越境 の商品レビュー
過日亡くなった米国文壇の巨星による深遠で荘厳な放浪青春譚。手負いの牝狼を故郷に帰すべく主人公が国境を越える第一章の話は動物文学としても秀逸。何かと軽薄が持て囃される時代に抗う哲学的重厚さが心を揺さぶる。格調高き訳文も良い
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アメリカとメキシコを行ったり来たりしつつ、悲劇に見舞われながら生きる主人公と対話する人々との哲学的な挿話で構成されている。様々な暗喩が込められて語られる会話がほぼ全体を支配してるので、相変わらず読みにくいが、分かり易い物語や伏線回収云々な小説よりずっと心に残るし、何度も再読出来る...
アメリカとメキシコを行ったり来たりしつつ、悲劇に見舞われながら生きる主人公と対話する人々との哲学的な挿話で構成されている。様々な暗喩が込められて語られる会話がほぼ全体を支配してるので、相変わらず読みにくいが、分かり易い物語や伏線回収云々な小説よりずっと心に残るし、何度も再読出来る小説だと思う。
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舞台は1940年代のアメリカ・メキシコ国境地帯。主人公の少年は、三度び国境を越え、馬に乗ってメキシコの地を延々と放浪する。 一度目は捉えた雌狼を生まれた地に送り届けに、二度目は盗まれた馬を取り戻すために、三度目は生き別れた弟を探しに。 主人公は孤独な旅を逞しく続けるが、その過程で...
舞台は1940年代のアメリカ・メキシコ国境地帯。主人公の少年は、三度び国境を越え、馬に乗ってメキシコの地を延々と放浪する。 一度目は捉えた雌狼を生まれた地に送り届けに、二度目は盗まれた馬を取り戻すために、三度目は生き別れた弟を探しに。 主人公は孤独な旅を逞しく続けるが、その過程であらゆるものを抗いがたい暴力によって喪失していく。 壮大で厳格な喪失の物語である。 文庫本で600ページを超える大作だが、最初の1、2ページを読んだところで、あまりの読みにくさに挫折しそうになった。 独特な言葉遣いと長いセンテンス、詩的な情景描写、短い言葉を交わすだけのダイアログ、場面の切り替わりのわかりづらさ。 心理描写は極力排除され、ただひたすら事物だけが描かれていく。 特に、主人公が放浪の過程で出会う人物によって語られる挿話が長くて哲学的・宗教的で難解で、心が折れそうになるが、そこを乗り越えたときに頭で理解するのとは異なる、深淵な何かが確かに生じるのだ。 主人公の旅に付き合うことで、時間感覚や地理感覚が拡張されていく感じ。 先般(2023年6月)亡くなったコーマック・マッカーシーの「国境三部作」の2作目とされる。 1作目の『すべての美しい馬』より先に読んでしまった。 三部作すべてを読んでみたい気はするが、相当なスタミナが要求されそうだな…
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『すべての美しい馬』とこれと『平原の町』で国境三部作とのこと。 気になる. そして1995年単行本を読んでいる. 最初に、主人公が夜寝床から起き出して、狼の姿を見守る場面でもう絶対にわたしの好きな物語だと確信したし、読み終わるのがすでにもったいないと思った。 そして読後、すばらしくて、訳わからなくて打ちのめされる。。。 主人公は手に入れたいものを追ってアメリカとメキシコの国境を3回越境する。2回は手に入れたいものが手に入らなかった、3回目は手に入れたけどほしいかたちじゃなかった、といった意味の文章がある。 狼を追っていって戻った後、まだ物語が続いて、なんでだろうと思っていたけれど、読み進めながらじわじわとそうかそうかこれでいいんだなと思う。そういうことなのだよ。 3部作の3作目も読みたい。そして、フォークナーの『熊』も読んでみなければ。
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文学ラジオ空飛び猫たち第100回紹介本 https://spotifyanchor-web.app.link/e/KxSicJV3hwb すごい小説。初めて読んだときのインパクトは今でも残っている。今の自分が生きている社会とは違った倫理、ルールで生きているような世界観で、それは残...
文学ラジオ空飛び猫たち第100回紹介本 https://spotifyanchor-web.app.link/e/KxSicJV3hwb すごい小説。初めて読んだときのインパクトは今でも残っている。今の自分が生きている社会とは違った倫理、ルールで生きているような世界観で、それは残酷で厳しくて、かなり暗くはあるけど、美しさも感じる。この何ともいえない、美しさがいい。 読むのは大変だけど、マッカーシーの世界観にはまったら、自分の世界観も影響を受けるかもしれないので、惹かれたら読んでみてほしい。
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3部作の真ん中。 「すべての美しい馬」で、 この作家とテンポが合うのに時間がかかるのは学習したので焦らず読み進んでいたのですが・・・さすがに1/3近く進んでも狼と旅してるんで、ひょっとするとこれはジャック・ロンドンしてしまうの??と心配していましたが、んなことなく、話は展開。 でも、その展開する話より、主人公が旅路で出会う人たちとの脱線部分が断然面白い! こんなにメキシコの人って、皆が皆、 世界のあり方や神との向き合い方、 己の越し方行く末を省察しているのかい?? 最近、ケータイサイトの検査で あまりに幼稚でどーでもいいコンテンツばかりで ケータイユーザーってこんなにお莫迦ばかりかい、 とヘコんでいる所だったので、尚更。
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は!コーマックマッカーシーの「越境」をだいぶ前に読み終わったのに読んだを書いていない。さらに前に読んだ「すべての美しい馬」も。読書中にかなり消耗したし読後は気持ちが昂っているから寝かそうとしているうちに時間が経っちゃった。でも今でもあんまり書けないな。好きな作家なんだな
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オオカミを失い、 家族を失い最後は弟を失う。 越境するたびに何かを失う話。 陰鬱なはずの描写もあるが、 他作品と同じくまるで風景のよう。
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物語は一気に読むものという認識を強くさせられた。読むのに時間をかけすぎた。タイミングが悪かったことにして、いつか再読の必要があるだろう。
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1994年発表 、コーマック・ マッカーシー著。少年ビリーは家畜を襲っていた狼を捕らえた。狼を故郷の山に帰すためにメキシコへ一度目の越境するが次々に悲劇に見舞われる。そして弟のボイドとともに二度目の越境、更に三度目の越境と連なり、ビリーは全てを失ってしまう。読点を極力省いた息の...
1994年発表 、コーマック・ マッカーシー著。少年ビリーは家畜を襲っていた狼を捕らえた。狼を故郷の山に帰すためにメキシコへ一度目の越境するが次々に悲劇に見舞われる。そして弟のボイドとともに二度目の越境、更に三度目の越境と連なり、ビリーは全てを失ってしまう。読点を極力省いた息の長い文章、鉤括弧を使わない独特な文体。 マッカシーらしい荒野を馬で旅するロードノベルといった小説だったが、かなり哲学描写に振り切っているため全体的に神話を読んでいるような印象があった。純粋に話として面白く美しいのは前半の狼を帰す一度目の越境だろう。狼の存在が気高くて生々しく、読んでいると泣きそうになってくる。しかし中盤以降に登場する「崩れかけの教会に住み神に議論を挑む男」「目玉を吸われ盲目になった元革命軍兵士」「墜落した飛行機を運ぶジプシー」の挿話も捨て難い魅力がある。三つとも一見シュールな状況なのだが語られる哲学的考察はあまりにシリアスで、それだけで一つの小説として成り立ちそうな密度がある。二度目・三度目の越境自体はやや冗長な気もするが(特に馬を取り返そうとするシーンは「すべての美しい馬」とかぶっている)、これらの挿話を挟むためには必要だったのだろう。 それにしてもマッカーシーの小説を読んでいて感じるのは、獣・人間が荒野に均等に配列されているという印象だ(そして荒野の上空には「神」や「運命」がある)。おそらく心情描写を徹底的に排除しているせいなのだろう。本小説における狼の親近感はここに起因しているに違いない。つまり、人間特有の心情描写を切り取ってしまえば狼と人間の区別はつかなくなる、ということだ。
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