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チャイルド44(上) の商品レビュー

3.8

209件のお客様レビュー

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姿が見えない殺人鬼を追う!!

スターリン体制下の旧ソ連、子供が次々殺されていく連続殺人事件を捜査することも許されない。主人公は独自に犯人を追うが・・・

aoi

2023/10/24

ヤロスラヴリ発の鉄道の線路上で子供の死体が発見され、物語が動き出す。KGBの前身であるMGB(国家保安省)の捜査官のレオ・デミドフは子供は事故で列車にはねられたと説明するが、両親は犯人の目撃者もいて殺人だと主張する。忠実なソ連イデオローグであるレオは、貧困と欠乏を解消して犯罪のな...

ヤロスラヴリ発の鉄道の線路上で子供の死体が発見され、物語が動き出す。KGBの前身であるMGB(国家保安省)の捜査官のレオ・デミドフは子供は事故で列車にはねられたと説明するが、両親は犯人の目撃者もいて殺人だと主張する。忠実なソ連イデオローグであるレオは、貧困と欠乏を解消して犯罪のない楽園を目指す共産主義社会での犯罪の存在は、理想社会の実現を大きく逆戻りさせることになると考え、殺人事件の存在を否定する。その後、部下の策略により、地方の警察に左遷され、更にスパイとして糾弾され、流刑を宣告される。囚人列車から脱走したレオは連続する小児殺人事件の究明に挑む。グラスノスチ以前のソ連の誰もが疑心暗鬼に陥る陰湿な空気が感じられ、現代のロシアや中国も同じ空気に包まれているなと思及させられた一冊でした。

Posted byブクログ

2023/10/11
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

スターリン体制下のソ連。そのなかで従順な国家警察として働く主人公レオの行動が非人道的で理解ができなかったが同時にこの時代に殺されずに生きるための当たり前の行動なのだと強く感じた。物語の冒頭で出てきた事件は一体誰が何の目的をもって引き起こしたのか。下巻が楽しみです。

Posted byブクログ

2023/08/26

 いやあ、コワイコワイ。もちろん、殺人事件も怖いのだけれど、何より旧ソ連のスターリン体制が怖い。  スターリン大元帥の元での絶対的な体制では「殺人事件などおこるはずがない」とされていたこと。だから、そういう事件は「なかったことにされる」ということ。  それより何より罪が重いのは、...

 いやあ、コワイコワイ。もちろん、殺人事件も怖いのだけれど、何より旧ソ連のスターリン体制が怖い。  スターリン大元帥の元での絶対的な体制では「殺人事件などおこるはずがない」とされていたこと。だから、そういう事件は「なかったことにされる」ということ。  それより何より罪が重いのは、「国家反逆罪」であるということ。それは例えば「外国人と接点を持った」だけでも疑いをかけられ、一度疑われたらほぼ「有罪」になることは間違いなく、有罪になれば、虐殺されたり、良くて過酷な強制労働に何年も尽かされたりするのだ。そして、子供のころから「反逆分子」は告発しなければならないと教育され、常に隣人の言動に目を光らせている。 この国で少しでも心地よい暮らしをするには、「国家に疑問を持たず、従う」ことなのだ。 あまりにもジョージ・オーウェルの「1984年」に酷似している。  ロシア革命は平和のための革命ではなかったのか?レーニンがもっと長生きしていたらどうなっていたか分からないが、スターリン体制になって革命の「目的」と「手段」を履きかえられたのではないだろうか。世の中に「絶対安心できる体制」などない。今の日本でも「学歴社会の線路に乗れば安心」だとか「大企業に入社すれば安心」だとか、「◯◯党が政権を取っていれば安心」だとか、盲信が一番怖い。この小説はロシアでは発禁処分にまでなったということだ。この小説を堂々と読める社会に住んでいる有り難さを享受しよう。  話がズレた。  国家保安省のエリート捜査官だった主人公レオは、あることがきっかけで自分が告発されたが、そのタイミングでスターリンが死んだために最悪の処罰は免れ、地方の工場の街の下っ端の警官として左遷される。  しかし、そこで目にしたある殺人事件のファイルが、自分がかつて「事故」として握り潰してしまった少年の死に似ていたため、「殺人事件をなかったことにせず、向き合う」警察署として目覚める。そして、人間としても目覚める。自分のことを愛してくれて結婚してくれたと思っていた奥さんが実は自分のことを「◯◯ったから」結婚したのだという事実、みんなそうだという事実を知らされる。知らなかったのは「国家保安省捜査官」という恵まれた立場にいた自分だけだったと。 ミステリーとしてはこれから。

Posted byブクログ

2023/05/04

面白いなんて言葉で表現するのが躊躇われるくらい、この物語で描かれるスターリン体制下のソ連は最悪。 泣くことすらも国家への反逆の疑いをかけられて、処刑されるきっかけになる社会、やばすぎる。事実は小説より奇なり…。 なのにやっぱり、この緊迫感、前半主要人物かと思われた人があっけなく...

面白いなんて言葉で表現するのが躊躇われるくらい、この物語で描かれるスターリン体制下のソ連は最悪。 泣くことすらも国家への反逆の疑いをかけられて、処刑されるきっかけになる社会、やばすぎる。事実は小説より奇なり…。 なのにやっぱり、この緊迫感、前半主要人物かと思われた人があっけなく命を落とす衝撃、男と女の極限時の心理、お、面白すぎる、ページをめくる手が止まらない!! 上下巻の上巻は、こんなに読み応えあるのに、大量殺人に関しては、まるまる序章に過ぎないのもすごい。 どこも凍りついた土地で、被害者の口に柔らかい泥が詰め込まれていたのはなぜか、という謎がうっすら浮かび上がるのみ。これからどうなってしまうの?

Posted byブクログ

2023/03/07

映画は観ていたがあまり覚えていなかったので、読み返してみるとまた新鮮に面白かった。 チカチーロのほうがおぞましさは上だけど、殺人犯より権力者のほうが恐ろしいという社会が何より怖い。

Posted byブクログ

2022/12/18

私たちは殺人や窃盗、レイプ等の犯罪は起こさないと言えるけど、国家反逆罪に関しては安心できない。国家への忠誠があるという証明、反逆の意思がないという証明をするのは難しいから。 うろ覚えだけどこのフレーズが本当にもっともで、対岸の火事と捉えられないソ連の現状は恐ろしさに感じながら読み...

私たちは殺人や窃盗、レイプ等の犯罪は起こさないと言えるけど、国家反逆罪に関しては安心できない。国家への忠誠があるという証明、反逆の意思がないという証明をするのは難しいから。 うろ覚えだけどこのフレーズが本当にもっともで、対岸の火事と捉えられないソ連の現状は恐ろしさに感じながら読み進んだ。 やっぱり外国の本は訳が文章が日本の小説とは違ってきて結構読みにくい… 一人称なのか三人称なのか、視点がころころ変わる…。 でもこのスターリン体制と言われる社会主義の世の中の「理想」のために、殺人事件がもみ消される理由はわかった。 殺人や盗みが起きない世界を目指す。 そのためには未解決殺人事件などあってはならないことだから、犯人がわからないくらいなら事故として処理。そうすれば安心安全な理想の国は保たれる。 確かに人々の幸せを考えての政策と言えなくもない…、理想って難しいなと思った。 このロシアの情勢を絡ませながらどう猟奇殺人は解決に向かうんだろう。下巻もたのしみ。

Posted byブクログ

2022/11/04

 スターリン体制下のソ連が舞台。書かれたのは2009年ごろなのに、不思議なことに今のロシアを皮肉っているようにも読める。  そして続きが気になる。

Posted byブクログ

2022/10/02

エグい 上巻ほぼまるまるスターリン体制下のソビエト連邦という名の理想郷について語られる 簡単に言うと「恐い」ただただ「恐い」 不条理すぎる社会で疑問や怒りや嘆きを抑え込んで生きる人々 じっとりとした恐怖で埋め尽くされたページをめくる度に心が耕されて備えさせられているのがわかる ...

エグい 上巻ほぼまるまるスターリン体制下のソビエト連邦という名の理想郷について語られる 簡単に言うと「恐い」ただただ「恐い」 不条理すぎる社会で疑問や怒りや嘆きを抑え込んで生きる人々 じっとりとした恐怖で埋め尽くされたページをめくる度に心が耕されて備えさせられているのがわかる 理想郷を守るために行われる所業の数々に心が散々に乱され、夫婦の抑え込まれていた真実があらわになったとき 事件が動き始める 理想郷では絶対に起こるはずのない「殺人事件」が 「解決」という未来が少しも期待できない気持ちにさせられたまま下巻へ

Posted byブクログ

2022/10/08

2022年2月24日ロシアのウクライナ侵攻。この時代に戦争状態に入ることの驚きと、2・3日で終わるだろうと思っていたがいまだ終焉が見えず。改めてロシア人との考えに大きな乖離があることを思い知らされる。 意図したわけではないが、ウクライナ・ロシアが舞台のサスペンス小説。ソ連国の警...

2022年2月24日ロシアのウクライナ侵攻。この時代に戦争状態に入ることの驚きと、2・3日で終わるだろうと思っていたがいまだ終焉が見えず。改めてロシア人との考えに大きな乖離があることを思い知らされる。 意図したわけではないが、ウクライナ・ロシアが舞台のサスペンス小説。ソ連国の警察機関の腐敗のひどさが書かれ、でもそうだったのだろうなと思う。本書はロシアでは発禁書になっているもよう。 レビューは最終巻で。

Posted byブクログ