何もかも憂鬱な夜に の商品レビュー
生まれてすぐに捨てられて施設で育ち、刑務官として働く「僕」。「僕」の中に残る奇妙な記憶、そして以前付き合っていた彼女、「僕」の好意を裏切って再犯した男、同じ施設で育って自殺した友人と彼が残した日記、夫婦殺害で死刑判決を受けた19歳の若者。「僕」を導いてくれた施設長。青春期のぶつけ...
生まれてすぐに捨てられて施設で育ち、刑務官として働く「僕」。「僕」の中に残る奇妙な記憶、そして以前付き合っていた彼女、「僕」の好意を裏切って再犯した男、同じ施設で育って自殺した友人と彼が残した日記、夫婦殺害で死刑判決を受けた19歳の若者。「僕」を導いてくれた施設長。青春期のぶつけようのないモヤモヤした気分を生と死を通して描く。見事だ。 抑えようのないイライラ、そして性衝動。暴発すれば犯罪に走るか自殺するか、しかない。「僕」も同じような衝動に捉えられた経験があり、施設長に教えられたこの世界の素晴らしさと考え方を死刑囚の若者にも伝える。「僕」は若者の魂を救えるのか。 「自分以外の人間が考えたことを味わって自分でも考えろ。考えることで人間はどのようにでもなることができる。世界に何の意味もなかったとしても人間はその意味を自分で作り出すことができる」それが答えだ。 死刑宣告を受けた若者に言う。 「お前は今ここに確かにいるってことだよ。それならお前はもっと色んなことを知るべきだ。どれだけ素晴らしいものがここにあるのか。お前は知るべきだ。命は使うものなんだ」 そう、命は使うものなのですよ!死刑制度の賛否については2つの意見をバランスよく取り上げ答えを出さずに読者に委ねる。 そして話は、すとんと憑き物を落として終わる。もうこんなイライラが懐かしいくらい過去のものになった自分だからこそ、すとんと落ちたが、若い頃に読んだら違う印象を受けたのだろうなとも思うけど。
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やはり僕は中段あたりから結末を意識し、 まるで中村さんの背後から眺めるように読み進めた。 真下が死に、ノートが届く。 こんなことを、こんな混沌を、感じない人がいるのだろうか。善良で明るく、朗らかに生きている人が、いるんだろうか。たとえばこんなノートを読んで、なんだ汚い、暗い、...
やはり僕は中段あたりから結末を意識し、 まるで中村さんの背後から眺めるように読み進めた。 真下が死に、ノートが届く。 こんなことを、こんな混沌を、感じない人がいるのだろうか。善良で明るく、朗らかに生きている人が、いるんだろうか。たとえばこんなノートを読んで、なんだ汚い、暗い、気持ち悪い、とだけ、そういう風にだけ、思う人がいるのだろうか。僕は、そういう人になりたい。本当に、本当に、そういう人になりたい。これを読んで、馬鹿正直だとか、気持ち悪いとか思える人に・・・・僕は幸福になりたい。 この一文に僕はとても共鳴し、 僕もまたそうである・・・、という同調のようなものを感じていた。 いい結末だった。 文庫版には筆者のあとがきがあり、 それを読みながら、僕は余韻に浸った。 バッハの『目覚めよと呼ぶ声が聞こえ』が、 陰鬱だったこの本を「希望」が見えるような・・・ そんな結末へと導いてくれた。 今、僕は少し晴れやかである。
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人が人を裁くとは何なのか。 ここで描かれる刑の執行や罪を犯した者への接した方はネット上で散見されるようなセンセーショナルなものではない。 淡々とし、絶望も希望も何もない。本人がやらかした事=罪に対して罰があるのだからそれでいいという人もいるかもしれない。 死刑とは人が人を満足させ...
人が人を裁くとは何なのか。 ここで描かれる刑の執行や罪を犯した者への接した方はネット上で散見されるようなセンセーショナルなものではない。 淡々とし、絶望も希望も何もない。本人がやらかした事=罪に対して罰があるのだからそれでいいという人もいるかもしれない。 死刑とは人が人を満足させるための娯楽ではない。村上龍はかつて青春の青さを限りなく透明に近いブルーと表現したが、ここで描かれるのは全てが灰色に染まった人間の日々である。
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※このレビューにはネタバレを含みます
孤児院あがりで刑務官を務める主人公が受刑者や自らの生い立ちを見つめて人が人を裁くことや死刑制度と向き合う物語。 辿々しく曖昧な文章が多いが自分の気持ち等を上手く言語化できないのは壮絶な来歴がゆえだと思うと納得できる。人でなしの受刑者に影響されてやさぐれだ主人公がまた蘇生していくきっかけに劇的なものがない。でも実際はそんなもんだろうとも感じる。刑務官の先輩の「一番聞いていて辛いのが、死刑存続か、廃止か、という言葉だ。 ・・・・・・それなら廃止でなくて、 停止にするべきだろ。じゃないと、過去に俺達がやってきたことが、全て間違っていたってことにな る......。それは身勝手過ぎるじゃないか」が一番心にずしんときた。
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人間の闇の部分と向き合う様な作品だった。 刑務官である主人公がかかわるのはさまざまな犯罪者たち。 自殺した友人 真下、控訴しなければ死刑になってしまうのに控訴をしようとしない山井、施設育ちの刑務官な僕。灰色な世界にいるかのような気分になり、鬱鬱とした感情に飲み込まれそうになりなが...
人間の闇の部分と向き合う様な作品だった。 刑務官である主人公がかかわるのはさまざまな犯罪者たち。 自殺した友人 真下、控訴しなければ死刑になってしまうのに控訴をしようとしない山井、施設育ちの刑務官な僕。灰色な世界にいるかのような気分になり、鬱鬱とした感情に飲み込まれそうになりながら読む。 生と死について考えさせられる1冊。 少し光を感じられるラストにほっとした。
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希望があるような、無いような。 正しいような、正しく無いような。 そういう悩みの渦に巻き込まれる感覚です。
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眠れなくて憂鬱じゃ……。 ってな事で、中村文則の『何もかも憂鬱な夜に』 中村文則さんは何時か犯罪を犯すんじゃないかと思う程、今まで読んだ本の内容は深海の様な闇を吐き出してる感じがするなぁ。 この感覚は言い方悪いけど精神異常者の感覚が無いと書き切れんのんじゃないかと思ってしま...
眠れなくて憂鬱じゃ……。 ってな事で、中村文則の『何もかも憂鬱な夜に』 中村文則さんは何時か犯罪を犯すんじゃないかと思う程、今まで読んだ本の内容は深海の様な闇を吐き出してる感じがするなぁ。 この感覚は言い方悪いけど精神異常者の感覚が無いと書き切れんのんじゃないかと思ってしまう。 最後まで主人公の苦悩を理解出来ずにモヤモヤした憂鬱な夜となりましたとさw 2017年56冊目
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※このレビューにはネタバレを含みます
重かったーそして読みにくかったー 死刑には興味があるので、その点は別に重くはなかったけど、時系列が変わっていくので少々分かりにくかった。 山井と主人公の話をもう少し深掘りして欲しかった。
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タイトルの通り、寝る前に読了したおかげで本当に"何もかも憂鬱な夜"になってしまった。 施設出身の主人公が、刑務官として夫婦を殺害した犯人を担当していくなかで自分の過去や犯人と対峙していく物語。 ずっしりと重い。 そして、現実にもこういうことってあるんだろう...
タイトルの通り、寝る前に読了したおかげで本当に"何もかも憂鬱な夜"になってしまった。 施設出身の主人公が、刑務官として夫婦を殺害した犯人を担当していくなかで自分の過去や犯人と対峙していく物語。 ずっしりと重い。 そして、現実にもこういうことってあるんだろうな、とはっきり認識させられる。 暗くて読んでいてつらいので星は3だけど、構成や文章力はさすがの一言。
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殺人衝動や破壊衝動を持つ人たちの気持ちが生々しかった。展開は思ったより普通で、テーマの重さの割にサラッと読めすぎて物足りなかった。
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