聖少女 の商品レビュー
中学生のころ、倉橋由美子の描く残酷で美しい世界に傾倒していた。 解説の桜庭一樹氏と全く同じく、森茉莉「甘い蜜の部屋」尾崎翠の「第七官界彷徨」も高校生で 読んでいたから、なんともわかりやすく「少女小説」に魅せられていたのだろう。 今読んでもこの文章の完成度の高さは独特だと思う。退...
中学生のころ、倉橋由美子の描く残酷で美しい世界に傾倒していた。 解説の桜庭一樹氏と全く同じく、森茉莉「甘い蜜の部屋」尾崎翠の「第七官界彷徨」も高校生で 読んでいたから、なんともわかりやすく「少女小説」に魅せられていたのだろう。 今読んでもこの文章の完成度の高さは独特だと思う。退廃的でどこか谷崎っぽいかな? 「近親相姦」それも父と娘の、このタブーを軽薄に未紀という天性の嘘つきな少女の告白と、食えない「(自称)未紀の婚約者」Kの視点から描いたこの作品。 登場人物の誰のことも好きになれないけど、「聖性」と「悪」をここまで美しく描けるのは並大抵ではないなぁ。 「サロメ」のようにビアズレーの挿画で出してほしい。
Posted by
作者曰く「最後の少女小説」。 恐ろしく饒舌で軽薄で痛々しい。 これも何度も読み返している一冊だが、 自分が年を経ても感度が変わらないことが嬉しい。
Posted by
穂村弘さんが衝撃を受けたということで気になっていました。 少し痛くて、愚かで、陶酔した 少年少女の物語。 思春期ならではの潔癖さや勢いがすごくきれいに描かれていると思います。 近親相姦、交通事故、記憶喪失、ゴシック趣味、などなど言い出したらきりがないですが、そういういわゆる...
穂村弘さんが衝撃を受けたということで気になっていました。 少し痛くて、愚かで、陶酔した 少年少女の物語。 思春期ならではの潔癖さや勢いがすごくきれいに描かれていると思います。 近親相姦、交通事故、記憶喪失、ゴシック趣味、などなど言い出したらきりがないですが、そういういわゆる"キーワード"みたいのはあまり意識させない、もっと奥にある少女の物語であると感じました。 とても好き。 12歳のときに読んでいたら人生が変わっていたかもしれない。 ちなみに朝のむウイスキー少したらすやつ、飲んでみたい。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
きっと10代のころに読んでいたら、熱狂していたんだろうなぁ。 あとは、少女時代を愛情をもって穏やかな目で懐古できるようになったころ、ずっと後にも、静かに熱狂できるんだろうなぁ。 映画やジャズ、本の趣味がオシャレすぎる。 163ページ辺りの愛についてのひとつの仮説 かけはなれた存在を接合させるためには、反自然的な力エネルギーが必要で、つまりそれはごく人間的なもの、ことばです。この他者同士の間をゆきかうことばこそ、愛である。愛とは想像力のひとつの形。 っていうのが気に入った。
Posted by
異色作、タブーを扱っています。 そのタブーは一番強烈な「近親相姦」 だけれども病んでいる雰囲気のみで その該当行為に関してはぼかされているので きつくは感じず、あまり嫌悪感は感じませんでした。 ただし問題はKの視点 こいつは食えない奴です。 この視点だけは吐き気を催しそうになり...
異色作、タブーを扱っています。 そのタブーは一番強烈な「近親相姦」 だけれども病んでいる雰囲気のみで その該当行為に関してはぼかされているので きつくは感じず、あまり嫌悪感は感じませんでした。 ただし問題はKの視点 こいつは食えない奴です。 この視点だけは吐き気を催しそうになりました。 消えてしまえばいいのにと何度思ったことやら!! だけれども、純粋な少女が壊れていく その描写は見事としか言いようがありません。 彼女はまさにタイトルのとおりなのかもしれません。
Posted by
近親相姦という重いテーマ。 読んでみると、テーマ性を求めたものではないことが分かります。 「近親相姦は許されるべきか」とか「近親相姦とはなにか」とか、そういう哲学や倫理を追求するものではないと感じます。 どうも、タブー性を材料としたような節も見られます。 近親相姦というと、その...
近親相姦という重いテーマ。 読んでみると、テーマ性を求めたものではないことが分かります。 「近親相姦は許されるべきか」とか「近親相姦とはなにか」とか、そういう哲学や倫理を追求するものではないと感じます。 どうも、タブー性を材料としたような節も見られます。 近親相姦というと、その禁忌におぼれたり、許されない愛に登場人物たちが揺れ動く「捕らわれた形の愛」の形をしていますが、本作では登場人物の心理にとらわれず、もっと観念的な愛の形として描かれています。 今読んでも新しく感じます。 このテーマに挑んだ作家は数あれど、このようなアプローチをした作家は見たことがありません。 しかし、あまりにも理知的すぎるために、好き嫌いがわかれそうです。 構成もとても興味深い。 Kの語りの中に、未紀の手記が内包されるのですが、最初の手記の謎がそのまま小説という虚構の意味を問うものになっています。 未紀の手記のような文体が好きなので、食い入るように読みました。未紀は魔性の魅力を放っています。 Kの方はインテリで、法や秩序にとらわれず、むしろ食い荒らそうとする考え方をもっているようで、文体もいかにもなものでした。 知性を携えた人間の厄介さがよくわかります。
Posted by
「悪徳の限りを尽くす」という表現がある。 しかし、悪徳が尽きてしまった後のこころには何が残るのか。 過去に人生の負の側面といえるものを謳歌した「ぼく」は、記憶を失った未紀の存在に吸い寄せられていく。「ぼく」は、過去に「ぼく」と同じ蜜を味わった未紀の残したノートの真相に近づこうと...
「悪徳の限りを尽くす」という表現がある。 しかし、悪徳が尽きてしまった後のこころには何が残るのか。 過去に人生の負の側面といえるものを謳歌した「ぼく」は、記憶を失った未紀の存在に吸い寄せられていく。「ぼく」は、過去に「ぼく」と同じ蜜を味わった未紀の残したノートの真相に近づこうとするが……というのがあらすじ。 この小説では美しい比喩を用いて、美学を持って悪事をする人間が丁寧に描かれている。 今でいうところの「厨二病」タイプの人物が数多く登場するが、簡単に型に入れることができるようなものでもなく、「昭和の厨二病すげぇな」と思ってしまった。 とりわけ未紀が魅力的で、彼女の言動の裏を読みながら小説を読み進めるとより楽しめるだろう。
Posted by
インセストタブーと大人への通過儀礼を美醜混濁装飾系の流麗な文体で書かれていた。この作品を読もうと思った経緯が思い出せないくらい興味のないテーマなので、読後感は満足でありつつも、つまらない。 理解できないというより理解するのを脳が拒んでいた。 桜庭一樹の解説を読んで、ようやく脳が拒...
インセストタブーと大人への通過儀礼を美醜混濁装飾系の流麗な文体で書かれていた。この作品を読もうと思った経緯が思い出せないくらい興味のないテーマなので、読後感は満足でありつつも、つまらない。 理解できないというより理解するのを脳が拒んでいた。 桜庭一樹の解説を読んで、ようやく脳が拒んでいた理由が解る。私はもう大人になっちゃっているということなのだ。 作品のテーマに興味のある人にとっては、とても面白く感じるのであろう。 人を選ぶ作品なんだろうね。特に現代の壮年にとっては。
Posted by
これこそ求めていた小説。 奇妙な偶然が嬉しいけど恐ろしくもある。 今の年齢だから受け入れられた小説。きっと10代の私だったら無理だっただろうな。
Posted by
美しい文体。格調高いというべきだろうか。現実と幻想の反芻の先に覗いている、その倒錯は「アムネジアという幻の花」と作中で表現されている。 桜庭一樹曰く「日本で書かれた中で最も”重要な”少女小説」は寺山修司的美学も孕んでいるようにみえる。 物語の背後にいる死をも感じさせない妖艶な美...
美しい文体。格調高いというべきだろうか。現実と幻想の反芻の先に覗いている、その倒錯は「アムネジアという幻の花」と作中で表現されている。 桜庭一樹曰く「日本で書かれた中で最も”重要な”少女小説」は寺山修司的美学も孕んでいるようにみえる。 物語の背後にいる死をも感じさせない妖艶な美への陶酔を倉橋由美子の文体と構成は可能にする。
Posted by