日本人へ 国家と歴史篇 の商品レビュー
月刊「文藝春秋」の連載の新書化。 塩野七生のごくごくフツーのエッセイ。タイトル買いするとがっかりするかも。(2010.6.23)
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他の「日本人へ」シリーズよりも、穏やかな内容と思えるのは、大作「ローマ人の物語」を書き終えた喜びだろうか。
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ブックオフで買ったままの積本に着手したが、少々古すぎた。本のタイトルから普遍的な内容を想像して読みだしたが、発刊当時(2010年当時)の情勢(特に日本の政権など)について、著者の考えを述べた部分が多く、ほとんどを駆け足で読み流してしまった。 塩野さんの合理的でダイレクトな語り口は、当時読んでいたら、歯切れよさに快感を感じながら読めたかもしれないが、今更なので走りました。 本書の最初の扉に次の言葉が引用されてました。 「自分で自分を守ろうとしない者を誰が助ける気になるか」(ニコロ・マキアヴェッリ) これが「日本人へ」のメッセージなのだろう。 塩野さんの歴史に対するスタンスは、次のような言葉である程度理解できたのかなと感じています。 「歴史は私にとって、研究する対象でなくて、ともに生きる相手なのである。」 「人物を私に引き寄せるのではなく、私からその人物のところへ行く。」 「良くも悪くも愉快な男たちと過ごしてきた。」 「作家は絶対に、書く対象に乗り移るくらいの想いで対さないかぎり、それを書ききることはできない。」 つまり、その時代の人物に自ら会いにゆき、語り合いながら歴史を綴っていくというイメージで、特にその対話の相手は女よりも男であるほうが楽しいようだ。 また、途中、酒とチーズの話も出てきた。その時代の歴史を綴るのに、その時代性を感じられる酒とチーズを食しながら書くのだと。 「木を見て森を見ず」を避けたいという言葉も。歴史の細部にこだわるより流れ重視のようだ。「高校で学ぶ歴史こそが歴史全体の流れを感じとるのに適していた。」とも述べていた。 アンドレ・ジイドの「麓からでもトルストイという山は見える。だが、トルストイという山を登りきると、その向こうにドストエフスキーという山が見えてくる」という言葉を引用し、これが自分の仕事のスタイルだと述べていた。そして山登りと同じく、無理をしない持続と、初めの挑戦は「楽しいこと」から着手するそうだ。 何事かをなす一つのヒントであるかもしれない。 著者が「夢の内閣」を構想するページがあった。ここは、著者の知識が最大限に活かされた普遍性のあるページだった。 ■総務省の大臣:皇帝アウグストゥス 中央集権と地方分権の絶妙な配合システムを確立した。 ■外務省の大臣:皇帝ネロ 「悪帝」は歴史教科書的評価であり、大国、小国などの差別なく、友好関係を樹立できる。 ■防衛省の大臣:ハドリアヌス 戦争に訴えないで防衛責任も果たすという、困難ではあっても国民にとって最もありがたい安全保障制度を再構築した人物。効率の鬼。 ■行政改革担当の大臣:ユリウス・カエサル 先を見通す知力と、反対派でさえもたらしこむ説得力と世論などには左右されない持続する意志と、手段の目的かに陥らない自己統制力と、目的にむかって進む肉体上の耐久力がある。 ■総理大臣:空席(不要) 他の各省の大臣がすべて優れているので。 ■財務省の大臣:ヴェスパニアヌス帝 新税を考え出すことにかけて天才。 ■法務省と国家公安員会のトップ:ティベリウス アウグストゥスの後を継ぎ、政治の確立と司法の公正に尽力した。 ■国土交通省の大臣:トライアヌス 公共工事の実績が最多。 ■文部科学省と厚生労働省の大臣:誰でもOK 以上は、ローマを熟知した著者が考える「夢の内閣」の組閣メンバーだが、その正しさを確かめるには、もっと著者の本を読むしかなさそうだ。
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文藝春秋に連載されたエッセイをまとめたもの。普段イタリアに住む著者が、海外から見た日本について辛口の批判をしており、納得できる記述が多い。記憶に残る部分を記す。 「戦争とは、良い悪いの区分がないだけではなく、防衛のための戦争か侵略のための戦争かの区分さえもむずかしい。いや、戦争...
文藝春秋に連載されたエッセイをまとめたもの。普段イタリアに住む著者が、海外から見た日本について辛口の批判をしており、納得できる記述が多い。記憶に残る部分を記す。 「戦争とは、良い悪いの区分がないだけではなく、防衛のための戦争か侵略のための戦争かの区分さえもむずかしい。いや、戦争は、ほとんどとしてよいくらいに侵略戦争である。なぜなら、防衛のつもりで行った戦争に勝ったとたんに、その防衛戦を確実なものにしたくなってさらに敵地深く侵略することになるからで、歴史に残る戦争のほとんどすべては、侵略戦争であったのが実相だ。」 「戦争そのものが姿を消したわけではない。それはおそらく、頭をガツンとやられないかぎりは言うことをきかない、国家や民族や部族が後を絶たないからだろう。昔も今も、人間性のこの現実は変わらないのではないかと思っている。」 「多く集まれば集まるほど、正しく、かつ問題の解決によりつながる対策が立てられると信じているとしたら、人間性に無知というしかない。首脳とて国益は無視できない以上、数が増えれば増えるほど意見も増える。結果は、結論なし、で散会だ。そして、数が増えれば一国当たりの権力と影響力は減少するので、その面でもサミットは、やるだけムダということになる。」 「ポイント主義は、単に勝者だけを決める手段であったはずである。だが、それのみが偏重されるようになると、手段の目的化になってしまう。スポーツにかぎらずどの分野でも、手段の目的化は、弊害になると同時に魅力を失わせる。」 「ちなみに、中東に攻め込んで勝ったヨーロッパ人は、後にも先にもアレクサンダー大王一人である。アメリカのインテリや指導者たちは、歴史を読んでいるのかしら。」
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文藝春秋への寄稿文(2006/10-2010/4)をまとめたもの。時事的な内容が多いが、塩野節が随所に効いており、面白い。 以下注目点 ・私が人物のところへ行くことにした。 ・政治とは、感性に訴えて獲得した票数、つまり権力を、理性に基づいて行使していくものだからである。 ・スト...
文藝春秋への寄稿文(2006/10-2010/4)をまとめたもの。時事的な内容が多いが、塩野節が随所に効いており、面白い。 以下注目点 ・私が人物のところへ行くことにした。 ・政治とは、感性に訴えて獲得した票数、つまり権力を、理性に基づいて行使していくものだからである。 ・ストラテジーの意味の一つは、予期しなかった困難に遭遇してもそれを解決していく才能。 ・大衆は、問題点を具体的に示されたならば意外にも正しい判断を下す。
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強いメッセージ性を感じるタイトルだが啓蒙書というわけではなく、塩野氏が雑誌に載せた自由気ままなエッセイを本にまとめたというものだった。今まで氏の作品は物語調のものしか呼んだことがなかったので、彼女の人間性や思想の全く知らなかった側面を知ることが出来た。というか塩野七生が女性だとい...
強いメッセージ性を感じるタイトルだが啓蒙書というわけではなく、塩野氏が雑誌に載せた自由気ままなエッセイを本にまとめたというものだった。今まで氏の作品は物語調のものしか呼んだことがなかったので、彼女の人間性や思想の全く知らなかった側面を知ることが出来た。というか塩野七生が女性だということを知らなかった。あんなハッキリした描写的な文章なんだから誰だって男だと思うだろ(偏見か?)。 多くの記事をまとめた本なのでテーマは多岐に及んでいる。特に面白かったトピックは、夢の日本内閣をローマ皇帝で作ってみたという話、漢字は想像力を刺激するという話、日米安保条約の話の3つだ。最後の安保条約の話は「自分で自分を守ろうとしない者を誰が助ける気になるか。」というマキアヴェッリの言に集約される。誰が他国民を守るために自国の若者を何万人も殺すのか、そもそも数千人の兵士が死んだだけで厭戦気分が溢れる国が、本当に有事の際に頼りになるのか、といった疑問を著者は投げかけている。日本人は自国の安全保障の要が、経済危機からなかなか立ち直れないことや、中東問題をいつまでたっても解決できないことに、もっと危機感を持ったほうが良いと私は思った。 他にもワインの話やイタリアのモードの話(著者はローマ在住)やイタリアの地震対策に日本が協力することになったという話もあり、どれも面白かった。どんな日常的な話題からでも政治や経済や歴史の話に持っていき、全ての事柄は深いところでしっかり結びついているということを再認識させてくれるのが塩野氏のスゴイところだ。この本を読んで塩野氏のことがより好きになった。
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塩野七生さんが書いた自由気ままなエッセイ。一度も日本から出たこともない自分からすれば海外からみた日本はこんな感じなのだろうと思ってしまう。はっきりとした文体は、カッコいいし心に響く。 このエッセイが書かれたのは2006年10月~2010年4月といった自民党政権崩壊から民主党政権に...
塩野七生さんが書いた自由気ままなエッセイ。一度も日本から出たこともない自分からすれば海外からみた日本はこんな感じなのだろうと思ってしまう。はっきりとした文体は、カッコいいし心に響く。 このエッセイが書かれたのは2006年10月~2010年4月といった自民党政権崩壊から民主党政権に移った時期らへんでやはりちょっと一昔前の話題の感じがしてしまう。ただ今だから言える民主党与党の連立政権のドタバタ劇を過去の歴史と照らし合わせ予言していたところなどはさすがと思ってしまった。
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塩野七生が自由気ままに書いたエッセイ。 海外からみた日本はこんな感じなのだろうな、と、日本に染まっている私などからしたら、斬新な感じがした。納得する部分も多い。 「地震国・日本ができること」は納得。「昔・海賊、今・難民」は、知らなかったヨーロッパの現状を垣間見た感じ。 強引という...
塩野七生が自由気ままに書いたエッセイ。 海外からみた日本はこんな感じなのだろうな、と、日本に染まっている私などからしたら、斬新な感じがした。納得する部分も多い。 「地震国・日本ができること」は納得。「昔・海賊、今・難民」は、知らなかったヨーロッパの現状を垣間見た感じ。 強引というか無茶無茶というか、、、なんというか勝手に言いたい放題感も多少するが、そういう勝手でもなんでも自分の思うところをしっかりと持って、はっきり、きっぱりとした文体は、ちょっとカッコいい感じだ。 ただ、このエッセイが書かれたのは2006年10月~2010年4月らしいので、やはりちょっと一昔前の話題の感じがしてしまう。 リアルタイムで読むには『文藝春秋』を読むしかないが、このシリーズの最新版も読んでみようかな。
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タイトルからはもっと硬い本かと思いましたが、わりと軽めのエッセイ集です。ペリクレスなどのローマの3大美男子の話が出てきたり、美男子でありながら、能力がないという人は安倍晋三氏に言及する文章も出てきたり、ソクラテスへの熱愛を語る老人(男性)が出てきたり。昨年からの事業仕分けで官僚の説明力のなさが露呈し、彼らが外交において日本の国益を十分に主張できなかったのではないか、との皮肉は全くそのとおりですね。このタイトルはローマと現代の国家指導者を対比しているようです。この著者は、近くにいるととても嫌味でいやなオバサンのように感じそうです。相変わらず、キリスト教に対する冷たい偏見が随所に出てくるあたりの表現にそのことを感じます。
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ローマの歴史やその時代を代表する人物の生き方をヒントに、現代の私達の社会や暮らしについて書かれている。 『男たちへ』を読んだのが塩野さんの作品との最初の出会い。 ハッキリとした言い方ながら、そこには上品さと美しさを感じた。 素敵な女性なのだろうと密かに憧れを抱いている。
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