日本人へ 国家と歴史篇 の商品レビュー
リーダー篇に続き、読了。 「日本人へ」と銘打たれているものの、「かくあるべし」を押し付けるのではなく、著者の考えを淡々と記述しているように感じた。 昨年(H22)に刊行されたものであるため(ということは、さらに以前の原稿ということになる)、オバマ政権の誕生や、民主党の躍進及び事業...
リーダー篇に続き、読了。 「日本人へ」と銘打たれているものの、「かくあるべし」を押し付けるのではなく、著者の考えを淡々と記述しているように感じた。 昨年(H22)に刊行されたものであるため(ということは、さらに以前の原稿ということになる)、オバマ政権の誕生や、民主党の躍進及び事業仕分けの実施など、当時世間を賑わせていた話題が多い。結果的に、著者の当時の主張が、的外れでなかったことが興味深かった。 確かに外野からものを言うことは簡単である。しかし著者はそれだけにとどまらず、在住するイタリアで地震による被害が発生した際、日本大使館に意見を具申し、復興を支援するなど、実際に行動している。言いっ放しでなく、行動できるところに、著者の日本への思いを感じることができた。
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文藝春秋に2006年から昨年までの5年間連載された塩野氏のコラムを再掲したもの。 歴史作家としてのプロフェッショナルな姿勢と深い知識、歯に衣着せぬ男性的な物言いと、長年にわたるイタリア生活で培われたグローバルな視点。 プライドと自信に満ちたその語り口がちょっと鼻につく感じがないではないが、おっしゃっていることはおしなべて納得である。 殊に、国際社会における日本の位置付けや日本の政治家、官僚の体たらくについての分析は、なかなかに鋭い。 民主党はこのような人材をアドバイザーに招いてみたらいかがだろう。山積する問題に風穴を開けるのは、意外に離れた視点で客観的にものを考えられる人の思い付きのような一言だったりするのではなかろうか。 震災国支援における、地震列島日本ならではのやり方のアイディア、事業仕分けでやり込められる高級官僚を観ての感想、阿部晋太郎元首相の政治姿勢に関する論評、そして小沢一郎に対する期待など、コラムが書かれたリアルタイムでなくとも充分読み応えがあり、今でも通じるものがある。 いや、今でも通じるということは、今尚変わっていないということか。それはそれで、困ったもの、ということだが。 ともかく、日本人としては、がんばらないとずるずる後退するばかりだという認識のもと、生きなくてはならないと強く思った。
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いやぁ!面白いな! 他人の評価は知りませんが、私は大好きだなぁと。 今の日本人について伺いたいと思う次第。
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ローマ人の物語で有名な塩野女史が書かれたエッセー集です。新書本としては今年(2010年)6月に発行されたものですが、エッセーの内容は2006年~2010年にかけて書かれたものです。 その間、日本の政治は政権交代も含めて揺れ動いた時期でしたが、その都度、痛烈な、しかも的確な指摘...
ローマ人の物語で有名な塩野女史が書かれたエッセー集です。新書本としては今年(2010年)6月に発行されたものですが、エッセーの内容は2006年~2010年にかけて書かれたものです。 その間、日本の政治は政権交代も含めて揺れ動いた時期でしたが、その都度、痛烈な、しかも的確な指摘をしているなと思いました。 外務大臣の候補にもなったことがあったようですが、私としては、そんなことに大切な時間や体力・気力を使うよりは、より多くの執筆をしていただいた方が良いと思ったことは記憶しています。今も尚、執筆を続けていただいて嬉しく思っています。 この本での政治に関するアドバイスとして印象に残ったのは、現在之日本の政治不安定を解消するには、小沢氏の唱えた大連立をすべきという内容です。戦争に突き進んでいったと私が思っている、大政翼賛会の状態が良いのでしょうか。大政翼賛会についても将来、情報を仕入れてみようと思いました。 以下は気になったポイントです。 ・一杯飲み屋において注文の前に、何年ものかを聞くのはマナーに反するが、グラスに注がれるときに聞くのは許容される(p19) ・亡国の悲劇とは、人材が欠乏するから起こるのではなく、人材はいてもそれを使いこなすメカニズムが機能しなくなるから起きる(p26) ・クレオパトラは、魅力的な女性であったはず、勝負に打って出たときの彼女は、全身がキラキラと輝いていたに違いない(p31) ・異国間で歴史事実は共有できても、歴史認識の共有はむつかしい、それは時間とカネの無駄(p49) ・公立の図書館はもともと、筆写本しか存在しなかったために書物がひどく高価だった古代に生まれたもの(p69) ・女が女のことばかり考えている限りは女の独立は絶対に達成できない(p74) ・民主市議政体下の有権者は「何をやったか」で支持するのではなく、「何かやってくれそう」という想いで支持を寄せる(p78) ・歴史は繰り返すというが、少しばかり様相を変えて繰り返す(p85) ・ローマが強かった要因はいくつかあるが、その第一が常備軍制度にあったことは定説、いつでも軍事力を行使できることは外交の場で有利(p115) ・ネロは誰とでも仲良くなってしまう、特に大国パルティアを囲む小国の統治者が感激するので、彼らがネロのシンパになる、これによりパルティアとの関係が改善された(p128) ・ローマは、カエサル・アウグストゥス・ティベリウスの三人で創設された、カエサルが青写真をかき、アウグストゥスが建設、ティベリウスが内装その他を整備した(p132) ・本格的な改革とは意外にも、二世・三世によって成されている、ただし傍流の彼らであるが(p162) ・以前の移民は、その国の言葉を習得して法律を守るのは当たり前と思われていたが、今は、その国の中に自分たちのための治外法権区域を作ることに熱心である(p168) ・食べていけない状態にある場合の対処方法として、1)歯を食いしばって耐えて、食べていける道を少しずつ築く、2)他人のものを奪って食べる、がある。農民と山賊、交易業者と海賊の違いである(p182) ・日本の政治の安定を目指すためには、自民党と民主党の大連立が必要(p190) ・マキャベリも言っているように、大衆は問題点を具体的に示されたならば、意外にも正しい判断を下す(p193) ・古代ローマに難民問題も人種差別問題もなかったのは、階級社会(皇帝、元老院、騎士階級、平民、解放奴隷、奴隷)であったから、難民は奴隷の下の最下位層から働くしかなかった(p212) ・街道自体はローマ人の発明ではないが、街道のネットワーク化はローマ人の創造した発明(p215) ・想像力とは、筋肉に似て、使わないと劣化するという性質がある(p237) ・勝つのに最も効果的な方策は、敵が予想もしていなかった戦術を用いたときである(p247) 2010/11/21作成
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日本の外にいて日本以外の国の歴史を広く深く研究していると、今の日本の問題がはっきりとくっきりと見えるのだろう。や、日本にいる誰もがくっきりと見えているのに見えないフリをしているだけなのか。普段自分が半径1km以内のあれこれにしか目を向けていないということを思い知る…
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塩野七生の目をとおした日本国家観に対するエッセイ。 面白い。 個人的には、塩野流女性の品格というか、女性によるフェミニズムや某女性の品格に対して、ばさっと切り捨て、女性として尊敬されたければ、国家くらい語れと喝破している点が印象だった。
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あまり日本に関することは書いていなかったが、とてつもなく面白かった回があったので転記。 題して、夢の内閣・ローマ編 総務大臣 皇帝アウグストゥス 外務大臣 皇帝ネロ 防衛省大臣 ハドリアヌス 行政改革担当大臣 ユリウス・カエサル 財務省大臣 ヴェスパシアヌス帝 法務省・国家...
あまり日本に関することは書いていなかったが、とてつもなく面白かった回があったので転記。 題して、夢の内閣・ローマ編 総務大臣 皇帝アウグストゥス 外務大臣 皇帝ネロ 防衛省大臣 ハドリアヌス 行政改革担当大臣 ユリウス・カエサル 財務省大臣 ヴェスパシアヌス帝 法務省・国家公安委員会 トライアヌス その発想はなかった!!
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初・塩野七生。 日本語の綺麗さ、素敵な言葉の言い回し。 歴史、出版、防衛、靖国、ブランド品、地震、密約etc・・・・ もっと読んでみたくなりました。
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[ 内容 ] 夢の内閣をつくってみた。 大臣たちは、私が慣れ親しんできたローマの皇帝にする―治者とは? 戦略とは何か? 現代日本が突き当たる問題の答えは、歴史が雄弁に物語っている。 大好評『日本人へ リーダー篇』につづく21世紀の「考えるヒント」。 [ 目次 ] 1(後継人事について;葡萄酒三昧;『ローマ人の物語』を書き終えて;女には冷たいという非難に答えて;世界史が未履修と知って;遺跡と語る;『硫黄島からの手紙』を観て;戦争の本質;靖國に行ってきました;読者に助けられて;夏の夜のおしゃべり;安倍首相擁護論;美神のいる場所;歴史ことはじめ―葡萄酒篇;歴史ことはじめ―チーズ篇) 2(滞日三題噺 ブランド品には御注意を バカになることの大切さ ローマで成瀬を観る 夢の内閣・ローマ篇 夢の内閣) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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「ローマ人の物語」の塩野七生が日本について記述したエッセイ集。日本文化や歴史についての考察が多いのかと思いきや、意外にもほとんどは政治論で占められている。 しかし、本著での著者の姿勢は、「あるべき日本の姿」というものを明らかにしないまま、単に現状に不満を述べるだけに見える。これで...
「ローマ人の物語」の塩野七生が日本について記述したエッセイ集。日本文化や歴史についての考察が多いのかと思いきや、意外にもほとんどは政治論で占められている。 しかし、本著での著者の姿勢は、「あるべき日本の姿」というものを明らかにしないまま、単に現状に不満を述べるだけに見える。これでは全くフェアではない。ローマの歴史をベースにした抽象論では鋭い指摘をしているのに、具体的な日本の政治の話になると急に薄っぺらく視野の狭い議論になってしまう点も非常に残念。
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