元職員 の商品レビュー
するっと読めばエンターテイニング.なんだけど,テーマは虚構と現実のそのターニングポイントを問うというか,淡水と海水が混じり合う川下のとこからが「海」でとこからが「川」なのか.川魚の主人公が海に出て,川の水がどこから流れてくるのか分からなくなって,死にはしないが息苦しい.そんな境遇...
するっと読めばエンターテイニング.なんだけど,テーマは虚構と現実のそのターニングポイントを問うというか,淡水と海水が混じり合う川下のとこからが「海」でとこからが「川」なのか.川魚の主人公が海に出て,川の水がどこから流れてくるのか分からなくなって,死にはしないが息苦しい.そんな境遇に気がつけば陥ってしまった恐ろしさを,要素としては,リゾート,タイ,金,共犯,生きる意味,女,といったキーワードにすると陳腐でありきたりななものを使って鮮やかに小説に料理するのはさすがです.
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面白かった。長さもちょうどいい。 人との距離感。 見たいものだけを、見て、見たくないものは見ない。嘘でも信じたいことは信じればいいし、嘘だと思ってもいい。 「それでいいじゃないですか。」って言葉が印象的だった。 それでいいことと、よくないこと。その対比が面白かった。 題名もよかっ...
面白かった。長さもちょうどいい。 人との距離感。 見たいものだけを、見て、見たくないものは見ない。嘘でも信じたいことは信じればいいし、嘘だと思ってもいい。 「それでいいじゃないですか。」って言葉が印象的だった。 それでいいことと、よくないこと。その対比が面白かった。 題名もよかった。 パレードに共通する部分がある。
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書きおろしの中編。あっという間に読めたけど、それくらいのライトな内容だったともいえる。職場の金を横領している主人公がバンコクで過ごす数日。 できごころで、ほんの少しのつもりで、すぐ返すつもりでいたのが、いつの間にか慣れてしまい気づけば後戻りできないくらい足を突っ込んでたなんてこと...
書きおろしの中編。あっという間に読めたけど、それくらいのライトな内容だったともいえる。職場の金を横領している主人公がバンコクで過ごす数日。 できごころで、ほんの少しのつもりで、すぐ返すつもりでいたのが、いつの間にか慣れてしまい気づけば後戻りできないくらい足を突っ込んでたなんてこと、自分にも容易に起こりそうな気がする。自分なりの逃げの理屈を立てるんだけど、それは世のなかの規範とは違ってしまっているんだよね。そういうことは書いてないけど、これが夢ならいいのにって思いたくなることが主人公はしばしばだったんじゃないかな。 でも、主人公の心の動きは今までとバンコクで過ごしている今のことしかわからない。日本に帰ってどうするのかといえば、それが明らかにはされていない書きぶりだけど、もとのまま、黙って横領を重ねる生活に戻ってしまうんじゃないだろうか。 主人公がバンコクで出会った青年・武志。最初の印象ほどさわやかな人物ではなく、いまどきの若者っぽい浅薄な人間に思えてきたけど、「嘘は言われたほうが嘘だと思うから嘘になる」みたいな言葉になるほどなと思った。逆に考えれば、口にした人にとっては嘘でも言われたほうが真実だと信じてしまったり、信じたかったらそれは一面では真実。どれほど真実を語っても、嘘だと思われてしまえばそれは嘘になってしまう。いま世のなかを騒がしている争いごととかも、そんなところがないまぜになっている気がした。 まったくヨコの感想だけど、「頻り」という表現がよく出てくる小説だった。一編でこんなに出てくる小説を読んだの初めて。
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秘密を抱えた主人公の心の動きが、タイの雰囲気と上手く絡めて描写されている。 さらっと読めるのに、人間の裏側に迫れた気分。 その後は書かれていないけど結末を匂わせるタイトルが秀逸。
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さらっと読める。だが、この何とも言えぬ読後感の悪さ。表題を考えると、この男の末路が見えるようで…。こんなすれ違いだらけの人生になるとは、想像もしていなかったろうに。誠実に生きよう、誠実に。
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なんか随分と景気の良い話だと思っていたら、横領故の ことだったとは。。 タイのけだるい熱帯夜の様子とか喧騒とかが相乗効果で物語を盛り上げいてく。。 嘘にまみれた世界で自分がもがいていながら、 流されていく様はなんとも言い難いものがあった。。 結末までは記されていないけれど 題名...
なんか随分と景気の良い話だと思っていたら、横領故の ことだったとは。。 タイのけだるい熱帯夜の様子とか喧騒とかが相乗効果で物語を盛り上げいてく。。 嘘にまみれた世界で自分がもがいていながら、 流されていく様はなんとも言い難いものがあった。。 結末までは記されていないけれど 題名から推察して、ということなのだろう。。 人と人との繋がりの希薄さや傲慢さに苦しくなってしまう作品だった。読後感は決してよくないけれどぐっときたことは確か。 これが吉田修一さんの魅力なのだろう。。
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どっちが先なのかわからないけど、角田光代の紙の月ともろかぶり。 吉田修一らしくさらさらっと読めたのでよかったけど、既出のほうがちょと長めで描写が丁寧だった分、優
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ストーリー自体は、どこかで聞いたことある感じなんだけど、心理描写の技術に圧迫されて苦しかった。 人間の汚い部分をこれでもかっていうくらいえぐる。 「元職員」って題名、読み終わった後、色々想像できてゾッとした。
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一気に読んだ。 梅雨のイヤな暑さの中で読んだせいか バンコクのねっとりとしたその空気感がリアルに伝わってくる感じ。 横領する人間の、こうくらいの額なら…という安易な気持ちから始まり、 まだ返せる、まだ大丈夫という気もち。そして次第に罪悪感と金銭感覚が麻痺していく様子が...
一気に読んだ。 梅雨のイヤな暑さの中で読んだせいか バンコクのねっとりとしたその空気感がリアルに伝わってくる感じ。 横領する人間の、こうくらいの額なら…という安易な気持ちから始まり、 まだ返せる、まだ大丈夫という気もち。そして次第に罪悪感と金銭感覚が麻痺していく様子が手に取るように分かる。全く仕事しない自分のことしか考えていない上司が許されるのになんで自分がいけないんだという無茶苦茶な気持ち。決して越えてはいけないボーダーを軽く越えちゃってんだよなあこの人。 罪を犯した人間なんだけれど、特別ではない人間の弱さ、脆さ、悲しみがよく描かれていた。
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元職員 - bookworm's digest http://tacbook.hatenablog.com/entry/2015/03/06/081209
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