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闇の奥 の商品レビュー

3.8

58件のお客様レビュー

  1. 5つ

    10

  2. 4つ

    18

  3. 3つ

    17

  4. 2つ

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2020/11/23

映画「地獄の黙示録」の原作だったので読んでみた。輪郭がはっきりしない曖昧な不安感が読後も続く。警察も肉屋もいない原初の大地に向き合い続けるうちに、普通の感覚が失われて物事の意味が希薄になっていき、綻びのように発生した狂気を押し留めることができなくなる…。マーロウがクルツを冷静に批...

映画「地獄の黙示録」の原作だったので読んでみた。輪郭がはっきりしない曖昧な不安感が読後も続く。警察も肉屋もいない原初の大地に向き合い続けるうちに、普通の感覚が失われて物事の意味が希薄になっていき、綻びのように発生した狂気を押し留めることができなくなる…。マーロウがクルツを冷静に批判している一方でクルツの虜になっているのは何故なのか?これがマーロウ自身が引きずり込まれた闇、なのだろうか。

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2020/10/25

アフリカの奥地に象牙を狩猟するために送り込まれた男を追って「闇」の奥に足を踏み入れる男。 そこに口を開けていたのは、想像を超える深々とした「闇」だった。 人間の心の禍々しさに触れる。

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2021/05/25

解説を読むと、この光文社古典新訳版で、なんと四人目の訳者になるらしい。それだけ、魅力のある作品だということなのでしょうが、読者それぞれに想像させる描写が多く、物語の筋は分かるけど、そこから何を問いかけているのかが、難しく感じた。 初読で私が感じたことは、単純だけど、改めて植民地...

解説を読むと、この光文社古典新訳版で、なんと四人目の訳者になるらしい。それだけ、魅力のある作品だということなのでしょうが、読者それぞれに想像させる描写が多く、物語の筋は分かるけど、そこから何を問いかけているのかが、難しく感じた。 初読で私が感じたことは、単純だけど、改めて植民地の概念って何だろう? ということです。 いきなり、知らない国の人たちがやって来て、特産品をいただくので、ただ働きしてくださいみたいな、現地の人にしてみたら、何言ってんの、ってなるであろうこの感覚は、私の理解の範疇を超えている。それなのに、見た感じでは、当然に受け入れたかのように働いている現地人の姿の描写が痛々しく感じた。 物語でクルツが、最後に何を見たのかは今でも分からないが、マーロウが感じた畏怖めいたものは、原初の自然の奥深くの見えない部分に、これまで経験したことのない常軌を逸したものを知覚したのだろうと思っています。改めて日にちをおいて、再読したい。

Posted byブクログ

2022/01/06

【琉球大学附属図書館OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA91294531

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2020/02/27

ジョセフ・コンラッドがじつはヨセフコンラートで、ポーランドからの移民だったという事実が今いちばんアツイ。解説に書いてあった「東欧特有の多声楽(ポリフォニー)」で体に稲妻がはしった、クンデラ!!!ポーランド→イギリスのコンラッドとチェコ→フランスのクンデラ。共通点とかさがしたらめち...

ジョセフ・コンラッドがじつはヨセフコンラートで、ポーランドからの移民だったという事実が今いちばんアツイ。解説に書いてあった「東欧特有の多声楽(ポリフォニー)」で体に稲妻がはしった、クンデラ!!!ポーランド→イギリスのコンラッドとチェコ→フランスのクンデラ。共通点とかさがしたらめちゃたのしそう。あわせてロシア→アメリカのナボコフもやりたい…絶対やらないだろ、やれよ、やりたい、やるか…ウグ〜。 闇の奥、ぜんぜんおもしろくないと決めつけてたけど(なんで笑)ものすごかった。文章がものすごく読みづらくて、しかもずーっと文字がびっしり埋まってるから時間かかるのだけど、その分トランス状態に入ったときの没入感がはんぱなかった。私も蒸気船乗ってたきぶん、たぶん乾燥機つけたお風呂場で頭ボーとなりながら読んだせいもあるけれど。 『地獄の黙示録』がものすごい映画で、とても好きだから、なおさらどっちもすごい!となった。クルツはずっとマーロンブランドだし、マーロウはずっとマーティンシーンだった。デニホパはちょとイメージちがたけど。また映画みたいな〜と思ったらなんと明日からファイナルカット版が上映されるらしい。なんたるグッドタイミング。これはもう私のための上映会…(出不精のため見に行くかは謎) コンラッド他のも読んでみたい!となりました。(フローベールもウェルベックも読まなきゃなのに、もう心はコンラッド、クンデラ方面)

Posted byブクログ

2020/10/20

1ページ読んで、3ページ戻る。 どうなってんのか分からず、戻って読み直す、を繰り返し。気づけば、結局何がなんだかわからないまま読破。 コッポラ監督の『地獄の黙示録』の原作ということですが、映画よりも淡々と静けさが目立ち、かつ難解です。 しばらく本棚に寝かせて、5年後くらいにまた読...

1ページ読んで、3ページ戻る。 どうなってんのか分からず、戻って読み直す、を繰り返し。気づけば、結局何がなんだかわからないまま読破。 コッポラ監督の『地獄の黙示録』の原作ということですが、映画よりも淡々と静けさが目立ち、かつ難解です。 しばらく本棚に寝かせて、5年後くらいにまた読んでみようかな。

Posted byブクログ

2019/09/10

英国の作家ジョセフ・コンラッドによって書かれた中編小説。20世紀における英語文学の傑作として知られる。仏国の貿易会社に雇われた船乗りマーロウが、アフリカの出張所を訪れるためにコンゴ川を遡行し、やがてクルツという名の代理人を求めて大陸の奥深くへ足を踏み入れるが……というストーリー。...

英国の作家ジョセフ・コンラッドによって書かれた中編小説。20世紀における英語文学の傑作として知られる。仏国の貿易会社に雇われた船乗りマーロウが、アフリカの出張所を訪れるためにコンゴ川を遡行し、やがてクルツという名の代理人を求めて大陸の奥深くへ足を踏み入れるが……というストーリー。背景には当時のベルギー国王によるコンゴ自由国に対する苛烈な植民地支配が存在し、本作にはコンラッドの船員時代の経験が反映されている。 本作では語り手マーロウの出航から帰還までが作中作の形で展開し、プロットを辿れば物語の全体像は把握できるものの、作品を包み込む重厚なーーあたかも倫敦を覆う陰鬱な闇のような雰囲気が、テクストの表面的な読みを妨げている。通常の読書体験は《読者-語り手》という伝聞形態を取るが、本作では多重構造化によって《読者-私-語り手》という「又聞き」の形態を強いられる。我々は物語から一階層引き剥がされ、それゆえ出来事の意味が不明瞭に、闇の奥へと押しやられる形で抽象化されているように感じるのではないだろうか。つまり読者は小説からイベントの配列を読み取るだけでなく、その背後に潜む物事の意味を能動的に掴み取らなければならない。マーロウ自らが注意するように「生の感覚こそが、その経験の真実であり、意味でありーー捉えがたい深い本質」だとすれば、構造外から闇を覗き込んでいるにすぎない我々がその本質を捉えるのは難しいだろう。作中作の形式で書かれた物語は無数に存在するが、文明からの乖離を描いた『闇の奥』では構造化の効果が最大限に発揮されている。本作から「生の感覚」汲み取るためには、自身を取り巻く一切のコードを捨て去らなければならない。理性を失うことなく帰還したマーロウではなく、狂気と闇の深淵で死んでいったクルツのように。 『闇の奥』を帝国主義批判の書、あるいは人種差別的視点から描かれた啓蒙小説とする見方もあるようだが(訳者の黒原氏も述べておられるように)本書はそうした意図を持って書かれた作品と思えない。スウィフトにせよオーウェルにせよ社会批判を目的とするフィクションには特定の思想基盤に依拠する「現実から象徴」への寓話化プロセスが見られるものだが、本作ではあらゆるイデオロギーの上位に実存の不可解さが置かれている印象を受けた。知性による合理主義的な解釈を拒む語りは、むしろカフカの不条理さに通じるものがある。理由もなく毒虫に変身したザムザの姿は、やはり理由もなく近代的な人間性を剥ぎ取られたクルツの姿と被って見えてしまう。あとに残されるのは思想でも知性でもない、人間本来の混沌ーー闇だけである。

Posted byブクログ

2018/10/20

"「地獄の黙示録」という映画を見たことがあるだろうか?何度も見ている映画の一つ。より、その深淵を理解するにはこの本を読むべきだという使命感?から購入したもののなかなか読み始められなかった。コンゴ河をさかのぼっていく物語。読み応えのある一冊。モラル、価値、人間そのものを見...

"「地獄の黙示録」という映画を見たことがあるだろうか?何度も見ている映画の一つ。より、その深淵を理解するにはこの本を読むべきだという使命感?から購入したもののなかなか読み始められなかった。コンゴ河をさかのぼっていく物語。読み応えのある一冊。モラル、価値、人間そのものを見つめ直す。岩波文庫の翻訳も読んでみたい。 この本も上記の映画同様、何度も読み返したくなる魅力がある。"

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2018/07/20

ジョゼフ・コンラッドの代表作。原題はHeart of Darkness。 フランシス・コッポラの映画「地獄の黙示録」の原作としても知られる。 200ページそこそこと中編といってよい長さだが、なかなかの難解さである。比較的読みやすいという版にしてこれだと、他の版はどうなのか、むし...

ジョゼフ・コンラッドの代表作。原題はHeart of Darkness。 フランシス・コッポラの映画「地獄の黙示録」の原作としても知られる。 200ページそこそこと中編といってよい長さだが、なかなかの難解さである。比較的読みやすいという版にしてこれだと、他の版はどうなのか、むしろ興味がわくほどである。 コンラッドはそもそもロシアの生まれで、幼少期から青年期まで、ロシア語、ポーランド語、フランス語を使用した経験を持つ。長じて船乗りとなって英国船で航海をした際に英語を身に付け、この最後に学んだ英語で小説を書いたという。 もちろん、語学的な素養も才能も十分にあったのだろうが、もしかしたら英語のみを読み書きする人とは少し感覚が違ったのではないだろうか。彼が綴ったのは、先入観にしばられない、いささか個性的な英語なのではないか。 私自身は、1作のみを、しかも邦訳で読んだだけであり、憶測でしかないのだが、何となくそんなことも思わせる、ごつごつする「わかりにくさ」を感じる。 さてそうした筆致で描き出される物語だが、このストーリーがまたわかりにくい。 語り手であるマーロウは、コンラッド自身の若き日を投影した人物と思われる船乗りである。マーロウはかつて、アフリカの奥地の河を旅した経験を語る。それは縁故採用で雇われた貿易会社の任務だった。象牙売買に携わる社員クルツが病気になったため、助けに向かうことになっていた。ところがなかなか旅は先へと進まない。あれやこれやとおかしな出来事があり、困難が行く手を阻む。マーロウがようやく出会ったクルツとはどんな人物だったのか。 多義性を孕む物語である。多くの部分が読者に委ねられていると言ってもよい。そのためということかどうか、本作は高く評価する人もいれば、唾棄すべきと嫌う人もいる。 受け取りようによっては、これは、植民地支配の暗部を描いた物語であり、なるほど西洋から見た「未開地」の物語としても読めそうではある。 だが、個人的には、この物語でコンラッドが描こうとした主眼は、そこにはないように思った。微妙に白人至上主義があり(あるいは少なくとも否定はされず)、そもそも植民地貿易がなければ生まれなかった作品ではあろうけれども。 一番鮮烈な印象を残すのは、「魔境Darkness」そのものの底知れぬ闇である。 そこにあるのは、原初的な恐怖だ。 文明社会のすべての秩序、決まり事を取っ払った奥の奥にあるもの。 理性がもたらす因果関係による恐怖、例えば「殺されそうだから怖い」というようなものではない。ただもう声にならない叫びをあげて、それでも逃れられないような、裸の、ナマの恐怖。 クルツは、毀誉褒貶の激しい、得体の知れない人物として描かれているが、クルツ自身もある意味、この闇の「魔」に呑み込まれてしまった人物なのではないか。 西洋がアフリカと出会ったとき、確かに搾取はあっただろう。清廉潔白ではなかったろう。 けれども少なくとも前線にいた船乗りたちは、自らの理解しえないもの、現在だけでなく永劫にわかりえないであろうものとも出会ったのだ。 密林の奥のさらにずっと奥で。脈打つ心臓のようにぬめりとした魔物に。

Posted byブクログ

2018/04/22

辺鄙な場所に赴任したら、 空き家をタダで貸してもらえるとて、 一人暮らしには広すぎる田舎の一軒家で、 夜は虫の声を聞いて過ごす羽目になった人が言うには、 数日も経つと誰もいないはずの奥の部屋が ざわめくことに気づいた、とか……。 もし、放り出されたのが電気も月明りもない、 真の...

辺鄙な場所に赴任したら、 空き家をタダで貸してもらえるとて、 一人暮らしには広すぎる田舎の一軒家で、 夜は虫の声を聞いて過ごす羽目になった人が言うには、 数日も経つと誰もいないはずの奥の部屋が ざわめくことに気づいた、とか……。 もし、放り出されたのが電気も月明りもない、 真の闇の中だったら、どんな気分になっただろう。 そこにないはずのものが見えるような錯覚に陥ったり、 幻聴に怯えたりしなかったろうか。 これは19世紀末、ヨーロッパ帝国主義時代のアフリカで、 収奪に邁進した企業の 有能な社員が呑み込まれた暗黒についての話。 大変有名な映画(恥ずかしながらこれも未見)の 原案に採用された小説なので、 ストーリーは人口に膾炙しているが、 さて、実際はどんなものかと、 読みやすくて気に入っている古典新訳文庫版を 手に取ってみた。 船員マーロウは気心の知れた仲間たちと共に 遊覧ヨットに招かれ、一同に思い出を語った。 マーロウは、かつてベルギーの貿易会社に入って、 植民地であったコンゴ自由国へ向かい、 象牙の輸出に活躍する クルツという名の責任者の噂を耳にして、 彼に強い関心を持ったという。 接触する者を激しく魅了するか、 または逆に―― 仕事のやり方で意見が対立するためだが―― ひどい嫌悪感を抱かせるか、 両極端な反応を引き起こすクルツは、 得体の知れない深い闇に捕まり、 その色に染まってしまったらしい。 作者の経歴を反映したと思しきマーロウの、 育ちはいいが諸般の事情で荒くれ者に交じって働き、 時には喧嘩腰で事態を解決していく様が小気味よく、 彼のキャラクターに惹きつけられて グイグイ読み進んでしまった。 マーロウはクルツが魅入られた深淵の正体を 恐れながら理解し、 囚われるも逃げ帰るも判断は紙一重だと考えた様子。 これは過去の忌まわしき時代の遠い地での物語だが、 彼らが覗いた闇の奥に潜む魔物は、 現代の我々の傍らにも蠢いているのかもしれない。

Posted byブクログ