越境 の商品レビュー
国境三部作の第二作目。 オオカミを故郷へ帰そうというくだりは本当にすばらしかったが、その後が少し冗長。 「すべての美しい馬」を先に読んでいたので、同じような展開に感じてしまい、あまり入り込めなかった。 ただときどき入る逸話はとても興味深かったです。 もう少し集中して読めば、...
国境三部作の第二作目。 オオカミを故郷へ帰そうというくだりは本当にすばらしかったが、その後が少し冗長。 「すべての美しい馬」を先に読んでいたので、同じような展開に感じてしまい、あまり入り込めなかった。 ただときどき入る逸話はとても興味深かったです。 もう少し集中して読めば、この小説の神話的な真価が感じ取れるのかしら。
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【ガンバとカワウソの冒険】みたいな話かと思いきや、中盤手前でえええええという展開に。黙して語らない巨大な暗黒の世界に問いを投げ続ける、ハードな哲学小説になっていく。
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コーマック・マッカーシー著作初読。 感情をほとんど排除した、乾いた、粛々と綴られる文体は、 アメリカ南部、メキシコの荒涼とした風景の写像そのものだ。 文体が光景を生み、光景が文体を生み出す。 そこには広大で荒涼とした光景がある。 馬の蹄の音、風、雨等の自然音のみが反響する。 ...
コーマック・マッカーシー著作初読。 感情をほとんど排除した、乾いた、粛々と綴られる文体は、 アメリカ南部、メキシコの荒涼とした風景の写像そのものだ。 文体が光景を生み、光景が文体を生み出す。 そこには広大で荒涼とした光景がある。 馬の蹄の音、風、雨等の自然音のみが反響する。 17歳の青年は馬に跨り、冷然と過酷な旅路を行く。 大人への階段、運命の旅。 まるでアッバス・キアロスタミの映画を観ているようだ。 素晴らしい作品。
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以前、「すべての美しい馬」を読んだあと、この本と「平原の町」も読みたかったけど中古でしか入手できなくて、まあいつか読めたらねぐらいに思っていたら2010年に再発されちゃって、で、買ってから1年ほど寝かして読みました。 登場人物が皆ストイックでタフ、余計なことはしない言わない、で...
以前、「すべての美しい馬」を読んだあと、この本と「平原の町」も読みたかったけど中古でしか入手できなくて、まあいつか読めたらねぐらいに思っていたら2010年に再発されちゃって、で、買ってから1年ほど寝かして読みました。 登場人物が皆ストイックでタフ、余計なことはしない言わない、でも事件は起きる。簡潔な文体でぐいぐいスピード感をもって話は進んでいく。でもなんか最初から悲しい、寂しいの。西部開拓時代の残像、蝋燭が燃え尽きて芯になってくすぶっていく感じ。 白眉なのが、山の中を幾日も狼を追っていくところ。ロバート・レッドフォードの「アウトローの道を行く」という本があるんだけれど、そこで紹介されていたアウトローたちの棲家としていた壁の穴、まさにそれの光景が想像されてすごく面白かった。それから講談社学術文庫の「パイオニア・ウーマン 女たちの西部開拓史」という本もイメージを広げるのに役に立ったかも。というか、そんな滅びゆく文化・風俗の物語ではあるんだけど、底に流れるのは若者の普遍的な感情であり、人のもつ悲しみであるような気がしました。
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読後しばらくしてから、じわじわと話が心に沁みてきた。 細部を咀嚼し切れていないので、あくまで感覚的なものだけれど、無性に胸が詰まる。 この作品(「すべての美しい馬」もそうだけれど)における「メキシコ」とは、“どこか別の場所”ってことなんだろう。自分が生まれ育った世界(=アメリカ)...
読後しばらくしてから、じわじわと話が心に沁みてきた。 細部を咀嚼し切れていないので、あくまで感覚的なものだけれど、無性に胸が詰まる。 この作品(「すべての美しい馬」もそうだけれど)における「メキシコ」とは、“どこか別の場所”ってことなんだろう。自分が生まれ育った世界(=アメリカ)ではない、異世界。 希望も絶望も、夢も血も暴力も、何もかもが混沌とした場所。 ビリーは運命に流されて三回の越境をしているように見えるけど、ただ流されているのではなくて、そこには彼の意思があっての選択だったのだと思う。
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国境三部作の2作目。 本作もアメリカ西部に住む少年が、メキシコへと越境し、数々の苦難の冒険を経験するという粗筋である。 が、こちらは『すべての美しい馬』以上に強烈な喪失の物語である。 主人公ビリーの3度にわたる越境が描かれるが、そのたびに近しいものを失っていく。失われていくもの...
国境三部作の2作目。 本作もアメリカ西部に住む少年が、メキシコへと越境し、数々の苦難の冒険を経験するという粗筋である。 が、こちらは『すべての美しい馬』以上に強烈な喪失の物語である。 主人公ビリーの3度にわたる越境が描かれるが、そのたびに近しいものを失っていく。失われていくものを何とか取り戻そうとしても、全ては逆効果、予めそう決まっていたかのように失っていく。 主人公の喪失の物語の合間に3つの挿話があるが、それも全て主人公の運命を示唆し、主人公の孤独を強調するかために配置されているのは明白である。 しかし、何故か陰鬱な雰囲気、悲しげな雰囲気はない。全ては淡々と進んでいく。 西部のカウボーイという、失われし時代、失われていった人種、失われた社会を象徴しているのかな、とも思うが、もっと宗教的なテーマなのかもしれない。
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単に昔のアメリカ・メキシコを描いた物語に見えて 挿話と主人公のリンクを考えると 神、運命、世界といったものを描いている作品
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