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夜想 の商品レビュー

3.7

60件のお客様レビュー

  1. 5つ

    7

  2. 4つ

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2017/09/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「自分を救えるのは自分自身」 文中に出てくる言葉の通り他力本願ではだめなのだ。 ニーチェの言葉「弱い自分が強く生きる」を思い出した。 何かに依存することなく、すがるでもなく、自分の足でしっかりと立ち、現実を受け入れることがその一歩だと思う。 自分は悪くない、悪いのは周りだと他責的な言動を繰り返していると、次第に疑心暗鬼に陥り、いずれ自分で自分の首を絞めることになる。 主人公、雪藤も一歩間違えば子安のようになっていたかもしれない。道を外さなかったのは「コフリット」の人間の支えだと思う。 私自身を振り返ってみると、確かに煩わしい人間関係もあるものの、見てくれている人間がいる事のありがたみを感じなければいけないと思った。

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2017/07/01

新興宗教をテーマにした物語。 救いと狂気の揺らぎの中から、宗教の本質?に迫っていくような物語でした。 新興宗教やカルト集団がどのように立ち上がっていくのかが理解できる物語です 主人公雪藤は事故で妻子を失って絶望の中惰性で生きている人物。そんな雪藤が遥と出会ったことから、人生が...

新興宗教をテーマにした物語。 救いと狂気の揺らぎの中から、宗教の本質?に迫っていくような物語でした。 新興宗教やカルト集団がどのように立ち上がっていくのかが理解できる物語です 主人公雪藤は事故で妻子を失って絶望の中惰性で生きている人物。そんな雪藤が遥と出会ったことから、人生が変わっていきます。遥はその人の触れたものから気持ちを読み取ることができる特殊能力を持つ人物。たまたま雪藤の落し物に触れてしまったときに雪藤の心の絶望を理解し、共感することで雪藤に癒しをあたえます。 彼女によって救われたと信じた雪藤はこの経験をより広く人に知らしめたいという活動をすすめ、ついには「コフリット」という会員制の団体を立ち上げます。 新興宗教ではないと位置づけながらも、設立の想いから組織がどんどん肥大化し変貌していく中、自分の立ち位置を失い、狂気じみていく雪藤。 スタッフとの軋轢の中、疑心暗鬼になりながらも、ようやく開催にこぎつけた講演会で起きた悲劇。 再びの絶望からようやく気がついた真の「救い」。 といったストーリ展開です。 「救われたいと願っているうちは、決して苦しみから逃げることができない。自分を救うのは自分自身」 暗く重いストーリの中、最後の最後で「人のために笑うことができた」主人公が真の意味で救われた瞬間でした。

Posted byブクログ

2017/04/05

新興宗教の様な団体が自然発生的に出来上がっていく様は、面白かった。深い悲しみがあった時に、同情ではなく共感が欲しいと思う気持ちがよくわかります。雪藤と子安嘉子の話が同時に進みますが、精神崩壊や救済について明暗でした。救ってくれるのもまた人ですね。

Posted byブクログ

2017/03/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

主人公は、亡くなった奥さんとよく話す。でも普通は、こんなにリアルに会話は出来ないでしょう…と思っていたら、ちゃんと訳があったのだ。 そして、こんな風に、何人もの女性を心のうちにリアルに持っている人だからこそ、天美さんに代わって相談に乗れる資質があったんだなと思った。

Posted byブクログ

2017/03/20

絶望の度合いというのは人によって違うのだろう。 どんなことでも、例えそれが他人から見て些細なことだったとしても、心が深く暗い穴に落ちていくきっかけになる。 耐えられないほどの哀しみに襲われたとき、きっと人は自分を守ろうとするのだろう。 生き続けるための防衛本能が働き、気づかないう...

絶望の度合いというのは人によって違うのだろう。 どんなことでも、例えそれが他人から見て些細なことだったとしても、心が深く暗い穴に落ちていくきっかけになる。 耐えられないほどの哀しみに襲われたとき、きっと人は自分を守ろうとするのだろう。 生き続けるための防衛本能が働き、気づかないうちに周囲に壁を作ろうとする。 今以上に傷つかないために、もうこれ以上に哀しまないために。 宗教というのは何だろう? どうして人は宗教にすがろうとするのだろう? 人は人によって支えられ、人を支えることで生きていく喜びを得る。 誰かに頼られること。 それは自分自身の存在意義にもなる。 宗教というものがよくわからないのだが、観念的なものだと思っている。 信じればそこに真実が見えてくる(見えているような気がする)のだろうし、信じなければ何ひとつ得るものはない。 だって形のないものだから、目に見えるものじゃないから。 ずっと雪藤が彷徨っていた世界は閉ざされた世界だった。 誰も入り込めない。誰の言葉も届かない。 自分で抜け出すしか前に進む方法はない。 自分をありのままに認めることは難しい。 普段でさえ難しいことを、まして雪藤のような状態では尚のこと難しいだろう。 「元気を出して」 「頑張って」 励ましの言葉が逆に人を追い詰めてしまうこともあるのだ。 ありのままの自分。 弱さも、狡さも、どんな自分でも受け入れる。 雪藤がようやくたどり着いた心境は、それまでが過酷だったからこそもう揺らぐことはないだろう。 光の見える結末でよかった、と思える物語だった。

Posted byブクログ

2017/01/30

雪滕の妻子を失った悲しみの描写が酷くリアルで、貫井氏の文体に自分の感性がぴったりハマってしまっていることを感じる。天美との出会いから、それに固執し、依存し、徐々にまた壊れていく雪滕の精神構造の様子が痛々しい。その精神構造破壊の進み具合が絶妙。相変わらず人物の描き方も卓越しているし...

雪滕の妻子を失った悲しみの描写が酷くリアルで、貫井氏の文体に自分の感性がぴったりハマってしまっていることを感じる。天美との出会いから、それに固執し、依存し、徐々にまた壊れていく雪滕の精神構造の様子が痛々しい。その精神構造破壊の進み具合が絶妙。相変わらず人物の描き方も卓越しているし、メーター振り切ってぶっ壊れている人を描くのも上手し。宗教の怖さではなくて、宗教にハマっていく人の精神構造が怖い。もっと言えば、誰にもその破壊の過程へと陥る可能性があるからこそ、身近に感じられて怖い。慟哭とは違い、最後に救いがあったのも個人的には素敵だと感じた(ここは賛否両論だろうが)。マスターありがとう。

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2017/01/08

事故で妻子を亡くした雪籐は、偶然町で出会った美少女の天美遙の特殊能力に救いを求める。 彼女の力はやがて多くの人を虜にし、活動は膨れ上がっていく。 やがて宗教化していくが、そこには幾つもの壁が立ちはだかる。 2017.1.8

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2016/09/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本筋とは関係の無い娘が家出した母親の話が時々割り込んでくる。それが、本筋と交差した時に伏線が回収される、ってのはよくある話だが、最終的にその母親と主人公である雪藤の状況が見事に対比されているわけだね。 ミステリーとしてのどんでん返しも中々良いし、不幸からの救いの話としても味わい深い。

Posted byブクログ

2016/05/14

これまで宗教や占いを信じる人の気持ちがよく理解できなかった。でもこの本を読んだ後なら理解できる気がする。 何かに救いを求めることは悪いことではない。でも、自分を救えるのは結局自分自身しかいない。今の現状を嘆くのも前向きに捉えるのも自分次第なのだと改めて教えられた。

Posted byブクログ

2015/08/26

技巧派ベテランの力作なんだけど、ややマンネリ・新機軸無し、と評論家ウケがイマイチな2枚組アルバム、って感じ。クオリティは安定も、迫力不足は否めない。どこでひっくり返すのかな?とずっと期待してたのに最後までひっくり返らない。貫井作品にしては珍しくストレートです。

Posted byブクログ