ポトスライムの舟 の商品レビュー
日々淡々と、盲目的に仕事を続ける主人公。 しかしその多くはないと思っていた年収と、世界一周旅行の費用が同額だと知り自分の可能性に気づく。 十二月の窓辺は鬱々とした空気が漂っていて読んでいて疲れた
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2008年下半期、芥川賞受賞作。同時期の候補者には鹿島田真希や田中慎弥もいて、なかなかに激戦だった。まず、タイトルがいい。ポトスライムは、色彩の鮮やかさと瑞々しさを喚起するが、そこに舟が加わることで、イメージに一層の拡がりが生まれる。次にリズムがあり、スピード感に溢れる文体が爽や...
2008年下半期、芥川賞受賞作。同時期の候補者には鹿島田真希や田中慎弥もいて、なかなかに激戦だった。まず、タイトルがいい。ポトスライムは、色彩の鮮やかさと瑞々しさを喚起するが、そこに舟が加わることで、イメージに一層の拡がりが生まれる。次にリズムがあり、スピード感に溢れる文体が爽やかだ。けっして明るい物語ではないのだが、暗く落ち込んで行くこともない。視点人物である主人公のナガセをはじめ、りつ子にも、母にも、その他の登場人物にも、どこにも男の影のない小説だ。そうなのだ。女はかくも自立して生きて行けるのだ。
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この手の人なら、絲山秋子の方が信頼できる気がする。 「ポトスライムの舟」3 山田詠美が「『蟹工船』より、こっちでしょう」と評したが、なるほど、と。 群集の貧困ではなく、それぞれ個人の貧困を描くのが、現実的だろう。 お金の生々しい描き方に、主人公/作者が女性であることを感じた。 ...
この手の人なら、絲山秋子の方が信頼できる気がする。 「ポトスライムの舟」3 山田詠美が「『蟹工船』より、こっちでしょう」と評したが、なるほど、と。 群集の貧困ではなく、それぞれ個人の貧困を描くのが、現実的だろう。 お金の生々しい描き方に、主人公/作者が女性であることを感じた。 「十二月の窓辺」3 職場の関係性が、さすが現役のOLならではの深みが。 隣りの芝生の青さと、実際に入ってみた時の肩透かし感が見事。
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※このレビューにはネタバレを含みます
津村さんと深澤さんの対談集「ダメをみがく」を読んで、約4年ぶりに読み直し。 「十二月の窓辺」 津村さんの実体験も入っているそうなのですが、あれが知り合いの方の言うところの上司の『求愛のダンス』か。そんな求愛されてもなぁ。逃げても変わらないこともあるけれど、逃げるが勝ちもあるからね。読んでいて辛かったです。 「ポトスライムの舟」 仕事のこと、女友だちとの関係の変化、母と娘のこと。 突拍子もない考えに至る主人公だけれど、その時々の思いが分かるような気もします。
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中編2つ。 働く人。世界一周と工場での年収が一緒だった。副業だけで過ごし、貯めることに。その結果、世界一周は選択肢のひとつに。 仕事を辞める人の話。それぞれに大変。
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どこまでもリアル。リアルな働くことについて。お金という絶対的な存在に自分たちは否が応でも沿わなくてはいけない。そんな話の中に散りばめられる非現実的な世界一周と現実のポトスは対照的な存在でありながら、ファンタジーのよう。この話のは夢物語ではない。達成感も救いもしない。けど明日も生き...
どこまでもリアル。リアルな働くことについて。お金という絶対的な存在に自分たちは否が応でも沿わなくてはいけない。そんな話の中に散りばめられる非現実的な世界一周と現実のポトスは対照的な存在でありながら、ファンタジーのよう。この話のは夢物語ではない。達成感も救いもしない。けど明日も生きて働いて何かを思ったり信じたりしてみようと思えた。
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細々と働きながら、日々を生きる現代人と言う感じ。労働問題やワープアといった世代を反映した、私達と同じ立場の人たちを描いている。 ただなぜ芥川賞なのか、私には理解できず・・・ 労働者が通勤電車で読むには丁度いいかなぐらいにしか思わなかった。
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友達に借りた本。「生活の優等生」 修理に出す予定の自転車に空気をせっせと入れ、そういえば自転車やさんで空気ぐらい入れてもらえるだろうと後から気付いたものの、さほど落ち込まなかったという気分がわりと共感できる。
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工場の仕事、パソコン教室にデータ入力の内職、ヨシカの喫茶店でのバイト。 お金にならない時間がもったいないと、時間があれば労働に費やすナガセ。 母と同居する老朽化した家に居候としてやってきたりつ子と娘の恵奈。 水に浸しておけば自由自在に葉を増え続けるポトスとは裏腹に、時間を消費して労働しなければ、お金は入ってはこない。 工場に貼ってあったポスターの世界一周旅行は163万円で パプアニューギニアでアウトリガーカヌーに乗るのを夢見て、の日々。 他短編。 淡々としていてでもどこか人間くさい感じが染み出ていて、いいね。 印刷会社でのパワハラの話も面白かった。 芥川賞!なんだか読むのに時間がかかった)^o^(
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『十二月の窓辺』。パワハラが日常化する職場で絶望するしかない主人公を見ていると、自分のなんと幸福なことかと感謝の念さえ湧いてくる。 『ポトスライムの舟』『十二月の窓辺』いずれもなんとも言えず不器用だけど自分をうまくごまかすこともできず真摯に生きている主人公はどこか応援したくなっ...
『十二月の窓辺』。パワハラが日常化する職場で絶望するしかない主人公を見ていると、自分のなんと幸福なことかと感謝の念さえ湧いてくる。 『ポトスライムの舟』『十二月の窓辺』いずれもなんとも言えず不器用だけど自分をうまくごまかすこともできず真摯に生きている主人公はどこか応援したくなってしまう。
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