ゲイルズバーグの春を愛す の商品レビュー
これはすごい。ジャック・フィニィは盗まれた街の、素朴なアイディア型のSF作家かと思っていたが、この本でイメージが変わった。 巻頭の、 「ゲイルズバーグの春を愛す。そして焼けつく夏の日々を、また秋を、街路につらなる並木の黒い枝々に雪の降りつもる冬を、私は愛する。」 という文の...
これはすごい。ジャック・フィニィは盗まれた街の、素朴なアイディア型のSF作家かと思っていたが、この本でイメージが変わった。 巻頭の、 「ゲイルズバーグの春を愛す。そして焼けつく夏の日々を、また秋を、街路につらなる並木の黒い枝々に雪の降りつもる冬を、私は愛する。」 という文の美しさ。これは暗記するに値する。 この文のように、とても美しい表現が多数。 スタジョーンズみたいな跳んでる感じはしないが、地に足着いた美しさがある。 そしてそれは、対象に対する愛、賛美を素直に表現しているだけなのだろう。無意味に壮麗な表現がない分、読みやすく、好感が持てる。 ゲイルズバーグの春を愛す、は名作。 失われつつあるものへの愛に溢れている。 他の作品も、こうなったらいいなぁ、という純粋な思いを書いている。この本は素直ないい本。そうだね、こうなったらいいね、と共感できる。 愛の手紙は既読だった。この一冊の本という文脈で読むとまた印象が異なる。
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再読、表題作は過去と現在がそのまま混ざり合っているような不思議な雰囲気を醸し出していて好きだ。「悪の魔力」は、工作好きで身なりに頓着しない女性の描写に笑ってしまう。「コイン・コレクション」も違う世界からのコインを使うと少し変わった世界にいけるというアイデアがいい。そして、なんとい...
再読、表題作は過去と現在がそのまま混ざり合っているような不思議な雰囲気を醸し出していて好きだ。「悪の魔力」は、工作好きで身なりに頓着しない女性の描写に笑ってしまう。「コイン・コレクション」も違う世界からのコインを使うと少し変わった世界にいけるというアイデアがいい。そして、なんといっても「愛の手紙」。感動的である。ジャック・フィニーのこの作品集はアメリカ中産階級、男性の世界で、なんとなく異邦人として暮らしている主人公が書かれていて、マッチョさがまるでなく好きだ。だが、男性の勝手な妄想ととれなくもない女性の描写もあるが、さわやかである。日本の浅田次郎などもきっと影響をうけているにちがいないと思う。
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懐古趣味のSF。こんなにワクワクしたSFはウェルズ、ヴェルヌ以来。大袈裟なロボットとか銀河とか、そういう話も面白いですが、ジャックフィニィのこの作品群は仰々しくなく、疲れた時に読むと優しく迎えてくれます。実際に仕事で追い詰められていた時、本屋さんでたまたま見かけたこの1冊に救われ...
懐古趣味のSF。こんなにワクワクしたSFはウェルズ、ヴェルヌ以来。大袈裟なロボットとか銀河とか、そういう話も面白いですが、ジャックフィニィのこの作品群は仰々しくなく、疲れた時に読むと優しく迎えてくれます。実際に仕事で追い詰められていた時、本屋さんでたまたま見かけたこの1冊に救われました。 どれも面白いですが、気球とラブレターのお話が印象深く心に染みています。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「ゲイルズバーグの春を愛す」★★★★ 「悪の魔力」 「クルーエット夫妻の家」 「おい、こっちをむけ!」 「もう一人の大統領候補」 「独房ファンタジア」 「時に境界なし」 「大胆不敵な気球乗り」 「コイン・コレクション」 「愛の手紙」 ★★★★★
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SF(といっても、サイエンスフィクションというよりかは、すこしふしぎ)とファンタジーの狭間をたゆたいながら、ノスタルジックに、ロマンチックに。もう五十年以上も前に書かれたはずのものなのに、その感動は少しも色褪せてはいない。
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短編集。 表題作はオチを知っていたので「ふーん」という感じでした。 知識がない状態で読んだらもっと面白く読めたのかな? 「愛の手紙」が秀逸です。いい話。 個人的には「悪の魔力」も面白かったです。 この2人はお似合いだと思う。
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朝日新聞で紹介されていたので図書館で借りてみた。 短編集で、最初の話は読み終えるのに時間がかかったが、旅行に携行してじっくりと読み始めると、その面白さがわかってきた。 SFということを知らずに読んだため、最初の話は「ふーん」で終わってしまったのだが、2話目以降はだんだん慣れてきて...
朝日新聞で紹介されていたので図書館で借りてみた。 短編集で、最初の話は読み終えるのに時間がかかったが、旅行に携行してじっくりと読み始めると、その面白さがわかってきた。 SFということを知らずに読んだため、最初の話は「ふーん」で終わってしまったのだが、2話目以降はだんだん慣れてきて、その内容のばかばかしさに、読み終わった後でニヤニヤしたり、苦笑いしたりするようになった。 特に、「悪の魔力」という話はばかばかしくて、思い出しても笑ってしまうような内容だ。 また、おもしろさの中に人間の弱さ、はかなさ、過去への執着などが描きこまれていて、笑うだけでなく共感できるのがよかった。 全部おもしろかったが、「おい、こっちを向け」と「もう一人の大統領候補」は、悪の魔力とともにとても面白かった。
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久しぶりに読んだ!高校時代読んだのはハードカバーだけども訳は同じだから懐かしかったです。愛の手紙のラストが訳によってだいぶ変わるのが印象的…。やっぱりフィニィの現実に真っ向から対立する懐古主義、しかもかなり限られた世界というのが結構自分のツボだなあと思う。他の作品ももっと読もう!
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時と人をテーマにした作品が多い印象。 最後の愛の手紙を目当てに買ったのだけど、他も面白かったです。でも、運命とかそれに近いような恋愛とか出会いが好きなので、コイン・コレクション、悪の魔力あたりは男の人の勝手さに怒ったりしたけど。
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ノスタルジックファンタジー。「時間もの」としても当然楽しめる。このような作品に惹かれるのは、ロマンチスト体質があるからか?
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