チャイルド44(上) の商品レビュー
スターリン体制下のソ連で、国家保安省の捜査官であるレオ・デミドフ。彼の腕は優秀であり、スパイ容疑者を追っていたが、その最中に友人の息子の事故が殺人だから犯人を探してくれと頼まれるが、調査することなく事故として処理を行った。 その後スパイ容疑者を拘束するも、彼はスパイではないと気付...
スターリン体制下のソ連で、国家保安省の捜査官であるレオ・デミドフ。彼の腕は優秀であり、スパイ容疑者を追っていたが、その最中に友人の息子の事故が殺人だから犯人を探してくれと頼まれるが、調査することなく事故として処理を行った。 その後スパイ容疑者を拘束するも、彼はスパイではないと気付く。しかしスターリン体制下では、容疑をかけられれば有罪。そこでレオは自分のしていることに疑い信念を持てなくなる。 その時レオの座を狙う同僚にはめられ、妻にスパイ容疑をかけられてしまう。妻を容疑者として認めなければ、レオと彼の両親も捕まってしまう。彼は妻と両親の命を天秤にかけなければならない。 その後レオは地方に追放される。そこで事故死として処理した友人の息子と酷似している少年の遺体が発見される。レオは政府から与えられた職務に反し、反逆者とみなされる可能性があるにも関わらず真の犯人を追う。 生きていくために、自分の大切な人を裏切り自分の信念も捨てるのか?それとも全てを危険にさらしてと信念を貫くのか?生きるためには、魂を切り売りしなければならない。あなたならどちらを選びますか。 厳しい体制下の元で生きていく、様々な立場の人間が描かれ、まだ見ぬ凶悪な殺人犯を見つけられるか、様々な感情を持ちながら読めるはず!
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むむ・・・これが処女作???すごーい! 警察に逆らうとどんな理由であれムショヘ そして無罪でも処刑される当時のシステム 妻がスパイ容疑で逮捕されるのを阻止した夫「レオ」は 人間人格失うほど拷問され収容所へ 収容所行きの列車で一緒になった妻とレオは脱出へ成功 その原動力になったのは無差別殺人「チャイルド44」の存在 ロシアの広範囲に子供が臓器を切り取られ無ざまに殺されたのを調査していた レオは犯人にたどり着くが犯人は意外な理由から殺人へと変わった その理由とは?
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スターリン体制下のソ連で起こった大量殺人を題材にしたミステリーだが、本書はその枠に納まるきるものではない。私はナチス強制収容所体験を綴った『夜と霧』を読んだときのような衝撃を受けた。作者は20代という若さのイギリス人であり、実際に恐怖政治を体験していないにもかかわらず、その巧みな...
スターリン体制下のソ連で起こった大量殺人を題材にしたミステリーだが、本書はその枠に納まるきるものではない。私はナチス強制収容所体験を綴った『夜と霧』を読んだときのような衝撃を受けた。作者は20代という若さのイギリス人であり、実際に恐怖政治を体験していないにもかかわらず、その巧みなストーリー展開と繊細な心理描写は、加害者や被害者という単純な括りを超えて人間の業や罪の深さを浮かび上がらせることに成功している。 人間は弱さゆえ周囲の状況に流されやすく、生存のためなら魂すら売りかねない。このような極限状況下で、何が正義か定まらぬ不安に怯え権力の餌食となる恐怖と闘いながら、自己を確立することができるのだろうか。 しかし、本書はあくまでフィクションであり、サスペンス・スリラーとしての質の高さはCWA賞という折り紙つき。読者は国家保安省の冷酷で敏腕な捜査官レオ・デミドフと妻ライーサを取り巻く物語に引き込まれ、その面白さを存分に味わい尽くすことができるだろう。続編の『グラーグ57』にも手を伸ばしてしまうに違いない。
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スターリン体制下のソ連、国家保安省の優秀な捜査官として働いているレオが主人公。 上巻は連続殺人事件自体にこれから深く入り込んでいくってところでおわる。 終盤までは当時のソ連がどんなにつらい状況下にあったか、国家保安省の仕事がどんなものだったか、などに重きを置いて書かれている。 ...
スターリン体制下のソ連、国家保安省の優秀な捜査官として働いているレオが主人公。 上巻は連続殺人事件自体にこれから深く入り込んでいくってところでおわる。 終盤までは当時のソ連がどんなにつらい状況下にあったか、国家保安省の仕事がどんなものだったか、などに重きを置いて書かれている。 最後の方になってやっと本題に入るのかーって感じは若干あったものの、そこまでの展開も先が気になる読ませる展開で面白いし、翻訳も読みにくいってことが特にないので良かった。 面白いは面白いんだけど、当時の状況が状況であるだけに辛い場面が多く気持ちがしんどくはなる。 本当に当時はこんな感じだったんだろうか…。 気になるところで上巻は終わったので下巻も楽しみ。 それにしても作者は脚本などはすでに手がけていたらしいけど、小説はこれが処女作だと知ってすごいなぁと…。
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2008年発表のスリラー。長年の積読に手を付けてみる。 ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得た物語である。 2009年の「このミステリーがすごい!」海外編の第1位。「2008年度CWAスティール・ダガー受賞、ブッカー賞ノミネート」と帯は何だか華々しい。世界27カ国で刊行される一方...
2008年発表のスリラー。長年の積読に手を付けてみる。 ソ連に実在した大量殺人犯に着想を得た物語である。 2009年の「このミステリーがすごい!」海外編の第1位。「2008年度CWAスティール・ダガー受賞、ブッカー賞ノミネート」と帯は何だか華々しい。世界27カ国で刊行される一方、ロシアでは発禁というのはまぁむしろ勲章だろう。 「リドリー・スコット監督で映画化決定」ともあるのだが、その後、いろいろあったのか、ダニエル・エスピノーサ監督で2015年に映画化されたようだ(あまり評判はよくなかった模様)。映画の方もロシアでは公開されなかったらしい。 上巻を読み終えたところで、なるほどロシアではちょっと出せないだろうな、と思う。 冒頭から、1933年のウクライナの飢饉のシーンである。著者は英国人なのだが、相当な取材をしたものか、かなり克明な描写が胸に迫る。 物語の中心となるのは1953年、戦後のスターリン体制下のソ連である。 主人公であるレオ・デミドフは、戦争の英雄でもあり、国家保安省捜査官というエリートである。特権階級として庶民には手の届かない贅沢な暮らしをしている。 スターリンを中心とし、理想的な共産主義社会を築いていることになっているが、しかし、その実、社会は欺瞞に満ち、人々は常に「国家」の顔色を窺って生きている。ひとたび「スパイ」「反逆者」とでも疑われようものなら、「粛清」は当人のみならず家族や親戚にも及ぶ。拷問され強要された自白で隣人の名を口走れば、隣人もまたただでは済まない。罪があるかないかではない、疑われるようなことをするのが悪いのだ。 部下の1人の子供が列車に轢かれて死ぬ。部下は事故ではなく、殺されたのだと主張するが、他の事件で忙しいレオは、子供を失った親の錯乱として取り合わない。 その時、彼は重大な「反逆者」を追っていたのだった。だが、実のところ、「反逆者」はただの親切で腕の良い獣医だった。彼のただ1つの罪は、アメリカ大使館職員の犬の診察をしてやったことだった。 レオは首尾よくこの「スパイ」をひっ捕らえるのだが、この事件の際に、自身の副官を邪慳に扱い、恨みを買う。そしてその姦計に落ち、民警として、妻とともに僻地へと追いやられる。 その地で、レオはかつての部下の子供の死体に酷似した惨殺体を見る。 上巻では、猟奇的殺人は確かに出てくるのだが、物語の大半は、抑圧的体制のねじ曲がった重苦しさの描写に費やされている。 レオ自身、特権を笠に着た、かなり「嫌なヤツ」である。美人の妻とも心は通い合っていない。彼女はいわゆるトロフィーワイフなのだ。しかし、権力の座を追われた裸の個人となれば、妻との関係も変わらざるを得ないだろう。そんな気配も匂わせながら、上巻はひとまず幕を閉じる。 さて、下巻はどういった展開になるのか。
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設定にもうヤラレタ、スターリン時代という舞台背景をフルに活用している。ストーリーテリングの巧みさもTVドラマの脚本仕込。主人公夫婦の関係の変化や、脇役の丁寧な心理描写なども読ませる。ただし終盤ストーリーの無理矢理な収束のさせ方だけはチョット。。。
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上下巻あわせてのレビューです。 劇場で観た映画版『チャイルド44 森に消えた子供たち』。サスペンスフルでとても面白かったけれど、主人公の行動は説得力に欠け、犯人もただのイカレたオッサン。ミステリーとしてはイマイチでしたから、トム・ロブ・スミスの原作ではどうなっているのだろうと興味津々。 『このミス』にランクインしたときに読んだという友人は、かなりとっつきにくかったと教えてくれました。確かに、『卵をめぐる祖父の戦争』といい、旧ソ連が舞台の話は重苦しくてとっつきにくい。上巻は冒頭シーンが大きく異なるものの、まぁ映画と同じと言ってもよく、こりゃ映画を先に観ていなければ、読み進めるのに苦労しただろうと思いました。 「ふ~ん、フツー」と思いながら下巻へ。そうしたら、冒頭シーンの意味がわかる後半から、もう怒濤の面白さ。 完全ネタバレなので、原作をお読みになるご予定の方はご注意を。 原作の冒頭では、まだ少年の兄弟が森へ出かけます。飢餓の時代、猫の鳴き声を聞いた兄のパーヴェルは、弟のアンドレイを連れて、猫を捕らえるために森へ。暗闇で猫を捕獲したかに思えたそのとき、パーヴェルの姿が見えなくなります。実はパーヴェルはある夫婦に襲われて連れ去られたのです。 その夫婦は飢え死にしかけている自分の息子を助けるために、パーヴェルを殺して息子に食べさせようとしていました。しかし、意識を失ったパーヴェルを袋に詰め込んで帰ったときには息子はすでに死亡。パーヴェルを殺す必要がなくなった夫婦は、パーヴェルに食糧を与え、「帰ってもよいし、自分たちと一緒に来てもよい」と告げるのです。以後、パーヴェルは夫婦の息子だったレオの名前で生きます。 大好きだった兄に見捨てられたと思ったアンドレイは、パーヴェルのことを片時も忘れませんでした。あるとき、戦争の英雄としてパーヴェルが掲載された新聞記事を目にします。兄が軍の重要機関に勤めていることを知り、アンドレイはパーヴェルにメッセージを送ることに。そのメッセージというのが数々の猟奇殺人でした。 映画を観たときに原作は決してこうではなかったはずと感じたとおり、犯人はただのイカレたオッサンではなかったし、遺体の様子を見たレオが何かに突き動かされて、事件に異様な執着を見せることも、原作を読めば納得。 レオとライーサの逃走劇に何の見返りもなく手を貸す人々。このくだりには胸が熱くなります。あきらかな狂人ながら、兄が気づいてくれるのをひたすら待つ弟、その弟を自らの手で殺さなければならなくなった兄。 本作はロシアでは発禁処分になっているそうです。理想国家では殺人事件など起こらない。そう人々に言わせていたがゆえに実際に起きたアンドレイ・チカチーロ事件。著者はチカチーロ事件に着想を得たとのこと。犯人の名前もここから来たものだったのですね。 下巻途中からはかなり興奮しました。国内編では唖然呆然とさせられることも多い『このミス』も、海外編のランキング1位は侮れず。 映画の感想はこちら→http://blog.goo.ne.jp/minoes3128/e/5a174a3f00220aa28a66a71e943f8844
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【スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。】 (...
【スターリン体制下のソ連。国家保安省の敏腕捜査官レオ・デミドフは、あるスパイ容疑者の拘束に成功する。だが、この機に乗じた狡猾な副官の計略にはまり、妻ともども片田舎の民警へと追放される。そこで発見された惨殺体の状況は、かつて彼が事故と遺族を説得した少年の遺体に酷似していた…。】 (「BOOK」データベースより) ようこそ! どの国も成し遂げなかった平和と安全を実現した、理想郷へ! 犯罪? そんなものないない。あるならそれは敵国のスパイのせいだ。捕まえて尋問しなきゃ。例えどんな手を使ってでも。国家繁栄のためならなんだって許される。 だってここは資本主義のソビエト連邦。凍えそうな吹雪に囲まれた、世界で最も安全な国だから……。 (感想は下巻へ)
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上巻。 スターリンの共産主義政下の陰鬱な社会描写が キツイキツイ。 読んでいて辛くなってきてしまい、 途中で投げ出そうかと思った位でしたが、 主人公・レオが妻を告発するかどうかの 辺りからページを繰る手が止まらなくなりました。 この暗い展開は、前振でしかないのね、と。
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前々から気になっていたが映画にもなったということで手を出してみました。ロシアがソ連と呼ばれていた時代に起きたとある事件から始まるわけですが上巻は事件捜査よりも時代背景・主人公の人物語りで話はほぼ進まず。下巻に続く。
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