海の都の物語(4) の商品レビュー
前半は海軍力での勝負に乗らずひたすら物量の陸軍で攻め来るトルコとの分の悪い戦いについてのお話。戦いの舞台が変わると強みも発揮できないのだな。 後半は15世紀聖地巡礼の時代にもヴェネツィアはパック旅行的なものを準備して立派に商売していました、というお話。
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小アジアの内奥から発したオスマン朝は、古代の英雄に憧れる若きスルタン・マホメッド2世の世になってから西進を始める。 東ローマ帝国滅亡となるコンスタンティノープル陥落から、ヴェネツィアは宿敵トルコとの戦いに否応無く突入していく。 トルコ・マホメッド2世の領土的野心。 イタリア半島...
小アジアの内奥から発したオスマン朝は、古代の英雄に憧れる若きスルタン・マホメッド2世の世になってから西進を始める。 東ローマ帝国滅亡となるコンスタンティノープル陥落から、ヴェネツィアは宿敵トルコとの戦いに否応無く突入していく。 トルコ・マホメッド2世の領土的野心。 イタリア半島での商業的利権を巡って繰り広げられるフィレンツェ・メディチ家の策謀。 地中海に息づく国の様々な思惑があって、歴史的な行動は起こっていたのだな、と実感させられた巻でした。 3分の2ほどは宿敵・トルコとの戦いの歴史を描き、残りの3分の1は打って変わって当時の聖地巡礼旅行の旅行記を紹介してありました。 当時は船による航海とラクダに揺られての砂漠越えの長い旅路。そのほとんどが初めての長旅となる巡礼者に対して、ヴェネツィアがパック旅行のように見事に商売化していた、というところは苦笑しました。商魂逞しい、というのは何百年前も変わらないのだな、と。 著者の連作「コンスタンティノープルの陥落」「ロードス島攻防記」「レパントの海戦」を読み直したくなりました。
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○トルコ=異文化(異教徒)の不可解性 ○質から量の戦いへの変化 ○中世の観光業 ○生活、文化、価値観への宗教の占める割合 ○免罪の買い込み
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対トルコに苦戦しながらも、持ち前の賢さとスピードで巧みに生き延びていくヴェネツィア。聖地巡礼ツアーの抜け目なさには、呆然とするばかり。しかも悪どさは一切ない。現代人もある意味で見習うべきかもしれない。
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四巻目は宿敵トルコの台頭と、ヴェネツィア航路を使った聖地巡礼パックツアーについて。 合理主義者は根本的な間違いを犯すことがある。合理的に考えて相手がそんなことをするはずがないと思ったことでも相手はすることがあるのである。その事は当時のヴェネツィア外交官が「良識とは受け身に立たされ...
四巻目は宿敵トルコの台頭と、ヴェネツィア航路を使った聖地巡礼パックツアーについて。 合理主義者は根本的な間違いを犯すことがある。合理的に考えて相手がそんなことをするはずがないと思ったことでも相手はすることがあるのである。その事は当時のヴェネツィア外交官が「良識とは受け身に立たされた側の云々することなのだ。行動の主導権をにぎった側は、常に非良識的に行動するものである」と嘆いている。このことはいつの世になっても、外交問題の普遍性を示している。日本の近くのかの国をみればそれがわかる。 また、ヴェネツィアはその航路と後悔技術で聖地イェルサレムまでの巡礼ツアーを組んでいた。儲けられるところは儲けるのがヴェネツィアのやりかたである。
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1453年にトルコ帝国のがビザンチン帝国にとってかわり、西に覇権を広げようとする。陸のトルコ帝国と海のヴェネツィアの戦いの火ぶたが切って落とされた。ヴェネツィアは、地中海の覇権を守るために外交、戦争あらゆる駆け引きや裏工作をしながら、強大なトルコ帝国との戦いを進めて行く。 また...
1453年にトルコ帝国のがビザンチン帝国にとってかわり、西に覇権を広げようとする。陸のトルコ帝国と海のヴェネツィアの戦いの火ぶたが切って落とされた。ヴェネツィアは、地中海の覇権を守るために外交、戦争あらゆる駆け引きや裏工作をしながら、強大なトルコ帝国との戦いを進めて行く。 また、ヴェネツィアはヨーロッパにの聖地巡礼パック旅行の起点になり、観光客を集めては富を蓄えていく。
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第8話宿敵トルコでは、マホメッド2世との壮絶な戦いの歴史が綴られている。 交易が国是であるベネツィアが、好むと好まざるに関わらずイスラム諸国との関係を持たざるを得なかったと言う事実。 ただ単なるキリスト教イデオロギー西欧国家とは異なる国家戦略が必要だったのである。 そんな中で...
第8話宿敵トルコでは、マホメッド2世との壮絶な戦いの歴史が綴られている。 交易が国是であるベネツィアが、好むと好まざるに関わらずイスラム諸国との関係を持たざるを得なかったと言う事実。 ただ単なるキリスト教イデオロギー西欧国家とは異なる国家戦略が必要だったのである。 そんな中で、共和国としての意思形成過程を踏みながら、適切に対応したベネツィアという国家。 第9話の聖地巡礼パック旅行では、この国の強かさがオモシロおかしく描かれている。 チャッカリ観光産業として国家戦略家してしまうベネツィア。 資金調達、リスク分散、選択と集中などなど。ガバナンス・マネジメントの本質は、いつの時代でも同じなのである。
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ジェノヴァとの海洋国家頂上決戦を制したヴェネツィア。さぁ、 これで地中海の女王の座は手に入れた。しかし、安心する暇もなく 次なる敵が現れる。新興の大国トルコである。 19歳でスルタンとなったモハメッド2世は、コンスタンティノープル を陥落し徐々にその勢力を地中海に伸ばそうとする...
ジェノヴァとの海洋国家頂上決戦を制したヴェネツィア。さぁ、 これで地中海の女王の座は手に入れた。しかし、安心する暇もなく 次なる敵が現れる。新興の大国トルコである。 19歳でスルタンとなったモハメッド2世は、コンスタンティノープル を陥落し徐々にその勢力を地中海に伸ばそうとする。 誰の助言にも耳を貸さず、側近さえも気に入らなければ躊躇せず首を はねる。ビザンツィン帝国を滅ぼしたトルコのスルタンに対し、表と 裏でヴェネツィアは働きかける。 スルタン暗殺計画の見積書が残されているなんて、経済大国ヴェネツィア らしい。 さて、ヴェネツィアも戦争ばかりしていた訳ではない。中世の西欧の キリスト教者にとって、憧れの旅といえば聖地巡礼である。現代でも 個人旅行は手間がかかる。 では、ヴェネツィアが面倒を見ましよう。イェルサレムへ出航する船の 手配は勿論、ヴェネツィア滞在中の観光や宿泊の手配。果ては巡礼に 必要な買い物の手伝い、まで。国を挙げて巡礼旅行をお手伝いする 「ヴェネツィア旅行会社」である。 「ご旅行の御用命は、至れり尽くせりのヴェネツィア観光へ」。 なんてね。笑。
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貿易を武器に世界の富と力を築いた海洋国家ベネチアに対し、勃興著しいイスラム国家トルコが覇権を奪おうと迫りくる時代。どのような戦略で立ち向かい、国を守ってきたか。当時の旅行者の記録を紹介しながら、戦争と背中合わせの経済活動を描き出してくれる。所々に描かれる地中海都市の美しさも魅力的...
貿易を武器に世界の富と力を築いた海洋国家ベネチアに対し、勃興著しいイスラム国家トルコが覇権を奪おうと迫りくる時代。どのような戦略で立ち向かい、国を守ってきたか。当時の旅行者の記録を紹介しながら、戦争と背中合わせの経済活動を描き出してくれる。所々に描かれる地中海都市の美しさも魅力的です。
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4巻ではトルコ帝国が登場する。トルコとの戦いの様子が描かれているのだが、それ以上に印象的だったのはヴェネツィアからのマホメット2世の見え方。読んでいてもヴェネツィアから想像がつかない動きをするというのは分かるのだが、東方にそういう皇帝が率いる国を抱えた当時のヨーロッパの心境たるや...
4巻ではトルコ帝国が登場する。トルコとの戦いの様子が描かれているのだが、それ以上に印象的だったのはヴェネツィアからのマホメット2世の見え方。読んでいてもヴェネツィアから想像がつかない動きをするというのは分かるのだが、東方にそういう皇帝が率いる国を抱えた当時のヨーロッパの心境たるや、察するにあまりある恐怖だったのではなかろうか。後半部は聖地巡礼パック旅行という章題がついている通り、ヴェネツィアがいかにうまく聖地巡礼旅行をビジネスにつなげたかということが書かれている。ほほえましくもたくましいなと感心させられる。[2009/07/29]
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