クアトロ・ラガッツィ(上) の商品レビュー
遠い昔、学校の授業で習ったはずなのだがまったく記憶にないのは どういうことか。隠れキリシタンや天草四郎は覚えている。なのに、 天正遣欧少年使節については長じてからヴァチカン関連の作品の なかで触れられていたことしか覚えていない。 九州のキリシタン大名の名代として1582...
遠い昔、学校の授業で習ったはずなのだがまったく記憶にないのは どういうことか。隠れキリシタンや天草四郎は覚えている。なのに、 天正遣欧少年使節については長じてからヴァチカン関連の作品の なかで触れられていたことしか覚えていない。 九州のキリシタン大名の名代として1582年にローマへ派遣された 4人の少年を中心とした使節団なのだが、本書ではキリスト教の 日本上陸から描かれているので使節団がなかなか日本を出発しない。 イエズス会vsフランシスコ会の確執やら、イエズス会が布教の一環 として行った福祉活動など。膨大な資料を駆使して描かれているの でまったく飽きさせない。 勿論、物語の中心は4人の少年使節なので彼らが日本を出発し、 ヨーロッパへ到着するまでの航路や、ヨーロッパ各地で歓待さ れた様子、帰国後の運命のことを詳細に綴っているがそれだけで はない。 信長・秀吉と、時の権力者が宗教をどのように政治に利用して来た か。信長は何故・誰に殺されたかの考察も参考になる。 そう言えばいつだったか、上岡龍太郎が信長殺しは光秀ではない との話をしていたのをおぼろげに覚えている。 実は日本史が苦手なので無意識に避けて来た。しかし、本書のような 作品を読むと好奇心を刺激される。 そして、巻末の資料一覧に目を通すとくらくらする。歴史を描くのは まさに資料との格闘なのだ。著者が格闘してくれるから、読み手は 新たな興味を呼び起こされるのだ。 日本史、勉強しなきゃいけないわ。こんなに面白いのなら。 それにしても、キリシタン弾圧がなかったら日本はどうなっていた のだろうな。
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楠木建・一橋大学教授の『読書日記』で紹介されていて、興味を持ったため読んでみた。 楠木教授が指摘している通り、本書はグローバル戦略を展開する上で示唆を与えてくれるが、それだけでなく、当時の社会情勢、国際情勢、風俗を知ることができ大変興味深い。
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日本史で習った「天正遣欧少年使節団」のおはなし。4人の少年の宗教心や冒険譚を楽しみに読み進めてみたが、なかなか主人公が登場しない。上巻最終章でようやく出てきて一気にローマまで行ってしまった。本書では、まず日本でどう布教が始まったのか、当時の日本人はどう受け入れたのか、キリスト教内...
日本史で習った「天正遣欧少年使節団」のおはなし。4人の少年の宗教心や冒険譚を楽しみに読み進めてみたが、なかなか主人公が登場しない。上巻最終章でようやく出てきて一気にローマまで行ってしまった。本書では、まず日本でどう布教が始まったのか、当時の日本人はどう受け入れたのか、キリスト教内の対立やなぜ4人がローマに行くことになったのかなど、背景が詳しく語られている。カトリックの大学に行った程度の関心しかないが、歴史や東西交流の底流が理解できてとても面白い本。
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2016.10.20読了。 膨大な史料や文献をもとにした作品で、非常に読み応えのある一冊。 天正少年使節団の話というよりは、戦国時代の日本の情勢や、当時のキリスト教布教の経緯、スペイン・ポルトガル等欧州諸国の世界進出の様子などが細かく描写されており、世界観に吸い込まれる。良書。
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キリスト教の日本での布教と天正少年使節の話。 キリスト教の布教のスタンスはグローバルでの生き方について学ぶところが多い。 家族を持たないのは世界のあらゆる人間を愛するため。 間引きはキリスト教の流入でなくなった。 日本では僧侶はきれいな格好をしているから尊敬される。西欧は貧しい格...
キリスト教の日本での布教と天正少年使節の話。 キリスト教の布教のスタンスはグローバルでの生き方について学ぶところが多い。 家族を持たないのは世界のあらゆる人間を愛するため。 間引きはキリスト教の流入でなくなった。 日本では僧侶はきれいな格好をしているから尊敬される。西欧は貧しい格好をしているから尊敬される。 宣教師は西欧と日本は違いすぎるとして、布教にはわれわれが合わせないといけないと述べている。 男色は戦国からあった。 主君を信じない裏切りは戦国の世の中の考え方。 日本も昔は白が喪で黒がめでたい。 ヴァリニャーノは日本の文化に合わせて誰からも愛されたため、秀吉が神父を皆殺しにしようとしたが、石田三成な彼の名前を出して思いとどまった。これは国際和平の基本のスタンスだと思った。
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天正使節団、4名のキリシタンの子ども達が400年以上前にバチカンにまで行った。行くだけでも2年以上かかる旅程をよく行き着き、さらには無事で帰ってこられたものだ。 16世紀の日本は、宣教師によりかなりの早さでキリスト経が広がっていった。貧しいものだけでなく、キリシタン大名と呼ばれる...
天正使節団、4名のキリシタンの子ども達が400年以上前にバチカンにまで行った。行くだけでも2年以上かかる旅程をよく行き着き、さらには無事で帰ってこられたものだ。 16世紀の日本は、宣教師によりかなりの早さでキリスト経が広がっていった。貧しいものだけでなく、キリシタン大名と呼ばれる者も数名いたことから貧富の差なくキリスト経の来世があるという思想は、この時代民衆に受け入れられやすいものだったのだろう。 しかし、天皇制をとる日本にとってキリスト経が広まることは、支配層にとって脅威であった。 秀吉の時代からキリシタン弾圧がはじまり、その時期に帰国した4名の少年達は、つらい運命をたどることになった。 生きた時代により、どんな運命が待ち構えているか誰にも予測がつかないし、自分の力だけではどうしようもないことがある。
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上下巻の大作。 上巻だけで500ページ以上もある。 信長の時代のことを、これほどまでに事細かく文章で表現できていることが素晴らしい。 いい本に巡り合った。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
<歴史は、紛うことなく人の営み。> ◇アジア交易の歴史のなかで、イエズス会宣教師は最初からポルトガル商人と日本の領主や商人との仲介者として重要な役割を果たしていた。79 ◆豊後の国での布教の最初期に起こったことはその後の日本での迫害と殉教の雛形。130 ◆ヒューマニスト・ヴァリニャーノ。 ◆ヴァリニャーノが東方に向かった1573年は、トレント宗教会議が終了してから10年、レパントの海戦の2年後、つまり対抗宗教改革教会最大の高揚期。200 ◆ポルトガル人の差別的態度が、反キリスト教論に力を与えた。231 ◆性道徳が非常に緩やかで、妾当然の世にあって、一夫一婦で離婚を禁じたカトリックは、女性に刺さった。275 ◆信長自身、国家宗教たる仏教を何とかしたかった。キリスト教が、相対化し平地にしてくれるなら大歓迎。348
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歴史的(?)名著の一つだと思います。 楠木氏や出口氏、(多分成毛氏も)の本での すすめもあって読んでみました。 感想は下巻で。。。 ただ長い。。。文庫版といえ575ページは読みごたえ があるというかなかなか進まない。下巻も同じくらいの 長さなので読み終わるのはもしかしたら8月か・...
歴史的(?)名著の一つだと思います。 楠木氏や出口氏、(多分成毛氏も)の本での すすめもあって読んでみました。 感想は下巻で。。。 ただ長い。。。文庫版といえ575ページは読みごたえ があるというかなかなか進まない。下巻も同じくらいの 長さなので読み終わるのはもしかしたら8月か・・
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この時代にヨーロッパへ行くということが、どれだけ覚悟のいることだったか。キリスト教の普及が、少年たちを遥か彼方のヨーロッパへと導き、キリスト教への信仰が「死」への恐怖を取り払ったのだと思う。 何かを信じて挑戦しないといけないと励まされた気がします。
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