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ジョゼフ・フーシェ の商品レビュー

4.3

22件のお客様レビュー

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2022/07/02

革命を泳ぎ切った風見鶏フーシェの伝記である。ツヴァイクの『マリー・アントワネット』の次に読んだ。 どの派閥、政体をも裏切っていることから、ロベスピエールのような政治的理想はないと分かる。 ジャコバン党員として時代の要請以上に王党派を虐殺していることから、裏切りが単に心身の安寧を...

革命を泳ぎ切った風見鶏フーシェの伝記である。ツヴァイクの『マリー・アントワネット』の次に読んだ。 どの派閥、政体をも裏切っていることから、ロベスピエールのような政治的理想はないと分かる。 ジャコバン党員として時代の要請以上に王党派を虐殺していることから、裏切りが単に心身の安寧を求めて立ち回った結果でないことが分かる。 理想もなく、保身に汲々とするわけでもなく、なぜ激動の時代の政界に身を置き、変節を重ねたのか。ツヴァイクは権力欲とともに、権勢の得る方に賭ける賭博的愉悦をフーシェは持っていたとする。勝敗を見越せるくらいまで張るのを待つスリル、どちらが優勢か調べ尽くす探究の楽しみ、勢力図を胸三寸で塗り変えられる立場、そのようなものに魅入られていた人物として描かれている。 人物伝としては非常に面白く、凡人然とした現代の一市民には理解しがたいマキャヴェリスト的心理もツヴァイクによる巧みな補助線で生き生きと蘇っている。恩人を売り、思想を踏みつけ、勝馬に跨り悠々と時代をすり抜ける姿はもはや清々しい。 フーシェの最期は誇り高く散ったマリー・アントワネットとは対極だった。晩年にやっと己を知り、寂しくも穏やかに亡くなったようだ。これだけのことをして穏やかに死ねるのか大いに疑問だが、これだけのことをするくらいだから神経も太いのだろう。 現代にも平気で嘘を付く政治家や他人の利益には一瞥もくれない経済人はいるが、彼・彼女らは凡人には度し難い楽しみや興奮があるのかもしれないと思った。

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2019/03/18

岩波文庫赤 ツワイク 「 ジョゼフ フーシェ 」 ナポレオン政権下の警察大臣フーシェの生涯を描いた小説。 無主義、無性格の生き方〜裏切り者として 生き恥をさらしてでも、生き抜く フーシェの強さが印象的。情報を持つことで 天才ナポレオンやタレーランとの政争に勝ち抜いてい...

岩波文庫赤 ツワイク 「 ジョゼフ フーシェ 」 ナポレオン政権下の警察大臣フーシェの生涯を描いた小説。 無主義、無性格の生き方〜裏切り者として 生き恥をさらしてでも、生き抜く フーシェの強さが印象的。情報を持つことで 天才ナポレオンやタレーランとの政争に勝ち抜いているように読める。 フーシェの人物像 *性格的カメレオン=裏切り者、陰謀家→思想に殉ずるものでなく、時代と歩調を合わせる *野心家ではあるが、虚栄心は持たない *黒幕=裏で 権力を押さえている。表に出ない *誰の臣下にもならず、誰にも従僕しない *時が助けてくれる〜自分は 相手の消耗を待つ 「ナポレオンの周囲の人々は 彼の奴隷となるか、競争相手となるか〜卓越した人物は 中間の存在を許さない」

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2018/01/06

政治的人間に関する伝記として極めて稀なことに面白い、と聞いて読んでみた本。フランス革命期~帝政期に警務大臣として活躍し、一瞬のみとはいえフランスの全権を手にするまでに至った、裏切り者、変節漢、サン・クールーの風見、ジョゼフ・フーシェの伝記。 フーシェについてはヤングアニマル連載...

政治的人間に関する伝記として極めて稀なことに面白い、と聞いて読んでみた本。フランス革命期~帝政期に警務大臣として活躍し、一瞬のみとはいえフランスの全権を手にするまでに至った、裏切り者、変節漢、サン・クールーの風見、ジョゼフ・フーシェの伝記。 フーシェについてはヤングアニマル連載のナポレオン漫画ではじめて知った程度の知識だが、その漫画の記述もかなりの部分は元ネタはこの本なのかな。フランス革命期~帝政期の政治動向がわかっていないとすんなり読めないところも多い。ただ、その流れを、フーシェ視点から見るというのがとてもおもしろい。信念もなにもなく、自身の権力欲や性格のために、時の最高権力者相手であっても見え見えの面従腹背(面従すらしていないことも多い)で対応する。相手もこいつ絶対裏切るし余計なことしてる、ってわかっているんだけど、使えるから切るに切れない。ピカレスク小説を読んでいるかのような気分。これは確かに、面白い。

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2017/09/03

フランス革命の時代に暗躍した、 完全無欠な裏切り者、卑怯者の伝記。 よく言われることのない人物だが、作者ツワイクの 淡々とした筆致から、逆に自らのプリンシプルに 忠実な、清々しい、とはとても言えないけど それなりに魅力的なフーシェ像が浮かび上がる。 人間とはなにか、考えさせる...

フランス革命の時代に暗躍した、 完全無欠な裏切り者、卑怯者の伝記。 よく言われることのない人物だが、作者ツワイクの 淡々とした筆致から、逆に自らのプリンシプルに 忠実な、清々しい、とはとても言えないけど それなりに魅力的なフーシェ像が浮かび上がる。 人間とはなにか、考えさせる名著だと思う。

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2017/08/10

聞いたこともない人名だったのですが、読み出してみるとこれが面白い。著者の、何と言うか気持ちのこもった筆致のせいもあるのでしょうが、フーシェのキャラ立ちっぷりは素晴らしい。なんかもう、半沢直樹系のキリッとした撮り方のドラマに仕立てたら面白そうだなぁなんて思ってしまいました。 しかし...

聞いたこともない人名だったのですが、読み出してみるとこれが面白い。著者の、何と言うか気持ちのこもった筆致のせいもあるのでしょうが、フーシェのキャラ立ちっぷりは素晴らしい。なんかもう、半沢直樹系のキリッとした撮り方のドラマに仕立てたら面白そうだなぁなんて思ってしまいました。 しかし、フランス革命期の政治家の話なんて(興味深いと思う人はいるかもしれませんが)楽しく読める話だとは思ってませんでした。 それくらいの、同時代人からもボコボコに言われたカメレオン野郎の話であって、しかし現代の我々から見てみると、変化する状況の中で何とか生き残ろうとして能力を発揮してきた(まぁカメレオンか。。)努力家に思えるのです。 「残念ながら世界歴史は、普通叙述されているような人間の勇気の歴史であるだけでなく、また人間の臆病の歴史でもあるのであり…」という著者の記述を見ても、歴史のこっち側の側面を読んでおくことはそれはそれで貴重なのではないかと。 ナポレオンをして、「本当の完全無欠な裏切者」とまで言わしめた男。読んでいて何も感じないということはたぶん無いはず。 しかし、訳の基調がおどけてるのか、岩波的な流儀なのか。「知らぬが半兵衛」は無いなぁ。。

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2017/07/16

ジョゼフ・フーシェという政治的な化け物の評伝。 カルロゼン先生のお薦めがあり、手を出してみた。 ここまで政治的であることにこだわった政治家もいないのではないか。 英雄足り得ない、しかしある種の憧れがそこにある。 なんとも不思議な存在である。 まあ同時代に生きた人にとってはとんで...

ジョゼフ・フーシェという政治的な化け物の評伝。 カルロゼン先生のお薦めがあり、手を出してみた。 ここまで政治的であることにこだわった政治家もいないのではないか。 英雄足り得ない、しかしある種の憧れがそこにある。 なんとも不思議な存在である。 まあ同時代に生きた人にとってはとんでもない迷惑な御仁だったろうけどさ。

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2015/07/05

シュテファン・ツヴァイクによる伝記小説。国民公会期から頭角を現し、ナポレオン支配下では警察大臣として辣腕をふるったジョゼフ・フーシェがその対象である。その人物評は、「たいへんいかがわしい性格と不十分な悟性しか持たぬ黒幕的人物」であるが、ツヴァイクはこのような人物の研究こそ、「政治...

シュテファン・ツヴァイクによる伝記小説。国民公会期から頭角を現し、ナポレオン支配下では警察大臣として辣腕をふるったジョゼフ・フーシェがその対象である。その人物評は、「たいへんいかがわしい性格と不十分な悟性しか持たぬ黒幕的人物」であるが、ツヴァイクはこのような人物の研究こそ、「政治的人間の類型学」に寄与することになると主張している。ツヴァイクが描き出すところによれば、フーシェは、ロベスピエール全盛期にはリヨンで反革命の嫌疑をかけられた市民たちを虐殺し、共産主義者と見紛わんばかりの布告を出しているのに、ナポレオン支配下ではついにオトランド公爵に収まり、共和政も帝政をも生き抜いたのである。その要因をツヴァイクは、彼の「無性格」、誰にも決して完全な忠節を貫くことなく、常にキャスティングボードを握り続けようとするフーシェの行動様式に求めている。現在でこそフランス革命の人物伝では欠かすことのできない存在であろうが、おそらく思想家としての魅力は持たず、ロベスピエールやナポレオンといった人物よりは影の薄いこのような人物が非常に興味深い人物として描き出されている。

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2015/01/24

「絶対的な没道徳漢でありマキアヴェリスト」であり、時として「いたずらが三度の飯よりも好き」なフーシェの伝記。上記以外にも形容するのにいくつも言葉が必要な彼の生き様をツヴァイクの筆が鮮やかに描いています。特にナポレオンとの駆け引きは面白かったです。 この一文にはニヤリとさせられまし...

「絶対的な没道徳漢でありマキアヴェリスト」であり、時として「いたずらが三度の飯よりも好き」なフーシェの伝記。上記以外にも形容するのにいくつも言葉が必要な彼の生き様をツヴァイクの筆が鮮やかに描いています。特にナポレオンとの駆け引きは面白かったです。 この一文にはニヤリとさせられました。「十年にわたるはげしい敵意が、人と人とを結びつけるありさまは、生半可な友情以上にふしぎなものがある。」

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2021/01/02

司馬遼太郎が「翔ぶが如く」で勧めてたので読みました。一番好きな本は?と聞かれれば、私はこの本だと言います。

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2014/02/23

ナポレオンの警察長官として外交官タレイランとともに帝政を支えたフーシェ。イマイチ知名度が低いが、バルザックは彼を絶賛しこう評したという。"ナポレオンが有した唯一の名大臣" "私の知る限り最も強い頭脳" タレイランのような派手さはないが、...

ナポレオンの警察長官として外交官タレイランとともに帝政を支えたフーシェ。イマイチ知名度が低いが、バルザックは彼を絶賛しこう評したという。"ナポレオンが有した唯一の名大臣" "私の知る限り最も強い頭脳" タレイランのような派手さはないが、黒幕としての働きにも優れた謀略の名手。学術文庫の"ナポレオン・フーシェ・タレーラン"が三人を並べて語っていてわかりやすい。 物欲がなく謀略それ自体を楽しむ天性の軍師といった雰囲気。 人物描写 ⚪︎だれでも彼に会った者は、この男には熱い血がめぐってはいないのだ、という印象を受けた。そして実際、彼は精神的にも冷血動物の種属なのだ。我を忘れるような激しい情熱も知らないし、女にも賭博にも気を向けたことはなく、酒もたしなまないし、贅沢は嫌い、筋肉を動かしたこともなく、ただただ部屋の中にくすぶって、記録や書類に埋れて暮らしているだけである。

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