生きてるだけで、愛。 の商品レビュー
ブラックアウトしたように完全に視界がうしなわれて、正座したあとの足のように身体の感覚がなくなって、耳も聞こえなくなって匂いも感じなくなって、重力すら感じることが出来なくなったとき、人はどこに自分を見いだそうとするんだろう。 読み終わってそんなわけのわからんことを考えた、わけのわ...
ブラックアウトしたように完全に視界がうしなわれて、正座したあとの足のように身体の感覚がなくなって、耳も聞こえなくなって匂いも感じなくなって、重力すら感じることが出来なくなったとき、人はどこに自分を見いだそうとするんだろう。 読み終わってそんなわけのわからんことを考えた、わけのわからん主人公の物語。 色んな読み方があるだろうけれど、作中で一番こころに残ったのは、 『手応え。手応えがほしい』と主人公が悶えるところ。 終盤で『つながってたい』という描写があるけど、手応えというのが外界や他者とのつながりにでもあって、故に、手応えを感じることが出来ていない主人公はつながりを切望するも、そのつながりの手応えを感じることが出来ていない。 なんだかぐるぐる回っていってしまう物語のようにも読めた。 女性の作家で、違う作品も読んでみたいな、と思ったのは久し振りだ。
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劇団本谷由紀子の本谷由紀子の小説、というか戯曲 相変わらずシュールでほろ苦くて笑える本谷由紀子ワールド オンリーワンの世界観を創造出来ることは才能だね
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この本との出逢いが私にとってはまさに、北斎の見た富士山のざっぱーんのシーン。 私が漠然と抱いていた想いを、まさに言葉として書き表してくれている。 誰かに分かってほしい 五千分の一秒でもいいから、通じあうことができれば幸せ はじめてこんなに小説に共感できた 自然と文...
この本との出逢いが私にとってはまさに、北斎の見た富士山のざっぱーんのシーン。 私が漠然と抱いていた想いを、まさに言葉として書き表してくれている。 誰かに分かってほしい 五千分の一秒でもいいから、通じあうことができれば幸せ はじめてこんなに小説に共感できた 自然と文字が脳の中で再構築されて、映画のように動き出した ラーラリラー、ラーラリヒーのやり取りがすごく好き
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※このレビューにはネタバレを含みます
仕事が一山越えて、積ん読になってた中から引っ張り出した。 あらすじはスーパーシンプルで、鬱持ちでずっと寝てばかりいるエキセントリックな美女が、彼氏の元カノに自立と別れを迫られて云々という話。 リズミカルな筆致で、さくさく読み進めていたら、最後でざっくり刺された。「いいなあ津奈木。あたしと別れられて、いいなあ」ああそうですよね…と立ち尽くしてしまった。 大変勝手な話だが、恋人と別れるときに、「悲しい」「つらい」以外に、やたらと腹が立つことがある。「こんなに私が辛いのに何でこんな思うように物事進まねえんだよ!!」とか、「もう好きじゃないし別れたいし話したくもないのに何で別れ話しないと別れられないんだよ!!」という至極理不尽で自己中心的なものである。しょーもない。けどこれって要は、この自分の中の制御できない量のエネルギーをどこにもぶつけられなくて、今までは何らかの形で受け入れてくれてた恋人の存在も失って、やり場がないイライラが自分の中で爆発してそれが誘爆しまくってヒステリックになってる状態なのだな。私はこの先もこの“私の感情”に振り回されて疲弊して生きていかなきゃいけないのに、彼はこの時の数時間の会話と決定で私とも私の感情とも別れられるということへの、半ば八つ当たりだ。 寧子の意思が向かう先は社会でも恋人でもなくて、自意識が牢獄のような自意識から抜け出るところにあるんだろうか。でもそんな矛盾するものは存在しない。だから他のものを探すしかない。それが恋人でないのなら、仕事か? ソーシャルな人との繋がりか? 趣味か? あっさりと見つけられる人もいるし、そうでない人もいるんだろう。見つけられない、見つけづらい性質の人間にとっては、それはまさに富嶽三十六景の一枚の絵が刻む5000分の1秒くらいわずかで、稀有で、心が発火して燃え尽きる一瞬なんだろう。それが一生のうちにぽつぽつと何回かあるのか、加齢とともにそれが日常になるのか、私もそろそろ先が見たい。
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まさに、生きているだけで、愛。 自分と上手く向き合えなくてどうしようもないんだけど、 どうにかしなきゃって、必死で生きようともがき苦しんだり、 恋人と向き合いたいとあがいたりする主人公の姿が 脆くもどこか力強くて、すごく惹き付けられた。 五千分の一秒だけでも、誰かと本気で繋が...
まさに、生きているだけで、愛。 自分と上手く向き合えなくてどうしようもないんだけど、 どうにかしなきゃって、必死で生きようともがき苦しんだり、 恋人と向き合いたいとあがいたりする主人公の姿が 脆くもどこか力強くて、すごく惹き付けられた。 五千分の一秒だけでも、誰かと本気で繋がれたら素敵。
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痺れる。 鬱で仮眠症で引きこもりで、え!なんで!?って度胆を抜かれてしまうほどの数多なる奇行。 突然思い立って全身徐毛したり、車の上に乗ってべこんべこんにしたり、真冬の屋外で全裸になったり でもなんとなく、わかってしまう。 一見退廃的で奇想天外な彼女の、それでもまともに...
痺れる。 鬱で仮眠症で引きこもりで、え!なんで!?って度胆を抜かれてしまうほどの数多なる奇行。 突然思い立って全身徐毛したり、車の上に乗ってべこんべこんにしたり、真冬の屋外で全裸になったり でもなんとなく、わかってしまう。 一見退廃的で奇想天外な彼女の、それでもまともになろうと、生きようともがく姿が、恋人と向き合いたいとあがく姿が 力強くて、惹き付けられて、いたく切ない。 綺麗でもまっとうでもないけれど、ナマの愛なんだとそう思った。「生きてるだけで、愛。」
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これ、すごくいい。当時とった芥川賞より全然好きです。 ――妥協におっぱいがついて歩いているような女、寧子。 とか、表現が毒らしくかわいくて好き。すげー表現だとおもう。 ――頭おかしいのってなおるのかなぁ。あのさ、あたしいっつも津奈木に頭おかしいくらいに怒るじゃん?怒るのとか...
これ、すごくいい。当時とった芥川賞より全然好きです。 ――妥協におっぱいがついて歩いているような女、寧子。 とか、表現が毒らしくかわいくて好き。すげー表現だとおもう。 ――頭おかしいのってなおるのかなぁ。あのさ、あたしいっつも津奈木に頭おかしいくらいに怒るじゃん?怒るのとかものすごい疲れるんだよ。なんで怒ってんだか分かん、自分で自分に振り回されてぐったりするし、でもがんばろうと思ってバイト行ってもすぐ鬱になるし、鬱なおっても躁になるし、躁が落ち着いたらどうせまた鬱が来るんだとか考えたら、もうどうしていいか分っかんない。ねえ、あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ?雨降っただけで死にたくなるって、生き物としてさ、たぶんすごく間違ってるよね? ――あんたが別れたかったら別れてもいいけど、あたしはさ、あたしとは別れられないんだよね一生。いいなあ津奈木。あたしと別れられて、いいなあ あたしもあたしと別れたい。 葛飾北斎の富嶽三十六景がすごくまた合っていて良い。 本谷さんの純文学小説、すごくよかった
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もやもや っと ぐでんぐでん っと どろどろ、だらだら っと ふらふら っと リアルな恋愛小説である “恋”はなくても、どこか“愛”はある
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ここまで奇抜じゃないけど、所々なんか気持ちわかる。読み終わって、しばらく表紙の絵を眺めた。本谷有希子すき。
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- ネタバレ
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脱いだ服振り回しながらすっぽんぽんで全力疾走してるみたいな文章。五千分の一秒でも誰かと本気で繋がれたら素晴らしいことですね。いい恋愛小説です、憧れないけど。
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