私小説 の商品レビュー
10代のはじめに(おそらく1960年ごろ?)家族とともにアメリカにわたった主人公「水村美苗」が、渡米20年目のある雪の日、NYにすむ姉と長電話をする。プロットとしてはそれだけの話です。 主人公と著者の略歴には全く齟齬がなく、もちろんフィクションではありながらも主人公と著者を重...
10代のはじめに(おそらく1960年ごろ?)家族とともにアメリカにわたった主人公「水村美苗」が、渡米20年目のある雪の日、NYにすむ姉と長電話をする。プロットとしてはそれだけの話です。 主人公と著者の略歴には全く齟齬がなく、もちろんフィクションではありながらも主人公と著者を重ねてみることがある程度期待されている、まさに「私小説」。また、西洋の小説によくある"a day in a life"の形も取っています(日本の小説にもよくあるのかな、知識がなくてすみません)。小説はある一日の朝から夜までを描いていて、その間に過去20年間のアメリカ生活が回想されていくわけです。 日本文化と日本語にあこがれ、「移民」ではなく、あくまでいつかは日本に帰る「外国人」として生きてきた主人公は、名門大学院(たぶんYale)に在籍しながらも、真にアメリカに根を下ろしてはいず、でも現在の日本や日本人には違和感を感じています。こう書くとありがちなようですが、アメリカでの生活や日本語に対する気持ちが丁寧に描かれていて、リアルに胸に迫ります。 海外で長く暮らした人だからこそのアイデンティティ・クライシス、ではあります。似たような経験のある人なら、ことさらの共感(あるいは反発)があるのでしょう。でも日本で生まれ育った私にも、共感しひきつけられるものがあったのは、結局レベルこそ違え古い日本とアメリカ的なものの間で引き裂かれているのは同じだからなのかもしれません。若い頃思い描いた将来像を追いかけ続けることが難しくなり、親が老いていく現実も突きつけられる、30代だからこその惑いとも重ねて描かれているように思いました。 題名にもleft to rightとあるように、横書きの文章です。10代、20代を海外で過ごした方のものとは信じがたいような豊かで美しい日本語と、外国育ちの人らしい英語の混ざった文章は新鮮で、それだけで読むに値します。英語が嫌いな人にはつらいかもしれないですが。 私小説というジャンルは、他のジャンル以上に著者との相性が物を言うものなのかもしれず、そういう意味では合わない人もいるのかもという懸念はあるのですが、読書が好きな人にはぜひ一度読んでみてもらいたい上質の小説です。海外での生活や、英語について、思うところのある方にも、ぜひ。
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苦しさはきっと他人と共有することなんてできない。 人はどこまで行っても一人なんだなあ。 別にいいけど。
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国籍とかなにか、帰属、identity、家族とは何か、コミュニティとは何かということを考えさせられる本。決して問題提起をする本ではなく、あくまでも彼女の私小説であるが、その静かな語り口がこちらに沈思する時間を与えてくれる。良書。
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11月頭。一度読みかけて読み終われずにほったらかしておいた本を再度手に取って。帰国子女、とも違う、日本人とも、アメリカ人とも違う。人とはなんと帰属意識によりかかって生きていきたい生き物かよ!と思う。引き裂かれたアイデンティティ、みたいのを終止意識して生きていくのってどんだけ大変か...
11月頭。一度読みかけて読み終われずにほったらかしておいた本を再度手に取って。帰国子女、とも違う、日本人とも、アメリカ人とも違う。人とはなんと帰属意識によりかかって生きていきたい生き物かよ!と思う。引き裂かれたアイデンティティ、みたいのを終止意識して生きていくのってどんだけ大変かしら。自己顕示欲のはざまで鬱々として生きるのは恥ずかしいのに、身につまされる思いだった。
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すごーく身につまされて、過去を振り返らされてしまった。納得すること多々あり、でもあまり思い出したくもないのでもういいです。
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悲しくなるほどの純度の高い客観性をもってよどみなく記述される現実と、 その合間のはっとさせるような美しい言葉。 その間をぬうように英単語が連なり、 なんともいえない息遣いに魅了される。 答えの出ない問い。孤独。 アメリカで日本人であるということが、 ここまで深い内...
悲しくなるほどの純度の高い客観性をもってよどみなく記述される現実と、 その合間のはっとさせるような美しい言葉。 その間をぬうように英単語が連なり、 なんともいえない息遣いに魅了される。 答えの出ない問い。孤独。 アメリカで日本人であるということが、 ここまで深い内省を強いたのだろうか。 それとも、これこそが文学のなせる業なのだろうか。 とにかく、ここまで書けるなんてすごいと思う。
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Free but Lonelyがひしひしと伝わってきた。東京の空の下ですら孤独と、そこから狂気へとかかる橋が見えてしまうのにhow can I survive this world Im afraid. そこここの表現は、長いけれど、豊かで美しい日本語で語られていて匂いたつような...
Free but Lonelyがひしひしと伝わってきた。東京の空の下ですら孤独と、そこから狂気へとかかる橋が見えてしまうのにhow can I survive this world Im afraid. そこここの表現は、長いけれど、豊かで美しい日本語で語られていて匂いたつような空気を醸し出す。
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