競争の作法 の商品レビュー
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正しい知識を身につけた上で、自らの頭で考えて真摯に市場に向き合うこと。この本の勧めはこれでしょうか。 2000年前後の非正規社員化と失業率の悪化は、人格無視の派遣労働や極端な貧困者を生み出しつつも、デフレの影響でせいぜい1%程度しか労働コストを下げていないとの指摘は衝撃。 ゼロ金...
正しい知識を身につけた上で、自らの頭で考えて真摯に市場に向き合うこと。この本の勧めはこれでしょうか。 2000年前後の非正規社員化と失業率の悪化は、人格無視の派遣労働や極端な貧困者を生み出しつつも、デフレの影響でせいぜい1%程度しか労働コストを下げていないとの指摘は衝撃。 ゼロ金利政策により銀行がレントを得ていたとか、派遣労働への置き換えで生産ラインがガタガタとか同意できない記述もありますが、冒頭に挙げました提言には頷けます。 正しい知識を身につけた上で考えて行動していこうと思います。
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マクロ経済学者が語る、バブル景気と失われた10年、戦後最大の景気回復。そしてリーマンショック。 主張のポイントは、日本経済がバブル崩壊後に、しっかりと資産、労働者、土地の活用の効率化を図らなければならなかったところを、円安誘導という目先の策によって、二割の成長を作ったが、実際の問...
マクロ経済学者が語る、バブル景気と失われた10年、戦後最大の景気回復。そしてリーマンショック。 主張のポイントは、日本経済がバブル崩壊後に、しっかりと資産、労働者、土地の活用の効率化を図らなければならなかったところを、円安誘導という目先の策によって、二割の成長を作ったが、実際の問題には蓋をしたままだったので、やがて円安にも限界がきて、本来の円高方向へ為替が調整されると、とたんに非効率的な資産活用の悪影響が表面化したというもの。本来は二割の効率化を目指さねばならない。 効率化はとりあえずの痛みを伴うが、それなくして、グローバル競争では、負けが大きくなるばかり、という意見には共感できる。今こそ一人ひとりがきちんと正しい競争に向き合う必要がある、というもももっともだが、個人の責任に落とし込むのはなかなか難しいかもしれない。やはり、政治、政府の長期的視野に立った強いリーダーシップが求められるのではないかと思うがどうだろう。
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戦後最長の景気回復期にあっても民間勤労者の実質給与は一貫して低下してきた。即ち日本の企業は雇用水準をかつかつに絞ったところで生産を飛躍的に拡大させたということ。2008年9月にリーマンショックはあったが、その1年も前に景気は峠を過ぎていた。目に見える円安とデフレによる目に見えない円安により日本の製造業は格安に製品を輸出することができたことを自覚すべき。日本の輸出企業の国際競争力は卓越した商品性や性能ではなく二つの円安に後押しされた圧倒的な価格競争力によるもの。会社にも製品にも愛着を持っていない非正規職員が作ったモノが二つの円安により輸出にドライブをかけた。結果として輸出主導の景気回復は、安値で海外へ売り、高値で海外から買うことにより輸出で稼いだ豊かさを海外に逃すこととなってしまった。2004年から2007年の間、日本は物価水準が安定しているときに他の国々ではインフレが生じていた。銀行は預金を1%を超える金利の国債市場で利回りを確保できたので、融資先を探す必要がなかった。結論は一人一人が真正面から競争と向き合うこと。しかるに決して利己心をむき出すのではなく競争の作法を守り弱い自分を克服していくことが肝要となる。
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「戦後最長の経済成長」で得た豊かさとリーマンショックで失われた豊かさについて、公官庁のデータで検証。 「戦後最長の経済成長」は、①ゼロ金利政策による名目為替レート上の円安と②アメリカでのインフレによる実質的な円安の「二つの円安」によってもたらされた砂上の楼閣であり、本質的な問題解決ではなかった。「二つの円安」が続かないことを予見できなかった企業はリーマンショックを機に円高に振れる中で国際競争力を失った。この時期に行われた正規雇用者から非正規雇用者の転換による労働コストの削減は、デフレを勘案すると決して国際競争力を確保する上で十分ではなかった。 「リーマンショックによる企業の業績低迷」は企業にとって過去の経営判断の誤りを隠す免罪符であり、リーマンショック自体が経済に与えた影響は失業者の発生数が決して「100年に一度」と言えるものではなかったことを明らかにしている。 本書の独特な点は、齊藤先生が経済学者でありながら株主・地主・労働者の個々人のふるまいに経済発展の方策を求めている点であろう。 特定の指標を利用することに関する問題について触れられていない部分もあるものの、本書が新書で紙幅に限界があることを考慮すればやむなしか。 統計の「手触り感」を重視する齊藤先生の姿勢から、公官庁統計とその性質について何も考えずにマスメディアの報道を真に受けていた自分に対しての反省の機会を得ることができたことが本書を読んだことによる最大の効用であったと思う。 齊藤先生の教える大学に通う学生として印象に残ったのは、①勉強が就職に有利になると考えている点(就活を最近終えた私の意見では、企業は学生が勉強したか否か判断できないと考えている)と②高齢者教授の優遇策に反対するためにハンストを行った点の2点である。やはり噂で聞いている通りキレ者である一方で多少変わったところがある方なのかなぁ、と。修了するまでの間に是非お目にかかってみたい。
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どれほど筆者の主張を理解できたか、というとあまり自信がありません。ただ、自然な姿勢で数値をとらえ、何をすべきかを考えながら動くこと。今の日本においては競争に過剰にも過少にも反応することなく、前向きに向かっていくことという気持ちは伝わってきた気がします。
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戦後最長の好景気のメカニズムがよくわかった。各指標でインフレ、デフレの出方が違うという部分は必要だったのか、と思う。 徹頭徹尾のアカデミズムに陥ることなく、精神論を織り交ぜる試みに関してはむずがゆさみたいなものを感じることがあったが、エピローグの山月記と堕落論の件は、現代日本への...
戦後最長の好景気のメカニズムがよくわかった。各指標でインフレ、デフレの出方が違うという部分は必要だったのか、と思う。 徹頭徹尾のアカデミズムに陥ることなく、精神論を織り交ぜる試みに関してはむずがゆさみたいなものを感じることがあったが、エピローグの山月記と堕落論の件は、現代日本への警鐘として学ぶべきところがあった。
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現在の日本経済の状況を冷静に見通しており、新聞、テレビやインターネットから得た情報ではわからない新鮮な発見をさせてくれる洞察もあります。リーマン・ショック以降の日本経済の低迷を感じていた人には、実際はそうではないという事象の本質が見えてきます。 著者(http://www.e...
現在の日本経済の状況を冷静に見通しており、新聞、テレビやインターネットから得た情報ではわからない新鮮な発見をさせてくれる洞察もあります。リーマン・ショック以降の日本経済の低迷を感じていた人には、実際はそうではないという事象の本質が見えてきます。 著者(http://www.econ.hit-u.ac.jp/~makoto/index.html)は、2002年から2007年までの「戦後最長の経済成長」が、なぜそれほど実感の伴わないものだったかを見つめ直すところから議論を広げていきます。その過程で示される数字は、シビアです。知れば愕然とする事実ですし、いかに自分がその時に経済活動に参加していながら自分から知ろうしなかったかを恥じいるほどでした。 日本が0年代を通じて日本が体験した世界経済の浮沈の中で、自らがどう行動してきて、それが私たちの経済状況や生活環境にどれほどのインパクトを与えたのか。21世紀初期における経済史の要点が凝縮されているようにも思えました。 単に、日本国内での動きをたどるのではなく、世界レベルでの市場や金融、為替の変動を踏まえた政府や日本企業の決定がどう帰結したのかも示されています。与謝野経済財政担当大臣(http://www.yosano.gr.jp/)が戦後最長の経済成長と言われながら「かげろう景気」と称したのも言い得て妙だと思えます。 著者の斎藤誠氏(一橋大学大学院教授)の語り口は、あっさりとしていながらもふとした疑問を持ち続けて、答えにたどり着くまで考え続ける必要性を文章でも書いていましたが、それを自らその本の中で実践されている点でも説得力があります。 現在の景気停滞状態の原因が、リーマン・ショック(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%82%AF)という外部要因だったと理解したままの状態では、今の自分たちの状況になったと想い続けることになります。意識が内向きと言われながら、悪いことの原因を外向きにし続けるのは良くない状態です。 かげろう景気の時代から低迷の原因を日本人自身が作り出していた。原因が内にあると思い知らせるくれる本でもあり、そこから今の状態に対する姿勢を整えるきっかけにもなるでしょう。 『競争の作法』というタイトルですが、現状分析を中心とした本です。経済という競争世界の中で私たち一人ひとりが心構えとして持っておくべき姿勢と心構えが、鮮やかな事例と現代的環境を用いながら示した良書です。というわけで、次は同ランキングで3位になった『競争と公平感』に進みたいと思います。
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日本経済低迷について、リーマンショック前の戦後最長の景気回復、リーマンショックが日本経済にもたらした効果などを含め、本質に迫っている。 GDP、失業率、株価、為替など、丁寧に分析していて、景気回復とか経済衰退とか、メディアに踊らされているだけじゃないか?と思わされる感じで、大変...
日本経済低迷について、リーマンショック前の戦後最長の景気回復、リーマンショックが日本経済にもたらした効果などを含め、本質に迫っている。 GDP、失業率、株価、為替など、丁寧に分析していて、景気回復とか経済衰退とか、メディアに踊らされているだけじゃないか?と思わされる感じで、大変興味深い。僕みたいに経済まったく分かりません!な人にも拒否感なく読める。 競争って何?幸せって何?今後の日本に自分は何ができて、何をやらなきゃいけない?など、いろいろ考えるよいきっかけになる本です。
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著者は凸レンズの天体望遠鏡で覗いた地上の景色をそのまま鵜呑みにしているらしい。 檻の中に居るのはどちらなのか?あなたなのか読者なのか?被支配者に依存している支配者なのか、その支配者からのおこぼれを待っている被支配者なのか? どちらから見ても相手の方が精神病院の檻の中だと思い込...
著者は凸レンズの天体望遠鏡で覗いた地上の景色をそのまま鵜呑みにしているらしい。 檻の中に居るのはどちらなのか?あなたなのか読者なのか?被支配者に依存している支配者なのか、その支配者からのおこぼれを待っている被支配者なのか? どちらから見ても相手の方が精神病院の檻の中だと思い込んでしまいたい視野の狭い者同士の、俯瞰できずにいる顕微鏡的論理の可愛さ! 統計的な数字と言う、切り取られた井の中の蛙的大真面目な「裸の大様」の可愛さ! 丸く切り取られた窓からの景色は鏡のように上下が反転しているのに、補正できないままに信じ込んでいる無邪気さは手の平で舞う孫悟空のように可愛い! 著者が表紙にも書き込んだ―――私は、競争の行きついた先が悲惨な場所であると言う議論には、どうしても与することができないのである。逆に、一人一人が真摯に競争に向き合うときにこそ、真に人間性が培われ、豊かな幸福を実現できる社会に近付けるのでないかと、漠然とであるがそう思っている。――― と言う副題・・・ 駆け引きとか嘘とかだましとか言う暗闇などない真摯な競争があり得ると思いたい、一途なあなたは頭でっかちの子のように、あるいは自分の価値観を正義としてしつらえたいあなたは可愛いです! 目先の善悪や個人的利害からは距離を置いて真理を求めようとする経済学者は、ゲゼル以外にいないのだろうか!
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