カリブ諸島の手がかり の商品レビュー
2025/9/22読了 これも、有栖川有栖『ミステリ国の人々』で知った作品。「ミステリ国で〈最もひどい目に遭った名探偵〉の候補にしたい」「(E・クイーンが)続編の執筆を勧めたのは常識はずれだ」「その依頼に応じてしまう作者もどうかしている」とまで書かれた理由を遂に知る。 1920年...
2025/9/22読了 これも、有栖川有栖『ミステリ国の人々』で知った作品。「ミステリ国で〈最もひどい目に遭った名探偵〉の候補にしたい」「(E・クイーンが)続編の執筆を勧めたのは常識はずれだ」「その依頼に応じてしまう作者もどうかしている」とまで書かれた理由を遂に知る。 1920年代のカリブ諸島の島々を舞台に、西洋のそれとは異なる論理で起こる怪事件に挑み、翻弄される西洋人(“名探偵”ポジオリ教授はイタリア系のアメリカ人)の物語と思いきや、最終エピソードの『ベナレスへの道』で……「さっきまで、ミステリを読んでいたんですけど……?」という目に遭った。この時代にこんな作品を書いたT.S.ストリブリングが凄いのか、逆にヴァン・ダイン、クイーン、カー辺りが本格ミステリの型枠を作ってしまう前だったからこそ衒いもなく書けたのか。それから約100年、“お約束”でがんじ搦めの本格ものの枠を外れた作品を目にする今、寧ろ新鮮に見えてしまうのが面白い(前知識がなければ、現代作家がこの時代、地域を舞台に書いた作品と言われて信じたかも)。しかし、本当に続編をどうやって始めたんだろう?
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自分好みの、超傑作。★5か迷う。 420ページに5作品なので1作品あたりのページ数が多い。 探偵小説に違いはないが、ガチガチの本格や他の探偵小説のように「事件(謎)→調査→解決」を主眼にし、それ一本を前面に押し出したものではなく、謎解き要素をメインとした作品もあるにはあるが解法...
自分好みの、超傑作。★5か迷う。 420ページに5作品なので1作品あたりのページ数が多い。 探偵小説に違いはないが、ガチガチの本格や他の探偵小説のように「事件(謎)→調査→解決」を主眼にし、それ一本を前面に押し出したものではなく、謎解き要素をメインとした作品もあるにはあるが解法は簡単であり、それよりも、多様な人種が集まる西インド諸島(カリブ海周辺)という舞台を利用して、「多様な人種の登場」「お国柄(アメリカ人はこう考える、英国人はこう考える、現地人はこう考える、等)」「異国の主義や宗教、考え方、物事の捉え方、人種の違いといったテーマ性」を「事件→調査→解決」の過程に綺麗に融合させた作品であり、その点が極めて面白く、事件とストーリーないしテーマ性とが非常に上手く融合されている作品だなと感じた。 そういう意味では「異色の探偵小説」なのかも。 ポジオリ教授作品は全39編あり、本作の5編は「第一期」にあたる作品らしいが、以降の作品も是非読みたくなった。
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伝説の比較文化論的衝撃ミステリ、ポジオリ教授シリーズ5篇収録。教授がバカンスに訪れたカリブ海を舞台に、亡命中の元独裁者、ヴードゥーの呪術、ヒンドゥー寺院の事件など異文化の常識の中で起こる怪事件の数々。教授は探偵役とはいえ素人なので見事な推理をするわけではない。欧米の常識が通じない...
伝説の比較文化論的衝撃ミステリ、ポジオリ教授シリーズ5篇収録。教授がバカンスに訪れたカリブ海を舞台に、亡命中の元独裁者、ヴードゥーの呪術、ヒンドゥー寺院の事件など異文化の常識の中で起こる怪事件の数々。教授は探偵役とはいえ素人なので見事な推理をするわけではない。欧米の常識が通じない異文化で起こるから犯人の動機も関係者の行動も我々欧米文化の常識では理解できない。圧巻は「ベナレスへの道」。ラストでとんでもないことが起きる。この社会ではこれが現実なのか。教授自身が彼らの世界に飲み込まれる。1929年にこのラストがあったのか、とひっくり返る傑作。
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ミステリをたくさん読んでるとちょっとやそっとのことでは驚かなくなる しかしこれには驚かされた 犯人の形而上学的動機と驚きの結末が読者を震撼させる名作「ベナレスへの道」ほか、古典的な味わいのある謎解きを楽しめる ちなみにこの作品が出たのは1929年で、ミステリ史の中でどういう年なの...
ミステリをたくさん読んでるとちょっとやそっとのことでは驚かなくなる しかしこれには驚かされた 犯人の形而上学的動機と驚きの結末が読者を震撼させる名作「ベナレスへの道」ほか、古典的な味わいのある謎解きを楽しめる ちなみにこの作品が出たのは1929年で、ミステリ史の中でどういう年なのかちょっと調べてみた 同年の1929年にはエラリー・クイーンの『ローマ帽子の謎』、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』、アントニイ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』、ダシール・ハメットの『赤い収穫』が出ている
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カリブ海をめぐる探偵もので、夏に読むのにピッタリ(読み終わった時には秋になってしまっていたが)。連作もので順番通りに読んでいくと、何とも後味の悪い終わり方。有栖川有栖氏の日経のエッセイを読んで、手に取っていたので、どんなものやらと結末をと思っていたが、何のことやら。とは言いつつ面白かったのでこの評価。
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カリブ諸島を舞台にしたミステリ短編集。 バズラーとしてのクォリティもさることながら、エキゾチックな雰囲気が非常に楽しめる。日本人には余り馴染みのない場所なので、作品に独特の雰囲気があるという印象。収録作の中ではホラー風味が強い『ベナレスへの道』がイチオシ。
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カリブ諸島の独特な空気が漂う、ちょっと変わったミステリ。ミステリとしてではなく、その雰囲気を楽しむものか。段々と変わった方向になっていき、最後は凄いことに。
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TSストリブリング『カリブ諸島の手がかり』(河出文庫、2008年)読了。 そもそも小生は、洋物はあまり読まないのはご存じの通り。何しろ登場人物の区別を付けにくい。これは本読みの半分の楽しみを放棄しているに近いと思うのだが、苦手意識はどうしようもない。 ところで、日曜日の日経に「ミステリー国の人々」という連載記事がある。古今東西のミステリーを有栖川有栖が紹介する連載である。有栖川氏自身がミステリー作家だけに、紹介する小説も素人の小生がまだ一度も手にしていない作品が多い。4月3日に紹介された小説が『カリブ諸島の手がかり』だった。 『カリブ諸島の手がかり』は1929年に出版されているので、作品自体は結構古い。しかし日本語の文庫化は2008年が初版なので再評価されたということなのだろうか(2002年に出版された『世界探偵小説全集15』には収録されているらしいが)。 内容は、オハイオ州立大学で心理学を教えているイタリア系アメリカ人のポジオリ教授が休暇で西インド諸島を旅行している最中に遭遇した事件を解決するといったもので、本書には5編が収められている。ちなみにポジオリ教授シリーズは37編あるという。 さてそれぞれの作品には、タイトルの次に謎めいた単文が添えられている。 「亡命者たち」本篇では、スペイン気質が一杯のワインに奇妙な影響を及ぼす。 「カバイシアンの長官」本篇では、教授は不安な気持ちでまじない師に刃向かう。 「アントゥンの指紋」本篇では、悪事が犯人逝きしのちも生きながらえるかのようだ。 「クリケット」本篇では、アングロサクソン系の人物はスポーツと犯罪でいつものふるまいをする。 「ベナレスへの道」本篇では、教授はあるヒンドゥー教のしきたりを調査すべきではなかった。 読む前はその意味がよく分からないのだが、読み終わってみると、『ナルホドー』と思ってしまうような、何とも心憎いプロローグである。 小生が本書を手にしようと思ったのは、有栖川氏の次の一文に惹かれたからであった。 「初めて読んだ時は、幕切れの意味がにわかに理解できなかった。いや、理解はしながら、「それって……あり?」と茫然(ぼうぜん)となったと言うのが正しいか。」[日経、2016年4月3日朝刊] ミステリー作家が茫然となるほどの「オチ」であれば、是が非でも読みたいと思うのは当然。 この「オチ」が成立するのは、カリブ諸島という舞台だからかもしれない。いうまでもなくカリブ諸島は西インド諸島ともいわれる。西インドとはいってもアジアではなく、コロンブスの誤認によって命名された地域である。ここは、ヨーロッパ諸国(英国、スペイン、オランダ、フランス)などの植民地になり、現在でもその影響を強く受けた地域である。 したがって、登場人物も現地人はさることながら、ヨーロッパ諸国あるいはヨーロッパ系の人間が登場する。これが作家の人間観察力で描かれている。 たとえばこんな風に。 大きな食堂のいたるところで、ほかの客たちがそれぞれの国の流儀にしたがって食事をしていた。イギリス人は、ナイフとフォークを勤勉に動かしている。必ずどちらかを手にしており、両方とも置くことはない。かなりせわしない感じである。ドイツ人は、ひとわたりの皿のパンをつまんでから選んでいる。イタリア人は、ズーズー音を立てながらえらい勢いでスパゲティを食べている。どれもこれも、他国の人の目から見れば不作法だった。アメリカ人は例の石鹸のセールスマンで、テーブルをナイフでがんがんたたき、ボーイのスピオを呼んだ。[p.53] 小生にはこれが各国人の気質なのかどうかは分からない。しかし『そうなのかぁ』と思わせてしまうところがうまい。こういった表現が随所に登場するからたまらない。しかもそれが謎を解く鍵になるのだから注意深く読まなければならないわけである。 ところでその「オチ」はたしかに茫然とするような「オチ」だった。急いでヴァン・ダインの二十則(ミステリーの禁じ手)を読み直したが禁じ手ではなかった。つまり「やられた!」というわけである。 有栖川氏はポジオリを指して「かわいそうな彼を、ミステリー国で〈最もひどい目に遭った名探偵〉の候補にしたい。」とも書いていた。 ストリブリングなどという作家は知らなかったが、舞台の面白さも相まってすっかり魅了されてしまった。
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・亡命者たち ・カパイシアンの長官 ・アントゥンの指紋 ・クリケット ・ベナレスへの道 全体的に地味な印象。舞台が1920年代ころの西インド諸島ということで他にはない雰囲気がある。イギリス、フランスなどにより植民地化され、さらにアメリカの影響も強くなってきている。極小数の白人に支配されているのは未だ迷信が強く残る原住民たち。そこにアメリカ人の心理学教授のポジオリが旅行に訪れる。名探偵としての名声だけが独り歩きし、行く先々の島で事件に関わることになる。 ベナレスへの道は推理小説に超自然の結末を結びつけた作品で、それまでの作品での原住民の迷信、宗教などが下地となっている。カーの火刑法廷を思い出す。
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いや、どうなんだ、この名探偵は、ぶっちゃけ実は大したことないんじゃないか?とか思わせるこの既視感は、コナンの父親?じゃなくてあの毛利のおっさんじゃないか。まぁ確実におっさんの方が後だろうけど。名探偵の、普通の人的に普通に頑張ってる感がもやもやするけど、いちいち最後のオチがなんとも...
いや、どうなんだ、この名探偵は、ぶっちゃけ実は大したことないんじゃないか?とか思わせるこの既視感は、コナンの父親?じゃなくてあの毛利のおっさんじゃないか。まぁ確実におっさんの方が後だろうけど。名探偵の、普通の人的に普通に頑張ってる感がもやもやするけど、いちいち最後のオチがなんともステキで、その一行ですっかり報われる。
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