魚たちの離宮 の商品レビュー
夏の初めから病床に臥す友人・夏宿(かおる)を見舞いにきた市郎が、彼の家で過ごす4日間を描いた物語。家には彼ら以外に、夏宿の弟である弥彦、そして弥彦のピアノ講師である諒(まこと)が登場する。 夏宿の屋敷のふもとにある池には鯉が住い、市郎は夜な夜なその池に降りるたびに夏宿の幽霊らしき...
夏の初めから病床に臥す友人・夏宿(かおる)を見舞いにきた市郎が、彼の家で過ごす4日間を描いた物語。家には彼ら以外に、夏宿の弟である弥彦、そして弥彦のピアノ講師である諒(まこと)が登場する。 夏宿の屋敷のふもとにある池には鯉が住い、市郎は夜な夜なその池に降りるたびに夏宿の幽霊らしき白い姿と出会う。弟の弥彦は兄がすでに夏の初めに亡くなったと言い、ある鯉は彼の生まれ変わりだと教える。しかし日が昇れば夏宿は自室におり、床でいつものように本を広げている。 最後まで夏宿の生死がはっきりしない、彼岸にいるような曖昧な世界観だった。家の周りでは木々が鬱蒼としていて、その環境が余計に外界と断絶されたような幻想的な雰囲気を醸し出している。あと夏宿の家業が紺屋ということもあり、夏宿や弥彦が身に付けている着物の表現が毎回丁寧で美しい。濃厚な藍色から伸びる夏宿の白い肌とのコントラストを想像すると、本当に浮世離れしていてこの世とあの世の境目が分からなくなる。
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市郎は、病気がちな友人・夏宿の見舞いに訪れる。夏宿に懐く彼の弟・弥彦や謎めいたピアノ教師。古びた屋敷を舞台に、少年たちはたった4日間を共に過ごす。 謎は多く残るが、美しい描写に心奪われる作品。
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初期のあの独特な文語体?なんか????とちょい前のオチなんか関係ねえ考えるんじゃねえ感じるんだ!!!!!文法のハイブリッド 今思えば兄に執着する弟、謎のピアノ教師、絶妙な距離を保つ友人関係、あの人は実はもうとっくに・・・、っていう長野節全開のテーマ・・・この頃からあったんだな・・...
初期のあの独特な文語体?なんか????とちょい前のオチなんか関係ねえ考えるんじゃねえ感じるんだ!!!!!文法のハイブリッド 今思えば兄に執着する弟、謎のピアノ教師、絶妙な距離を保つ友人関係、あの人は実はもうとっくに・・・、っていう長野節全開のテーマ・・・この頃からあったんだな・・・
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
面白かったです。 お盆の時期は過ぎてしまいましたが、この季節にぴったりで、冷たく澄んだ世界に浸りました。 夏宿は初めから幽霊だったのだろうし、市郎と弥彦も最後は池へ沈んだのでしょう。 市郎が終盤まで弥彦に翻弄されていて不憫になると共に、弥彦の不安定さと傲慢さも気になります。でも夏宿の儚さに惹かれます。 ピアノ教師が不気味でした。 ほととぎすを鏡暮鳥と書いてあるのは何か意味があるのだろうか…素敵です。
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夏なので夏っぽい長野まゆみ作品再読しようキャンペーンそのろく。8月が終わるので今年はこれでおしまい。でもお盆の時期に合わせて読めばよかったなあ。 以前読んだのは10年くらい前なんやけどこれは結構覚えとった。(その代わり、夜啼く鳥は~の話が全然思い出せん。) 懐かしい雰囲気のファン...
夏なので夏っぽい長野まゆみ作品再読しようキャンペーンそのろく。8月が終わるので今年はこれでおしまい。でもお盆の時期に合わせて読めばよかったなあ。 以前読んだのは10年くらい前なんやけどこれは結構覚えとった。(その代わり、夜啼く鳥は~の話が全然思い出せん。) 懐かしい雰囲気のファンタジーで、ほんのりホラーテイストで涼しい感じ。 生死の境界も夢現の境界もあやふやよ。 ピアノ教師がぜんぜん意味分からんけども。
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水辺と死の物語で、「カンパネルラ」「夜啼く鳥は夢を見た」と似た雰囲気だった。 詳細が明らかにならない結末なのでもやもやしたが、それが幻想的な雰囲気を高めているのかもしれない。 ピアノ教師は何だったのだろうか…
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蛍を夏宿と見るシーンは、死に向き合うようで悲しくなって泣きそうになった…。 お盆っていうものを改めて考えさせられる作品。 死と再生を信じきっている弟の存在も切なく愛しい。 お盆になったら、また。 結末も本人たちにとっていいものなのか悪いものなのかわからない。
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ちょっと不思議なファンタジーっぽい雰囲気で、お盆のお話なので時期的にはぴったりでした。 長野さんらしい古くて綺麗な言葉遣いに癒されました。
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何と素晴らしい世界観なのだろうか ノスタルジックで幻想的な風景の中で過ごす少年たちの淡く儚い交流の様子が、繊細で趣深い描写によって綴られている いつまでもこの雰囲気を味わっていたいという気持ちになった
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これだよ、これと何度も読める作品。 読む時期を間違えたけど、すべてを語らず、読者の想像力にゆだねた終わり方。なぜか長野作品初期だけは、モヤッと感が心地いいと思えてしまうので読み飽きない。
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