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顔のない裸体たち の商品レビュー

3.2

42件のお客様レビュー

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  2. 4つ

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  3. 3つ

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  4. 2つ

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2013/05/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

空白を満たしなさい、から遡って、決壊、ドーン、そして本作。 こういう猥雑で「生理的な嫌悪感」というもので思考停止しそうなテーマをここまで掘り下げていく洞察力と筆致に舌を巻く。  ドーンの「可塑整形」へと繋がるテーマでもあり、分人主義の土台となるようなモチーフである。 「恥」という感情の存在条件、女の「本性」を妄信し、それを暴く欲求を抑えない男の執着、欲望と危惧との遠近の異なりが生む女の(間違った)選択、など随所に「卑猥なゴシップ」に留まらない心象を呈示する。とても一般受けする話とは思えないのだが、こういう題材で1つ小説を書いてしまうのは平野さんか橋本治ぐらいではないか、と思う。 対照的に思い浮かんだのは、吉田修一の「悪人」。こちらは映画がヒットしたわけだが、地方の独身女性のネットの闇的ストーリーとしては、断然、本小説が上。

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2013/04/06

てっきり現実に起きた事件のルポかと。 でもどうやらそうではない模様。 難解な文章を書く平野さんにしては、随分と平易なタッチで読みやすいという評価がネット上ではなされてますね。 ただ、内容自体は新鮮味に欠けるし、平野啓一郎がわざわざ扱う題材ではない、とのキビシー声も。 書かれた...

てっきり現実に起きた事件のルポかと。 でもどうやらそうではない模様。 難解な文章を書く平野さんにしては、随分と平易なタッチで読みやすいという評価がネット上ではなされてますね。 ただ、内容自体は新鮮味に欠けるし、平野啓一郎がわざわざ扱う題材ではない、とのキビシー声も。 書かれたのが5年前なのでなんともいえんけど 今となってはこういった事件というか出来事は 決して珍しくないんだろうなあ。 割と誰でも 「ミッキー」や「ミッチー」になりうる可能性はあるんだと思う SNSが流行ってる現代はなおさら。。

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2013/03/12

露出系カップルが起こした社会事件を題材に、男と女の表と裏の顔を描く本作。 一体いつから、セックスという名の性器の擦り合いを、肉体的接触のないフェティッシュ的な行為においても、性的興奮を得られるように現代人はシフトさせていったのか?? 今や変態が変態でなくなっているメディア...

露出系カップルが起こした社会事件を題材に、男と女の表と裏の顔を描く本作。 一体いつから、セックスという名の性器の擦り合いを、肉体的接触のないフェティッシュ的な行為においても、性的興奮を得られるように現代人はシフトさせていったのか?? 今や変態が変態でなくなっているメディアによって描かれるエロに迫り、一気に読ませます。 そして。 「事件直後の取材では、犯人の周囲にいた者たちは、大抵彼を『ふつうの』」と評するものだが、これは無意識の社会的な責任の回避である」 まさしく、みんながそうやって何とか世間という自分たちの住み処を保っているんだよな。

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2013/03/02

一人称はなく、ある事件に関わった男女の生育歴から出会い、そしてその事件が起きるまでの経緯が、第三者によってただひたすら淡々と描かれる。 過激な単語も猥褻な描写も無機質。ただし鋭利。第三者の思考や感情は一切無い。(第三者は著者なのかな) 昔話題になった映画「時計じかけのオレンジ」を...

一人称はなく、ある事件に関わった男女の生育歴から出会い、そしてその事件が起きるまでの経緯が、第三者によってただひたすら淡々と描かれる。 過激な単語も猥褻な描写も無機質。ただし鋭利。第三者の思考や感情は一切無い。(第三者は著者なのかな) 昔話題になった映画「時計じかけのオレンジ」を思い出した。 暴力シーンとクラシック音楽。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%99%82%E8%A8%88%E3%81%98%E3%81%8B%E3%81%91%E3%81%AE%E3%82%AA%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8#.E3.83.89.E3.83.AB.E3.83.BC.E3.82.B0.E3.81.AE.E3.82.A6.E3.83.AB.E3.83.88.E3.83.A9.E3.83.B4.E3.82.A1.E3.82.A4.E3.82.AA.E3.83.AC.E3.83.B3.E3.82.B9 事件に至る「経緯」の一部は、今日ネット社会に生きる我々のほとんどが、わずかなりとも思い当たる節があるのではないでしょうか。 同一人物がつくり上げるネット上の存在の属性と現実の存在のそれが100%一致する人っているのかな。

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2012/09/30

「作家が何を書こうとしているのかを理解して小説を読むことは面白い」と思わせてくれた本。 少し前に読んだ平野啓一郎が書いた「『私』とは何か」の中で、この作品についても「ネットとの関わりで『本当の自分』について考えた」と言及されていて、そのことを意識しながら読んだ。実際作中でも「本...

「作家が何を書こうとしているのかを理解して小説を読むことは面白い」と思わせてくれた本。 少し前に読んだ平野啓一郎が書いた「『私』とは何か」の中で、この作品についても「ネットとの関わりで『本当の自分』について考えた」と言及されていて、そのことを意識しながら読んだ。実際作中でも「本当の自分」という言葉がたびたび登場して、その文字は太字で強調されている。また主要な登場人物の一人は「本当の自分」は一つしかないと思っていて、そのことに執拗に拘っている。(そして性格的に歪んでいる) ちなみに話自体は出会い系サイトで知り合った男女が「顔のない裸体」のネット投稿にのめり込んでいく姿を書いたもので、わりと大人向けな気が。

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2012/07/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

誰からも顧みられることのない地味な女性が、顔の見えないネット世界を媒介として、淫らな性に倒錯して行く。主人公の目に見える変化と自然な心の変遷のギャップ。誰にでも起こりうる違和のなさに肌寒さを覚える。心理分析は的確で説得力があり、目を瞠るリアルな描写に息を呑む。

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2012/05/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

卑猥な状態が色々と書かれていて、電車の中で読むのがはばかられた。読んでいていやらしい気持ちになることはないので、官能小説とは全く異なるけれども、いやらしい言葉が多い。 それでも、すっと心に落ちてくる言葉がありさすがだなと思う。

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2012/03/05

彼の書く文章は、どことなく固い。それは、流れているというよりも、展示しているという感じだ。しかし、その展示物の色彩が、色とりどりの感情を生み出しているのも確かに感じる。この小説もそうだと感じた。この小説に登場する人たちの感情は、まるで流れている感じがしない。けど、登場人物の心の裡...

彼の書く文章は、どことなく固い。それは、流れているというよりも、展示しているという感じだ。しかし、その展示物の色彩が、色とりどりの感情を生み出しているのも確かに感じる。この小説もそうだと感じた。この小説に登場する人たちの感情は、まるで流れている感じがしない。けど、登場人物の心の裡では、確かな鼓動のような音が聞こえる。それは、確かなリズムを持って、読者に届くのだと思う。でも、その手法による表現については、あまりにも固いが、それでも強烈な波動を発し続けるモノなので、読者によっては、好き嫌いがはっきりと表れる作家であると感じる。彼の描く表現は、まるで熱せられ、光りを放つ鉄の固まりだ。それは強烈な存在感を放ちながら、読者の心情を困惑へと陥れる。いわば読者に対する挑戦状であると感じました。

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2011/12/22

性的めざめを迎えた中年に足がかかった女と体しか愛せない若い男。社会的な居場所もある二人がエスカレートしていく性衝動につき突き動かされるように社会からずれていく。 たぶん誰でも潜在的に持っている裏の顔、いえ体なのである。それを隠せなくなるほど野生化していく性へと成長していく。 かな...

性的めざめを迎えた中年に足がかかった女と体しか愛せない若い男。社会的な居場所もある二人がエスカレートしていく性衝動につき突き動かされるように社会からずれていく。 たぶん誰でも潜在的に持っている裏の顔、いえ体なのである。それを隠せなくなるほど野生化していく性へと成長していく。 かなり倒錯している感もあるが、まさに顔をなくした体だけの裸体と化していく動物としての人間が描かれている。

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2011/10/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

臆病な男と臆病な女の話。 器量の悪い女が、 出会い系で出会った セフレの執拗な攻めに求められる快感を覚える。 二人の関係は徐々にアブノーマルな方向に進みながらも 日常に影響を与えない程度に旨く行っていた。 ただ、ひょんなことから、 女は自分自身の痴態が顔のない裸体として 公開されていたことに気が付く。 自分の顔のない裸体の淫靡さに優越感を覚えつつ。 自分自身を顔のない裸体が呑み込むような一抹の不安も覚える。 そんな折、セフレは冗談めかして結婚を申し込む。 男の実は切実な問いかけに女は気付かずに ただただ恐怖する。 そんな話を ちょっとぼーっとした女に主観を置いて語る。 文学が人の心の機微を描くものだとしたら これは紛れもなく文学だろう。 子供の頃から無価値だと言われて育った世代の ネットやメールで何者かを装うことが当然の世代の文学だろう。 内容は結構エロいが全く興奮する場所は無いのは エロいシーンに限って女が顔のない裸体になって その感性を閉じているからだろう。 サクッと読めて読了感も悪くなかった。

Posted byブクログ