私小説 の商品レビュー
美苗さんと奈苗さんの壮大な長電話にずっとつきあわせられた気分で読み終えました。これが私小説なのか、それとも私小説風の小説なのか。わたしには判断がつきませんが、こうした生活を送ってきた人もいるのかと思うと面白かったです。
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タイトル通りの私小説で、回想シーンがメインのためストーリーは殆どないといっても過言ではない。それでも惹きつけられるのは、著者の生い立ちそのものである異邦人の哀しみや、家族が緩やかに崩壊していくさまが丁寧に美しい日本語で描かれているからか。「本格小説」を書くに至った精神の源がこの本...
タイトル通りの私小説で、回想シーンがメインのためストーリーは殆どないといっても過言ではない。それでも惹きつけられるのは、著者の生い立ちそのものである異邦人の哀しみや、家族が緩やかに崩壊していくさまが丁寧に美しい日本語で描かれているからか。「本格小説」を書くに至った精神の源がこの本から読み解けたように思う。
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共に多感な少女時代に故国を離れ、故国への強い憧憬を抱きながら苦労して大人になった。 やがてペンを持ち、書いた。 アゴタ・クリストフは敵語フランス語で。 水村美苗は母語日本語で。 とても個人的な物語でありながら、言葉(文化)と世界の覇権というのっぴきならないテーマを扱っている。...
共に多感な少女時代に故国を離れ、故国への強い憧憬を抱きながら苦労して大人になった。 やがてペンを持ち、書いた。 アゴタ・クリストフは敵語フランス語で。 水村美苗は母語日本語で。 とても個人的な物語でありながら、言葉(文化)と世界の覇権というのっぴきならないテーマを扱っている。 追記:アゴタ・クリストフが亡命したのは21歳の時(しかも乳飲み子を抱えていた)なので、少女時代というのは言い過ぎでした…。
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著者は小学校時代に親のアメリカ赴任の際渡米した。そのままアメリカに滞在することを両親が選んだことで、著者とその姉は「アメリカのアジア人」として育つ。 この小説では成人して、孤独な毎日を送る著者と姉の電話での長話でほとんど構成され、事件という事件は起きない。だからこの小説を読んで退...
著者は小学校時代に親のアメリカ赴任の際渡米した。そのままアメリカに滞在することを両親が選んだことで、著者とその姉は「アメリカのアジア人」として育つ。 この小説では成人して、孤独な毎日を送る著者と姉の電話での長話でほとんど構成され、事件という事件は起きない。だからこの小説を読んで退屈してしまう方もいるかもしれない。 表題通り、左側で綴じられたこの本は日本語の文庫本なのに時折姉妹が話すように横文字になったり、著者の考えがさまようのに従って、文章の形態がかわったりする。私はこの本を毎晩寝る前に読んだが、姉妹の孤独や、アメリカでの日本人達に対する冷静な観察眼に共感し、それと同時に、雪のしんしんふりつもる美しい情景に思いをはせたりした。そしてなぜか、自分も癒やされた気分になり、読み終わったときには少し寂しかった。
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アメリカの大学院でモラトリアム生活を過ごす妹の「美苗」と、同じくアメリカで売れない彫刻家として過ごす姉の、ある日の電話の様子を軸に、彼女たちのアメリカと日本に対する思い、そしてアメリカで育った日本人としてのアイデンティティを辿る物語。 小説でありながら横書き、さらにはアメリカ育...
アメリカの大学院でモラトリアム生活を過ごす妹の「美苗」と、同じくアメリカで売れない彫刻家として過ごす姉の、ある日の電話の様子を軸に、彼女たちのアメリカと日本に対する思い、そしてアメリカで育った日本人としてのアイデンティティを辿る物語。 小説でありながら横書き、さらにはアメリカ育ちの姉妹の会話ということで、会話にしばしば英語(和訳はなく、本当に英語で書いてある)が登場する。私は非ネイティブながら英語は問題なく読み書きできるので、恐らく作者の意図や想像と同じスピード・受容度で読み進めたが、実際のところ、多くの読者にとってはどうだったのだろうか。 それはともかく、「第二の故郷」と呼ぶには馴染み切れず、そのくせあまりにも現実生活が伴う「アメリカ」への想いや、同様に日本や日本にいる母親への愛とも疎外感とも憎しみとも呼びきれない複雑な感情は、読んでいるこちらまでもが、自分の足元が覚束なくなるような気分になった。 作中で登場人物に指摘されているように、彼女は、英語で日本人としてのアイデンティティを問う小説を書けば良かったのでは、と思う。それでも、日本語での小説に拘ることが、彼女としてのアイデンティティだったのか。 ちなみにMako YoshikawaのOne Hundred and One Waysなんて、まさに美苗(作者の水村美苗がどうだったかはおいておいて、この作品中の登場人物としての美苗)が書きたかったであろう小説だったんじゃないかな?
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バイリンガルテキスト 頭のなかで言語は混ざって出てゆくのに、それぞれの言語世界を生きる「私」は頭のなかで分かたれている。
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『本格小説』が面白かったので、読後すぐに購入。 『手紙、栞を添えて』と併読しながら読んだ。 というのも、from left to right になかなか慣れず。 読みつかれてもう一冊の方を先に読み終えてしまった。 ほとんどのページに翻訳なしの英語が載っていて、 結果的に読...
『本格小説』が面白かったので、読後すぐに購入。 『手紙、栞を添えて』と併読しながら読んだ。 というのも、from left to right になかなか慣れず。 読みつかれてもう一冊の方を先に読み終えてしまった。 ほとんどのページに翻訳なしの英語が載っていて、 結果的に読むのに凄く時間がかかってしまった。 読後、何より心に引っかかってどうしようもないのが、 実在するであろう姉奈苗のことを こんな風に書いてしまっていいのか?ということ。 ちょっと私には理解が及ばず。。。 今このお姉さんは生きているのか? うぅむ、、、気がかりだ・・・。 姉妹中は悪化しないのだろうか? この一面だけ切り取れば、 何ともクール、というか、シュール。 そうやって姉を通して自分のことを 語っているのだと思うけれど、 その孤独や虚しさが痛い程伝わってくる。 今日でアメリカに来て二十年になるというその日、 「今まで何をして生きてきたんだろう」とつぶやく。 誰しも心の奥底で同じように 考えることはあるだろうけれど。 そして覚めた目で家族を見ているのが 私にはとても怖かった。 著者は相当冷静な女性なのだと思う。 なんといえばよいのか分らないが、 漠然としたザワザワ感でいっぱいになってしまった。 でも、何だか他の作品も続けて読んでみたいと思っている。
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free but lonely うーん…と思いながら読んでたけど、 読み終えてみると何だかすっきりした。 独特な環境で育った姉妹のそれぞれの孤独が描かれていていい。
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両親に連れられ姉とともにアメリカに渡った主人公は、幼くして異国で暮らす根無し感を抱いたのであろうか。 英語という言語に慣れることもなく、数少ない身内である母や姉とのいろいろを背負いながら、「 何がなんでも日本人であろうと思って生きてきた 」 という。
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ものすごく好きだった。もしかしたら、すべての本のなかでいちばん好きかもしれないってくらい好き。まともな想が書けないくらい好き。なんだろう、わたしは別に異国で暮らしたことがあるわけでもなく、学校で居場所がなかったりしたわけでもなく、親や家がなくなったわけでもなく、著者とは共通点もな...
ものすごく好きだった。もしかしたら、すべての本のなかでいちばん好きかもしれないってくらい好き。まともな想が書けないくらい好き。なんだろう、わたしは別に異国で暮らしたことがあるわけでもなく、学校で居場所がなかったりしたわけでもなく、親や家がなくなったわけでもなく、著者とは共通点もないのに、なんだかものすごくものすごく共感できて、気持ちがものすごくものすごくよくわかる気がした。姉との英語まじりの電話のやりとりなどは軽妙でユーモアもあるんだけど、語られる心境はすごく暗くて、すべてむなしいとか、子ども時代から遠く隔たってしまったとか、楽しいこともたくさんあって恵まれているはずなのに不幸な気がするとか、想像していたような人生にならなかったとか、将来が不安とか、人生はつらいとか、長い年月をちゃんと生きてこなかった、とかとかとか。わたしもまったく同じこと考えてる、と思った。それは安心するほどに。さらに、実際同じような経験をしてるわけではまったくないんだけど、すごい孤独感とか精神的に落ちていく感じがとてもよく想像がついて。朝起きて、朝食を食べる段階でもう孤独でぽろぽろ泣くとか、孤独で気が狂ってしまうかも、とか。想像できてこわくなってしまう。アメリカ人はそんなにも孤独なんだろうか……。あと、美苗が、姉の奈苗や親や友人の気持ちを想像して、自分が胸ふさがれる思いをするところとかもよくわかる。それと、これまでわたしは、帰国子女があこがれ、とかのんきなこと言ってたんだけど、そういう気持ちがふっとんだ。プレッピーだのアイビーだのあこがれても、わたしが現実にアメリカの高校なんぞへ行ったら、有色人種で言葉が話せなくて意見がなくて貧乏でって、クラスの最下層民になるってことがよくわかった。留学なんかしても精神を病んで帰ってくるのがオチだっただろう。それはともかく、アメリカという国、日本という国、それぞれの文化、そして世界の文化についていろいろ考えさせられた。目からうろこが落ちたような。ラストのラスト、雪のなか美苗が窓をあけはなつところで、それでも希望が見えた気がした。それもすごくよかった。すばらしい本を読んだのに、感想が稚拙すぎて悲しい……。とにかくほんとにこの本が好きだ。何度も読み返したい。
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