危機の宰相 の商品レビュー
所得倍増をキャッチフレーズに高度成長を突き進んだ1960年代について池田勇人・田村敏雄・下村治を中心に描いたノンフィクション。デフレで給料も上がらない今、「所得倍増」に現実味があった時代がうらやましく思える。池田・田村・下村は3人とも大蔵省のなかでは敗者に見られていたという切り口...
所得倍増をキャッチフレーズに高度成長を突き進んだ1960年代について池田勇人・田村敏雄・下村治を中心に描いたノンフィクション。デフレで給料も上がらない今、「所得倍増」に現実味があった時代がうらやましく思える。池田・田村・下村は3人とも大蔵省のなかでは敗者に見られていたという切り口は面白い。もっとも、通常の敗者ではありえないんだけど。
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『所得倍増計画』を「どのように」誕生させたかではなく、「なぜ」誕生するに至ったのかを書いている。 つまり、「実行・実現」のプロセスではなく、「構想」の段階のプロセスが主題になっている。 そのため、『所得倍増』が実現していくうねりのような臨場感はこの本では再現されていない。 ...
『所得倍増計画』を「どのように」誕生させたかではなく、「なぜ」誕生するに至ったのかを書いている。 つまり、「実行・実現」のプロセスではなく、「構想」の段階のプロセスが主題になっている。 そのため、『所得倍増』が実現していくうねりのような臨場感はこの本では再現されていない。 時系列をあまり意識していない章立てにも原因はあるのかもしれない。 かといって、面白くないわけではなく、国政の内幕に触れたことが無い身としては、政策どのように生まれるかが分かって新鮮だったし、政治家や官僚の志というものも分かって、もっと政治というものを前向きに捉えようと思えるようになった。 また、構想をまとめあげ、それを政策として実行する者としての「政治家」、その政治家に具体的な案を出し、策を作り上げる存在としての「ブレーン」という、国政における役者の立ち位置や存在意義が分かったので、これから投票に臨む上での一つの立脚点のようなものが見つかったのも大きな収穫だった。 それから、物語の本筋とはあまり関係がないが、「永遠の正論」というワードチョイスと事象の捉え方には、著者・沢木耕太郎の持つ視点の凄みが見えた気がする。
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日本近代史に詳しくないので知らないことだらけでした。 高度経済成長の始まりにいた池田内閣の話。 人として政治家として応援したくなる人物たちですが、今もこういうマジメな政治家がいるんだろうか。 経済学や経済学者がどんな働きをしているかも、少しわかってきた。
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高度経済成長とは何だったのか・・・ 所得倍増とは何だったのか・・・ この閉塞感漂ういま、日本が輝いていたと思われる時代が、 いったいどういったものなのかを知りたかった。 それにあたり、本書を読んでみたのだが、 やはり、60年代というのは、輝いていたのだと思った。 もちろん、...
高度経済成長とは何だったのか・・・ 所得倍増とは何だったのか・・・ この閉塞感漂ういま、日本が輝いていたと思われる時代が、 いったいどういったものなのかを知りたかった。 それにあたり、本書を読んでみたのだが、 やはり、60年代というのは、輝いていたのだと思った。 もちろん、テーマは政治であるが、 いかんせん、下村治の異色ぶりに感嘆させられる。 キーワードは大蔵省だ。関係している人たちの出自が大蔵省。
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所得倍増計画! 戦国最大のキャッチコピーを今一度考えてみようかと。 沢木耕太郎は、旅ものじゃなくても、いいんだー。これは面白い! それにしても、骨のある政治家って、何処にいたんだろう? 次は吉田茂でもよむか。
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“GOOD・LOSER”(良き敗者)だった三人の男たちが、キャッチコピー「所得倍増」のもと、日本の経済成長(ゴールデン・シクスティーズ)を演出する。 半世紀後の現代、日本経済はピークアウトして久しく、むしろ六重苦に悩む。この困難な時代にこそ、悲観と楽観、夢と現実等、対極のバランス感覚が必要でなかろうか。 「世界の静かな中心であれ」。筆者が語るよう、三島由紀夫の一文が身に染みる。
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1950〜60年代。大蔵省の3人の男は、多くのエコノミストが経済悲観論を唱えるなかで楽観的かつ所得倍増計画を打ち出した。奇しくも3人の共通点は大蔵省の「ルーザー」であった。
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「所得倍増」を産み、実行していった三人の男の物語。 しっかりと政治を行うためには、政治家のぶれない意志と、これを方向付け、支えるブレーンが欠かせない。また、そのブレーンが生み出す政策も、大局観に立っており、未来を見据えている必要がある。そんなことを改めて感じさせる。 現代に置...
「所得倍増」を産み、実行していった三人の男の物語。 しっかりと政治を行うためには、政治家のぶれない意志と、これを方向付け、支えるブレーンが欠かせない。また、そのブレーンが生み出す政策も、大局観に立っており、未来を見据えている必要がある。そんなことを改めて感じさせる。 現代に置き換えて、過去ほど分かりやすい目標が失われてしまっていることを考慮しても、政治家・ブレーンともに、日本を預けるに値する者が見いだせないでいる。それは、偶然世に出ていないだけだという指摘があるかもしれないが、結果が出せていない以上、そのように結論付けるほかない。 現代のリーダー待望論はまさに、そのようなチームを国民が熱望していることの現れなのであろう。そう思えば、やたらタレントなどの目立つ人が期待されることも、ある意味で仕方のないことかもしれない。 ただ、やはり本物のリーダーは、長い年月をかけた積み上げが、最後に花咲く一瞬の時を、国民に捧げるということでしか生まれない様に思う。
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本書は所得倍増にかけた三人の敗者の物語です。首相となった池田勇人、政治面を影で支えた田村敏雄と政策面を支えた下村治。本書を読むとかつては確かに志をもった人達がいたという事が良くわかります。 久々に人間の凄味を描き出すような良質なノンフィクションを読みました。
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かの有名な「所得倍増計画」が池田勇人内閣の下で喧伝されるに至るプロセスが描かれている。池田自身、そして経済政策における下村治・田村敏雄という彼のブレーンも大蔵省の出世競争からは取り残された非主流派であったことが大変興味深い。また、優れた政策や計画の実施にあたっては立案者と遂行者(...
かの有名な「所得倍増計画」が池田勇人内閣の下で喧伝されるに至るプロセスが描かれている。池田自身、そして経済政策における下村治・田村敏雄という彼のブレーンも大蔵省の出世競争からは取り残された非主流派であったことが大変興味深い。また、優れた政策や計画の実施にあたっては立案者と遂行者(および両者を架橋する者)が必要であり、彼らの役割分担について考えてみると現政権がこだわった「政治主導」がなぜあれほどの混乱を招いたのかがよくわかる。うちのボスが折に触れて言う「大学職員プロデューサー論」にも通じる部分がある。
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