できそこないの男たち の商品レビュー
[ 内容 ] 「生命の基本仕様」―それは女である。 本来、すべての生物はまずメスとして発生する。 メスは太くて強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす“使い走り”に過ぎない―。 分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。 SRY遺伝...
[ 内容 ] 「生命の基本仕様」―それは女である。 本来、すべての生物はまずメスとして発生する。 メスは太くて強い縦糸であり、オスはそのメスの系譜を時々橋渡しし、細い横糸の役割を果たす“使い走り”に過ぎない―。 分子生物学が明らかにした、男を男たらしめる「秘密の鍵」。 SRY遺伝子の発見をめぐる、研究者たちの白熱したレースと駆け引きの息吹を伝えながら「女と男」の「本当の関係」に迫る、あざやかな考察。 [ 目次 ] 第1章 見えないものを見た男 第2章 男の秘密を覗いた女 第3章 匂いのない匂い 第4章 誤認逮捕 第5章 SRY遺伝子 第6章 ミュラー博士とウォルフ博士 第7章 アリマキ的人生 第8章 弱きもの、汝の名は男なり 第9章 Yの旅路 第10章 ハーバードの星 第11章 余剰の起源 [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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『巡航する時間を追い越すための速度の増加、それが加速度である。加速されたとき初めて私たちは時間の存在を感じる。そしてそれは最上の快感なのだ。なぜならそれが最も直截的な生の実感に他ならないから』 未知の領域が目の前で開けてゆく時に少なからず興奮を覚えないものはまれだろうと思う。楽...
『巡航する時間を追い越すための速度の増加、それが加速度である。加速されたとき初めて私たちは時間の存在を感じる。そしてそれは最上の快感なのだ。なぜならそれが最も直截的な生の実感に他ならないから』 未知の領域が目の前で開けてゆく時に少なからず興奮を覚えないものはまれだろうと思う。楽しい経験でも、怖い経験でも、未知のものに向かうことになぜか人は惹きつけられる。それは「どうして」なのか。福岡伸一は一つの考えをこの本の中で示している。 もちろん、この本は科学啓蒙書に分類されるものだと思うのだけれど、本の内容に興味がある人もない人も、目の前で次々と扉が開かれてゆくことに対する快感は覚えるのではないだろうか。それは福岡伸一がすぐれた科学者であると同時に巧みなストーリーテラーでもあるからだ。そしてそれが実は全然相反することではなく、むしろ必然的ですらあることを証明してもいる。 科学に興味を持つ者には恐らくたった一つ共通した特徴がある。それは「何故か」を知りたがる好奇心があるということだ。ところが福岡伸一が本書の中でも何度か書いている通り、科学の手法が明らかにするのはもっぱら「How」であって「Why」ではない。「何故か」に答えるには明らかとなったピースを繋ぎ合わせる科学的な論理が必要となる。 論理、というと一分の隙もなく積み重ねられ、誰でもが同じ道筋を辿って同じ解釈をし同じ答えに至るもののように聞こえるけれども、自分の経験から言っても大概の場合、集められたピースはどこかしら不完全で、一つの解釈から次の解釈へ移るステップには飛躍が必要となる。普通の科学者はこれを嫌い、不確実なところへは中々踏み込まない。結果、話はAはBである式の無味無臭のつまらないものとなる。 ところが同じ材料でも、すぐれた科学者の手にかかると誰もが納得できる論理が展開されずっと先へ見通せるように思えることがある。すっかり判ったような気にさせられるのだ。それはどこかしらストーリーテリングと通じるものがあるのだと思う。すっかり判ったような気になって、後から一人で同じ材料で話を積み上げようとすると、あちらこちらに歪みが生じて何とも歪なものが出来上がってしまう。そんな経験を自分も何度もしてきた。上手な語り手の話には無理がない。それを科学的な直観力とみてもよい。 福岡伸一が次々と本を出しそれがポピュラリティを得るのは、科学的な内容に対する興味もさることながら、彼がすぐれて科学的であるからこそ同時に文学的でもあり得ていることが大きな要素なのだと思う。本書でもそれがやはり見て取れると思う。それはひょっとすると彼が人間の快感ということに深い思考と理解を抱いていて、欲望ということの本質(恐らくこの言葉は「生物学的に」という修辞を必要とするだろう)に対して、するどい理解を得ているからなのだろう、と思うのだ。
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レーウェンフック・ヒトのオスとメスではメスのほうが生物学的に強いものとして運命付けられている。 ヒトのオスはメスの変種。XY・XX染色体について。
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・遺伝=本のシリーズを両親から受け取ること。 23冊のシリーズが精子・卵子で選択される。 選ばれる本は違うけど、中身は一緒。ただし乱丁もある。 ・表現が文学的・詩的で小説を書いたら面白いだろうなぁと思った。 ・雑誌のインタビューでセンスオブワンダーという表現をしていた。生き物...
・遺伝=本のシリーズを両親から受け取ること。 23冊のシリーズが精子・卵子で選択される。 選ばれる本は違うけど、中身は一緒。ただし乱丁もある。 ・表現が文学的・詩的で小説を書いたら面白いだろうなぁと思った。 ・雑誌のインタビューでセンスオブワンダーという表現をしていた。生き物の美しさ、面白さを感じるセンスを人はもっていて、その感性に触れるような生き物のまなざしがよかった。 ・10億年間メスのみの生殖をしてきて、危機になると、オスが登場。メスのカスタマイズ版であるために、オスには身体の構造上の不備があったりする。 ・ある意味、下ネタなのですが、生きものが命をつなぐ営みとみると、面白く、神秘的。生物学としてとらえたら、エロい印象も与えないもの。 ・ポスドクの生活の実態も面白かった。
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読み物として、読みやすかった。本当に読者を惹きつける見せ方だなぁと思った。 けど、喩えが凝りまくっていて、ちょっとわかり辛い部分もあった。
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二度目の拝読。知り合いの医師に勧めました。タイトルに似合わずなかなか専門的で夏休みはこれを読むだけで終ってしまったとか(笑)。私は専門的な箇所はさらりと軽い気持ちで読みました。福岡先生の哲学的な文章表現が大好きです☆
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”教科書はなぜつまらないのか” に対するおもしろい説明がされている。「第五章 SRY遺伝子」での論文の引用はとてもエキサイティングだった。Introduction がこんなにもわくわくする文章だったとは。
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最初に読んだ福岡伸一の本。 なんとなく避けてきたけど、読んでよかった。 できそこないとはなるほどそういうことか。
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著者は分子生物学者だが、小説家顔負けの文章力を持っているので、専門知識がない人でもとても読みやすく面白く読める。 染色体の発見、Y遺伝子の発見、男女の発生過程の違い、遺伝子の突然変異をたどって遡る人類の系譜など、興味深いエピソードが満載。 また、同じ研究者ならではの視点で描かれる...
著者は分子生物学者だが、小説家顔負けの文章力を持っているので、専門知識がない人でもとても読みやすく面白く読める。 染色体の発見、Y遺伝子の発見、男女の発生過程の違い、遺伝子の突然変異をたどって遡る人類の系譜など、興味深いエピソードが満載。 また、同じ研究者ならではの視点で描かれる地道な研究の手法や研究の現場での生々しい先陣争いも興味深かった。
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できそこないの男たち・目次 第1章 見えないものを見た男 ・万能の視力 ・27歳の好奇心 ・精巧な高性能レンズ ・アニマルキュール ・精子の発見 ・見えるとは 第2章 男の秘密を覗いた女 ・小さな生命たち ・彼女の視線 ・大きな壁 ・生命のみずみずしさを保...
できそこないの男たち・目次 第1章 見えないものを見た男 ・万能の視力 ・27歳の好奇心 ・精巧な高性能レンズ ・アニマルキュール ・精子の発見 ・見えるとは 第2章 男の秘密を覗いた女 ・小さな生命たち ・彼女の視線 ・大きな壁 ・生命のみずみずしさを保つために ・技術の過程 ・観察を支えた信念 ・ある論文 第3章 匂いのない匂い ・秘密の場所 ・偶然のいたずら ・全46巻の一大叢書 ・Y染色体——ちっぽけな存在 ・編集上のミステイク ・ジンク・フィンガーY 第4章 誤認逮捕 ・不吉なニュース ・ヒトゲノムの森 ・DNAの相補的構造 ・DNAの追跡(トレース) ・意外な結果 ・直感の罠 第5章 SRY遺伝子 ・新事実 ・さらなる疑問 ・真犯人 ・次の一手 第6章 ミュラー博士とウォルフ博士 ・人間は考える管 ・生命の基本仕様 ・岐路 ・刺客の仕事 ・不細工な仕上がり 第7章 アリマキ的人生 ・アリマキの生活 ・メスだけの高速繁殖戦略 ・できそこないのメス ・不思議な現象 ・わずかな変化 ・強い縦糸と細い横糸 第8章 弱きもの、汝の名は男なり ・やがて世界は女性のものに ・弱い男 ・生物学的な運命 ・宿命的な弱さ ・がん——それは偶然の積み重なり ・両刃の剣 第9章 Yの旅路 ・写本の系譜 ・女性と男性のルーツ ・出アフリカ——写本の世界地図 ・日本列島のY ・「お世継ぎ」の価値 ・チンギス・ハーンの痕跡 ・唯一の偉業 第10章 ハーバードの星 ・秋のボストン ・羨望の女性 ・分子生物学のパイオニア ・ゴシップ記事 第11章 余剰の起源 ・かけめぐったニュース ・サラリー・キャップ ・総資産額 ・刑務所の門 ・余剰
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