クラウド化する世界 の商品レビュー
日本語タイトルだと情報技術に関する本に思えるが、原題のとおりそこから起こるBIG SWITCHが本書のテーマである。 ■ 情報技術を電力の普及となぞらえ規模の経済であるとする。2つの技術の類似点は多く、例えば発明当初は企業毎が所有していた(電力は水車など、情報技術はメインフレーム...
日本語タイトルだと情報技術に関する本に思えるが、原題のとおりそこから起こるBIG SWITCHが本書のテーマである。 ■ 情報技術を電力の普及となぞらえ規模の経済であるとする。2つの技術の類似点は多く、例えば発明当初は企業毎が所有していた(電力は水車など、情報技術はメインフレームコンピュータ)それらがネットワーク化することで寡占企業が現れ規格化が進んだ。 ■ 情報技術の進化は良い影響と悪い影響がある。本書のよいところは中立的、客観的にその予測を立てていることだ。全体としてはややネガティブな予測が多いだろうか。 ■ 例えば電化は熟練工を必要としなくなった一方で、富を分配し中産階級を増やした。一方、情報技術は所得の格差を助長し、ごく少数の富める者を生むのである。何故なら、ウィキペディア、アマゾンレビューに代表されるように、ほとんどの情報は無給の労働により取って代わられている(ギフトエコノミー)。また高度の情報技術が場所に因われず、より賃金の安いところへオフショアされるためである。 ■ また新聞など既存のメディアからオンラインへのシフトは、より広告料を取れる記事に淘汰され、政治や事件などの記事を掲載すること、これらのライターを雇用し続けることを困難にする。 ■ そしてイデオロギーの増幅、プライバシーの喪失なども懸念として挙げられている。時間と空間を無効にして企業がより長時間、労働者を拘束することにもつながる。 ■ 最後に人工知能、人のオンライン化はSF映画のように聞こえるが、内容を読めば真実味を帯びてくる。実際、グーグル検索は人間の知識の延長になっている。 ■ なにより驚くのは、この本が書かれたのはフェイスブックが普及、iphoneが発売される以前ということである。
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エジソンから始まる電化の歴史が滔々と語られ、インターネット・クラウド化との類似点・相違点に関する考察が大変面白く印象に残った。 しかしこの本が2008年に書かれていたとは、ちょっとした驚き。当時はクラウドなんて言葉すら知らなかったから。
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専門用語が私には難しくて、半分くらいしか理解できなかったのは事実。 ですが、 GoogleとYoutubeの儲かっている仕組み。 マイクロソフトのパソコン&ソフト販売の終焉。 インターネットと人工知能について。 電気の発明と、インターネットの発明の大きな違い。 などなど、大変学...
専門用語が私には難しくて、半分くらいしか理解できなかったのは事実。 ですが、 GoogleとYoutubeの儲かっている仕組み。 マイクロソフトのパソコン&ソフト販売の終焉。 インターネットと人工知能について。 電気の発明と、インターネットの発明の大きな違い。 などなど、大変学ぶことの多い本でした。
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電力の普及になぞらえて、コンピューティングも規模の経済によって民主化を成し遂げ、世界を変えてゆくようすを述べている。
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クラウド化によりビジネスはどう変わるのか? 過去の電化と同様、ユーティリティコンピューティングは過去の資産を解体し新たに再構築を促す
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このコンピュータの発展の方向性に対する危機を提示してくれた。納得させられる点は多いが、筆者の想定する世界が訪れるまでにはもう少しかかる気がする。
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仮想化の話のみならず、人工知能の話に行きついたのが意外だった。 途中からのスター・ウォーズ的展開。(ダークサイドを彷彿とさせるというか何というか) マイノリティ・リポート、2001年宇宙の旅、そしてA.I.を今年度中にみたい欲が一層増した。
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二つの大きなショックを受けた。一つは、クラウド化する世界を、エジソンの電気・電力供給の発明時代までさかのぼったスケールで描いていること、もう一つは、この本が2008年初めに既に出版されていたことだ。前者については、原著が、"The Big Switch: Rewirin...
二つの大きなショックを受けた。一つは、クラウド化する世界を、エジソンの電気・電力供給の発明時代までさかのぼったスケールで描いていること、もう一つは、この本が2008年初めに既に出版されていたことだ。前者については、原著が、"The Big Switch: Rewiring the World, From Edison to Google"であり、正にその題名の通りである。後者については、我々は最近では、SNSやクラウドサービスを活用する様になってきているが、私は2008年初めには検索エンジンとしてGoogleは確かに使っていたものの、基本はPCや携帯電話上のアプリやデータを使うのみであった。 日本の製造業は、欧米で起こる産業革命の各時代毎に、欧米に追い付き、日本らしいキメ細かさや勤勉さにより、そのポジションを確立すると共に、多くの人を雇用してきた。近年の、為替や関税の問題と韓国・中国の台頭も大きいが、クラウド化という産業革命の一フェーズに相当すると言っても過言で無い変革に、日本の製造業は如何に対応していけるのだろうか。日本でもIT企業が増えてきているが、数万人を雇用する規模には至っていない。 今、我々の選択肢としては、IT産業から離れたクラウド化に影響を受けない産業にシフトしていくという選択肢もあるかもしれないが、新興国産業とクライド化の広がりとに挟まれていく可能性も高い。やはり、この時代の変化から逃げずに、クラウド化の本質と自分達の強みの本質とをしっかりと認識し、人物金に対して大胆な構造改革をしていくべきだと思う。 これから産業人となる自分の子供達にも、必ず読ませたい一冊だ。
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クラウドサービスの将来の方向性はどうなっていくのか。 電気や水道なのどと同様のライフラインになるのか、自己崩壊するインターネットに巻き込まれて消滅してしまうのか。 前半は前世紀におこった電気サービスの発展と普及が、現時点までのITの進歩との類似性を見出していくもの。 後半は電気な...
クラウドサービスの将来の方向性はどうなっていくのか。 電気や水道なのどと同様のライフラインになるのか、自己崩壊するインターネットに巻き込まれて消滅してしまうのか。 前半は前世紀におこった電気サービスの発展と普及が、現時点までのITの進歩との類似性を見出していくもの。 後半は電気などの今までにライフラインとなりえたものと、インターネットがさまざまな複雑な性質を持つために抱える問題点を並べていく。 前世紀に電気が社会に普及したときには複雑なものと考えられてきたようだけれども今では単純で扱いやすいという認識が一般的だが、インターネットおよびクラウドサービスがそのレベルに到着できるのかは、現在、そのように推し進めている人々もいる一方、拒否や一定の範囲でとどめようとしている人々もいる。 来世紀にはどうなっているのか。
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「エジソンからGoogleへ」 そんな見出しで始まる本書は、クラウドコンピューティングをシステマティックに解説するのではなく、それが世界にもたらすインパクトについて解説される。 前半は今日のIT化社会に入る以前、バーデンの水車開発やエジソンの発電機発明など、今日のオートメー...
「エジソンからGoogleへ」 そんな見出しで始まる本書は、クラウドコンピューティングをシステマティックに解説するのではなく、それが世界にもたらすインパクトについて解説される。 前半は今日のIT化社会に入る以前、バーデンの水車開発やエジソンの発電機発明など、今日のオートメーション化の歴史背景を振り返る。 そして後半は、「旧来の工業化時代には巨大な発電所が電力を供給したように、我々の情報化時代においてはコンピュータプラントが動力を供給する」というクラウド・コンピューティングの時代の到来について。(※GoogleのCEOであるエリック・シュミットが名付け親とされている)クラウドは企業を数社の巨大ITベンダーの支配やデータセンターの制約から解放し、カスタムメイドな情報処理を可能にした。そして企業ばかりではなく、「Gmail」に代表されるように、家庭の一個人までも「雲の中」に取り込んだ。SNSやYoutubeなどを通じ、「無報酬の労働力」を世界中に生み出した(ユーザーが作りだしたコンテンツの商業化)。 このように、より豊富で独創的なコンテンツが生まれる環境の構築が賞賛される中で、カー氏は、「技能のあるなしに関わらず、労働者はソフトウェアにとって代わられ、知的労働が世界規模で取引され、企業がボランティア労働を集約して経済的利益を収奪している現状は、ユートピアとはほど遠いと思わざるを得ない」と指摘する。そしてそれは、「デジタルエリートと大多数の人々との分裂に拍車をかける」という。 また、例えばSNSなどでどれだけ個人情報を隠そうとも、そもそもネットに接続した時点で、IPアドレスによりコンピュータの所在がサーバに記録されていることから、ボーダレス社会の裏側で、一部のベンダによる監視社会が築かれていると警鐘を鳴らす。ジョージオーウェルが「1984年」で描いた全体主義社会も、Googleが築こうと思えば築けるフェイズにきていると。 そしてまた「似た者同士」で集まる性格を持つ人間は、国境を越えて仲間を求め、多様性を封鎖するボーダレスな閉塞空間を作りだす。ネットによって世界は多様化どころか、どんどん閉塞的になってゆく可能性がある。 このようにカー氏はクラウド化のネガティブな側面を挙げているが、否定しているわけではない。これらの側面を認識した上で、「クラウド化する世界」を生きていく必要があるということだ。物事を自分なりに判断できるだけの価値観をもつことが求められているといえるだろう。ヒトが生み出した雲に飲まれて右往左往してしまわぬように。
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