夕凪の街 桜の国(文庫版) の商品レビュー
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基本的には漫画は読んでも読メには登録してないのですが、読メのとあるコミュで紹介されていたので読んでみました。原爆投下から10年後の話で直接的な表現は少ないのですが、それだけに主人公の生き延びたことへの罪悪感。好きな人への言葉、「うちはこの世におってもええんじゃと教えてください」。そして突然やってくる死に対する想い。10年たったけど「やった!また1人殺せた」とちゃんと思うてくれとる? 衝撃的な言葉。そして42年後、59年後へと続いてゆく物語。涙腺が・・・。この漫画を紹介していただきありがとうございました。
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「こうの史代」の『夕凪の街 桜の国』を読みました。 昨年、映画化されたのですが、その際、ほんのちょっぴり関わることがあったので(映画は観ていませんが)、気になっていた作品です。 『夕凪の街』と『桜の国』の二話(連作)で構成されており、 『夕凪の街』は被爆から10年後の広島を舞...
「こうの史代」の『夕凪の街 桜の国』を読みました。 昨年、映画化されたのですが、その際、ほんのちょっぴり関わることがあったので(映画は観ていませんが)、気になっていた作品です。 『夕凪の街』と『桜の国』の二話(連作)で構成されており、 『夕凪の街』は被爆から10年後の広島を舞台に、『桜の国』は昭和60年代と現在の東京/広島を舞台にして、被爆者やその家族の3世代に渡る物語となっています。 生き残った人の辛さや苦悩は、私たちの想像を絶するものがあることを改めて認識させられた作品でした。 もう少しで今年も8月6日がやってきます。 広く色んな人に語り継ぐ自信はありませんが、、、 息子には、昭和20年8月6日に広島で起こった事実を伝えて行かなきゃ… という思いを強く感じましたね。 明日、広島に帰省します。 息子と話ができたらと思います。
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戦争をテーマにした物語は傑作も多いけど、悲劇的な話も多くて、何度も見返したいかと問われると、「はい」とは答えにくい作品も多いのが正直なところ。 ジブリ映画の『火垂るの墓』であったり、浅田次郎さんの小説『終わらざる夏』であったりは、傑作だとは思うけど、もしかするともう生涯観たり読ん...
戦争をテーマにした物語は傑作も多いけど、悲劇的な話も多くて、何度も見返したいかと問われると、「はい」とは答えにくい作品も多いのが正直なところ。 ジブリ映画の『火垂るの墓』であったり、浅田次郎さんの小説『終わらざる夏』であったりは、傑作だとは思うけど、もしかするともう生涯観たり読んだりしないかもしれない。 でも一方でこうの史代さんの、ヒロシマを描いた作品は何度も読み返してしまいます。映画も大ヒットした『この世界の片隅に』しかり、この『夕凪の街 桜の国』しかり。 それは戦争の悲劇や喪われたもの、取り返しのつかないものを描きつつも、その先にある人の営みの美しさも同時に描いているからだと思います。 三章構成で描かれるこのマンガ。第一章の夕凪の街は原爆投下から10年後の広島が舞台。 生き残った者が抱えた罪の意識。悲劇を忘れ復興しようとする街の中に、確かに眠っている惨い記憶。それでも生き続けることは、幸せになることは許されるのか。一人の女性が求めた答えと、待っていた運命。 こうの史代さんのヒロシマのマンガで卓越していると思うのは、悲劇の描写以上に日常の描写であるような気がします。 復興期の広島でトタン屋根で暮らす母と娘。当時の広島カープの話題や、流行歌が作中に挟まれ、銭湯ではあの日の傷を負った女性たちが身体を洗う。そしてその傷が、あの日の記憶と罪の意識へ誘う。 日常と地続きの戦争の記憶、残っている傷。日常描写がしっかりしているからこその、戦争の傷がより深いところに刻まれていることが分かります。 第二章となる「桜の国(一)」では時代も語り手も変わります。活発でおてんばな少女の七海が、友達でおしとやかな少女の東子と一緒に病院で入院している弟の見舞いに行く話。 この話が「夕凪の街」との繋がりが明確になるのは、三章になる「桜の国(二)」でのこと。(一応二章の中にヒントはあるけど) 「桜の国(二)」で小学生だった七海はOLに、入院しがちだった弟は研修医になっています。そんな二人の最近の心配の種は、フラフラと歩き回る父親。さらにこの父親、最近どこかに長距離電話もかけているようで…… そしてある日七海は父の目的を探るべく、尾行を開始します。その途中で出会ったのは、小学生時代、一緒に弟の見舞いに行った東子。二人は一緒に父の後をつけるのですが、その父は広島行きの高速バスに乗り込み…… 父の不審な行動の目的、東子が七海と行動を共にした理由。七海が東子と疎遠になった理由。それぞれに広島が、そして原爆が戦後60年近く経っても(作中の時代は2004年)人の人生に影を落としていることを現します。 そして広島を訪れることによって覚悟を決めた東子。東子と久々に行動し、東子の覚悟を聞くことで、過去の苦い記憶から解き放たれた七海。この描写は本当に素晴らしい。 そして七海の父の旭は、広島での日々を想い返します。広島から疎開し、そのまま疎開先の養子となった旭。大人になってから転勤で地元に帰り、実の母と暮らし始めることになった彼の前に現われた一人の少女。そして三人のかけがえのない記憶。 もう止めてしまったけど、一時期SNSをやっていたとき春色読書会、といった企画がありました。要は春を連想する本の紹介だったり、感想を挙げるものなのですが、その際久々にこのマンガを読みました。そしてこの本は夏の作品だけでなく、春の作品でもあるのだと強く感じました。 作品の中で桜の花びらが舞う中、楽しそうに話す二人と、七海の力強くも優しい言葉。戦争や原爆で人生が狂わされた人がいる一方で、その先も綿々と続く人々の営みと生の美しさは、悲劇を越えた先にあるものも、たしかに描いているように思います。 だからこの『夕凪の街 桜の国』はヒロシマや原爆のマンガである一方で、ラスト近くの桜のマンガでもあり、春の作品だとも自分は思ったのです。 文庫本サイズでわずか100ページ足らずの作品。それでもこの作品に込められたものは、そのページ数をはるかに凌駕し、読者の心に何かを残すと思います。 戦争や原爆の悲劇を描きつつも、その先にある光を描こうともする。そんなこうの史代さんの「ヒロシマ」のマンガも、他の戦争を描いた傑作と共に後世に残り続けてほしいと、読む度に思うのです。
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3つの時代にわたる原爆・原爆症の物語。やわらかい絵柄によく取材されたであろう練られたストーリー。話が進むにつれ登場人物の心情が明らかになっていく展開。旭が第1話では広島を嫌がって離れて行ったような感じになっているが、実は広島に戻って原爆症かもしれない女の子と結婚し、生まれた娘も姉とよく似た名前にする。そのあたりが時代を貫いて流れるストーリーの背骨になっている。夕凪の街だけだったら、凡百の反戦漫画とたいして変わらなかったかもしれないが、桜の国が「強さと優しさ」を描いているところが素晴らしい。
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こうのさんは文庫版あとがきにて、本体価格476円のまんがは高いと書かれていますが、高いとは思いません。
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暖かい日常、微笑ましい日常、送れている背景に抱えているもの、ズシッと来ました。言葉だけではなくて表情からも情報が伝わってくる力強い作品でした。
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何度読んでも、胸にしみる。 原爆の後の街で、それが明らかな事実なのに「いまだにわけがわからない」から触れることができず、不自然と分かっていてもそれから目をそらすようにして暮らす人々。 そこに恋が芽生えれば、未来が生まれて、でもその輝きに後ずさりしてしまうことが切なくて痛々しい。 ...
何度読んでも、胸にしみる。 原爆の後の街で、それが明らかな事実なのに「いまだにわけがわからない」から触れることができず、不自然と分かっていてもそれから目をそらすようにして暮らす人々。 そこに恋が芽生えれば、未来が生まれて、でもその輝きに後ずさりしてしまうことが切なくて痛々しい。 未来を夢見ることに、世間の許しがいるかのような・・・そして許されたとしても、身体がむしばまれている現実。 こうのさん独特のユーモアを交えながら、ゆるゆると紡がれる「夕凪の街」の話は、あのころたくさんあった恋のお話なのかもしれない、と思う。 「桜の国」の時代は、被爆者の存在がより分かりにくく、分かられにくくなっている。見えない不安を、本人も家族も、周りも抱いている。でも、生きるしかないし、恋もする。 差別の芽とかよりも日常をクローズアップしていて、そこには笑いもあって、読み手はそんな「日常」を素直に受け取って楽しんでいいんじゃないかなと思う。 お父さんが会う、皆実ちゃんの昔の知り合いが、ちゃんと夕凪に出てきた同僚たちっぽくて、そういう細かいところがホント、さすがこうのさん。 最後、河原で会った人は、農家を継いでめでたくハゲた打越氏に違いない。
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非常に力のある作品。 漫画ならではの表現。漫画の底力を再認識させられた。 かわいらしい絵による”日常”が淡々と描かれている。 背景にはヒロシマの被ばくがあり、色濃く被ばくの名残が生活の底に流れ続けている。 日常の中には、淡い恋愛(人が想い、想われる)や、絆(切なく、いつなく...
非常に力のある作品。 漫画ならではの表現。漫画の底力を再認識させられた。 かわいらしい絵による”日常”が淡々と描かれている。 背景にはヒロシマの被ばくがあり、色濃く被ばくの名残が生活の底に流れ続けている。 日常の中には、淡い恋愛(人が想い、想われる)や、絆(切なく、いつなくなるかわからないはかない関係)があり、残酷な現実とは一見関係なく、希望、小さい幸せを育んでいく。 逃れられない現実(被ばく)=生きることの辛さが「影」となり、小さな幸せを「光」として、人生を立体的に、ドラマチック(ただし控えめに)に浮き上がらせる。 大きなコマ割りに、ハッとさせられるドラマチックさが込められていて、涙腺が刺激される。
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海外や子供に この本を伝えたい 井伏鱒二の「黒い雨」より 広島原爆の怖さを感じる。漫画の中に 自分が入った気がした
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桜の国のほうが好きだった。 直接台詞を読むより、登場人物の表情から読み取ることのほうが多い。 絵も綺麗。
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