残る小説だ」by北上次郎

Posted byブクログ

2021/01/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「女、姉妹、友達、母」 イヴという名前。 毎回手のひらから滑り落ちていく幸せを、最後にようやく掴み取るのか…と思っていたら、そうくるか。

Posted byブクログ

2020/09/18

自分の中にこびり付き、侵食してゆく相手。――その恐怖を思うと、クラリッサの決意と行動には胸が締め付けられるようだった。 イヴとフランとクラリッサ。 彼女たちを深みから救ったのは、出会いだった。 傷をなかったものとはしない。人生から逃げない。餌食にはならない。 それらの「正面に立...

自分の中にこびり付き、侵食してゆく相手。――その恐怖を思うと、クラリッサの決意と行動には胸が締め付けられるようだった。 イヴとフランとクラリッサ。 彼女たちを深みから救ったのは、出会いだった。 傷をなかったものとはしない。人生から逃げない。餌食にはならない。 それらの「正面に立つ強さ」を得たのも、やはり互いがいてこそだと思った。 ボストン・テラン。デビュー作も気になってきた。

Posted byブクログ

2020/02/05

長く待っていたので図書館から連絡があってすぐに走っていって一気読み。さすがに面白かった。 ブルックリンの極貧家庭に生まれた、耳の不自由な少女イヴが勇気のある女たちに守られ成長していく物語。 母のクラリッサは、耳が聞こえないという障害を持つイヴを、将来味わうだろう人生の荒廃か...

長く待っていたので図書館から連絡があってすぐに走っていって一気読み。さすがに面白かった。 ブルックリンの極貧家庭に生まれた、耳の不自由な少女イヴが勇気のある女たちに守られ成長していく物語。 母のクラリッサは、耳が聞こえないという障害を持つイヴを、将来味わうだろう人生の荒廃から救うために、教育を受けさせようとする。 そこで教会で顔見知りになっただけのフランに相談する。 イヴを育てることでクラリッサとフランは親友になる。 フランには過酷な過去があった。 彼女の愛した青年も耳が不自由だった。 フランの両親は傷害のある子供たちを教育する私立学校を経営していた。そこに彼は入学していた。 家系に障害のある子供がいると、優生保護のために断種手術を受けなくてはならなかった。 彼女は青年と逃げるが、子宮を摘出され、恋人は射殺された。 その後、彼女は一人小さな店を持って暮らしていた。 三人の女性が、運命と卑劣な男たちに翻弄されながら勇気を持って生き抜くものがたり。 文章は繊細でダイナミック、時には詩的で、上質な文学的な香りを持っている。 彼女たちが、過酷な出来事に打ちのめされながらも、立ち上がるたびに、読んでいても何度か胸が一杯になった。 評判どおり読み甲斐のあるいい本だった。

Posted byブクログ

2019/12/22

読後、深い感動を覚えた。生まれながらの障害をかかえ辛い思いも沢山経験しながら、母親やフランの愛情に包まれ育っていった主人公が、同じく包み守る存在へと成長し、自分の思いを表現して行く。応援しながら読了した。

Posted byブクログ