いのちをいただく の商品レビュー
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長女は小学校の先生をしている。 昨日、食育の授業の一環として、この本を子供たちに読んだのだという。 『いのちをいただく』 文 内田美智子 絵 諸江和美 監修 佐藤剛史 (西日本新聞社) 食肉加工センターで働く坂本義喜さんが経験した実話を、助産婦の内田美智子さんが文章にした物語である。 「貸して」も「貸してあげる」も何もなく、さらに娘は今日から二日間留守で、そこらへんに置いてあったこの本を私は勝手に読み、勝手に感動して、今これを書いている。 三回読んで三回とも泣いてしまった。 そして今、これを書きながらまたうるうるしている。 なんということ! それほど心にガツンとくる本だった。 本当のことを言うと、そもそも私はこういう“命”を道具にして人を感動させようとする話は嫌いなのだ。 でもこの本はなぜか、そういうのとは全然違った。 主人公の坂本さんが、もう泣きたくなるほど“本物”だったから。 坂本さんは、誤解を恐れずに言うと、いわゆる立派な大人ではない。 悲しんで落ち込んで、仕事を辞めたくなって、いろんな出会いに助けられて、それでも悩んで、大人なのに子供のように純粋な人なのだ。 著者の内田さんも、きっとそこに打たれたんじゃないだろうか。 坂本さんは、牛を殺して肉にする食肉加工センターに勤めている。 でも、殺される牛と目が合うたびこの仕事が嫌になり、いつか辞めよういつか辞めようとずっと思っていた。 そんな時、小学三年生の息子・しのぶ君に、「お父さんの仕事はすごかとやね」と言われて、もう少しこの仕事を続けようと思う。 最初はしのぶ君も、お父さんの仕事がかっこ悪いと思っていたけれど、担任の先生に言われて大切な仕事だと思うようになったのだ。 ある日坂本さんは、一人の女の子と、女の子と仲良しの牛の「みいちゃん」に出会う。 みいちゃんを殺して肉にするのが坂本さんの仕事だけれど、坂本さんにはできない。 「お父さんは、みいちゃんを殺すことはできんけん、明日は仕事を休もうと思っとる」 するとしのぶ君はこう言う。 「お父さん、やっぱりお父さんがしてやった方がよかよ。心の無か人がしたら、牛が苦しむけん。」 次の日の、坂本さんとみいちゃんの場面には胸が詰まる。 「みいちゃん、ごめんよう。 みいちゃんが肉にならんと、みんなが困るけん、ごめんよう」 「みいちゃん、じっとしとけよ。 動いたら急所をはずすけん、そしたら余計苦しかけん、 じっとしとけよ。じっとしとけよ」 もう、この場面は何回読んでも泣いてしまう。 もう一つ、すごいなと思う場面がある。 女の子のおじいちゃん、つまりみいちゃんの飼い主が、みいちゃんの肉をもらって帰って孫に食べさせるところ。 みいちゃんの死をうやむやにしようと思えばできるのに、おじいちゃんは、みいちゃんの命を感謝していただくことを孫に教える。 最初は泣いて食べなかったが、おじいちゃんの言葉を聞いて、いただきます、ありがとうと、女の子は泣きながら食べたのだった。 おじいちゃんは坂本さんにお礼を言い、坂本さんはもう少しこの仕事を続けようと思うのだ。 巻末には“いのち”を育てている人たちのインタビューが掲載されている。 愛情を注いで育てたニワトリを、最後は肉にする。 「かわいそうという気持ちは確かにある。だけど、自分はできんけん、他の人にやってもらおうとは思わない。最後まで自分でやってやろうと思う」 という言葉はすごい。 理屈では分かっているつもりでも、やっぱり牛や豚や鶏や魚を食材として見てしまっている自分にどきりとする。 “いのち”が“食材”になる過程に関わっている人たちの覚悟が、このインタビューから伝わってきて、日ごろの自分を猛烈に反省した。 なんだろう。 私ってこんなに素直な人間だったっけ? それほどの何かがこの本にはあった。 監修の佐藤さんのあとがきによると、日本の一年間の食品廃棄量は2,000万トン以上だという。 これは、ひとり一日1,800kcalで生活している発展途上国での3,300万人の年間食糧に相当するそうだ。 心が痛む。
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世の中にはこんなにも情報が溢れているのに、私は知らないことが多すぎる。 ここで描かれている事に触れて、少なからず価値観を見直す視点が生まれた。普段の生活にも恐らく葛藤を生み出すだろう。 しかし、知らないでいた過去の自分を幸せだったと思うだろうか? 葛藤をしても、苦しくても、目の前...
世の中にはこんなにも情報が溢れているのに、私は知らないことが多すぎる。 ここで描かれている事に触れて、少なからず価値観を見直す視点が生まれた。普段の生活にも恐らく葛藤を生み出すだろう。 しかし、知らないでいた過去の自分を幸せだったと思うだろうか? 葛藤をしても、苦しくても、目の前の事実に向き合える人間でありたい。
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ニワトリのくちばしを切らないでニワトリらしく過ごさせたいという想いに関して、ぐるんとびーを想起した。 パートナーに話したらそれに関してはトロッコ問題のような考えもあるのではという話に。たしかに。みんな考えて、自分の答えをみつけて生きているのかなあ。 ふと思い出して再読。 大切だ...
ニワトリのくちばしを切らないでニワトリらしく過ごさせたいという想いに関して、ぐるんとびーを想起した。 パートナーに話したらそれに関してはトロッコ問題のような考えもあるのではという話に。たしかに。みんな考えて、自分の答えをみつけて生きているのかなあ。 ふと思い出して再読。 大切だけど忘れてしまいがちなことが書かれているので本棚に置くことにした。
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たまたま本屋さんで見つけ、すぐに購入した。自宅に帰って読み返し、涙がこぼれた。 「いのちをいただく」ということがどういうことなのか、初めて理解した気がする。 食べることは、生命を奪うこと。たくさんの生命に支えられて、私たちが生きていられる。 職業として牛を殺す坂本さんのような...
たまたま本屋さんで見つけ、すぐに購入した。自宅に帰って読み返し、涙がこぼれた。 「いのちをいただく」ということがどういうことなのか、初めて理解した気がする。 食べることは、生命を奪うこと。たくさんの生命に支えられて、私たちが生きていられる。 職業として牛を殺す坂本さんのような人達の、日々の葛藤や苦しみ、それらを十分に理解した上で、感謝しながらいただかなければならない。 「可哀想だから食べない」という選択をするんじゃなくて、「責任を持って、いのちをいただく」。これが1番の報いになるのかなと思った。 節約のためについつい安い食材を買ってしまいがちだけど、その安さには理由があるんだよね。 劣悪な環境で育てられ、生命としての権利が尊重されず、ただの“商品”、“モノ”として扱われた彼らが、安く売られていく。 その安さに惹かれて購入する人々がたくさんいるからこそ、また低価格で提供するために悲惨な環境が作り出されるという、まさに悪循環。 私たち人間の血となり肉となるのだから、そんな劣悪な環境で育てられた生命を口にするのは、同じく生きるもの同士として大変失礼なことなんじゃないかなと思った…。 八尋さんの、「ニワトリもいつかは死ぬ。でも、生きとる間はニワトリらしい生き方をさせてやりたい。(中略)ニワトリはニワトリらしく。一瞬、一瞬、その命を大事にすることを心がけている。『人間らしく生きたい』。自分自身もそう思う。」という言葉が非常に印象に残った。 難しいかもしれないけど、出来るだけ、良い環境で愛情込めて育てられたお肉やお魚を、意識して選んで行こうと思った。 ほんの些細な行動かもしれないけど、それが少しずつ広がって結果的に誰かを幸せにすることに繋がればいいな 八尋さんの話によると、ニワトリはストレスを感じると、弱いニワトリのお尻をつつき始めて、内蔵がでてくるまでつつき続けるらしい。 農家はその対策として、ニワトリのクチバシを切ってしまうこともあるんだとか。 なんかさ、そんな環境で育てられたニワトリさん達って、苦しみや憎悪を抱えたまま食肉になってる気がする…。負のオーラに包まれていて、それらを口にする私たちも気付かぬうちに負のオーラに包まれていく。 そんな気がしてしまうから、やっぱり愛情込めて育てられた、幸せな生をまっとうした生命をいただきたいなと思った。奪った生命とともに私たちは生きていかなくてはならないから…。
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泣けます(T_T) こういうの親は子どもに読ませたがると思うけど、読めと言われて読んでも心に響かないと思う。ただ「かわいそう」で終わっちゃう。 親(というか大人)こそがこういう本を読んで感じたことを実践していく。それが手本となって、子どもたちに伝わっていく。それが食育じゃないかな...
泣けます(T_T) こういうの親は子どもに読ませたがると思うけど、読めと言われて読んでも心に響かないと思う。ただ「かわいそう」で終わっちゃう。 親(というか大人)こそがこういう本を読んで感じたことを実践していく。それが手本となって、子どもたちに伝わっていく。それが食育じゃないかな。 そんなことを感じました。
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県立図書館で「夏休み こどもにおすすめ」コーナーで。 「「何気なく」」食べてしまっていた食べ物。 お肉にしても、野菜にしても、海藻にしても、 みんないのちなんだなぁ。。 それを私はいただいているんだなぁ。 お肉を食べないという選択を 過去にしたことがあったけれど 『最大の感...
県立図書館で「夏休み こどもにおすすめ」コーナーで。 「「何気なく」」食べてしまっていた食べ物。 お肉にしても、野菜にしても、海藻にしても、 みんないのちなんだなぁ。。 それを私はいただいているんだなぁ。 お肉を食べないという選択を 過去にしたことがあったけれど 『最大の感謝をしていただく』が今の私の選択かな。
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友人に勧められて読んだ本。「いただきます」ということの大事さを身をもって感じました。食育について子どもに伝えるのは難しいけれど、いつか子どもとも一緒に読みたいと思います。
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食べるという行為を改めて考えさせられる。 いのちをいただいていること。感謝をわすれないように。 いただきます。ごちそうさま。
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なんとはなしに読んだこの本から 目が離せなかった 肉 野菜 つまり命 食事 つまり命を食べること アースシリングという映画を見た 動物たちが精肉されて食品売り場にパックされるまでの過程を追った話 嘔吐感 嫌悪感 肉を食べることをやめようと思った 二十歳の春 でも今も食べるけれど 積極的に肉を食べるという感じではなくて タンパク質が足りないからか いつも栄養が不足気味で それでもいいかと思った でも、そういうことでもないらしいと思った 生きている命をいただくということ 生きるということ つまり 人は一人で生きて行くのではなくて 動物はありとあらゆる生き物の中で生きているということで 命はすべての関係性の中で生きているということで 食べることを大切にしたいと思った そういう生き方を模索したい 自分を損なうことなく 誰かを傷つけるのでもなく この本を読んで 決定的に何かが変わったわけではないけれど 何か 変えてはいけないものなのか 未来に持って行かなくてはいけないものは もらったように思う
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わたしたちは ここに えがかれている きもちを うしなっては いけない わたしたちは ここに かたられている 思想を みうしなっては いけない わたしたちは ここに うったえられている こころを もちつづけなければ いけない
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