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危機の宰相 の商品レビュー

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40件のお客様レビュー

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2019/07/08

池田勇人、田村敏雄、そして下村治。三人の人生が交差して戦後最大のキャッチーな政策「所得倍増」が誕生した。旧大蔵省という超エリート組織のLoserである三人が不思議な縁で結びつき、高度経済成長という経済主導の「新しい形の『強い国家像』」を牽引することになったのは歴史的必然なのだろう...

池田勇人、田村敏雄、そして下村治。三人の人生が交差して戦後最大のキャッチーな政策「所得倍増」が誕生した。旧大蔵省という超エリート組織のLoserである三人が不思議な縁で結びつき、高度経済成長という経済主導の「新しい形の『強い国家像』」を牽引することになったのは歴史的必然なのだろう。池田内閣が組閣された1960年は安保改定という戦後脱却のエポックメイキングがあり、退陣した1964年は東京五輪開催の年であった。まさに時代の変革期にうまく日本国を成長軌道に乗せた、と振り返って今思う。 沢木耕太郎氏の俊逸な取材力を文章力には毎度驚かされるが、本作品では下村治の再発見が特筆すべき点だろう。安定成長路線を望む官僚組織において、溜まる需要のマグマをいち早く見抜き「民間企業の設備投資促進により供給を需要にMeetさせれば経済は飛躍的成長を遂げる」とは何たる素晴らしい読みであろう。下村自身、その才覚に反して恵まれた処遇だったわけではないが、「あとがきⅡ」を読むと彼への再評価と彼自身の喜びが伝わってきて何かうれしくなる。

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2017/06/18

安保危機のなか経済成長を遂げた1960年代の政治経済を 軽くまとめた本。危機を成長に変えたのは、池田勇人総理と そのブレーン達による「所得倍増」というスローガンにあるとした 池田勇人が 魅力的に描かれている。次は 吉田茂→池田勇人→田中角栄を中心とした現代史や政治比較の本を読み...

安保危機のなか経済成長を遂げた1960年代の政治経済を 軽くまとめた本。危機を成長に変えたのは、池田勇人総理と そのブレーン達による「所得倍増」というスローガンにあるとした 池田勇人が 魅力的に描かれている。次は 吉田茂→池田勇人→田中角栄を中心とした現代史や政治比較の本を読みたい 「所得倍増」「日本列島改造」に比べて、今の政治スローガンは インパクトがない と思う

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2017/02/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

池田勇人元首相の評伝というよりは、所得倍増計画の誕生秘話。誕生に大きな役割を果たした池田元首相と二人のブレーンがルーザー<敗者>であったことや、多くの学者、官僚、政治家が否定的であったことなど、初めて知ったことばかり。非常に興味をそそられる内容でした。

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2016/04/12

唯一私が定常的に手を出すノンフィクション作家さん。 でも、テーマが経済と政治ということで、ちょっと乗り切れず。 とはいえ、余り興味のないテーマでも最後まで読ませる沢木さんは凄いです。

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2016/02/15

タイトルの危機の宰相とは、池田勇人のことである。 本作は、彼とそのブレーンであった下村治、田村敏雄の3人に焦点を当てた物語である。 池田勇人といえば「所得倍増」である。 著者が戦後最大のコピーというこのキャッチーなコピーもさることながら、実現不可能と言われた経済成長率を彼らは見事...

タイトルの危機の宰相とは、池田勇人のことである。 本作は、彼とそのブレーンであった下村治、田村敏雄の3人に焦点を当てた物語である。 池田勇人といえば「所得倍増」である。 著者が戦後最大のコピーというこのキャッチーなコピーもさることながら、実現不可能と言われた経済成長率を彼らは見事に実現させた。 紆余曲折を経て彼らは出会い、歴史の1ページに名を残した。 一国の総理ですら挫折を味わったのだと思うと、親近感が湧くと同時に、当時の彼の想いを想像すると切なくなる。 丹念に取材されていて、読みやすくとても面白かった。

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2015/11/25

池田勇人とそのブレーン下村脩、更に後援会の田村敏雄という大蔵省における敗者三人が、所得倍増計画を作って実行していく様子なので、果てしなく地味な話ではあるものの、なかなか皮肉な運命が散見されておっていやはや。

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2014/05/08

所得倍増と言う言葉を中心に、これを達成する上で欠かせない池田元首相、下村治氏、田村敏雄氏の敗者の烙印を押されつつあった三名によりなされた奇跡を描いている。共に個性がはっきりしており、しっかりとした調査でより克明に描いていると思う。何故奇跡の様な事が結果として起きたのか、池田勇人が...

所得倍増と言う言葉を中心に、これを達成する上で欠かせない池田元首相、下村治氏、田村敏雄氏の敗者の烙印を押されつつあった三名によりなされた奇跡を描いている。共に個性がはっきりしており、しっかりとした調査でより克明に描いていると思う。何故奇跡の様な事が結果として起きたのか、池田勇人が首相になる少し前に安保反対などで、何方かといえば劣勢だったはずを打ち撥ね退けたのかが分かる気がする一冊。

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2014/05/03

確かに所得倍増って言われても、 それは月給のことなのかGDPのことなのか、 はたまた他の何かなのか、言われてみると良く分からない。 後の世代に生まれた者としては、 とにかく「景気の良い時代だったのだ」、 というだけの印象が大きい。 そういう曖昧模糊とした「所得倍増」の成立ちを、...

確かに所得倍増って言われても、 それは月給のことなのかGDPのことなのか、 はたまた他の何かなのか、言われてみると良く分からない。 後の世代に生まれた者としては、 とにかく「景気の良い時代だったのだ」、 というだけの印象が大きい。 そういう曖昧模糊とした「所得倍増」の成立ちを、 池田勇人、田村敏夫、下村治の生を通して視ていくのは面白い。 そこには様々な意図、偶然、思想、人が絡んでいたのだ。 「テロルの決算」もそうだったが、 読むことで近代史に目を向けたくなると思わせてくれるところが、 この本の素晴らしいところだと個人的に感じる。 「未完の六月」は是非書いてほしかったが。

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2014/01/21

所得倍増という池田政権下でのあまりにも有名なスローガン、未来を知る者にとっては時代の趨勢として割合に自然と実現したかのような印象をもっていたせいか、スローガンが世に踊る前、そして高度成長期においても大半の学者、政治家は高度成長に懐疑的、批判的であったんだということに、ちょっと驚く...

所得倍増という池田政権下でのあまりにも有名なスローガン、未来を知る者にとっては時代の趨勢として割合に自然と実現したかのような印象をもっていたせいか、スローガンが世に踊る前、そして高度成長期においても大半の学者、政治家は高度成長に懐疑的、批判的であったんだということに、ちょっと驚く。スローガンだけに終わらせず、実現を信じて政策を実行させる力となったのは財務エリートたる大蔵省の中枢、ではなく、それぞれ出世コースから一度離脱を余儀なくされた敗者の3人だった。 人の縁、時の運、いくつもの偶然が隠されていたんだなぁと、あとがきを読みながらじんわりとした。 ノンフィクションの醍醐味を味わえる一冊では?

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2013/05/25

1960年代を代表する制作「所得倍増計画」を作り上げたのは池田勇人、田村俊雄、下村治の三人の敗者だった。 「1960年、「反安保」の運動に火が付き始めた頃まだ小学生にしかすぎなかった私は、のちに「安保闘争史」といった書物を読むたびに、なぜかくも急速に「安保」後の政治状況が保守の...

1960年代を代表する制作「所得倍増計画」を作り上げたのは池田勇人、田村俊雄、下村治の三人の敗者だった。 「1960年、「反安保」の運動に火が付き始めた頃まだ小学生にしかすぎなかった私は、のちに「安保闘争史」といった書物を読むたびに、なぜかくも急速に「安保」後の政治状況が保守の側に有利な流れになってしまったのか、どうしても分からないと感じることが多かった。(中略)しかしいま、保守、少なくとも池田勇人とその周辺には来るべき時代を見通すひとつの歴史観があったことが理解できる。歴史観というのが大袈裟ならば、日本を動かしていく時代の流れを察知し、その未来を構想する能力があった。」(『危機の宰相』p.237より引用) 著者がこの歴史的出来事を、上記の軌跡を中心として、「敗者性」の共通という視点からまとめなおしていたのはおもしろかった。 歴史的事件をただ教科書通りに読んでしまうのでは全くつまらない。 著者の視点を通じ、ひとつの出来事を見なおしていく作業の魅力がノンフィクションにはあると思う。 三人に共通する「敗者性」、戦争によって変わった運命、所得倍増計画が三人を通じてどのように世に出て行ったのか。 ここら辺がこの本の面白さだ。

Posted byブクログ