リアル・シンデレラ の商品レビュー
「富み善き美しき人生」とは何か?幸せとはなんなのか?本作品からは、周囲の理解や思い込みとは離れた、本当のシンデレラストーリーとは何なのか考えることを突きつけられます。裕福である、人々から愛されていることが幸せと思われがちですが、本当にそうなのでしょうか。姫野カオルコの『リアル・シ...
「富み善き美しき人生」とは何か?幸せとはなんなのか?本作品からは、周囲の理解や思い込みとは離れた、本当のシンデレラストーリーとは何なのか考えることを突きつけられます。裕福である、人々から愛されていることが幸せと思われがちですが、本当にそうなのでしょうか。姫野カオルコの『リアル・シンデレラ』の「ヒロイン」泉(せん)の半生を紐解くと、本当の幸せについて改めて考えさせられます。 姫野カオルコは「ツ・イ・ラ・ク」しらなかったし、実は読んだこともなかったが、『リアル・シンデレラ』を読んで、そして著者のwebページを読むと、とても真面目な作家さんで、著作をとおして訴えるものがしっかりとしている(私がいうのもなんですが)。他の著作も丁寧に読み継いでいきたい。
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シンデレラも白雪姫も王子様にあっておしまい、で、確かにそれが人生の終わりかい!ってことだよね。でも小さいころだったらそれでいいかも。魔女に復讐したとかそういうの聞きたかったかな?何気に聞きたかったかも。 そういう本は中学生にでもなったときに親が勧めればよい。 何も気にしていないという風を装っていた泉は苦しんで苦しんで苦しんで自分の生き方を決めてた。 妹の具合が良くなるように、は優しい姉の気持ちだろうが(それも、ずいぶん偉いと思う)。 父親と母親と離れて暮らせますように、ってそれって、子どもが思ってしまうのは悲しいことでしょ? 母親と妹は話したがらなかったのは自分に非があるってわかっていたからじゃないの。特に母親、最低。 妹は別に姉を陥れようと思っていたわけじゃないし、自分にまっすぐ生きてきただけ。そして保身のためにいなくなった姉を自分の物差しでしか計れなかっただけ。あてつけとか、自分は小口さんとは結ばれないことを嘆いて死ぬなんてあり得ないんだから。妹は、自分のだんなが浮気してるから、そういう女がいるって言いたかっただけ。 母親は、自分の不実で出来た子だってわかってるんでしょ。だから遠ざけたんでしょ。それをまるで自分は間違ってなかったかのように。あんたなんか、あんたなんか、って自分の非を娘に押しつけて、最低だ。 肉親って恐ろしい。 だけど、他の人は愛情を持って泉を見てたよね。結果的に深いところまで泉が受け入れなかっただけで、悪いことを言うひとはいなかったもの。 最後の最後に自分の本当の気持ちを吐露して、いなくなっちゃうなんて。 だけど、どこかで生きていてほしい。一見いわゆる周りの表現を借りれば、農業をやっているおばさんに見えても、実は美しくて(それは人間の中身が見えるからだと思う)、これ以上無いくらい心が澄んでいるまま。いや、もっと人に甘えてわがままを言えるような人になって生き続けていてほしい。いや、生きてるよ。 馬車を持って、綺麗なままで。そうだね。泉でセンでもいいけれど、イズミって名前を変えていてもいいかも。
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この方の書く主人公は大体、田舎の変わった娘が多いのか?昭和の犬もそうだったけど。 でも前回読んだその「昭和の犬」よりは読みやすく読み進めやすかった。 人間関係もなかなか人間らしくて闇と光がうまく描かれてた。 最後の終わり方は腑に落ちないけど。 でもこういうオチぐらいしか綺麗にまとめる方法無いよな~。
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誰もが知っている「シンデレラ」のお話。もちろん、そのほとんどはディズニーアニメだと思うけど。 会社の企画で、この話の翻案を練っていた私は、「この人って、幸せ?」と思う。 そして、それを社長に言うと、なぜか社長も同意して、私に、違う企画を命じる。 それは、この会社を立...
誰もが知っている「シンデレラ」のお話。もちろん、そのほとんどはディズニーアニメだと思うけど。 会社の企画で、この話の翻案を練っていた私は、「この人って、幸せ?」と思う。 そして、それを社長に言うと、なぜか社長も同意して、私に、違う企画を命じる。 それは、この会社を立ち上げるときに会計をしていた人のギリのお姉さんだという。 名前は、倉橋泉。 1950年4月29日、長野県生まれ。 ということで、私の取材で、泉の物語が始まる。 「むかしむかしあるところに、倉橋泉という娘が住んでいました…。」 取材内容と、それを元にした小説が交互にでてきて、16章に分かれ、彼女の生まれからいなくなってしまうまでが書かれている。 常に誤解されながら、飄々と生きているように見える泉の最後のいなくなる場面がどうしても泣けてしまう。 「富み善き美しきお姫様の物語」と最初のほうであるが、とにかく、泉という女性が奇妙に魅力的でなことは確かである。
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幸せってなんだろうと考えさせられる。 御伽話のシンデレラは、憎い継母や姉に復讐ができて幸せだったのかもしれない。 大勢の価値観から外れている主人公の「泉」は他者から見ると「不気味」な存在。自分の価値観とかけ離れた人間をそのように表現する人たち。その一方で泉の美しさに気付いている...
幸せってなんだろうと考えさせられる。 御伽話のシンデレラは、憎い継母や姉に復讐ができて幸せだったのかもしれない。 大勢の価値観から外れている主人公の「泉」は他者から見ると「不気味」な存在。自分の価値観とかけ離れた人間をそのように表現する人たち。その一方で泉の美しさに気付いている人たちもいる。外見だけではない滲み出る清廉とした美しさが泉にはあったのだろう。 それは大勢が好む女性らしさとは無縁かもしれないけれど、人間の心根の美しさ。 姿が消えるというハシバミの粉を振り掛ける姿はいじらしいを通り越して切なくなる。 小口の「家族にも相性はある」って言葉はどんなに泉を楽にしただろう。3つのお願いの中の2つ目の願いは、今まで泉を不気味な存在として追っていた自分にはほっとするものだった。 「やっぱり辛かったんだ、そういう感覚はちゃんとある人間だ」と。 そう思うと泉に起きた出来事に傷ついていないはずがない。自分を犠牲にしても他者の幸せを願う。それが辛くないように3つ目のお願いをしたのだろうか。 姿を消してしまったのは小口とその妻の幸せを願うからなのかな・・・
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泉という女性について取材し一冊の本にまとめたという形になっている小説。話の結末がどこに向かうのか全く想像もつかないまま読み進めました。かわいそうな泉の最後を知りたくてそれはもう夢中で。そして悲しい結末。自分の気持ちを押し込めて人のために尽くし続けるひと。人によってはその姿は美しく...
泉という女性について取材し一冊の本にまとめたという形になっている小説。話の結末がどこに向かうのか全く想像もつかないまま読み進めました。かわいそうな泉の最後を知りたくてそれはもう夢中で。そして悲しい結末。自分の気持ちを押し込めて人のために尽くし続けるひと。人によってはその姿は美しく見えなかったけれど人の本質を見る力のある人にはとても美しく見える。子供の頃にたぶん自分で決めたであろう、というかそう生きることしか選択肢がなかった泉を思うと涙がでます。 他人のために自分のちからを惜しまず使う人を誰かの小説で読んだな・・・・。と、三浦綾子さんを思い出しました。姫野さんもどうやらクリスチャンのようですので納得です。
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直木賞受賞祝いに積読本になっていた本書を読む、桜庭一樹の作風に似ているように感じた。泉という女性を周りの縁者からインタヴューする形式の物語であるが、一種の童話のようにも感じた。自分の幸せよりも人の幸福を祈る主人公は、とうとう消えていなくなってくれという恋敵の願いを聞き入れて天へ召...
直木賞受賞祝いに積読本になっていた本書を読む、桜庭一樹の作風に似ているように感じた。泉という女性を周りの縁者からインタヴューする形式の物語であるが、一種の童話のようにも感じた。自分の幸せよりも人の幸福を祈る主人公は、とうとう消えていなくなってくれという恋敵の願いを聞き入れて天へ召されてしまったのだろうか。あまりにも一般にいう幸福からかけ離れた女性であり、そんな女性はいないだろうと言うことで、大人の童話だと言えるのかもしれない。映像化されるなら泉役は綾瀬はるかだな、今後も注目したい作家である。なっちゃんチャコちゃんのパック・イン・ミュージックの話題が出てきて懐かしかった。
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主人公の泉の辛い状態や気持ちが伝わってきて、少し読むのが苦痛だった。でも、泉の真っ直ぐな生き様が読んでいて清々しくもあって、読み終えた時何か少し悲しさが胸の中で残っていたけど、消化不良にはならなかった。
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シンデレラ+人魚姫の現代版と言ったところか。 ただ、シンデレラの幸せとは、結婚して幸せになるということではなく、どんなところにあったのか・・・考えるような作品。身の周りの者が幸せになることが楽しいとでも言うように、様々な出来事に身を任せているように思える。ただ主人公の泉の印象が「...
シンデレラ+人魚姫の現代版と言ったところか。 ただ、シンデレラの幸せとは、結婚して幸せになるということではなく、どんなところにあったのか・・・考えるような作品。身の周りの者が幸せになることが楽しいとでも言うように、様々な出来事に身を任せているように思える。ただ主人公の泉の印象が「不気味」というのがなんとなくわかるのが一番しっくりくる。流れに任せているだけだから捉えどころがないのである。
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問題のラスト。 泉は、死んだことになっているが、小口同様、私も泉が死んだなんて、信じない。 貂に似たムードの神様が、≪死はすぐそこあるゆえ、あわて死にするべからず≫と言ったのだ。泉が自ら死を選ばない。 貂の神様は言う ≪あなた、あなたの靴で、生きてるあいだ歩きなさい≫ 泉はどこかで、生きている。 自らが小口を愛していること、小口もまた自分を愛していることを予感した以上、そこにはいられないから、諏訪を去る。結婚が決まった小口と、その婚約者に、幸せになってほしい、自分が邪魔をしてはいけない。 矢作、洋平、照洸寺のお姉さん、南条玲香、など、泉の美しさ・魅力を見抜く目を持った人が途切れなく現れるのが、読み進める私にとって救いであった。 読者の私が歯がゆく感じる。あまりにも、泉ばかりが損をしているじゃないか、とすら。 しかし、多くを欲しがらない泉にとっては、きっとそれで十分なのだろう。
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