虎よ、虎よ! の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
先日「スタァライト」に感化されて読んだ、チャールズ・L・ハーネス「パラドックス・メン」に続き、ワイドスクリーン・バロック読書2冊目。 といっても「スタァライト」以前から、津原泰水の推薦 https://blog.goo.ne.jp/tsuhara/e/e7c58eec6b9fc8e9f564435e9cc075b1 〈これがつまらないという人の顔を見てみたい。〉 で気になり、長期間積読にしていたもの。 (ところで本書のカバーイラストを寺田克也が描いているが、津原と寺田って親交があったような……? うろ覚えなので念のため検索してみたが、ちょっと見つけられなかった……記憶違いか?) 津原をもう少し絡めるならば、津原は確か手塚治虫の文庫本の解説を書いていたが、トキワ荘にいた石ノ森章太郎の、「サイボーグ009」の加速装置ってまんま本作の影響、と知って小びっくり。 また「仮面ライダー」の怒りで顔に痣のような模様が浮かぶという設定も、まんま本作で小びっくり2。 というか平井和正を間に挟んだ影響でもある、とネット上で知った。 要はある年代の創作に影響が大きい作品だったんだろうな。 と同時にSF文芸が影響大だった時代なんだろうな。 個人的には、ジョウントという瞬間移動から、鳥山明「ドラゴンボール」の孫悟空を思い出したが、いやもう少し本作のジョウントは厳密だった。 なにせ行き先曖昧で行うと青ジョウントになってしまうから……このへん面白い。 また、そこはかとなくボルヘスを思い出したりもしたが、むしろ逆で、純文学に祭り上げられたボルヘスの元々の想像力がコミック的なもので、そこに反応したベスター……ということなのかも。 (あるいは安直に、虎好き=ボルヘスという連想かしらん。〈虎よ! 虎よ! ぬばたまの 夜の森に燦爛と燃え そもいかなる不死の手 はたは眼の 作りしや、汝がゆゆしき均整を〉ウィリアム・ブレイク、をボルヘスが知らなかったわけないので、同根ということか) (筋書きはアレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯」翻案らしいが、そのデュマも大衆作家だし) で、たまーにネット上で「最近のラノベの文章ひどすぎww」みたいなスレッドで、記憶にある範囲では、かじいたかし「僕の妹は漢字が読める」と並べて、本作の〈カチャリカチャリ ジグザグになってとんでくる稲妻のような悲鳴がわきあがる 光線が襲いかかる〉のページがアップされていたりするが、確かにそういうスレッドで半ば馬鹿にされてもやむなしな試み……しかし、むしろ印刷技術を用いたサービス精神や表現欲求の粋だと思いたい……タイポグラフィについて。 思えば筒井康隆「虚航船団」のホチキス「ココココココ」だってそうだし、「トーチカ」もそうだった。 あるいは北園克衛や、草野心平「蛙」だって。 そういえば筒井康隆「旅のラゴス」には集団転移とか壁ぬけとかがあったので、やっぱり影響あるんじゃ。 で、そういった連想抜きにして単体で楽しいのかっていったら、まあまあ。 キャラ立ちしているという点で、「パラドックス・メン」よりは好きかな、という程度。 SFマインド欠如の疑い……。
Posted by
「おまえは誰だ?」 「どこからきた?」 「いまどこにいる?」 「行先は?」 宇宙にたったひとり漂流する主人公ガリー・フォイルは自問する。 彼を見捨てた《ヴォーガ》への復讐の果てに、彼が行き着く先は...。 最後は、主人公の内面の変化、時空を超えた展開、難解な表現について行くのが...
「おまえは誰だ?」 「どこからきた?」 「いまどこにいる?」 「行先は?」 宇宙にたったひとり漂流する主人公ガリー・フォイルは自問する。 彼を見捨てた《ヴォーガ》への復讐の果てに、彼が行き着く先は...。 最後は、主人公の内面の変化、時空を超えた展開、難解な表現について行くのが難しかったです。だからこそ名作と言われるのでしょうけど...。(-∀-) “我思う、故に我ジョウントす”
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
正直に言うと二部の始まりでギブアップ寸前になり他の方の終盤での伏線回収が良かったとのレビューに励まされて何とか読了まで迎えることが出来た。レビューを書いた方にまず感謝したい。 ひたすらに訳がよろしくない。が、それは脇において冷静に振り返ると物語としてはギミックや伏線、黒幕、ラストの展開等要所要所はお手本のようにキッチリしており誤読感がいい。1950年代に書かれ現在もリスペクトされていることには納得できる。歯に仕込んだスイッチを押すと加速装置で無敵状態になるチートはいきなり過ぎて置いてきぼりを喰らったが好きな人にはたまらないだろうし、想い人が実は復讐を誓った黒幕でしたとか一歩間違えば世界を滅ぼす物質を世界にバラ撒いてその行く末は人類に一任するとか主人公が永劫回帰して序盤の自分の名付け場所に戻って来るとか他にも挙げられるのはいくつもある展開が目白押しでこれらを終盤に一気に詰め込んでいるから良い意味でたまらない。とりわけ未来の主人公が時空間移動して過去の自分のところに来て手助けするのは思わずニヤけた。ぶっちゃけ分かっていた、物語の所々で主人公に似たやつが現れた時点で分からないわけがないが、話が進んで改めて主人公視点でそれをやられるとドーパミンが出る。私この展開好き(パーンってなるのは男の子だからだろうか。 最後まで読んで良かったと思う。が、他の人に勧めるまでにはいかない最大の障壁が日本語訳なのはどうにかならないのか。訳者には申し訳ないが2008年に再出版したときに見直すべきだったと、出版社に言いたい。SF作品に需要を見込めなかったのかもしれないが過去の名作と名を打つのなら誰にでも読みやすいようにするのも出版の役割ではないかと。今からでも良いので是非改訳をお願いしたい。その時はもう一度読んでみたい。
Posted by
オールタイム・ベスト常連、のみならず、某海外ドラマで犯人がいつもつぶやく「Tiger, Tiger, burning bright...」というセリフがこの作品からと知ったため。ドラマで引用されるので、どんな名作なんだろう、と期待して読んだが、良くも悪くも想像とは大きく異なった。...
オールタイム・ベスト常連、のみならず、某海外ドラマで犯人がいつもつぶやく「Tiger, Tiger, burning bright...」というセリフがこの作品からと知ったため。ドラマで引用されるので、どんな名作なんだろう、と期待して読んだが、良くも悪くも想像とは大きく異なった。 名作。 確かに名作かもしれない。 が、あまりに破天荒。 ストーリーだけではなく、タイポグラフィーでも表現を変えるとは、小説表現の枠を超えた作品。 個人的には、こういった「奇をてらった」表現はあまり好きではなく、”ある制約の中でどう表すのか”というのが大切だと思っているのだが、時代を考えると好意的に捉えても良いのかもしれない。 すべてが大仰で演劇を観ているかのようなセリフまわし、舞台は宇宙だし超能力はあるしSFというジャンルなんだろうけれど、SFであることはあまり重要ではない。 復讐譚ではあるが主人公は同情するにはあまりにも粗野で身勝手で、その他の登場人物も100%善人と考えられる人はほぼいない。 まあとにかくめちゃくちゃ。 それでもこんなに評価が高く読み続けられるのは、やはりそれだけでは終わっていないからなのだと思う。主人公のキャラクターを表すかのように次から次へとストーリーは展開し、読者は知らず引き込まれ、気がつくとクライマックス。大きな秘密が明るみにでる。 と、もっともらしいことを書いているが、実は、なんというか、自分はこの作品について語るには、経験も知見も浅いような気がしてならない。 再読後、改めて感想は残すことにしよう。
Posted by
主人公ガリヴァー・フォイルの復讐譚。フォイルの圧倒的な生命力と無茶苦茶で猪突猛進で大胆不敵な様がシンプルに格好良いし何だか憎めない。ピカレスクロマンという感じ…。 最後の最後で現在にも通ずるメッセージがあり、作者のやりたいこと、伝えたいことは理解できた。 シンプルに面白いです。キ...
主人公ガリヴァー・フォイルの復讐譚。フォイルの圧倒的な生命力と無茶苦茶で猪突猛進で大胆不敵な様がシンプルに格好良いし何だか憎めない。ピカレスクロマンという感じ…。 最後の最後で現在にも通ずるメッセージがあり、作者のやりたいこと、伝えたいことは理解できた。 シンプルに面白いです。キャラクターも魅力的!
Posted by
本書を伊藤典夫は「アメリカSFの最高の到達点」と断じた。本書と『分解…』2作のみでSFマガジンアンケート作家ベスト10に入った超絶の金字塔。所謂“Widescreen Baroque”、宇宙時代のモンテ・クリスト伯といった出だしが“一般的”小説と異なり話はどんどん大きくなり、収束...
本書を伊藤典夫は「アメリカSFの最高の到達点」と断じた。本書と『分解…』2作のみでSFマガジンアンケート作家ベスト10に入った超絶の金字塔。所謂“Widescreen Baroque”、宇宙時代のモンテ・クリスト伯といった出だしが“一般的”小説と異なり話はどんどん大きくなり、収束不能と思え残り頁も少なくなってから思わぬ伏線回収。結末で「そう来るか」との嘆息は、プロローグで25世紀の危機をインナープラネッツ社を含む人類が乗り切ったことを示唆していたのに想到すると俄然楽しく、頼もしくなる。これ程のピンチを…!
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
うーんって感じ。多分その当時のSFの不文律(宇宙旅行とアクションそしてドラマ)を踏まえて、新鮮で面白い作品だったんだろうなと思う。共感覚のシーンは草野心平の詩みたいだなぁと感じた。
Posted by
ローカス誌が選ぶ20世紀SF小説オールタイムベスト第9位の、古典的名作。 書かれた時代が1950年代ということを考えれば、ジョウント(テレポーテーション)や「加速装置」の斬新さは認められるべきで、スケールも壮大。 また、途中の復讐劇までは、設定がテンポ良く切り替わり飽きずに読...
ローカス誌が選ぶ20世紀SF小説オールタイムベスト第9位の、古典的名作。 書かれた時代が1950年代ということを考えれば、ジョウント(テレポーテーション)や「加速装置」の斬新さは認められるべきで、スケールも壮大。 また、途中の復讐劇までは、設定がテンポ良く切り替わり飽きずに読み進めることができる。ただし、ジョウントの設定がまったく生かせてない。 ジョウントいる?と思ったけど、最終局面ではジョウントが重要な意味を持ってくるといった流れ。 総じて書くと物語としては良くできているんだけど、訳が古く、全くこなれていないので、乗ってきたところでいちいち水を差され、物語に深く入り込めなかった。 特に、会話文では翻訳者は本当に物語の流れを考えて訳したのかと思うぐらいで、いちいち頭の中に「?」を感じながら読まなければならなかった。 出版が2008年となっているので油断してたけど、実際の翻訳は1978年のものとほとんど変わってないと思う。新装版を出版年月として出すのは良くないですね。 加えて、登場人物の思考の変遷が全く理解できない。もともと、SF小説に人物の細かい心理描写を期待するものではないかもしれないけど。 いずれにせよ、新訳が出たらまた読んでみたい。
Posted by
条件付きだが望む場所へのテレポートを可能とする「ジョウント」や、サイボーグ009の元ネタと思われる「加速装置」など、後のSF作品に多大な影響を与えた本作。壮大なスペースオペラとしてはもちろん、巌窟王を元ネタにしているだけあり、復讐譚としても非常に魅力的なストーリーで読み応え抜群で...
条件付きだが望む場所へのテレポートを可能とする「ジョウント」や、サイボーグ009の元ネタと思われる「加速装置」など、後のSF作品に多大な影響を与えた本作。壮大なスペースオペラとしてはもちろん、巌窟王を元ネタにしているだけあり、復讐譚としても非常に魅力的なストーリーで読み応え抜群でした。 ただ、復讐の動機がちょっと弱いかなと思ったのと、オリヴィアに惹かれる流れがあまりにも唐突だったことなど、その他にも「え?なんで?」と思う展開が多く、少し残念な点もありました。この辺りは半世紀前の作品ということで、そういうものと割り切ったほうがいいのかもしれませんが。
Posted by
最高!でした。 表紙が良い。寺田克也さんのイラストが凄くマッチしてる。 内容は1950年代に書かれたとは思えない。 古さを感じなかった。むしろ最近書かれた?とも思った。 でも、寺田克也さんのイラストのイメージで読んだから良かったような気もする。 超能力もの良いな。
Posted by