月は無慈悲な夜の女王 新装版 の商品レビュー
月は無慈悲な夜の女王読了。数十年謎だったこのタイトルの意味がようやく理解できた。内容はカチカチのSF的なのに、ハインライン的なとことんロマンティックな話でした。マイクは本当にマニーが大好きすぎて、マン、って台詞を見るたびに胸がゾワゾワした……
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ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」に並ぶ代表作。 地球の植民地として開発され圧政にさらされている月世界で、主人公が意思を持った計算機「マイク」との交流を契機に革命へと巻き込まれていく。 このようにあらすじを書くとまるで宇宙冒険活劇のようである。しかし本書は緻密に練り上げら...
ロバート・A・ハインラインの「夏への扉」に並ぶ代表作。 地球の植民地として開発され圧政にさらされている月世界で、主人公が意思を持った計算機「マイク」との交流を契機に革命へと巻き込まれていく。 このようにあらすじを書くとまるで宇宙冒険活劇のようである。しかし本書は緻密に練り上げられた構成と流れるような話の展開こそが最大の魅力である。詳細に作り上げられた月世界の情景とその世界にあるべき革命の手順、またその革命に必要な登場人物(と機械)が美しく配置され、まるで実際に存在する自叙伝かのように自然と物語が展開されていく。そして最初から他の選択肢などなかったかのようにあるべき終局へ読者は導かれていく。 SF的設定の無理やりさを叙述や活劇によって覆い隠すのではない、「上質なSF」といった雰囲気がする小説でした。 一方でボリュームがある割に人間ドラマや活劇的なものは殆ど無いので、SF的素地がない中で読み通すのは少し根気がいる。
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ほぼ一夜漬けで読了。月という地球外の環境における人類社会は今の地球のそれとは違っているんだけど、読んでいくうちに分かってくるようになっている。いるんだけど、その分かるタイミングが絶妙でかつちょっと物騒だったりしてその辺がうまくて面白かった。
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ボリュームに圧倒されたが、タイトルに惹かれて読んでみました。 ストーリーは引き込まれて実に面白かったが、日本語訳に違和感があり登場人物があまり好ましく感じられなかったのが残念。
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SFとはこういうものをいうのか、と再認識させられた。 世の中にある問題というのはなかなか解決しないもので、それは全ての問題が相互に影響しあって支えあって現在があるから。 ゆえにひとつが変わると全てに影響がある。 現実にはその影響が見えるまでには何十年もの時間を要するため自分で体験...
SFとはこういうものをいうのか、と再認識させられた。 世の中にある問題というのはなかなか解決しないもので、それは全ての問題が相互に影響しあって支えあって現在があるから。 ゆえにひとつが変わると全てに影響がある。 現実にはその影響が見えるまでには何十年もの時間を要するため自分で体験としてその変化を感じることは難しいが、それを思考実験として見せてくれるのがSFなのだ。 これはまさにそういった作品だ。 本質が味わえる作品だからこそ、むしろSFを読み慣れない人たちに薦めたい。 もし肌が合ったなら、この先たくさんの傑作、怪作といったSF作品群を読む楽しみが待っているはず。 かくいう僕も今日の今日まで“SFを読み慣れない人たち”の一員であって、まさに本日“肌が合った”ところなのだから。
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面白かった! 手に取るときにはその分厚さにやや気圧されもしたし、実際、過去を振り返ってレポートする文体もあってか、途中でやや単調に感じた箇所もありはしたのだけれど、中盤以降、気付けば引き込まれて夢中で読んでいた。 世界観、月世界の社会の描写がいい。またコンピュータでしかない...
面白かった! 手に取るときにはその分厚さにやや気圧されもしたし、実際、過去を振り返ってレポートする文体もあってか、途中でやや単調に感じた箇所もありはしたのだけれど、中盤以降、気付けば引き込まれて夢中で読んでいた。 世界観、月世界の社会の描写がいい。またコンピュータでしかないはずのマイクの愛嬌のあって可愛らしいこと! ほろ苦いラストの余韻に浸りつつ読了。
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長官(総督)が統治する月政府に対する革命そして地球との戦争、流刑地である「月」が本国「地球」に叛旗を振りかざし三人と一台(マイクロフト・ホームズという名前のコンピュータw)の活躍で独立を勝ち取る物語、引き篭もりな休日をワクワクドキドキな時間として過ごすことができました。 「無...
長官(総督)が統治する月政府に対する革命そして地球との戦争、流刑地である「月」が本国「地球」に叛旗を振りかざし三人と一台(マイクロフト・ホームズという名前のコンピュータw)の活躍で独立を勝ち取る物語、引き篭もりな休日をワクワクドキドキな時間として過ごすことができました。 「無料の昼食などというものはない」が繰り返し表現されていたのが印象的、革命はユートピアをもたらすものではないとのことでしょうか。
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日本語訳がアレなせいか、いまいち世界観に没入できなかった。ここで減点2。内容自体いいものだと思うだけに、そこがとても残念に感じました。(あるいは私の日本語力の問題なのかもしれませんが) とりあえず、3つの観点で思ったことを: ■組織論について: 革命・戦争を勝ち抜くための組織...
日本語訳がアレなせいか、いまいち世界観に没入できなかった。ここで減点2。内容自体いいものだと思うだけに、そこがとても残念に感じました。(あるいは私の日本語力の問題なのかもしれませんが) とりあえず、3つの観点で思ったことを: ■組織論について: 革命・戦争を勝ち抜くための組織の構成、およびインテリジェンス(情報戦)についての興味深いシミュレーションのように思えました。 ■技術的な考証: 現在はかなり一般的になってきたオンライン音声チャットですが、1960年代にすでにそれにかなり近い姿が描かれているところが面白いです。その一方で、記憶領域に関する考察や暗号・セキュリティに関する考察が甘いように感じました。(RSAとかが考案される前の時代だから仕方がない?) あと、こころを持つこと以外、マイクはそんな大したコンピュータでもないなwと思ってしまうあたり、技術の進歩は急速だったのかもしれません。 ■機械はこころをもつか: これが一番興味深いです。これはなんの脈絡もなく唐突に冒頭から与えられた前提となっているが、こころとはなにか、ということを考えるととても面白いです。
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たまたま見かけて懐かしくて再読。やっぱハインラインは良い。 ●面白かった点 自由に対する渇望と、自分で考えることへの信頼が揺るぎない。話の展開にあっと驚くところはないが、ハインラインの考えがひしひしと伝わってくる傑作だと思う。 ●気になった点 革命組織の構造とか、家系婚とか、文だ...
たまたま見かけて懐かしくて再読。やっぱハインラインは良い。 ●面白かった点 自由に対する渇望と、自分で考えることへの信頼が揺るぎない。話の展開にあっと驚くところはないが、ハインラインの考えがひしひしと伝わってくる傑作だと思う。 ●気になった点 革命組織の構造とか、家系婚とか、文だけで判りにくい部分がある。図とか欲しい(海外の小説なんで仕方ないけど、line marriageで軽くググってみたけど良く分からんかった)。
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ぶ厚くて、専門的な解説はついていけないところもあったけど。 ハインラインという人が持っている知識と閃きと構想力がどれほどすごいものなのかということがよーく分かる一冊だった。 人口爆発に悩む地球から、犯罪者(政治犯も多い)が送り込まれる流刑地として発展した月が、一台の意識を持った...
ぶ厚くて、専門的な解説はついていけないところもあったけど。 ハインラインという人が持っている知識と閃きと構想力がどれほどすごいものなのかということがよーく分かる一冊だった。 人口爆発に悩む地球から、犯罪者(政治犯も多い)が送り込まれる流刑地として発展した月が、一台の意識を持ったスーパーコンピューターとともに独立戦争を仕掛ける話。 科学的、技術的、哲学的、思想的、あらゆる可能性を網羅した、「思考実験」といってもいいくらい精緻に物語が作りこまれている。 書かれたのは1965年だとか。 当然ながら、インターネットは出てこないし、携帯電話もない。代わりに、プッシュ式の電話が出てくる。 しかし、このSF物語を支える科学面、技術面の描写やプロットには、ネットがないことも携帯がないことも、まったくハンデになっていない。現在を生きるぼくが読むのに、まったく問題がない。 ハインラインの物語生成能力は、ネットと携帯という革新的技術よりも上ということなのだろうか! なんでもCC、なんでも3Dにしてしまう最近の映画づくりに疑問を持つ人も多いと思うけど、この『月は無慈悲な夜の女王』は、ひとりの人間の想像力とユーモアがどれほど凄いものを生み出せるのかをじわーっと感じさせてくれる秀作だ。
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