戦艦武蔵 の商品レビュー
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吉村昭の文章は緊迫感と臨場感にあふれている。 この「戦艦武蔵」の場合も同様で、特に進水式に至るまでの責任者・作業員の緊張たるや想像するだけで心拍数があがるようだ。だからこそ進水式が成功に終わった場面では思わず涙がこぼれてしまった。 戦闘に参加した後の武蔵については、吉村昭ならではというのか、客観的な文章で記されているだけに、置かれた状況や艦の最期など痛々しく、切なさを覚えた。
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大和の起工は昭和12年、武蔵は昭和13年である 真珠湾攻撃が昭和16年の12月12日 大和の就任がその4日後、昭和16年12月16日だった しかし昭和17年4月には、早くもアメリカの爆撃機が日本上空に飛来 初の空襲を行っている 武蔵の就任はさらに4か月後…昭和17年8月のことであ...
大和の起工は昭和12年、武蔵は昭和13年である 真珠湾攻撃が昭和16年の12月12日 大和の就任がその4日後、昭和16年12月16日だった しかし昭和17年4月には、早くもアメリカの爆撃機が日本上空に飛来 初の空襲を行っている 武蔵の就任はさらに4か月後…昭和17年8月のことであった 真珠湾で日本のひきおこしたパラダイムシフト 日本じしんがそれに乗り遅れた格好となったのである 短期決戦を主張する山本五十六と 長期戦を計画していた軍令部の、方向性の食い違いは ミッドウェー敗北の遠因になったとも言われる (役所広司主演の「山本五十六」がそんな話だった) 軍令部がそれほど自信を持っていた背景に、大和と武蔵の存在があったことは 想像にかたくない これらの超大型戦艦は、日本のものづくり精神の粋をこらした… まさに、「魂」のこもった存在だったのである 山本などにしてみれば、そんな前近代的な精神論で 現代戦に勝ちぬけるわけはないという認識だったろう しかし、「和魂洋才」でここまできた日本とは、そういう国なのである そこに山本の計算違いがあった 吉村昭の「戦艦武蔵」は、武蔵の起工から沈没までを 極力、客観的な視点にしぼって書いたルポルタージュだ 日本全国で棕櫚(しゅろ)の繊維がなくなるところから、物語ははじまる その不気味な前兆は、まさしく「胎動」と呼ぶべきものだった
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武蔵建造に際しての機密情報保持の徹底ぶりは 異常なまでに行なわれていたことが、この小説でよくわかりました。
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終戦の日に一気に読み上げた。 著者の作品は詳細な取材、史実に基づいたもので本当に引き込まれる。当時の国力を注ぎ込んで、多大な労力と年月をかけて完成させた巨艦の出来るまでの男たちの生き様と、あっけなく撃沈してしまう不沈戦艦の対比。終戦69年もたったが、日本人が狂気的なエネルギーで何よりも優先させた戦争の本質をリアルに感じさせてくれる作品。
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筆者はあとがきに「厖大な人命とモノを消費した巨大なエネルギー」が戦争を継続させ、戦艦武蔵は「戦争を象徴化した一種の生き物」と書いている。 前半の物資と人員を投入した武蔵の建造と、後半の人命と重油や物資を消費した戦地での武蔵、つまり武蔵のすべては戦争とは巨大な消費なのだという一種の...
筆者はあとがきに「厖大な人命とモノを消費した巨大なエネルギー」が戦争を継続させ、戦艦武蔵は「戦争を象徴化した一種の生き物」と書いている。 前半の物資と人員を投入した武蔵の建造と、後半の人命と重油や物資を消費した戦地での武蔵、つまり武蔵のすべては戦争とは巨大な消費なのだという一種の儚さが垣間見られる。
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戦争って、本当に、大変なんだなあ! と、強烈に胸へ焼き付けたのは、「工期短縮」の四文字でした。 いやいやもう連日深夜までやって休日もなしでどうやってそれ以上短縮出来ちゃったの?? と思うのだけど、戦場で命を落としている人がばんばんいた頃なのだし、最終的には「こっちも倒れて死ぬ...
戦争って、本当に、大変なんだなあ! と、強烈に胸へ焼き付けたのは、「工期短縮」の四文字でした。 いやいやもう連日深夜までやって休日もなしでどうやってそれ以上短縮出来ちゃったの?? と思うのだけど、戦場で命を落としている人がばんばんいた頃なのだし、最終的には「こっちも倒れて死ぬまで休めない」みたいになっちゃうのかなあ。 予算も労力も時間もいっぱいつぎ込んで、いろんな人がいろんな意味で犠牲になって、でも出来たときにはもう戦況がだいぶ違ってきてしまってる。 悲惨だ、とか感情的なことではなく、莫大なコストがかけられて金モノ人命が失われていく様子が淡々と描かれて戦争の難しさが浮き上がる。 貸してくれた人が言うように「もっと読まれるべき」本だろうなと思います。 艦これやってから「武蔵の建造期間、実際には4年」なんて知ると、素直にびっくりできるし。
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戦艦武蔵の建造プロジェクトにこれだけの労力がかかったとは、本当に驚きでした。戦争の多面性が少し理解できたようです。兵器、戦術について、変化の激しい時代だったのだろうと改めて思いました。
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超巨大戦艦「武蔵」の建造から撃沈までを描く記録文学。綿密な調査による文章で臨場感が半端無い。 多くの技術的困難を乗り越えて二年八カ月にわたる船体工事が終わり、轟音とともに進水していく武蔵を、号泣に近い「バンザイ」を唱和しながら作業員が見送る場面にはちょっと泣けた。
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武蔵の着工前からの異常なまでの警戒、不可思議な棕櫚の買い付け、 着水へ向けての工夫・緊張感、巨大艦完工後の関係者・乗員の喜び、そして無用の長物として全く役に立たず右往左往、燃料食い(大飯食 い)、寂しい最期の沈没場面(巨大艦としてはタイタニックの最期に 似ています)、あまりにも多くの人間として扱われないかのような犠 牲者たち、武蔵自体が生き物のように哀れな姿に書かれ、実はとりも直さず、人間そして日本軍の愚かさを示しています。 期待に違わぬ素晴らしい傑作です。
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武蔵の大きさに圧倒される思いだった。 吉村昭は読んでいていろんな意味で安心感があって とても好きです。 でもこの武蔵の製造から沈没まで、この薄い本一冊では 足りないのでは。分厚いの上下2冊ぐらいにして欲しかった 気もする。 子供の頃武蔵のプラモデルを買って貰った記憶がある。 なんとか作り上げた記憶もあるが、よく覚えていないし その後どうしたのか。 この本を読んだら、また欲しくなった。
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