出世花 の商品レビュー
著書のデビュー作。江戸時代版「おくりびと」。感涙度は「銀二貫」には劣るものの、親子の情愛をきちんと描いていてすばらしい。一気に読んでしまった。
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みをつくしシリーズが大好きな高田さんのデビュー作。の「出世花」でこれまでの彼女の作品はコンプリートとなりました。デビュー作とは思えないような、しっかりと地に足のついた時代物で実に面白かったです。(*^_^*)表紙の絵は、主人公のお縁がこれから「湯灌」を始める身支度をしているところ...
みをつくしシリーズが大好きな高田さんのデビュー作。の「出世花」でこれまでの彼女の作品はコンプリートとなりました。デビュー作とは思えないような、しっかりと地に足のついた時代物で実に面白かったです。(*^_^*)表紙の絵は、主人公のお縁がこれから「湯灌」を始める身支度をしているところ。たすきは縄でする作法のようですが、この絵だと(それにこの題名だと)せっかくの奥深いお話がなんかありきたりの立身出世話のように見えてちょっと残念。実は私もそのせいで、このお話を読むのが遅くなったしね。お縁は、葬儀専門のお寺で湯灌の名人として働いている元武家の娘。彼女の湯灌の優しさや今で言うエンバーミングの巧みさが評判となり、時に貶められながらも誇りを持って自分の仕事を取り行う描写が美しい。寺の住職も彼女に「三味聖」という名称を与え、縁個人としても、働き人としても大事に思っているところがまた読者には嬉しいところである。色々な出会いや別れがあり、登場人物それぞれに魅力があるけれど、湯灌のシーンが一番読み応えがある、というのも不思議なもんだよね。読み終えて、一番頭に残っているし、私もお縁から湯灌してもらいたいなぁ、と思ってしまうのは、高田さんの文章の妙ゆえ、なんでしょう。
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この作者の作品を読むと、主人公の真っ直ぐな心にほっとする。この「出世花」のお縁は父を失い寺に身を寄せ、死者を洗い清める湯灌の仕事に就くようになった。人々が安らかに浄土へ旅立つことを無上の願いとしていた事、苦しい人生の最後の救いとしていた事など、江戸の庶民のつつましさが身にしみます...
この作者の作品を読むと、主人公の真っ直ぐな心にほっとする。この「出世花」のお縁は父を失い寺に身を寄せ、死者を洗い清める湯灌の仕事に就くようになった。人々が安らかに浄土へ旅立つことを無上の願いとしていた事、苦しい人生の最後の救いとしていた事など、江戸の庶民のつつましさが身にしみます。心を尽くして、一生懸命できることをするということ。それが人の心を打ち、自分にも力をもらえたように感じた。今自分はしばらく抜けられない辛い境遇にあり、弱者の立場を痛感している。この作品にはやはりそんな人間が何人も登場するが、お縁との関わりにより救いを得る事ができた。自分にとっても励ましとなり、心から慰められた作品となった。生きる事、死ぬ事。いつも心のすみに忘れずにいたい。飾らず偽らずまっすぐ生きていけますように。読んで心に響いた好きな作品です。
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この著者のデビュー作だそう。の割には、練れた文章だったなぁ。この人の描く主人公は、ほんとにどれも魅力的。まぁ現実にはこんな出来た人たちはなかなかいないんだろうけど。
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帯に「江戸時代の『おくりびと』」とあるが、まさにそのとおり。 すばらしい。 岩吉の話がめちゃめちゃ泣けた。 くやしくてくやしくて。 でも岩吉にはこれが本望なのだろう。 ああ、泣ける……(涙)。 その後のお縁をぜひ書いてほしい。 続編を強く望みます。
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時代劇版、おくりびと。けなげに頑張って、頑張って、頑張り続ける少女と、それをささえるやさしい人々。 頑張った話を読んで、さらに元気を出したいときには最適。 時代も設定も現実とはかけ離れているので、妙に教条的になってないところがプラス。
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親を亡くし、寺で暮らすこととなった少女・お縁の成長を描いた物語。 死者を洗い清め、死化粧を施し、あの世への旅立ちを手伝うお縁。 彼女の仕事に取り組む姿勢に心の美しさを感じます。 江戸時代は「あの世」への旅立ちというものが、今よりずっと「救い」として考えられていたのだなぁ、としみ...
親を亡くし、寺で暮らすこととなった少女・お縁の成長を描いた物語。 死者を洗い清め、死化粧を施し、あの世への旅立ちを手伝うお縁。 彼女の仕事に取り組む姿勢に心の美しさを感じます。 江戸時代は「あの世」への旅立ちというものが、今よりずっと「救い」として考えられていたのだなぁ、としみじみした気分になります。 最近ハマった高田郁さんの作品ですが、どうしても『銀二貫』や『みをつくし料理帖』シリーズと比べてしまい、ちょっと物足りない気分になりました。この作品も普通に良い作品なのですが。 やっぱり登場人物の優しさが伝わってくるところが好きです。あたたかい気分になります。 しかし、お縁と関わる人物たちが結構あっさりと死んでしまうところがなんとも悲しいです。題材上しかたのないことですが。 タイトルと表紙の絵は、読む前は地味だなぁ、と感じましたが、読み終わってみると実にぴったりであったことがよく分かりました。
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「不義密通を犯した妻の血を引く娘に、なにとぞ善き名前を与えてくださらぬか」幼いお艶と共に妻敵討ちの旅に出て六年、江戸近郊で無念の死を遂げた矢萩源九郎が寺の住職に遺した言葉である。しかし、源九郎の骸と魂は三昧聖によって清められ、安らかに浄土へ旅立つ。「艶」から仏縁の「縁」と改名した...
「不義密通を犯した妻の血を引く娘に、なにとぞ善き名前を与えてくださらぬか」幼いお艶と共に妻敵討ちの旅に出て六年、江戸近郊で無念の死を遂げた矢萩源九郎が寺の住職に遺した言葉である。しかし、源九郎の骸と魂は三昧聖によって清められ、安らかに浄土へ旅立つ。「艶」から仏縁の「縁」と改名した少女が美しく成長する姿を、透明感溢れる筆致で描く感動の時代小説。
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6年前に駆け落ちした母を「妻敵(めがたき)討ち」のために追う父と、幼い娘。 江戸近郊(といっても下落合あたり)で行き倒れ同然で寺に運び込まれ、9歳の娘・艶は父を看取ってくれた僧らに救いを見る。仏縁のお縁と名を貰い、身の振り方が決まるまで寺で育てられる。 江戸時代には、墓寺という存...
6年前に駆け落ちした母を「妻敵(めがたき)討ち」のために追う父と、幼い娘。 江戸近郊(といっても下落合あたり)で行き倒れ同然で寺に運び込まれ、9歳の娘・艶は父を看取ってくれた僧らに救いを見る。仏縁のお縁と名を貰い、身の振り方が決まるまで寺で育てられる。 江戸時代には、墓寺という存在があったとか。 青泉寺は、広い境内に湯灌場と火屋と墓所を備えていて、火葬場を持たない寺の用も引き受けていた。幕府の認める制度からははじかれた存在だったが、当時はそういう寺もあったんだそうで。 まだ墓をしっかり作ることも出来ずに裏山に浅く埋める人も多い時代。 父を清めて送り出してくれた人に恩を感じながら育ち、若い娘の身で、お縁はしだいに手伝うようになる。 お縁の身の振り方を考えていた僧らは、桜花堂からかかった養女の口を歓迎するが、優しい主人夫婦を慕いつつも、2年後にお縁はある決意を。 女性の手で綺麗にして貰えるとしだいに評判が広まっていくのでした。 うら若い縁を案じた住職の計らいで、まだ正式に尼僧とは認められないが、正縁と名を貰った縁は、ある時頼まれて、青年僧・正念に付き添われて四谷大木戸を越えて市中へはいる。 女郎のてまりのたっての願いで、姉のような存在だというおみのを看取るためだったが… いちずな娘のすがすがしさが、人々の苦しみ、重い部分を救います。 お江戸探偵物としても、新鮮な構成。
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感涙。 この人たちのように、まっすぐで澄んだ心根になりたいと思う。 言葉のひとつひとつが奥ゆかしくていじらしい。 感情も習慣も言葉も、こんなに豊かに表現ができる。 高田郁はすごい。
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