聖少女 の商品レビュー
作者自身「最後の少女小説」と言っているそうだけれども、いったいその少女小説というのは何を指していっていることなのか、よくわからなかった。表現としては、やたらと過激な内容が多く、グロテスクに思えて、それには驚きや感心というよりは、拒絶反応のほうが大きかった。近親相姦をテーマにしたり...
作者自身「最後の少女小説」と言っているそうだけれども、いったいその少女小説というのは何を指していっていることなのか、よくわからなかった。表現としては、やたらと過激な内容が多く、グロテスクに思えて、それには驚きや感心というよりは、拒絶反応のほうが大きかった。近親相姦をテーマにしたり、「生肉しか食べない男」など、いったい何のためかわからない挿話もあって、なんとなく、ただグロテスクな衝撃を与えるがための描写もあちこちにあり、この作品が衝撃的であることはわかるのだけれども、それが緻密に計算された文学的な創作物であるようには思えなかった。自分には、この作品の文学的真価がわかる感性がないというだけなのかもしれないのだけれど、どうにも、後味がすっきりしない話しだった。 いったい、ひとはなぜ教育をうけなければならないのかな?あたしを世の中の役にたつ人間にしたてようと、みんながよってたかって汚い手でなでまわすことにあたしはほとんどがまんできません。いつかTVで、近代化された養鶏場のルポタージュをみたことがありますが、冷暖房完備の円筒状のアパートにつめこまれて、ベルトコンベアで流される餌をせっせとつついては水を飲んで、すごいスピードで大きくなり、ころころと正気の沙汰とはおもえないほど卵をたくさん生んだり食用肉になったりしている鶏の群れをみて、あたしは笑いこけずにはいられませんでした。その鶏どもが、ワレワレハ鶏トシテ可能性ヲ追求シ、人格イヤ鶏格ノ感性ヲメザシカツ鶏類ノ平和ト文化ノ発展ノタメニ飼育サレテイル、と口走ったとしたら、どんなにこっけいなことでしょう。(p.60) かれは女を愛するという病的資質からまったく自由な男とみえた。世界中のめしべに無差別爆撃を加える一匹の黄金色の蜂として生きることがエスキモーの希望だった。いや、希望とはいえない。これは絶望から発したエネルギーの、痙攣的な運動の一例というべきではないか?(p.135) 考えてみると、ぼくの眼にうつる世界は女だけが動物で男は配置された道具であり、しかも女という動物はセックスと脚からなるふしぎな体形の宇宙生物のようなものとしてぼくの世界を浮遊しているのだ。それはぼくが最初の夢精を経験した年の夏由比ガ浜の海岸でながめていた世界とかわらない。なまぬるい波に脚をなめられながらぼくはぬれた砂にはらばいになり、硬い機関銃を腹の下に折り敷いて無数の脚たちをながめていた。まったくおびただしい脚とおしりだった。あれをことごとくぼくのものにしなければならないと考えただけでぼくの全身は絶望でかゆくなり、腹の下では凶暴な蟹の爪となったぼくのエゴがむなしく地球をひっかき穴を掘っていた。(p.242) あなたにはあたしの死体を残してさしあげてもいいわ。ばりばり食べていただいてもいいの。ただ、あたしのからだは、精神という骨組でかろうじて形をなしていたのですから、これをとりはらったあとに残るのは、すっぱい肉の塊だけかもしれませんわ。(p.284)
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全然古くない。衝撃デスワコレ。”作者「最後の少女小説」” 獄本野ばら好きな人は好きなんじゃないかしらこの世界観。 けど、この作者の最後の少女の名残の叫びのような文章は、30歳の女性にしか書けまい。きっと本人は恥ずかしかろうが、書いておいてくれてありがとうと思う。
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『聖少女』は、昭和40(1965)年、倉橋由美子が30歳のときに、発表された。作者は後年、この作品を「最後の少女小説」として位置付けている。
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学生運動を経験した世代の人が書きそうな内容。 理屈と観念が浮かび上がって共感を呼ばない幻の世界のようだ。 近親相姦を聖化するというテーマ。
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これは男性にはかけない文章でしょう。 ストーリーはこてこての設定だが、この作品の魅力は絶対的に文章表現にある。 巧みな言葉の置き換え、敏感に大胆に並べられた単語etc etc 初期作品なだけにやり過ぎ感も拭えないが、完全な才能の萌芽の瞬間でもある。
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はっきり言って、かなり難しい作品。いい意味で。 高度な文章力にすっかりやられた。 文章書きとしては読んで損はないはず。 物語のベースがベースだけに (父娘・姉弟の近親相姦、退廃的な雰囲気) なかなか世間では受け入れられてもらえないようではあるが、 展開の変遷の凄まじ...
はっきり言って、かなり難しい作品。いい意味で。 高度な文章力にすっかりやられた。 文章書きとしては読んで損はないはず。 物語のベースがベースだけに (父娘・姉弟の近親相姦、退廃的な雰囲気) なかなか世間では受け入れられてもらえないようではあるが、 展開の変遷の凄まじさに圧倒され、夢中で読み終えられる。 この人の作品、もっと世間で評価されてもいいんだけどな。
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キワどい内容なのに、すごく文学的。高橋由美子の作品を読んだのはこれが初めてで、その当時度肝を抜かれました。。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
倉橋由美子の青春小説。1965年。 アンポとかアメタイとか、昭和の香りただよう。主人公たちが生まれたの戦中だし。インシストの文字による美化。未紀もKもかっこよかったなぁ・・現実離れしててステキだったなぁ・・ 結婚することにより青春を終えるのだが、その後どうなったのかなぁ・・ 何年かぶりで読み返した。もう何回も読み返している。この作者が書くと下世話にならない。
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パパに恋した女の子…というとなんか下世話な設定のようですが、とんでもないです! 戦後まもなくの話とは思えないほど、世界観がしゃれています。ミキの奔放さ、純真さにはちょっと憧れてしまうまです。 倉橋由美子さんは大好きな作家です。ご冥福をお祈りいたします。
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私の理想。未紀に魅了され「僕」のような頭でっかちの刃物になりたかった。永遠に不可能だけど。私は植物にもなれず刃物にもなれない。
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