クアトロ・ラガッツィ(上) の商品レビュー
安土桃山時代の「天正少年使節団」をテーマにした学術書。「学術書」といってしまうと堅くなってしまうので、「ノンフィクション」と言い換えてしまいましょうか。ちょっと違うかな。 1549年、鹿児島にフランシスコ・ザビエルが渡来し、有史上初めて日本にキリスト教が伝来しました。このザビエ...
安土桃山時代の「天正少年使節団」をテーマにした学術書。「学術書」といってしまうと堅くなってしまうので、「ノンフィクション」と言い換えてしまいましょうか。ちょっと違うかな。 1549年、鹿児島にフランシスコ・ザビエルが渡来し、有史上初めて日本にキリスト教が伝来しました。このザビエルはポルトガル人。で、使節団を推進したキーパーソンであるアレッサンドロ・ヴァリニャーノはイタリア人。同じカトリックであることに起因して日本に辿りついた宣教師たちではありますが、どうやらその布教活動は、一枚岩ではなかったようです。新たに洗礼を受けた日本人キリシタンを、ポルトガル人宣教師たちが極めて西洋的な尺度で「同化」しようとしたのに対し、ヴァリアーノを初めとするイタリア人宣教師たちは「われわれは彼らの国に 住んでいる」として、キリスト教の教えに加えて、日本国固有の文化についても教育を施していきました。「われわれは彼らの国に住んでいる」という言説は、西洋人にとって未開の地であった日本に高度な文明が存在し、キリスト教の本義を理解できるほどの知性と聡明さを備えた「日本人」という国民がいる、という意味を包含しています。結果としてヴァリアーノは一定の成果を収め、カトリックの総本山、ローマ教皇の元に「使節団」を派遣しようと計画。選抜された少年たちが、当地でどのように迎えられたか、あるいは日本に帰国後、どのような運命を辿っていくことになるのか。そういった興味深い記述が細部にわたって描かれています。 上・下巻で都合1000ページ近い分量ですが、好きな人にはたまらない作品です。「使節団」の派遣を企図したイエズス会の真の狙い、四人の少年使節団のうちなぜローマ教皇に三人しか謁見できなかったのか、時の権力者であった織田信長、豊臣秀吉らと宣教師との遣り取り、少年たちの棄教と殉教、等々。日本という国と西洋との距離が、互いに初めて認識された時代の話。著者が本作を仕上げるために用いた一次資料が今もって大量にヴァチカンに保管されているという事実が、「少年使節団」の意義を物語っています。
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OPCWの人から薦めていただいた本。 アマゾンで購入し、プロローグだけ読んだ。 とても面白そうな本だと思う。 これを読んだ後に、家にある漫画「日本の歴史」を読んでみるとさらに興奮するかも。
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若桑みどりさんの代表作といえるでしょう。 4人の少年とは天正少年使節のこと。 送り出されて4ヶ月後にはキリスト教に好意的だった信長が暗殺されたとも知らず、8年後に帰国した時には秀吉によって宣教師が追放された後。世界の動きと大名の動向がありありとわかり、宣教師にも出身や性格の違いが...
若桑みどりさんの代表作といえるでしょう。 4人の少年とは天正少年使節のこと。 送り出されて4ヶ月後にはキリスト教に好意的だった信長が暗殺されたとも知らず、8年後に帰国した時には秀吉によって宣教師が追放された後。世界の動きと大名の動向がありありとわかり、宣教師にも出身や性格の違いがあったこと、宣教師達の見た信長・秀吉像も面白い。 少年達のその後もさまざま。 東洋の一国・日本から船に乗ってイタリア・ルネサンスの研究に行っていた若い頃からの作者の思いも含めて、感動的です。
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