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完全版 最後のユニコーン の商品レビュー

4.1

26件のお客様レビュー

  1. 5つ

    8

  2. 4つ

    9

  3. 3つ

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2023/10/18

この世で最後の一頭となってしまったユニコーンが仲間を求めて旅立つ。続編となる中編『ふたつの心臓』も収録。 どこか寓話性を感じさせる大作ファンタジー。不老不死のユニコーンが、魔術師や英雄と関わり、大いなる悪と戦う冒険の末、人間の愛を知ってどう変化したか。永遠と刹那の対比。優れたフ...

この世で最後の一頭となってしまったユニコーンが仲間を求めて旅立つ。続編となる中編『ふたつの心臓』も収録。 どこか寓話性を感じさせる大作ファンタジー。不老不死のユニコーンが、魔術師や英雄と関わり、大いなる悪と戦う冒険の末、人間の愛を知ってどう変化したか。永遠と刹那の対比。優れたファンタジーにある、深い真理を示す文章やセリフの数々も印象深い。 魅力的な登場人物たち。 主人公であったはずのユニコーンは、いつしか象徴のような存在になり、人間らしさを強く残すリーア王子とのコントラストを示す。 どこか頼りないイメージのあったシュメンドリックが、賢者にクラスチェンジしたかのように、王となったリーアを諭し導くシーンはカッコいい。 モリーの女性としての視点は、物語と世界を俯瞰しているところがある。 黒幕とラスボスの存在感も大きく、彼らにまつわる謎も物語の引力を高めている。 本書には何十年もあとに書かれた続編が付属しており、これがヒューゴー賞・ネビュラ賞の中編小説部門を受賞したとか。実際、少女視点で過去作の人物と触れ合う展開はとても面白かった。 長くて読みごたえのある本格ファンタジー、その読後の清澄感は相当なものだった。繊細な作風なため、どこか女性作家のイメージで読んでいたけど、調べてみたら男性。そりゃピーターですしね^^;。 P252 「あの時計は正しい時刻なんて打たないぜ。昔、ハガードがぜんまいや歯車をだめにしちまった。あるとき、振り子といっしょに動きつづける時間を手でつかもうとしたんだ。だが、おまえらにとって重要なのは、時計が次にいくつ打とうが関係ないってことを理解することだ。十打っても、七つ打っても、十五打っても、そんなことはどうでもいいんだ。おまえはおまえの時間を打てばいい。好きなところから数えはじめればいい。それがわかったら、いつどんな時だって、おまえにとっては正しい時間になる」

Posted byブクログ

2023/09/01

ハヤカワで新版が出たというのを目にし、学研版を手に取りました笑。今度、Two HeartsとSoozの二編が組み込まれた新刊が出るとのことで、「ふたつの心臓」の方は読んだけれど、スーズ読みたい!!となっているので楽しみです。 久しぶりにファンタジーというものを読んだ気がする。フ...

ハヤカワで新版が出たというのを目にし、学研版を手に取りました笑。今度、Two HeartsとSoozの二編が組み込まれた新刊が出るとのことで、「ふたつの心臓」の方は読んだけれど、スーズ読みたい!!となっているので楽しみです。 久しぶりにファンタジーというものを読んだ気がする。ファンタジー・もどきはいくつも読んでいたけれど、その世界が世界として確立していて(設定が緻密であればいいということではなく)、言い換えればその世界に流れる律がしっかりとあり、読みだすとその世界にいるかのような、そんな気持ちにさせてくれた。最初の方は現代が舞台なのか?と思ったし、ところどころメタ発言・メタ描写があってなんとも不思議なファンタジーだった。ファンタジーの世界に住んでいることがわかっている住人たちのファンタジーは、ゲド戦記を読んでいた小学生の頃の感慨に近い気がする。決してのめりこむようなエンターテインメントではないし、淡々と進んでいくのだけれど、読了感は紛れもないファンタジーの重みがあって、やっぱり言葉にするなら「不思議」というのがしっくりくる。この文章がと指し示す文章があるわけではないのだが、物語が全体として「不思議」を構成している。そういう意味では言語化できない領域を体現した素晴らしい作品の一つだと思う。これは書こうとして書けるような物語ではない。 王道の、物語の型を追いつつ、こうして物語は生まれ、引き継がれていくのだ、という形式美を追うような…。悲しくてでも愛おしいと思う人々の物語、それは紛れもなく語り継がれるタイプの英雄譚なのだな。

Posted byブクログ

2021/10/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

長い長いおとぎ話。ライラックの森に住む気高い雌のユニコーンは、森を出て仲間を探す旅に出る。でも人間は彼女がユニコーンだとは気がつかない。 ここぞというときにしか魔法が使えない魔術師、盗賊の仲間だった女性、荒れ果てた土地と王国、孤独な王と血のつながらない王子、ユニコーンを狙う赤い雄牛。語られる世界は荒んでいるのにファンタジー的な美しさに満ち溢れている。「ふたつの心臓」のユニコーンの選択は本当に美しい。 子どもの頃に触れた、白雪姫やシンデレラなどと同列のおとぎ話を感じさせてくれて陶然とするお話を読んだのは本当に久々かもしれない。 「ハッピーエンドは物語の途中で起こってはならないのだ」(P268)

Posted byブクログ

2019/07/15

読んでおかなければならなかった超有名ファンタジー。 シルクのような手触り感のする、透明な印象の作品だった。 特に最後の海の波の泡沫がユニコーンとなって押し寄せる ところは圧倒的でありながら繊細に美しい名シーンだと 思う。だがこの完全版では続編の「ふたつの心臓」の方が 印象深かった...

読んでおかなければならなかった超有名ファンタジー。 シルクのような手触り感のする、透明な印象の作品だった。 特に最後の海の波の泡沫がユニコーンとなって押し寄せる ところは圧倒的でありながら繊細に美しい名シーンだと 思う。だがこの完全版では続編の「ふたつの心臓」の方が 印象深かった。本編の方がこの続編を書くために書かれた のではないかと思うほど。どちらにしてももっと若い頃に 読んでおきたかった本であるのは確か。こういう本にこの年 になって出会うと、人生ずいぶんと損してきている気がする のだった(苦笑)。

Posted byブクログ

2019/09/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

とてもイマジネーションが豊かで、ドキリとする表現もありとてもいい小説だ。全篇は他者からの「承認」をもとめる物語でもあるように思う。リーア、シュメンドリック、モリーという主要な登場人物が、みずから作中人物であることを意識している点がほかにはない魅力だと思う。モリーのいう、ロビン・フットのような伝説こそ実在していて、自分たちこそまやかしなんだという言葉には、物語と現実の関係を考えさせられる。シュメンドリックやアマルシア(ユニコーン)のような永遠に生きる者からみれば、お話こそがリアリティで、それを語る人間はお話の乗り物でしかないのかもしれない。 続編(?)の「ふたつの心臓」も作者が年齢を重ねた渋みがあり、魅力的な作品だと思う。

Posted byブクログ

2014/04/23

形而上学的ファンタジーの古典。とくに導入部の衒学趣味はものすごい。解説にも書かれているが、クライマックスシーンのカタルシスは凄絶。あの美しさは読書ならでは。どれほどCGに凝っても映像ではムリだと思う。

Posted byブクログ

2014/04/09

表題の「最後のユニコーン」と、その続編である「二つの心臓」を収録。 * * * 良かった! 神話調のファンタジーのようであり、もっと現代的な幻想文学のようでもあり、しかしアンチファンタジー部分もあって不思議な感触。 正直よくわからない場面もたくさんあって読みやすくは無いのだ...

表題の「最後のユニコーン」と、その続編である「二つの心臓」を収録。 * * * 良かった! 神話調のファンタジーのようであり、もっと現代的な幻想文学のようでもあり、しかしアンチファンタジー部分もあって不思議な感触。 正直よくわからない場面もたくさんあって読みやすくは無いのだけれど…でも良かった。 「二つの心臓」の方は本編の何十年か後のストーリーで、お話としてはこちらの方が分かりやすい。 ファンタジーなのに現実的。 終盤の場面は、身近に老人がいる身としては余計に悲しくなってしまった。英雄も年老いるのだ。

Posted byブクログ

2013/12/22

ユニコーンが、仲間を探して旅をする話。途中、見世物屋の魔女に捕まったが、魔術師に救われる。その魔術師と旅を続けるが、今度は彼が、盗賊に捕まる。それをユニコーンが助け、盗賊の女をつれて逃げ出す。三人は、ユニコーンの仲間を探して、暴君ハガードの屋敷に辿り着くが、そこでユニコーンは、運...

ユニコーンが、仲間を探して旅をする話。途中、見世物屋の魔女に捕まったが、魔術師に救われる。その魔術師と旅を続けるが、今度は彼が、盗賊に捕まる。それをユニコーンが助け、盗賊の女をつれて逃げ出す。三人は、ユニコーンの仲間を探して、暴君ハガードの屋敷に辿り着くが、そこでユニコーンは、運命の出会いをする。 ありがちな「勇者が魔王を倒し、姫を助け」、なんて話じゃないところが、この作品のよさ。人間はなぜ、真実をみようとしないのか?と、人間をばかにして、自分こそ正しい、と言っていたユニコーンが、現実逃避に走ったり、盗賊が、一番まともな発言をしたり、勇者が片想いに悩んだり…。複雑な親子関係も描かれているし、老いていく悲しさが伝わってくる場面も。昔から、人間の最大の苦悩は、変わっていないのだろうか?

Posted byブクログ

2013/07/15

謎が謎を呼び物語が物語を呼び寄せる幻想的なファンタジー。登場人物がそれぞれの役を演じきることで織りあがる美しいタペストリーなのだ。

Posted byブクログ

2013/06/18

この世界のどこかに仲間がいるというだけで、ひとりでも孤独を感じずに生きていける。 だけど、もし仲間がひとりもいなくなっていたとしたら…? 私にも親しい友人たちがいる。普段は、それぞれの生活に忙しく、年に1度か2度集まればよいほうだけど、それでも、皆が今日もどこかで元気で頑張ってい...

この世界のどこかに仲間がいるというだけで、ひとりでも孤独を感じずに生きていける。 だけど、もし仲間がひとりもいなくなっていたとしたら…? 私にも親しい友人たちがいる。普段は、それぞれの生活に忙しく、年に1度か2度集まればよいほうだけど、それでも、皆が今日もどこかで元気で頑張っていると思えるからこそ、ひとりでも孤独を感じずに毎日を過ごせる。 自分が最後のひとりかもしれないと思い、住み慣れた場所を離れ、仲間を探しに行く主人公のユニコーンに冒頭から感情移入してしまった。 冒険ありロマンスあり、ちょっと怖かったり悲しかったり。 最後までワクワク、ドキドキしながら楽しめるファンタジー。

Posted byブクログ