チャイルド44(下) の商品レビュー
「私のためじゃない。われわれとともに生活をしている人たちのためにやるんです。われわれの隣人のために。列車でたまたま隣り合って坐った人たちのために。知らない子供たち、これから会うこともない子供たちのために。」 正義を成そうとしたときに、その最大の敵が国家であるとき、進む先には絶望...
「私のためじゃない。われわれとともに生活をしている人たちのためにやるんです。われわれの隣人のために。列車でたまたま隣り合って坐った人たちのために。知らない子供たち、これから会うこともない子供たちのために。」 正義を成そうとしたときに、その最大の敵が国家であるとき、進む先には絶望があるだけだ 少年少女連続大量殺人犯を追う元国家保安省捜査官のレオの前に立ちはだかるのは国家と言う名の絶対的な正義であり レーニン主義の実現を目指す理想郷に住む人々は幸福に満ちた善良な者であり殺人犯など存在しないという作られた現実だ それでもレオは進む 共に危険に身をさらす愛する妻と 殺人犯を憎み殺された子供たちに我が子を重ねる現実の善良な人々の助けを得て そして国家との闘いの裏にもうひとつ大きな秘密が隠されていた! いやいやとんでもない傑作でした! 終わり方も良かった! しかもあとがきによれば本作はロシアでは発禁になっているとのこと、それだけでも読みたくなっちゃうわー そして現在のウクライナ戦争にも通づるような思想も見え隠れして、今だからこそ読むべき一冊なのは間違いなし!
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スターリン体制下のソ連で起きた44人の少年少女連続殺人を描いた作品。実際にあった事件から着想を得たとされる。主人公は国家保安省の捜査官。連続殺人犯を捕まえるため、自らを危険にさらしてでも孤軍奮闘する。多くの敵をつくり、味方を危険な状況へ陥れ、結果、罪のない人々が罰せられていく。当...
スターリン体制下のソ連で起きた44人の少年少女連続殺人を描いた作品。実際にあった事件から着想を得たとされる。主人公は国家保安省の捜査官。連続殺人犯を捕まえるため、自らを危険にさらしてでも孤軍奮闘する。多くの敵をつくり、味方を危険な状況へ陥れ、結果、罪のない人々が罰せられていく。当時の貧しい生活や恐怖政治に怯える人々の姿、無慈悲な懲罰や拷問などもリアルに描れており、目を伏せたくなるほど痛ましい。ストーリーが非常に練り込まれており、とにかく息つく暇もないほどハラハラする展開に襲われる作品である。
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レオが左遷されたヴォルスクでも、子供が殺害されていた。捜査するレオは、妻ライーサや署長の協力で、ソ連国内広域に同様の事件が起きていることを突き止める。しかしそれ以上の捜査は、国家の反逆者とされてしまう。 結末はちょっとできすぎかと思いましたが、いやぁ面白かった、極上のサスペン...
レオが左遷されたヴォルスクでも、子供が殺害されていた。捜査するレオは、妻ライーサや署長の協力で、ソ連国内広域に同様の事件が起きていることを突き止める。しかしそれ以上の捜査は、国家の反逆者とされてしまう。 結末はちょっとできすぎかと思いましたが、いやぁ面白かった、極上のサスペンス。ソ連の管理社会の緊張感が、面白さに輪をかけています。 映画化は当然だと思いました。でもなぜ映画は、あんまり印象に残らなかったのだろう。もう一度観賞してみたいです。
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1950年代のソビエト連邦。 第二次世界大戦中に一仕事を成し遂げ、 英雄と持ち上げられたレオ・デミドフは、 戦後、国家保安省(MGB)捜査官となった。 政治のありようや権力闘争に一定の疑問を感じながらも、 自分の地位と働きによって 両親と妻にいい暮らしを送らせることが出来るのを ...
1950年代のソビエト連邦。 第二次世界大戦中に一仕事を成し遂げ、 英雄と持ち上げられたレオ・デミドフは、 戦後、国家保安省(MGB)捜査官となった。 政治のありようや権力闘争に一定の疑問を感じながらも、 自分の地位と働きによって 両親と妻にいい暮らしを送らせることが出来るのを 誇りに思っていたレオだったが、 一人の少年の轢死事故をきっかけに運命の歯車が狂い始め、 封印された自らの過去を直視することになった――。 社会主義国家で生まれ育ち、 ホロドモールや第二次世界大戦を経験して、 エリートと持て囃されながらも 精神的には安閑とした暮らしと縁のなかった男性が、 出世コースを外れたことがきっかけで 自分自身を見つめ直す物語……と言えばいいだろうか。 左遷された先で事件資料を見るともなく見やり、 遺体の状況に既視感を覚えたレオは、 同一犯による広範囲での連続殺人事件が起きていると直感。 しかし、 「秩序正しいソヴィエト連邦において、そんなことがあるはずはない」 と一蹴されるどころか、 存在しない事件を捏造する「反ソヴィエト行為」と断罪され、 殺人鬼の正体を突き止めるために策動すると共に 当局から追われる身になってしまうのだった。 上巻はなかなか本題に入ってくれない感じが まだるっこしかったのだが、テンポがよくなって来た辺りから、 反面、前半にあった冷ややかな緊張感が失せ、 格調高さもなくなり、若干ご都合主義的な展開が続くことも含めて 二時間サスペンスドラマ風に。 全体として、とにかく長い(もっと端折れた箇所があったと思う)……。 作者は英国人なのだが、 物語の核の部分――ネタバレを避けるため黙秘――が ウェットな情緒に訴えかける種類のもので、その点は 非常に日本人好みだと思った(皆さんお好きでしょ、そういうの)。 とはいえ、過酷な状況に追い込まれた一組の夫婦が 本音をぶつけ合い、結果、 揺るぎない信頼で改めて結び合わされるところは感動的。 ライーサ、よく頑張った、エラい。 結末は、途中から「こうだったらいいな」と 思っていたとおりだったので、そこは満足。 余談だが、第二次大戦中、 ユダヤ人を救済するフリをして自宅で殺害した医師、 マルセル・プショー(Marcel Petiot)の名が ドクター・ペティオとして紹介されたところ(p.107) で「おお」とのけ反った。 『怪人プチオの密かな愉しみ』はいいぞ(笑)。 https://booklog.jp/item/1/B00005H304
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下巻の途中で はっ!!となった それからは、色々な事が繋がってきて、鳥肌がたった 時代によって理不尽な事で命を落とす人が多かった一方、時代が変わっても起こる殺人 どんな時代でも子供が狙われる犯罪は心が痛む 上下巻の本だけど、引き込まれるように読みました!
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ミステリーとしての内容よりも、共産主義国の怖さが衝撃的だった。 この国で犯罪が起こるわけがないという思い込みから捜査は進まず、被害者だけが増えていく。正しいことが言えずに誰が味方で誰が敵なのかも分からない恐ろしさ。 様々な思いを抱える登場人物たちの心情が良く伝わってきた。 ここま...
ミステリーとしての内容よりも、共産主義国の怖さが衝撃的だった。 この国で犯罪が起こるわけがないという思い込みから捜査は進まず、被害者だけが増えていく。正しいことが言えずに誰が味方で誰が敵なのかも分からない恐ろしさ。 様々な思いを抱える登場人物たちの心情が良く伝わってきた。 ここまで過酷な運命を辿る主人公もなかなかいない。現在起こっている戦争のことも思いながら…小説を読んでこんなに怖くなったことはない。
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母さんの場合・・・が生きる理由だった。 ・・・に話しかける方法だった。 映画とはまるきし内容が異なる好例。
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スターリン体制下のソ連、実在したサイコパス、アンドレイチカチーロをモデルにした小説。 独裁政権、共産主義国家での正しい捜査の難しさと、正義を求めて奔走する主人公。 最後はあっと驚く結末になっていました。
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昔のベストセラーを今更言うのもなんですが、確かに凄かった!一気読み。現代小説の収穫は複雑な要素を絡めることでこれを大佛次郎や国枝史郎のように想像力で広げるのでなく緻密に積み上げることだが、これが見事にハマっている。スターリン体制下のソ連を舞台とするが、要は西側の常識など通用しない...
昔のベストセラーを今更言うのもなんですが、確かに凄かった!一気読み。現代小説の収穫は複雑な要素を絡めることでこれを大佛次郎や国枝史郎のように想像力で広げるのでなく緻密に積み上げることだが、これが見事にハマっている。スターリン体制下のソ連を舞台とするが、要は西側の常識など通用しない世界で謀略的にスパイ容疑をかけられた国家保安官が逃亡しながら44人の子供を殺す連続殺人鬼を捜すのだが、ミステリー、政治スリラー、ラブ、狂気、隠された秘密、バイオレンス、家族の絆、個人と国家など要素てんこ盛りなのだ。国に追われると言えば思い出すのは、高倉健主演映画の君よ憤怒の河を渡れ。日本よりアジアで大ブレイクした国家権力と戦う男の荒唐無稽な映画だが、こっちはもっとシリアスでもっと絶望的な中で戦うのだ。敵味方の観念すら崩れる。凄すぎて第2弾は読めない。リドリースコットが映画化しても描ききれなかったのがわかる傑作
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レオたちの絶体絶命の逃亡劇に もうハラハラしっぱなしで マジで疲れる。 けど、気になって止められない。 あぁ、おもろかった。 あと気になるのは弟の娘。 目の前で父親を殺されて きっとレオを恨んでいるはず。 続編があるようなので読みたい。
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