私小説 の商品レビュー
図書館で新潮文庫版を借りてひじょうにおもしろく読んでいたけれど、読みきれないまま返却期限になってしまったので、ゆっくり読もうと思ってその後引っ越したちくま文庫版で入手。文庫になっても引っ越しても解説もあとがきもなにも加わらない潔さ。 ただ、本文の途中におりおりはさみこまれた写真が...
図書館で新潮文庫版を借りてひじょうにおもしろく読んでいたけれど、読みきれないまま返却期限になってしまったので、ゆっくり読もうと思ってその後引っ越したちくま文庫版で入手。文庫になっても引っ越しても解説もあとがきもなにも加わらない潔さ。 ただ、本文の途中におりおりはさみこまれた写真がモノクロなので、単行本もいつかみてみたい気がずっとしている。
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親の都合で中学時代にアメリカに移住した著者自身の私小説。横書きで英文も混じりやや読みづらい文体。幼少期に家族で移住し英語を身につけ海外体験できるって羨ましいと思ったけど、自分の意思で移住した訳ではないと苦悩も計り知れないんだなぁと。人種差別や自分のアイデンティティに悩まされる姿が...
親の都合で中学時代にアメリカに移住した著者自身の私小説。横書きで英文も混じりやや読みづらい文体。幼少期に家族で移住し英語を身につけ海外体験できるって羨ましいと思ったけど、自分の意思で移住した訳ではないと苦悩も計り知れないんだなぁと。人種差別や自分のアイデンティティに悩まされる姿が痛々しい。
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ほぼ事実と思われるが、その物語に引き込まれた。 日本からアメリカに渡った姉妹の今後の生活における葛藤や後悔、家族という呪縛、どれも私には馴染みのないものだけれど、なぜか自分のことの様に息をつめて読んだ。 サラリと書かれているが、時に文学的な美しい文章に出会いその巧みさにハッとする...
ほぼ事実と思われるが、その物語に引き込まれた。 日本からアメリカに渡った姉妹の今後の生活における葛藤や後悔、家族という呪縛、どれも私には馴染みのないものだけれど、なぜか自分のことの様に息をつめて読んだ。 サラリと書かれているが、時に文学的な美しい文章に出会いその巧みさにハッとする。 流れるような描写に時を忘れて読んだ。
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書いているまさに「今」の時点から過去を回想する。その筆は時間をゆっくりと時系列順にたどり「今」にたどり着く。そしてその「今」まさに書き手は『私小説 from left to right』を書いている……と「私小説」のセオリーをそのまま地で行く実に生真面目な作品。読み進めていてあま...
書いているまさに「今」の時点から過去を回想する。その筆は時間をゆっくりと時系列順にたどり「今」にたどり着く。そしてその「今」まさに書き手は『私小説 from left to right』を書いている……と「私小説」のセオリーをそのまま地で行く実に生真面目な作品。読み進めていてあまりにもダラダラ会話が続くのが苦痛に感じられた。これは実に「女性たち」の話なのだなと思う。日本のみならずアメリカも封建的な規範に縛られていた頃、その様子をマイノリティである日本人女性の目から暴いている。その観察眼は流石だが、やや退屈
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あのころはサラリーマンにとって海外転勤族というと華やかな、なにがなしうらやましい状況だった、家族にとっても。 でもたいがいは3、4年で帰国して学齢の子どもがいれば、せっかくかじったとて英語やドイツ、フランス語の補習にやっていたほど。その言葉がその後どうなったかは知らない。 ...
あのころはサラリーマンにとって海外転勤族というと華やかな、なにがなしうらやましい状況だった、家族にとっても。 でもたいがいは3、4年で帰国して学齢の子どもがいれば、せっかくかじったとて英語やドイツ、フランス語の補習にやっていたほど。その言葉がその後どうなったかは知らない。 『私小説』の主人公すなわち作家水村さんの親は帰る気が無く、わざわざ現地採用にしてもらい両親と姉妹ともども20年もアメリカに滞在してしまった。 それなのに本人は英語に慣れなくて、読む本は日本の、それも近代文学ばかり。言葉ばかりではない、30超えてまだ大学院生。去就も行く末も定まらず、悩み愁いに染まって降る雪を見ているところからこの私小説は始まる。 『続明暗』で水村氏の文章は堪能しているから、いえその先の成功を知っているから、安心して読んだのだけれど、人間はしょせん孤独であるとまざまざと感じさせる小説だ。 12歳でアメリカに連れられてきた女性が、アメリカに暮らしをしながらも溶け込めず、日本を恋し、その日本も近代文学の中の、もうどこにもない日本を懐かしみ慈しみ、小説家になっていこうとする。 大学、大学院と進むうちに自由の国、やる気があればどこまでもやらせてくれる、認めてくれる。しかし、気が違うほど努力しないといけない。 勉強している自由、結婚しない自由。自由でも厳しい、寂しい世界であるアメリカ。 そして、もう一つ家族のしがらみがある。いやなくなってしまった。外国で暮らしているがゆえに頼りにすべき家族、なのに家族崩壊。 20年経った今、英語が好きでバリバリ働いていた父親は病気になって再起不能、その夫を施設に入れてしまった母親は年下の男性とアメリカを離れ、思い出のロングアイランドの家は売りに出されてしまった。 大人なんだから自立は当然、でも帰る家があると無いでは大違い。孤独地獄に落ちたようだ。姉妹は離れて暮らしているので、電話で長話をする様子が胸に迫るよう。 当時として、この家族は一歩前を行っていたのかもしれない、現代の日本の家族はこんな風な、近いものがあるような。 ところどころにある文学談義、樋口一葉や芥川龍之介の文章が挿入されていて、ヨコガキ文章ではあるけれども読書好きを唸らせる。 英文まじりのところも飛ばしてもわかるし、文法は難しくないから、知らない単語は辞書を引いてなんとか読んでいるうちに、慣れてくるからおもしろい。 今じゃ珍しくないヨコガキの英文まじりの文章。ブログで慣れてから読んだので、違和感が無いのに気が付いた。(ああ、そんな時代になってしまったのか!)
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メタ小説的な小説を書かせたらこの人の右に出る人はいないんじゃないかと、本作を読んで改めて感じた。突き詰めればたった24時間の、アメリカからのエグゾダスを巡る姉妹の葛藤の物語。 近代日本文学、日本語、そして日本への愛憎入り混じった感覚は、当たり前のように日本に住む人間からはなかなか...
メタ小説的な小説を書かせたらこの人の右に出る人はいないんじゃないかと、本作を読んで改めて感じた。突き詰めればたった24時間の、アメリカからのエグゾダスを巡る姉妹の葛藤の物語。 近代日本文学、日本語、そして日本への愛憎入り混じった感覚は、当たり前のように日本に住む人間からはなかなか生まれてこないものかもしれない。
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水村さんがアメリカで育った時代の細かい日常の物語を今まで読んだことがなかったので面白かった。幼少期の友人のLindaの話が衝撃的だった。奈苗さんの現在が気になる。
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横書きの文庫本は初めてで、ライトノベルのような軽いノリかと思いきや、衝撃的だった。 12歳のとき家族の都合でアメリカに引っ越してから20年間、日本や日本語に狂おしいほどの望郷の念を抱きながら生きた著者の、エッセイに限りなく近い小説。アメリカでの生活になじめない美苗は、目的もないま...
横書きの文庫本は初めてで、ライトノベルのような軽いノリかと思いきや、衝撃的だった。 12歳のとき家族の都合でアメリカに引っ越してから20年間、日本や日本語に狂おしいほどの望郷の念を抱きながら生きた著者の、エッセイに限りなく近い小説。アメリカでの生活になじめない美苗は、目的もないまま大学院の博士課程に在籍しつつ、悶々と悩む日々を送る。姉の奈苗も似たような状況で、二人で底なしの孤独を慰めあって暮らしている。日本を離れて長い二人の会話は、日本語と英語が混じる。親はすでにバラバラになっている。 アメリカでは東洋人としてひとくくりにされ、白人でない自分は、英語ができようが受け入れられない。でも孤独なのは自分たちだけでなく、アメリカ人の旧友たちも孤独から発狂してしまった。日本に帰りたいという気持ちはあっても、自分のあこがれる日本から様変わりしてしまった国でやっていけるのだろうかという不安。 読みだしたとたん、「病んでるな~」という印象だったが、さらに病む姉とのやり取り自体は正常に思える。個人主義の大国アメリカで感じる孤独は、寒い冬によって強調される。姉妹とも長年うつ状態で、気の毒なほど痛々しい。私もこのくらいの年齢のとき、アメリカに長く住んでいたため、身が引き裂かれるほどのホームシックに共感し、本を途中で置くことができないほど夢中で読んだ。生々しかった。美苗氏本人が言っているように、住み着いたのが西海岸だったら違っていたと思う。 著者は念願の帰国をはたし小説家になるが、頼りないお姉さんがどうしているのかとても気になる。続編も絶対に読むつもりだ。
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Home is not a place to return to. そうかもしれない。白人社会に身を沈めることの痛みが伝わってくる。古風な日本語部分とスラングを交えた英語の口語文のギャップが潔い。二人姉妹の苦悩やどうしようもない姉の姿に共感するとともにドキッとする。
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4月の課題本、後ろに二人待ってるので結構ボリュームがあったけどダッシュで読んだ。故に読み飛ばしたところも多かったけど、ある意味「急いで読まなきゃいけないから」って言い訳があってよかったかも。 それくらい、濃かった。 しかも「アメリカに住む日本人」って共通点から、自分の心の奥深く...
4月の課題本、後ろに二人待ってるので結構ボリュームがあったけどダッシュで読んだ。故に読み飛ばしたところも多かったけど、ある意味「急いで読まなきゃいけないから」って言い訳があってよかったかも。 それくらい、濃かった。 しかも「アメリカに住む日本人」って共通点から、自分の心の奥深くや、体験を引っぱり出される箇所が多々あったので、真面目に読んでたら疲れて全然進めなかったかも。 日本に家もあって家族も友達もいる自分ですら、もう日本では生活できないかも、って不安を抱えてるのに、家族ごとアメリカに来てしまった作者はその思いが一段と強いと思う。 で、戻れないからこそ哀愁の念もいっそう強くて、それが容易に彼女をアメリカに溶けこませなくしている、悪循環がNYのどんよ~りとした天気と一緒に語られていく感じ。 作中に「カリフォルニアに住んでたら違ってたかも」という箇所がでてきたけど、カリフォルニアに住んでたら違ってたと思う。 土地がでかい分人のつながりが薄いけど、広大な土地と年中良い天気のお陰でもっと開放的に、ポジティブになれてたと思う。移民も多いから、アメリカ内で自国文化を保つという両立ももっと上手く出来てたと思う。 少なくとも、自分はできてると思う。それでもアメリカに対する、たまに「あれっ?」と感じることが一挙に羅列されてて、それに嫌でも対面させられて、読み飛ばしても重かった。読み飛ばす理由があってよかった。
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