あした咲く蕾 の商品レビュー
僕の家に、母の妹がやって来た。二十五歳の美人だ。けれど口を開けばバリバリの関西弁で、のべつまくなしに煙草を吸い、何かにつけて人の神経を逆撫でることを言うのが好きだった。それでも彼女は天使なのだ。美知恵おばさんの不思議な才能。それは僕と母しか知らない秘密。おばさんは自分の“命”を分...
僕の家に、母の妹がやって来た。二十五歳の美人だ。けれど口を開けばバリバリの関西弁で、のべつまくなしに煙草を吸い、何かにつけて人の神経を逆撫でることを言うのが好きだった。それでも彼女は天使なのだ。美知恵おばさんの不思議な才能。それは僕と母しか知らない秘密。おばさんは自分の“命”を分けてあげることができる人だった。人は誰でも、自分の命を人にあげられたら……と思う時がある。実際にできないからこそ、それを口に出したりする。けれど、おばさんのように、実際にできる力を持っていたら。「あした咲く蕾」
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ちょっと不思議な、ちょっとレトロなほんわかストーリー。 それぞれじんわりと良かったけれど 短編のせいかそれぞれの印象が薄くなってしまった。 【図書館・初読・4/21読了】
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『あした咲く蕾』 自分の命を分けてあげられる力を持った女性は僕の母の妹だっ た。人と関わることを避けているような人だったが、本当はとても優しい人。だから好きになった人に命をあげてしまうんじゃないか?僕はとても心配していた。 しかし、おばさんは住んでいたアパートのそばで起こった...
『あした咲く蕾』 自分の命を分けてあげられる力を持った女性は僕の母の妹だっ た。人と関わることを避けているような人だったが、本当はとても優しい人。だから好きになった人に命をあげてしまうんじゃないか?僕はとても心配していた。 しかし、おばさんは住んでいたアパートのそばで起こった大規模なガス爆発の現場で心不全でなくなってしまった。事故に巻き込まれた子供の看病をしていたらしい。おばさんはその子供に自分の命を全部上げてしまったのだった。 『雨つぶ通信』 11歳の私(木崎弘美)は東京のはずれの公団で母と二人暮らし。 私には雨音に混じって声が聞こえるという不思議な力があった。 聞こえる声はどの声もマイナスな声であるため、私は明るさを失っていった。そんな時母が再婚相手として中田さんを家に招待した。そんな母に私は反発。母との仲は険悪となった。 ちょうどその頃レミちゃんと出会った。小1ぐらいで耳が不自由だった。そしてレミちゃんと私は仲良しになった。 12歳の私の誕生日にプレゼントをもって中田さんが私の家にやって来た。それは台風の日だった。 中田さんは私の幸せのために母とは距離を置くという。そして、真夜中、中田さんは帰ろうとするが、台風のため私の家に泊まった。 寝付けない私は例の声を聞いた。レミちゃんが助けを求める声だった。レミちゃんの家に駆けつけようとする私を中田さんは私のことを信じてくれて、レミちゃんの家に一緒に駆けつけてくれた。 レミちゃんは、継父からの暴力により意識を失っていた。レミちゃんを助けることができた。 その後、私は中田姓に代わった。 『カンカン軒怪異譚』 劇団員だった僕は劇団の中の力関係や人間関係で大きくヘコんで居た時、プラット立ち寄った中華料理屋『関々軒』の火炎太鼓が生み出す絶妙なネギ卵ラーメンに救われた。 この店のおばちゃんが振るう中華なべが特殊らしい。 『空のひと』 中学の同級生の笹本くんと結婚した私。妊娠した私を残し交通事故でこの世を去った。やがて智恵が産まれた。 智恵が4歳の時再婚の話に迷っていた。そんなある朝、智恵の夢の中に夫が現れたらしい。私と夫しか知らないことを智恵が話す。夫は空から降りてきたという。私の再婚については「好きなようにしなさい」と言ったらしい。私は再婚の話を断った。 18歳の智恵とは夫のことを「空のひと」と呼ぶようになった。私たちの馴れ初めから話たりして・・・ 智恵は「また空のひと」に会いたいなぁなんて話したりする。 『虹とのら犬』 5歳の頃父が女を作って逃げてしまった。母は常軌を逸した精神状態になり、僕は友達の裏切りやイジメで短気な暴れ者になってしまった。誰にも相手にされないし、誰にも気にかけてもらえないとひねくれてしまったのだ。 そんな中、クラスメートの渡部薫子は軽度の知的障害を持っているようだが、みんなからいじめられてもいつもニコニコしていた。 不思議な夢を7日間続けてみたので、夢に出てきたお寺に行くと、薫子が待っていた。2学期から特殊学級のある学校に転校するという。薫子は僕に「乱暴するとみんなに嫌われるよ。乱暴はだめ。」そして、僕のことが好きだったといってくれた。このときを酒井に僕は代わった。今は僕の妻だ。 『湯呑の月』 『花、散ったあと』
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命を分ける魔法が使えるおばがいた「あした咲く蕾」 母の再婚に悩む弘美が雨の日だけテレパシーを聞く「雨つぶ通信」 偶然入った店で元気の出る料理を食べる「カンカン軒怪異譚」 娘が生まれる前に逝ってしまった夫に語る「空のひと」 父は失踪、母は病み荒んだ私を少女が救った「虹とのら犬」 や...
命を分ける魔法が使えるおばがいた「あした咲く蕾」 母の再婚に悩む弘美が雨の日だけテレパシーを聞く「雨つぶ通信」 偶然入った店で元気の出る料理を食べる「カンカン軒怪異譚」 娘が生まれる前に逝ってしまった夫に語る「空のひと」 父は失踪、母は病み荒んだ私を少女が救った「虹とのら犬」 やさしく病弱なおばちゃまと会わないように母に言われる「湯呑の月」 幼なじみの『フカシマン』を見舞いに行く「花、散ったあと」 装丁:野中深雪 装画:中島梨絵 過去に起こった不思議なことの回想録のような短編集です。 昔語りが多いので話にのめり込む感じではなくさらっと読める。 「あした咲く蕾」のラストと「湯呑の月」には少しぞっとします。 「空のひと」は電車の中で泣きそうになってしまった。 「カンカン軒怪異譚」のおばちゃんの豪快さに ご飯を食べなくても元気をもらえるような気がしました。 「「人間は、メシを食わなくっちゃダメね。ハラ減ると、ロクなこと考えない。クビ吊りたくなった人は、みんなハラいっぱいメシ食えばいいよ。死ぬ気なんか、パッとなくなる」」
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それは偶然なのかもしれないし、必然なのかもしれない。 雨の日には悲しんでいる人の声が聞けたり、自分の命をそそいだり、元気を分けてくれたり。 どれもちょっぴりせつなく、そして幸せな気持ちになる短編です。
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買っただけでまだ読めてない。そんな本が山積み。 普通の本もBLも。本棚買わないととても入れきれない。 本を売るのはあまり好きじゃないし・・。
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少し不思議で、優しい物語の短編集。今回はホラーテイストほぼなしで、しんみりほんわかとした物語が多いです。 お気に入りは表題作「あした咲く蕾」。優しく、切なく、美しい作品。この能力はたしかに優しく美しいものだけれど、考えてみるとあまりにも痛々しいです。だけど悲しいながらも重苦しくは...
少し不思議で、優しい物語の短編集。今回はホラーテイストほぼなしで、しんみりほんわかとした物語が多いです。 お気に入りは表題作「あした咲く蕾」。優しく、切なく、美しい作品。この能力はたしかに優しく美しいものだけれど、考えてみるとあまりにも痛々しいです。だけど悲しいながらも重苦しくはなく、ラストでは少しくすりと笑える部分もあって、和んだ気分になりました。 ユーモラスな「カンカン軒怪異譚」も好き。おばちゃんのキャラが素晴らしいです。こんなお店、行ってみたいですね。
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日常の中のちょっと不思議な出来事を描いた、やさしいやさしい短編集。頭では理解できない不思議を、心がふっと受け入れてしまうことってあるよね。
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7つの短編、どれもがとても良かった。それぞれのお話に出てくる、悲しい思いや寂しい思いが胸にひびく。その気持ちをやさしさで包むような文章にほっとする。目頭が熱くなって困った。初めて読んだ朱川湊人さん。次も読みたくなりました。全部いい話だと思ったけれど「カンカン軒怪異譚」「虹とのら犬...
7つの短編、どれもがとても良かった。それぞれのお話に出てくる、悲しい思いや寂しい思いが胸にひびく。その気持ちをやさしさで包むような文章にほっとする。目頭が熱くなって困った。初めて読んだ朱川湊人さん。次も読みたくなりました。全部いい話だと思ったけれど「カンカン軒怪異譚」「虹とのら犬」「あした咲く蕾」が特に好き。
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ごくありふれた日常に、ちょっと不思議な力がもたらす、切なくて温かい物語を集めた短編集。 設定も、不思議な出来事も様々で全く違うのですが、どの作品も読んでいてじわじわと静かに心の隙間に入り込んでくるような透明感のある作品ばかりでした。 美智恵おばさんの大雑把さが愛おしい「あした咲...
ごくありふれた日常に、ちょっと不思議な力がもたらす、切なくて温かい物語を集めた短編集。 設定も、不思議な出来事も様々で全く違うのですが、どの作品も読んでいてじわじわと静かに心の隙間に入り込んでくるような透明感のある作品ばかりでした。 美智恵おばさんの大雑把さが愛おしい「あした咲く蕾」、チョコレートが心もとかす「虹とのら犬」、そして悲しいけどとても美しい「湯呑の月」が一番のお気に入りです。 「あした咲く蕾」 美智恵おばさんの魔法・・・枯れそうになっていた朝顔に命を吹き込んだ魔法。彼女が人に深入りしないわけ。それは彼女が命をわけてあげることができるという力を持っていたからだった。 ありがちな設定で先が読める感じかもしれませんが、登場人物の温かさが本から伝わってきそうなお話でした。大雑把なおばさんが愛しいです。 「雨つぶ通信」 小学校の頃、私は超能力者だった。ある日、母親が恋人を家に連れてきて紹介された。素直になれない弘美。ある日雨の音に混じって人の心の声が聞こえ始める。そしてある事件が起こり・・・。 「カンカン軒怪異譚」 ある中華料理店の強烈なおばさんのおはなし。お鍋が!! 「空のひと」 おなかの大きかった私を残して空のひとになってしまったあいつ。 ささやかながらも何ものにも代え難いような大切な幸せが突然なくなった彼女。そんな彼女と娘さんに訪れた不思議な出来事に泣けました。 「虹とのら犬」 恵まれない幼少期をすごし人からはぐれていた少年。軽度の知的障害をもった少女薫子。二人が出会い、変化が訪れる。 「湯呑の月」 お湯のみの水の中に月をとらえてお部屋におつき様を入れてあげる。その水を飲んでみると甘い。そんなことを教えてくれた叔母さん。そんな叔母さんが大好きだった睦美。 事故にあい眠っていた母が目覚め、家に戻ってきてから、叔母には会うなと母がきれるようになる。いったいどうして? 悲しいけどとてもすてきなお話でした。 お気に入りです。 「花、散ったあと」 入院中の親友、貴明。彼は小学校のときから「フカシマン」と呼ばれていて、すぐにばれるようなウソばかりをつく癖があった。 彼のついたウソが人に幸せを運んでいくのが面白くもあり、彼の気持ちを考えるとすこし切なくもあり。 お気に入り度:★★★★☆ (2009年10月29日読了)
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