何もかも憂鬱な夜に の商品レビュー
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ピース又吉の好きな本。 本当に憂鬱な夜にこれを読むのは危険だな。前に「銃」を読んだときもだったけど、心を持ってかれてしまって不安になる。でもこれは意外な方向に話が進んでいって、最後に少し光が見えたのでよかった。 難解なところもあり、暴力の描写を読むのは苦手だけど、セリフがよくてスイスイ読み進められた。 いま自分が生きている意味。わかったようなわからないような・・・。 それでもやっぱり、ってネガティブな無限ループからなかなか抜け出せずにいます。 死刑については「13階段」でも読んだけど執行する側の人の負担がとても大きい。答えはなかなか見つからない。かといって投げ出すこともできない。
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僕がいつも抱えていた、なかなか言い表せないもやもやした感情を、こんなに見事にリアルな言葉にしている。ということに感動した。比喩が的確。思春期という言葉がこっ恥ずかしいけれど、それはきっと必ずしも一過性の感情でもなく、いつもどこかで意識し続けている何かだ。 ここで描かれているのは絶...
僕がいつも抱えていた、なかなか言い表せないもやもやした感情を、こんなに見事にリアルな言葉にしている。ということに感動した。比喩が的確。思春期という言葉がこっ恥ずかしいけれど、それはきっと必ずしも一過性の感情でもなく、いつもどこかで意識し続けている何かだ。 ここで描かれているのは絶望ではなく、焦燥であり、戸惑いであり、怯えであり、そして希望である。と感じた。
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138ページと割と短めの長編で半日で読みきってしまった。ただ単に途中で止めることが出来なかった。帯の本文紹介では死刑制度に対する問題提起が主旨の様に書かれているが、それはあくまでも伏線である。施設で育った主人公 は刑務官をしているが、その生い立ちの精か否か、実際の自分の存在がもっ...
138ページと割と短めの長編で半日で読みきってしまった。ただ単に途中で止めることが出来なかった。帯の本文紹介では死刑制度に対する問題提起が主旨の様に書かれているが、それはあくまでも伏線である。施設で育った主人公 は刑務官をしているが、その生い立ちの精か否か、実際の自分の存在がもっと違う何かではないのか、今の自分はあくまでも表面的であり、いつか暴発しかねない内面との壁に苦悩している。 思春期時代の悶々と苛々した感情を処理できず自殺した友人や殺人を犯したものを目の前にした主人公が精神のコントロールできなくなり下へ落ちていく様子を随所で水に例えて表現しているが、これがくっきりと頭の中で想像させることができ、臨場感を沸き立たせている。 死刑執行に携わった主任刑務官がその制度の曖昧さ、マスコミが騒いだらその煽りを受けての判決や年齢のラインについて語る場面では、やはり制度の有無について果てしなく考えさせられる。漫画「モリのアサガオ」を読んだ時と同じ感覚が甦り、言い様のない虚無感が襲ってくる。 服役囚の佐久間が言った「倫理や道徳から遠く離れれば、この世界は、まったく違ったものとして、人間の前に現れるんです。」この言葉に背筋が寒くなった。これに快感を覚えるようになった時が犯罪者との境界線を越えるときなのだろうか。
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「自殺と犯罪は、世界に負けることだから」 あとがきで著者が「水」を意識して書いたとあるように、それを常に意識させられた。私のイメージとしては、雨の夜、室内の明かりで外が全く見えない窓ガラスの水滴を眺めているような。暗く、不快で、おさまりが悪いのに、そこにいてじっとしてしまう。と...
「自殺と犯罪は、世界に負けることだから」 あとがきで著者が「水」を意識して書いたとあるように、それを常に意識させられた。私のイメージとしては、雨の夜、室内の明かりで外が全く見えない窓ガラスの水滴を眺めているような。暗く、不快で、おさまりが悪いのに、そこにいてじっとしてしまう。とにかく、今は図書館で借りたが、次は文庫本で買ってこようと思った。140頁の短い中にすごいものが詰まっている。
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死刑。 これはずっとずっと考えても答えが出ない問題で。でもなんとなく死刑廃止論信者だった私の曖昧な考えに、この本は新しいヒントをくれた気がする! 中村さんの多くの本のテーマとなっている、命。命は尊いものだから、誰の手によっても奪うことはできないから、死刑は廃止されるべきだというのは、もちろん道理にかなってて、その通りなんだけど、中村さんはこう書いている。 命はアメーバだと。ニンゲンなんかが誕生する以前から、途切れることなくずっと続いてきた。その過程の何か一つでも存在しなかったら今はない、今に勝る過去はない、と。 死とは、これまでの全ての命とこれからの新しい命を全て奪うものなんだってことを中村さんは言いたかったのかなと私なりに解釈しました。 だから死刑は良くない。さらに、こうも思う。 私は犯罪者になったことはないけど、誰しも経験したことがあるだろう、眠れないほど辛い何もかも憂鬱な夜にただ死んでしまいたいと願うのではなく、罪を犯したものは私たちがそうやって感じた何万倍もの苦痛を、考えて考えて考え抜くべきだ。 答えはきっと出ないけど、罪の償い方とは死ぬことではない、自分の犯した罪を後悔し、もう生きていけないと思うほど考え抜くことだと思う。残酷かもしれないけど、中村さんも言うように、犯罪者の命とその罪を犯した者の人間性は違うから。恨むべきは命ではなく、その個の中身そのものなのではないかと思った。 まだまだ死刑に対する考えはまとまらないし、どれだけ考えても足りないと思うけど、新しい視点を与えてくれたこの本を読んで本当によかった>_<中村さんの作品は、本当にいろんな人に読んでほしいものばかりです。
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暗いけどおもしろい。 自分の危うさを感じながら生きてる人は、たくさん居るんだろうなあ。 最後の手紙で、アンビバレントな想いを感じて涙が出た。
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僕は、刑務官として、二十歳の未決死刑囚・山井を担当していた。一週間後に迫った控訴期限を前にしても、山井はまだ語られていない何かを隠している。 混沌。 美しく、汚く、綺麗で汚れている作品。 全体的に暗く、陰鬱な雰囲気が漂っているのですが、不意に光が差したりして、その光が印象的だっ...
僕は、刑務官として、二十歳の未決死刑囚・山井を担当していた。一週間後に迫った控訴期限を前にしても、山井はまだ語られていない何かを隠している。 混沌。 美しく、汚く、綺麗で汚れている作品。 全体的に暗く、陰鬱な雰囲気が漂っているのですが、不意に光が差したりして、その光が印象的だったりします。 死刑という制度と、無知を考えさせられる作品。
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タイトル通り、憂鬱な小説でした。 刑務所モノが好きなので、好きっちゃー好きだったけど、なんか物悲しくてやるせない気持ちになりました。 こういう想いを抱いて生きていく人がいる一方、こういう想いを抱いているという想像をすることもなく生きている人がいるっていうことも真実なんだよなあ、と...
タイトル通り、憂鬱な小説でした。 刑務所モノが好きなので、好きっちゃー好きだったけど、なんか物悲しくてやるせない気持ちになりました。 こういう想いを抱いて生きていく人がいる一方、こういう想いを抱いているという想像をすることもなく生きている人がいるっていうことも真実なんだよなあ、と思う。 真下のノートの部分は心の中にうすく積もっていく埃みたいなものを如実にあらわしていて苦しかった。 こういう小説も世界の苦い部分を感じるために必要だと思う。
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ピース又吉さんがアメトークで大絶賛していて前から気になっていた。 この小説全体に描かれる「死」、そしてそこから浮かび上がる「生きること」「命」よりも、 自分がなぜ本や映画、音楽が好きなのかがわかったような気がする。 「自分以外の人間が考えたことを味わって、自分でも考えろ」という...
ピース又吉さんがアメトークで大絶賛していて前から気になっていた。 この小説全体に描かれる「死」、そしてそこから浮かび上がる「生きること」「命」よりも、 自分がなぜ本や映画、音楽が好きなのかがわかったような気がする。 「自分以外の人間が考えたことを味わって、自分でも考えろ」という 施設長のセリフががつんときた。 両親に捨てられ孤児院で育ち、学生時代には友人が自殺し、犯罪者が 収容される拘置所で働いている男が主人公。 タイトルや表紙の写真のイメージ通り憂鬱な雰囲気なんだけど 読み終わった後は不思議と憂鬱さが晴れていくような気がした。
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