君のためなら千回でも(下) の商品レビュー
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決して強くも正しくもない主人公が、それでも行う贖罪の話。 現実は過酷で、主人公たちには何を変える力もないけれど、彼ら自身が変わることはできる。終わってしまったことは巻き戻らないけれど、それを巻き返そうと努力することはできる。 アミールは(特に子供時代は)とても褒められた人物ではないけれど、その弱さは理解できる気がする。 生まれた時から刷り込まれていた差別意識や、暴力を恐れる軟弱な心まで含めて、「ふつう」の子供だったのだろう。 ハッサンのアミールへの愛情には心を打たれた。裏切られて、見下されて、そういうのも全部わかっていたはずなのに、それでもあれだけ誠実でいられるのは凄い。どんな気持ちでいたんだろう。憎く思う心が少しもないなんてことはなかっただろうに、と思うと、今でも泣けてきてしまう。 元の邦題はカイト・ランナー。シンプルで原題に沿っているけれど、私は今のタイトルの方が好きだ。 ハッサンからアミールに捧げられたものを、アミールはこれから返していくのだろう。彼らの未来に幸多からんことを。
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あぁやっぱ言うと思った。なんというか物語としてなにか弱さを感じた。情景の細緻はあんなに書き込んでいるのに、心情の細緻はちょっと大雑把だったように感じました。でも中東の、特にアフガニスタンの流れを掴むためのきっかけになりえました。
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1979年11月、ソ連によるアフガニスタン侵攻が始まり、1981年、アミールは父ババと共に全てを捨ててアメリカへと亡命する。 時は流れ2001年、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ。 作家となったアミールのもとに、今はパキスタンにいる父の友人から1本の電話が入る。 ...
1979年11月、ソ連によるアフガニスタン侵攻が始まり、1981年、アミールは父ババと共に全てを捨ててアメリカへと亡命する。 時は流れ2001年、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ。 作家となったアミールのもとに、今はパキスタンにいる父の友人から1本の電話が入る。 「もう一度やり直す道がある」 アミールは意を決し、一路、タリバン独裁政権下の故郷へと向かう。 それは嘘と裏切りと秘密の繰り返しを終わらせる旅だった。 「君のためなら千回でも」 あの時のハッサンの信頼の言葉に、今度こそ応えるための。 しかし、20年ぶりに舞い戻った祖国でアミールを待ち受けていたのは、思いもかけない衝撃の真実だった……。 さまざまな民族や宗教が混在し、長年積み重ねられた歴史的背景、男女差や身分差などが厳然と存在する社会。そして長い長い戦争に引き裂かれてゆく人々。 その過程で誰もが少なからず抱いていく後悔の念。 あの時、あの一言が言えたなら。もう少し勇気があったなら…。 だが、物語の過程や結末が幸福に満ちたものでなくても、“それでも人生は進む”。 過去のあの日のあやまちを正し、「許し」を求めたいと願ったことのある、すべての人に通じる贖罪と勇気の物語。
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アフガニスタン。埃っぽく、布をかぶって手には銃を持っている 人がいる、程度の認識しかなかった国。 過去に決着をつけるというのは幾つになってもできるものなのか。 ここに出てくるのは演出しすぎの様にも思えるが、ストーリは とても引きこまれるものだった。
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翻訳小説でこんなに心に染みいる文章を初めて読んだ気がします。 『君』というのが恋人ではなく、タイトルから甘過ぎるラブストーリーかとたかをくくっていたら、友情、贖罪、赦しを描いた至高のヒューマンドラマだった。安穏と暮らしている日本人の胸に迫る悲しくも美しいこの物語が、遠い国だったア...
翻訳小説でこんなに心に染みいる文章を初めて読んだ気がします。 『君』というのが恋人ではなく、タイトルから甘過ぎるラブストーリーかとたかをくくっていたら、友情、贖罪、赦しを描いた至高のヒューマンドラマだった。安穏と暮らしている日本人の胸に迫る悲しくも美しいこの物語が、遠い国だったアフガニスタンを共感出来る存在にしてくれる。 クーデター、ソ連の侵攻、タリバンの台頭、2001年の同時多発テロまで、激動のアフガニスタンを舞台に歴史に翻弄されながらも信念をもって生きる壮大な絆の物語。 翻訳小説に感じる日本語のこなれなさは一切なく、簡潔で端正な訳は読む楽しみを与えてくれる味わい深い文章だった。 勧めてくれた夫に感謝。
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ここ数年で出合った一番の作品でした。 文章の美しさもさることながらその内容は残酷さの渦の中でも愛が輝いています。私の文章力でいろいろ書いても逆に内容が色あせてしまいそうなので多言はしませんが、ベストセラー納得の1冊でした。
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アフガニスタンについて「あの辺にあって紛争で大変」というだけの知識しかなかったので、当然ひとがいて、ひとの数だけ物語があるということを実感できて良かった。ストーリーにも引き込まれてあっという間に読了。いい話だった!
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主人公のモラル喪失と回復の物語。1960年代から9/11に至るアフガニスタン情勢と家族の問題を絡めて、面白く読める。ソーラブ奪還は少々御都合主義だ。テーマも文体もイスラム的ではなく、非常にアメリカ的。
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後半ではアミールとハッサンとの関係にびっくりさせられました。 それと共に、彼らの父親の心の内がおのずとわかるようになっていて・・・、うーんうまいなぁ。 ハッサンのその後については、なんとなくそうなっているのだろうな、と思っていたのですが、やっぱりそれでも彼の最後は悲しい。 ...
後半ではアミールとハッサンとの関係にびっくりさせられました。 それと共に、彼らの父親の心の内がおのずとわかるようになっていて・・・、うーんうまいなぁ。 ハッサンのその後については、なんとなくそうなっているのだろうな、と思っていたのですが、やっぱりそれでも彼の最後は悲しい。 ハッサンがアミールに宛てて出した手紙が涙を誘います。 おのれの生きたいように生きられなかった人々の分まで、ソーラブには力強く人生を歩んでいってほしい・・・、そう祈らずにはいられません。 悲しみのなかにある、希望を求めてやまない祈り。 この本を手にした人の心の中に、何かを残す作品でした。
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映画的な本でした。近年のアフガン情勢も含めて、しっかりしたエンターテイメントになってる。ただ、そのためにかはわからないけど、タリバンが単なる悪者役であったり、イスラム的な慣習の多くがネガティブなものとして描かれていたのは残念。現実は小説よりもずいぶん複雑。
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